おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第366話

 闘技場でものの見事にズタボロになった翌日の夜、疲れ切った体を休める為に家の中でずっと過ごしているとお仕置きとやらを終えて満足そうに微笑んでるサラさんとソフィ……そして明らかに生気を失っている様に見えるガドルさんが訪ねて来た。

「こ、こんばんは……えっと………大丈夫ですか?」

「え、えぇ……たった数百回、あ死ぬ思いをしただけですから………ははっ………」

「あ、あはは………お疲れ様です………それであの、今日はどの様なご用件で?」

「うふふ、ご夕食がまだの様でしたらご一緒させて欲しいなと思ったんですけど……いかがでしょうか?」

「あっ、はい、問題ありませんよ。それではどうぞ、中に入って下さい。」

「ありがとうございます、それではお邪魔させてもらいますね。」

 突如としてやって来た3人を家に招き入れてから数十分後、俺達はサラさんが用意してくれた豪勢な料理を囲みながら晩飯を食べ始めるのだった。

「う~ん!やっぱりサラさんの作ってくれたお料理はどれも美味しいですね!」

「あらあら、そんなに褒めてもおかわりぐらいしか出ませんよ。」

「……ままのお料理、とっても美味しいよ。」

「まぁまぁ、ソフィっちゃんたら!はい、それじゃあおかわりをどうぞ。」

「ふふっ、ソフィにしては随分と食べるね。そんなにお腹が空いてたのかい。」

「うん、今日はままと一緒に沢山動いたから。」

「そうねぇ、私も久しぶりに運動してちょっと疲れちゃったわ。」

「へ、へぇ……そうなんですか………」

「………ははっ………」

 うわぁ……ガドルさん、目が死んだまま笑みを浮かべて黙々と飯を食ってるよ……何があったのか気になるけど、聞いたら悪夢を見そうだから止めとくか……好奇心は身を滅ぼすってどっかの誰かも言ってたもんなぁ……って、そう言えば……

「すみません、確か2,3日前に王都から緊急性の依頼が届いてませんでしたっけ?お2人共、まだ王都に戻らなくても大丈夫なんですか?」

「あぁ……実はその事なんですが、ガドルさんが今回の為に王都の知り合いに頼んで送って貰った偽の依頼だったみたいなんです。」

「えっ、そうなんですか?」

「……はい……すみません………」

「それと滞在日数も嘘をついていたみたいなので、もう数日はトリアルで過ごす事が決まったんです。」

「それじゃ……今度は、きちんとお見送りする事が出来そうですね。」

「ですね!それに女子会もまた開く事が出来ますよ!」

「ふふっ、これは思わぬ楽しみが増えたみたいだね。」

「はい!……ですがその前に、ソフィさんに確認しておきたい事があります。」

「……なに?」

「その……サラさんとガドルさんが王都に帰る日……ソフィさん、ついて行ったりはしません……よね?」

 不安に感じている事がこっちにも伝わってくる声でマホがそう尋ねると、ソフィは小さな笑みを浮かべて……

「うん……私は、ずっと皆と一緒に居る……ううん、一緒に居たい……ダメ?」

「ダ……ダメな訳ありませんよ!私も……私達もソフィさんと一緒に居たいです!」

「……それじゃあ………もう一度……仲間に入れてくれる?」

「……ふぅ、何を言ってるんだいソフィ。君はずっと、私達の仲間だったろう。」

「……そんな事、改めて聞くこっちゃねぇだろ。」

「……えへへ……ありがとう……」

「うぅ……ソフィちゃん……本当に良かったわね……!」

「あぁ、そうだぐふっ!」

「……あの子達の絆を壊そうとした張本人が偉そうにしないで下さいね。」

「わ、分かった……」

 ガドルさんとサラさんをなるべく視界に入れない様にしながらソフィと笑い合った俺達は、久しぶりに仲間としての時間を過ごして行くのだった。

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