おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第348話

「ふぅ……この景色を見てると、帰って来たって実感するなぁ……」

 王都から出る馬車に乗り込んでから数時間後、夕暮れ色に染まっているトリアルの広場に降り立った俺はバッキバキになった体をほぐす為に軽くストレッチをしながら目の前に広がる光景を見ながら感慨深い気持ちに浸っていた。

「そうですね……でも、そうやって懐かしんで居られるのも今の内だと思いますよ。明日から皆さんにお土産を渡しに行ったりと色々と忙しくなりますから。」

「ふふっ、それもそうだね。特にカレンやフラウにはトリアルに戻るのが遅くなって心配を掛けているかもしれないから、早めに報告しておかないとだろうね。」

「あー……確かにな……って言うか半狂乱に陥ってる可能性もあったりして……」

「はっはっは!鐘の音に操られた魔人種でもあるまいし、そんな事になっている訳があるま………いや、あの2人なら充分に考えられる可能性じゃな………」

「……ロイド、明日は必ずカレンさんとフラウさんに会いに行ってくれ。下手したら暴走した2人に色々な意味で追い詰められるかもしれないからな……この俺が。」

「あぁ、了解したよ。そのついでにアリシアとシアンにも連絡をしておこう。」

「おう、よろしく頼んだぞ……さて、そんじゃあさっさと家に……ってそうだ、まだ帰る訳にはいかないんだった……」

「ん?いきなりどうしたんじゃ?」 

「……家の中、食べる物が無い。」

「……そう言えば、今は調味料ぐらいしか残ってませんでしたね。」

「そうなんだよなぁ……」

「何じゃ、それならばそこらの店で晩飯を食べて行けば良いだけじゃろうが。勿論、わしも付き合わせてもらうがな!」

「あのなぁ、俺だってそうしたいけど明日の朝飯の事を考えると市場が閉まっちまう前に色々と食材を買ってかないといけないんだよ。だから外食するのは無しだ。」

「むぅ、そんな事は明日の朝になってから考えれば良いではないか。」

「はっはっはっ、昔の俺だったらそれもアリだったが朝飯を食べる事が日常になっちまった今となってはそうもいかねぇんだよ。冒険者は体が資本だからな。」

「九条さんの言う通り、朝ごはんを食べないとモンスターと戦えない。」

「……ソフィ、今の内に言っておくが明日はクエストはやらないからな?のんびりとしながら体を休める日にする……おい、そっぽを向いてないでこっちを見なさい!」

「まぁまぁ、それはまた後で話し合えば良いじゃないですか!それよりも今は急いで市場に向かわないとですよ!早くしないと店じまいが始まってしまいます!」

「ぐぅ、それもそうだな………あっ、レミはどうすんだ?もしアレなら買い物終わりにでもロイドの実家まで送って行くけど。」

「いや、今晩はお主達の家に泊まるから大丈夫じゃ!」

「えっ!?それ、マジで言ってんのか?」

「勿論じゃよ!こんな時間に送られたとて、辿り着く頃には夜になっておるからな。ロイドの実家に帰るのは明日でも構わんじゃろ!」

「ふふっ、確かにその方が良いかもしれないね。私も父さんと母さんに戻って来たと報告が出来るし、丁度良いんじゃないかな。」

「ロイドの言う通りじゃな!っと、そんな事よりも早く市場に行くぞ!折角じゃから無事に戻って来た事を祝して豪勢な夕食を楽しませてもらいたいからのう!」

「いやいや、何を勝手なっておい!人の話を聞けよ!コラ、無視すんな!」

 自由奔放な神様に振り回されながら市場に足を運んで色々と食材を買い込んだ後、俺達は何て事ない雑談をしながら家路を歩いていたんだが……しばらくして我が家が見えてきたその時、玄関の前に誰かが並び立っている事に気が付いた。

「あれ?こんな遅い時間にどなたでしょう……もしかしてリリアさんとライルさんがロイドさんを心配して訪ねて来たんでしょうか?」

「げっ!?……っていやいや、あの2人は俺達が同じ家に暮らしている事は知らないはずだろ?だってそれがバレてたら……俺、多分もうこの世にはいないし……」

「あ、あはは……確かにそれは否定しきれませんね……それじゃあ、あの人影は……あっ!ソフィさん!?」

「どうしたんじゃ?いきなり走り出しおって……」

「……もしかして!?」

「おや?その反応、何か心当たりでもあるのかい。」

「まぁ、ちょっとだけな……それよりも、俺達もソフィの後を追いかけるぞ!」

「は、はい!」

 俺達が慌てて走り出したその直後、一足先に2つの人影と対面をしたソフィは勢いそのままに飛び上がって思いっきり抱き着いて行った!

「ははっ、久しぶりソフィ。しばらく見ない間に大きくなったね。」

「うふふ、それに前よりも大人びて見えるわ。とっても綺麗になったのね。」

「……ありがとう、ぱぱ、まま。」

「え、え、ええええぇぇ?!?!?!!ソ、ソフィさん……今、ぱ、ぱぱとままって言いましたよね……?」

「……そうだな……」

 ソフィと熱い抱擁を交わす銀髪の男女を見ながらそう呟いた瞬間、2人はこっちを見ながらニコっと微笑みかけてきた。

「あぁ、これはこれは……皆さん、ソフィが日頃からお世話になっています。」

「そ、そんな事は……って言うかその、やっぱりお2人は……?」

 顔を引きつらせながらそう尋ねると……2人はソフィを自分達の真ん中に立たせて軽くお辞儀をしてきて………

「ご挨拶が遅くなってしまってすみません。私はソフィの父『ガドル・オーリア』と言います。そして隣の居るのが……」

「ソフィの母の『サラ・オーリア』です。初めまして。」

 そう言って自己紹介をしてきた2人を前にして……俺達はしばらく呆然としたままその場に立ち尽くしてしまうのだった……………

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