おっさんの異世界生活は無理がある。
第344話
「おじ……!おきてく……い!お……さん!」
「ぅ………ぁ……?」
「あっ、おじさん!やっと目を覚ましてくれましたんですね!」
「……マ……ホ……?それ…に………いや……これは……どういう………」
「それを聞きたいのは私達の方ですよ!何がどうなってこんな事になっているのか、きちんと説明して下さい!」
「あーもう……頭に響くからあんまりデカい声で叫ばないでくれ……ってか、状況がいまいち飲み込めないんだ…が……………えっ?」
「うふふ、ようやく目を覚ましてくれたのね九条さん。それじゃあ早速で申し訳ないけれど、すぐにこの縄をほどいて私をこの中から出してくれるかしら。」
「………はっ?」
ぼんやりとした意識のまま何が起きているのか把握しようとして周囲を見渡そうとしたその時、俺は分厚い布と荒い縄で簀巻き状態になりながら床の上に転がっているドクターを発見し……た……?
「おじさん!どうしてドクターがこんな格好をしているのか、きちんと教えて下さいよね!もし無理やりこんな風にしたんだとしたら……!」
「いや……いやいや!ち、違うからな!これは俺のせいじゃ無いから!って言うか、俺だってどうしてこんな事になっているのか分からないんだが!?」
「2人共、それより何よりまずはドクターを自由にしてあげる方が先だと思うよ。」
「あっ!そ、それもそうだな!よしっ、ドクター!すぐにその縄を……………」
「あら、どうかしたのかしら九条さん。早く縄をほどいてほしいのだけれど。」
「……ドクター、ちょっとお聞きしたい事があるんですがよろしいでしょうか?」
ニッコリと微笑みながらドクターの目の前にゆっくりしゃがみ込んだ俺は、静かな声でそう問いかけるのだった……!
「……もしかして、昨夜の事を思い出しちゃったのかしら?」
「えぇ、貴女に薬を盛られて眠らされてしまった事もハッキリとねぇ……」
「……え?薬を盛られたって……そ、それどういう事ですか!?」
「さぁな……それは俺じゃなくて、ドクターに聞くのが早いと思うぞ。」
俺達にジッと見つめられたドクターはヤレヤレと言った表情を浮かべると、器用にもぞもぞと動きながら立ち上がってぴょんぴょん飛び跳ねながら移動してすぐ近くにあった椅子に腰を下ろすのだった。
「ふぅ、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったわねぇ。」
「そりゃこっちのセリフだっての……」
「ドクター、事と次第によってはローザさんに報告しなくてはならないが……まずは九条さんに薬を盛ったのは本当の事なのか教えてもらっても良いかな。」
「えっと、まさかとは思いますけど……してません……よね?」
「……えへっ。」
「……どうやら盛ったみたいですね。」
「ふむ、お主が九条の事を気に入っておったのは知っておったがのう……一体どんな目的があってそんな事をしたんじゃ?もしや襲おうとでも考えておったのか?」
「いいえ、私の目的はただ1つ……それはね………」
「……それは?」
「九条さんに……………添い寝、してほしかったからよ。」
「………そい……ね?」
「えぇ……昨夜はその……誰かに傍に居て欲しくて………でも、強引だったわよね。自分でも悪い事をしているって自覚していたのよ……だけど、その……どうしても、我慢が出来なくって……つい、強引な手段に………」
「……ドクター……」
「ご、ごめんなさい。こんな事を言われても迷惑よね……それに九条さんにも迷惑を掛けてしまって……本当に……本当にごめんなさい。」
「あぁ、いや………」
気丈に振舞ってはいたけど、やっぱりジョッシュが居なくなった心の傷は相当深いって事だよな……だとしたら、その原因を作っちまった俺がどうこう言うのも……
「……ドクター、1つ聞きたい事がある。」
「……何かしら?」
「どうして簀巻きになって床の上で転がってたの。」
「……そう言えば、犯人が誰かとはまだ聞いていなかったね。」
「ん?九条が趣味でやったんではないのか?」
「そんな訳あるか!……ってか、マジで誰にやられたんですか?俺が眠らされた後、誰がここに来たんですか?」
「………」
「……ドクター?」
「えっと……その………」
俺達の問いかけを聞いたドクターは何故か激しく目を泳がせると……どういう訳かそっぽを向いて黙り込んでしまい………あれ、これはまさかとは思うが………
「……ドクター、俺達に何か隠してますね?」
「あ、あら?ど、どうしてそう思うのかしら?」
「ふむ、その反応……どうやら間違いないみたいじゃな。」
「だとすれば……隠しているのは……」
「もしかしてですけど……添い寝してほしかったって目的は……嘘?」
「い、いえ!そんな事は無いわよ!ただその、ね?」
「ただその……なに?」
「え、えっと……あの……九条さんのね、寝顔を見ていたら……ちょっとね?」
「ちょっ、なっ、何をしたんですか!?ま、まさかとは思いますけど俺が眠っている間に……!?」
「い、いえいえ!そんな事はしてないわよ!信用してちょうだい!」
「じゃ、じゃあおじさんの寝顔を見ていたら何なのかハッキリ言ってください!」
「それはその……綺麗な顔立ちだなぁって思ってぇ……ちょっとぐらいなら良いかなって唇に……」
「え、えぇ!?お、俺の初めてが……寝ている隙に……?!」
「だからしてないってば!その前に彼女が部屋に現れて、目にも止まらぬ早業で私をグルグル巻きにしていったんだから!」
「か、彼女!?彼女って誰ですか!」
「ほら、あの子よ!仮面を付けたメイド服の!」
「へっ!?ア、アイツ……昨日、来たんですか?!ここに!?」
「えぇ、何処からやって来たのは分からないけれどね……」
「ふむ、そういう事だったのか………」
「ん?な、なんだロイド、そう言う事ってのは……」
「いや、実は今朝方に小さなカードが扉の下に挟まっているのを見つけたんだよ。」
「小さなカード?」
「うん、これなんだけど……」
ズボンのポケットから取り出した白くて小さなカードをロイドから手渡されたのでそれを見てみると、そこには見慣れた文字で……
【九条さんのお仲間達へ
九条さんが診療所で貴方達のお迎えを待っているわよ。
大事に至る前に急いで行く事をお勧めするわ。
仮面のメイドより】
「こ、これは!」
「それを見て私達はここまで来たんです。そうしたら……」
「そこのベッドで眠りこけているお主と、簀巻きにされたドクターを発見したという訳じゃな。」
「そ、そうだったのか………」
まさか俺の知らない所でそんな事があったなんて……だが、今はこれだけは言っておこう……仮面のメイド!お前のおかげで、初めてを奪われずにすみました!本当にありがとうございます!!
「……これで私の隠していた事は全て話したわ。それじゃあ申し訳ないんだけれど、この縄をほどいてくれるかしら。」
「……よしっ、今日はどうやって過ごすか。」
「そうですねぇ……帰りの馬車が出るのは3日後ですから、もうちょっとシッカリと観光とかしてみたいですね!」
「あ、あら?もしもーし、聞こえないのかしら?この縄、ほどいてほしい」
「それならウィルさん達のお店にまた寄ってみよう。怪我の具合も確かめておきたいからね。」
「うむ、それもそうじゃな!しかしその前に、朝飯を食べに行きたいのう!」
「ったく、お前は本当に食い意地がはってんなぁ……」
「あの、ちょっと?無視されるのは」
「ソフィ、お前はどうしたい……って、やっぱクエストか?」
「うん、やりたい。」
「しょうがねぇな……じゃあ、行くとするか!」
「ま、待ってちょうだい!きちんと謝るんと謝るからこの縄をほどいて!さ、さっきからもう……このままだと限界なの!ねぇ、お願い!」
……その後、誠心誠意の謝罪を何度もされた俺達はドクターに巻き付けられていた縄を外すとそそくさと立ち去って行く彼女に別れを告げて診療所を出て行くと朝飯を食べる為に大通りの方に向かって行くのだった。
「ぅ………ぁ……?」
「あっ、おじさん!やっと目を覚ましてくれましたんですね!」
「……マ……ホ……?それ…に………いや……これは……どういう………」
「それを聞きたいのは私達の方ですよ!何がどうなってこんな事になっているのか、きちんと説明して下さい!」
「あーもう……頭に響くからあんまりデカい声で叫ばないでくれ……ってか、状況がいまいち飲み込めないんだ…が……………えっ?」
「うふふ、ようやく目を覚ましてくれたのね九条さん。それじゃあ早速で申し訳ないけれど、すぐにこの縄をほどいて私をこの中から出してくれるかしら。」
「………はっ?」
ぼんやりとした意識のまま何が起きているのか把握しようとして周囲を見渡そうとしたその時、俺は分厚い布と荒い縄で簀巻き状態になりながら床の上に転がっているドクターを発見し……た……?
「おじさん!どうしてドクターがこんな格好をしているのか、きちんと教えて下さいよね!もし無理やりこんな風にしたんだとしたら……!」
「いや……いやいや!ち、違うからな!これは俺のせいじゃ無いから!って言うか、俺だってどうしてこんな事になっているのか分からないんだが!?」
「2人共、それより何よりまずはドクターを自由にしてあげる方が先だと思うよ。」
「あっ!そ、それもそうだな!よしっ、ドクター!すぐにその縄を……………」
「あら、どうかしたのかしら九条さん。早く縄をほどいてほしいのだけれど。」
「……ドクター、ちょっとお聞きしたい事があるんですがよろしいでしょうか?」
ニッコリと微笑みながらドクターの目の前にゆっくりしゃがみ込んだ俺は、静かな声でそう問いかけるのだった……!
「……もしかして、昨夜の事を思い出しちゃったのかしら?」
「えぇ、貴女に薬を盛られて眠らされてしまった事もハッキリとねぇ……」
「……え?薬を盛られたって……そ、それどういう事ですか!?」
「さぁな……それは俺じゃなくて、ドクターに聞くのが早いと思うぞ。」
俺達にジッと見つめられたドクターはヤレヤレと言った表情を浮かべると、器用にもぞもぞと動きながら立ち上がってぴょんぴょん飛び跳ねながら移動してすぐ近くにあった椅子に腰を下ろすのだった。
「ふぅ、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったわねぇ。」
「そりゃこっちのセリフだっての……」
「ドクター、事と次第によってはローザさんに報告しなくてはならないが……まずは九条さんに薬を盛ったのは本当の事なのか教えてもらっても良いかな。」
「えっと、まさかとは思いますけど……してません……よね?」
「……えへっ。」
「……どうやら盛ったみたいですね。」
「ふむ、お主が九条の事を気に入っておったのは知っておったがのう……一体どんな目的があってそんな事をしたんじゃ?もしや襲おうとでも考えておったのか?」
「いいえ、私の目的はただ1つ……それはね………」
「……それは?」
「九条さんに……………添い寝、してほしかったからよ。」
「………そい……ね?」
「えぇ……昨夜はその……誰かに傍に居て欲しくて………でも、強引だったわよね。自分でも悪い事をしているって自覚していたのよ……だけど、その……どうしても、我慢が出来なくって……つい、強引な手段に………」
「……ドクター……」
「ご、ごめんなさい。こんな事を言われても迷惑よね……それに九条さんにも迷惑を掛けてしまって……本当に……本当にごめんなさい。」
「あぁ、いや………」
気丈に振舞ってはいたけど、やっぱりジョッシュが居なくなった心の傷は相当深いって事だよな……だとしたら、その原因を作っちまった俺がどうこう言うのも……
「……ドクター、1つ聞きたい事がある。」
「……何かしら?」
「どうして簀巻きになって床の上で転がってたの。」
「……そう言えば、犯人が誰かとはまだ聞いていなかったね。」
「ん?九条が趣味でやったんではないのか?」
「そんな訳あるか!……ってか、マジで誰にやられたんですか?俺が眠らされた後、誰がここに来たんですか?」
「………」
「……ドクター?」
「えっと……その………」
俺達の問いかけを聞いたドクターは何故か激しく目を泳がせると……どういう訳かそっぽを向いて黙り込んでしまい………あれ、これはまさかとは思うが………
「……ドクター、俺達に何か隠してますね?」
「あ、あら?ど、どうしてそう思うのかしら?」
「ふむ、その反応……どうやら間違いないみたいじゃな。」
「だとすれば……隠しているのは……」
「もしかしてですけど……添い寝してほしかったって目的は……嘘?」
「い、いえ!そんな事は無いわよ!ただその、ね?」
「ただその……なに?」
「え、えっと……あの……九条さんのね、寝顔を見ていたら……ちょっとね?」
「ちょっ、なっ、何をしたんですか!?ま、まさかとは思いますけど俺が眠っている間に……!?」
「い、いえいえ!そんな事はしてないわよ!信用してちょうだい!」
「じゃ、じゃあおじさんの寝顔を見ていたら何なのかハッキリ言ってください!」
「それはその……綺麗な顔立ちだなぁって思ってぇ……ちょっとぐらいなら良いかなって唇に……」
「え、えぇ!?お、俺の初めてが……寝ている隙に……?!」
「だからしてないってば!その前に彼女が部屋に現れて、目にも止まらぬ早業で私をグルグル巻きにしていったんだから!」
「か、彼女!?彼女って誰ですか!」
「ほら、あの子よ!仮面を付けたメイド服の!」
「へっ!?ア、アイツ……昨日、来たんですか?!ここに!?」
「えぇ、何処からやって来たのは分からないけれどね……」
「ふむ、そういう事だったのか………」
「ん?な、なんだロイド、そう言う事ってのは……」
「いや、実は今朝方に小さなカードが扉の下に挟まっているのを見つけたんだよ。」
「小さなカード?」
「うん、これなんだけど……」
ズボンのポケットから取り出した白くて小さなカードをロイドから手渡されたのでそれを見てみると、そこには見慣れた文字で……
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まさか俺の知らない所でそんな事があったなんて……だが、今はこれだけは言っておこう……仮面のメイド!お前のおかげで、初めてを奪われずにすみました!本当にありがとうございます!!
「……これで私の隠していた事は全て話したわ。それじゃあ申し訳ないんだけれど、この縄をほどいてくれるかしら。」
「……よしっ、今日はどうやって過ごすか。」
「そうですねぇ……帰りの馬車が出るのは3日後ですから、もうちょっとシッカリと観光とかしてみたいですね!」
「あ、あら?もしもーし、聞こえないのかしら?この縄、ほどいてほしい」
「それならウィルさん達のお店にまた寄ってみよう。怪我の具合も確かめておきたいからね。」
「うむ、それもそうじゃな!しかしその前に、朝飯を食べに行きたいのう!」
「ったく、お前は本当に食い意地がはってんなぁ……」
「あの、ちょっと?無視されるのは」
「ソフィ、お前はどうしたい……って、やっぱクエストか?」
「うん、やりたい。」
「しょうがねぇな……じゃあ、行くとするか!」
「ま、待ってちょうだい!きちんと謝るんと謝るからこの縄をほどいて!さ、さっきからもう……このままだと限界なの!ねぇ、お願い!」
……その後、誠心誠意の謝罪を何度もされた俺達はドクターに巻き付けられていた縄を外すとそそくさと立ち去って行く彼女に別れを告げて診療所を出て行くと朝飯を食べる為に大通りの方に向かって行くのだった。
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