おっさんの異世界生活は無理がある。
第359話
例のやり取りから数日が経ったある日の夕方、緊急で頼みたい依頼が出来たという手紙が届いたので王都に帰らなくてはいけなくなったと言ってソフィがガドルさんとサラさんと一緒に家までやって来た。
「はぁ……こんなに早くお別れの日が来てしまうだなんて思っていませんでした……お2人からもっとソフィさんとの思い出を聞きたかったのに残念です……」
「うふふ、私もマホさんと同じ気持ちですよ。ガドルさんもそうですよね。」
「あぁ、だがそれはまた別の機会にしようじゃないか。」
「……皆が仲良くなってくれたみたいで嬉しい。」
「………」
「おや、どうしたんだい九条さん。もしかしてサラさんが作ってくれた夕食が美味しすぎてお腹が膨れすぎてしまったのかい?」
「……まぁ、そんな感じだな。」
これまでお世話になったお礼にお夕食を作らせて下さいと言ってくれたサラさんの言葉に甘えてさっきまでその料理を口にしていた俺は、これまでと変わらない態度で皆と接しているガドルさんを警戒心を抱きながらバレない様に横目で見ていると……
「……さてと、名残惜しいですがそろそろ失礼させて頂くとしましょうか。」
「えぇー、もう帰っちゃうんですか?もう少しお話をしたかったんですが……」
「すみません、帰り支度がまだ残っていますので……」
「ふふっ、それならば仕方ありませんね。」
「うふふ、ソフィちゃんも持ち出した荷物を片付けないとね。」
「うん、分かってる。」
……おかしいな、あの時からコレと言っておかしな事が何も起きなかったから彼が行動を起こすんなら今日しかないと思っていたんだけど……気にしすぎだったか?
そう考えながら静かに息を吐き出したその直後、妙な視線を感じてチラッと視線を動かしてみるとニコっと微笑みかけてきているガドルさんと目が合って……?
「ソフィ、こんなに楽しい時間にこんな事を提案するのもどうかと思うんだけど私の聞いてもらっても良いかい。」
「どうしたの?」
「……私達の仕事を手伝う気は無いかい。」
「……えっ?」
ドクンッと、心臓が跳ねる様な感覚に襲われながら目を見開いた俺の視界には……ガドルさんの言葉を聞いて戸惑っているソフィの姿が映し出されていて……
「どうだい?」
「……………私が……ぱぱの……お仕事を……?」
「あぁ、悪くは無い話だと思うんだが……」
「ちょ、ちょっと待って下さいガドルさん!そ、それってその!ソフィさんも一緒に王都に連れて行くって事ですか?!」
「えぇ、そうですよ。」
「そ、そうですよって……そんな……」
「これは……また急な提案ですね。」
「……ガドルさん、いきなりどうしたんですか?」
「いや、実は前々から考えていたんだよ。ソフィと一緒に各地を巡って難易度の高い依頼をこなしていったらどんなにやりがいがあるだろうとね。」
「………」
「私達の仕事はとても危険で過酷だ。しかしだからこそ、ソフィが更に成長する為の場としては最高だと思うんだ。それにそうすれば、数年ぶりになる修行に付き合ってあげられるからね……どうだろうソフィ、悪い条件では無いと思うんだが。」
「……ここでの生活はどうなるの?」
「残念だけれどお終いになるだろうね。それに何時この街に帰って来られるのか……それについても確かな事は言えないんだ。」
「……それは……皆に会えなくなるって事……?」
「……もしかしたら、そうなってしまうかもしれないね。」
「あ、会えなくなるって……何ですかソレ!?」
「マホ、落ち着くんだ。」
「で、でもっ!お、おじさんも黙ってないで何とか言ってくださいよ!」
「………九条さん………私………」
焦った様子のマホ、そして不安と戸惑いが入り混じった瞳でこっちを見つめてきているソフィと目が合った俺は……静かにテーブルの上に視線を落として膝の上で拳を強く握りしめるのだった……
「これは……ソフィがどうするべきか決める問題だ。俺が口を挟む事じゃない。」
「っ!」
「おじさん!それは……あんまりじゃないですか!どうしてそんな……!」
「マホ、その辺にしておくんだ。」
「う……うぅ……!」
……ロイドに窘《たしな》められてマホは唸り声を上げながら席に戻り……こうして部屋の中には痛いぐらいの沈黙が流れる事になるのだった……
「……皆さん、私のせいで本当に申し訳ありませんでした。」
「いえ……ですがガドルさん、さっきの提案は本気で仰っているんですか?」
「えぇ、私の想いに嘘も偽りもありません……ソフィ、もし私達と共に来たいと思うなら明日の朝に広場まで来てくれるかい。」
「………」
「それでは、今日の所はこれで失礼します。」
「……ソフィちゃん、無理は……しないでね。」
それだけ言ってリビングから立ち去って行く2人を見送る事も出来ないまま………俺達はその場から動けずにいるのだった………
「はぁ……こんなに早くお別れの日が来てしまうだなんて思っていませんでした……お2人からもっとソフィさんとの思い出を聞きたかったのに残念です……」
「うふふ、私もマホさんと同じ気持ちですよ。ガドルさんもそうですよね。」
「あぁ、だがそれはまた別の機会にしようじゃないか。」
「……皆が仲良くなってくれたみたいで嬉しい。」
「………」
「おや、どうしたんだい九条さん。もしかしてサラさんが作ってくれた夕食が美味しすぎてお腹が膨れすぎてしまったのかい?」
「……まぁ、そんな感じだな。」
これまでお世話になったお礼にお夕食を作らせて下さいと言ってくれたサラさんの言葉に甘えてさっきまでその料理を口にしていた俺は、これまでと変わらない態度で皆と接しているガドルさんを警戒心を抱きながらバレない様に横目で見ていると……
「……さてと、名残惜しいですがそろそろ失礼させて頂くとしましょうか。」
「えぇー、もう帰っちゃうんですか?もう少しお話をしたかったんですが……」
「すみません、帰り支度がまだ残っていますので……」
「ふふっ、それならば仕方ありませんね。」
「うふふ、ソフィちゃんも持ち出した荷物を片付けないとね。」
「うん、分かってる。」
……おかしいな、あの時からコレと言っておかしな事が何も起きなかったから彼が行動を起こすんなら今日しかないと思っていたんだけど……気にしすぎだったか?
そう考えながら静かに息を吐き出したその直後、妙な視線を感じてチラッと視線を動かしてみるとニコっと微笑みかけてきているガドルさんと目が合って……?
「ソフィ、こんなに楽しい時間にこんな事を提案するのもどうかと思うんだけど私の聞いてもらっても良いかい。」
「どうしたの?」
「……私達の仕事を手伝う気は無いかい。」
「……えっ?」
ドクンッと、心臓が跳ねる様な感覚に襲われながら目を見開いた俺の視界には……ガドルさんの言葉を聞いて戸惑っているソフィの姿が映し出されていて……
「どうだい?」
「……………私が……ぱぱの……お仕事を……?」
「あぁ、悪くは無い話だと思うんだが……」
「ちょ、ちょっと待って下さいガドルさん!そ、それってその!ソフィさんも一緒に王都に連れて行くって事ですか?!」
「えぇ、そうですよ。」
「そ、そうですよって……そんな……」
「これは……また急な提案ですね。」
「……ガドルさん、いきなりどうしたんですか?」
「いや、実は前々から考えていたんだよ。ソフィと一緒に各地を巡って難易度の高い依頼をこなしていったらどんなにやりがいがあるだろうとね。」
「………」
「私達の仕事はとても危険で過酷だ。しかしだからこそ、ソフィが更に成長する為の場としては最高だと思うんだ。それにそうすれば、数年ぶりになる修行に付き合ってあげられるからね……どうだろうソフィ、悪い条件では無いと思うんだが。」
「……ここでの生活はどうなるの?」
「残念だけれどお終いになるだろうね。それに何時この街に帰って来られるのか……それについても確かな事は言えないんだ。」
「……それは……皆に会えなくなるって事……?」
「……もしかしたら、そうなってしまうかもしれないね。」
「あ、会えなくなるって……何ですかソレ!?」
「マホ、落ち着くんだ。」
「で、でもっ!お、おじさんも黙ってないで何とか言ってくださいよ!」
「………九条さん………私………」
焦った様子のマホ、そして不安と戸惑いが入り混じった瞳でこっちを見つめてきているソフィと目が合った俺は……静かにテーブルの上に視線を落として膝の上で拳を強く握りしめるのだった……
「これは……ソフィがどうするべきか決める問題だ。俺が口を挟む事じゃない。」
「っ!」
「おじさん!それは……あんまりじゃないですか!どうしてそんな……!」
「マホ、その辺にしておくんだ。」
「う……うぅ……!」
……ロイドに窘《たしな》められてマホは唸り声を上げながら席に戻り……こうして部屋の中には痛いぐらいの沈黙が流れる事になるのだった……
「……皆さん、私のせいで本当に申し訳ありませんでした。」
「いえ……ですがガドルさん、さっきの提案は本気で仰っているんですか?」
「えぇ、私の想いに嘘も偽りもありません……ソフィ、もし私達と共に来たいと思うなら明日の朝に広場まで来てくれるかい。」
「………」
「それでは、今日の所はこれで失礼します。」
「……ソフィちゃん、無理は……しないでね。」
それだけ言ってリビングから立ち去って行く2人を見送る事も出来ないまま………俺達はその場から動けずにいるのだった………
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