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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第329話

たった一晩で足腰の痛みが無くなったおかげで自分がまだまだ若いんだという事を実感した日の午後5時頃、俺達はフラウさんのイベントが行われる会場を少し離れた場所に立って感嘆の声を漏らしながら眺めていた。

「おぉ……こりゃまた凄い人の数だな………」

「えぇ、まさしく大盛況って感じですね!……そのおかげで、列に並ぶのに出遅れた私達が会場に入れるのは何時になるのか分かりませんけど……」

「そうだなぁ……いやぁ、久しぶりのイベントだったから時間に余裕を持って行動をしなきゃいけないってのをすっかり忘れてたなぁ……しくじったぜ……」

「まぁまぁ、そんなに落ち込む必要もないんじゃないかな。見方を変えさえすれば、この状況はとっても喜ばしい事なんだからさ。」

「うむ、ロイドの言う通りじゃよ。折角のイベントだと言うのに、人が居なかったらフラウがかわいそうではないか。」

「……それもそうだな。よしっ、気分を入れ替えて会場に向かうとしますかね、運が良ければウィルさん達とも合流出来るかもしれねぇしな。」

「うん、早く行こう。」

魔人種の方達が大多数という長蛇の列に圧倒されながら会場まで向かった俺達は、最後尾と書かれた看板を掲げている警備隊の方に歩いて行った。

それから数十分後、辺りがすっかり暗くなった頃になってようやく会場の入口まで辿り着いた俺達はフラウさんに貰ったチケットを警備隊の方に渡してみたんだが……

「はい、確認させて頂きました。それでは皆様、こちらの方へどうぞ。」

「へっ?いや……えっ?」

突然の事に戸惑いを隠せないまま互いに目を見合わせた俺達は状況が呑み込めないまま警備隊の方について行き、絶対に関係者しか入っちゃダメなんだろうなって場所まで案内される事になったんだけど……これはマジでどういう状況なんだ?

首を傾げながらしばらくの間イベントのスタッフらしき人達が行き交ってる廊下を歩いていると、警備隊の方が重々しい扉の前で立ち止まってコンコンとやり出した。

「フラウさん、ご友人の方がお見えになりました。お通ししてもよろしいですか?」

「あっ、はい!どうぞ、入って貰って下さい。」

「分かりました。それでは皆様、どうぞ中にお入りください。」

「は、はぁ………」

展開の速さに頭の処理が追い付かないまま言われた通りに取っ手を握り扉を開いた俺は、恐る恐ると言った感じで皆と一緒に部屋の中に足を踏み入れて行くと……

「皆さん、こんばんは。今日は来て頂いて本当にありがとうございます。」

「……………綺麗だ……………」

「へっ?!く、九条さん?い、いきなりそんな、あの……えと……はぅ……」

「えっ!?あっ、いや!ちがっ、いや、違わない?!あ、えっ!?」

「お、落ち着いて下さいおじさん!ほら、深呼吸深呼吸!」

「お、おう!すぅ……はぁ……すぅ………ダメだ!良い匂いがして落ち着かねぇ!」

「はっはっは、思っている事がそのまま口から溢れ出している様じゃ。まぁ、お主の気持ちは分からんでもないがのう!」

「ふふっ、確かにそうだね。フラウさん、とっても美しいよ。」

「ドレスが良く似合っている。」

「あ、ありがとうございます……」

消えそうな声でお礼を言いながら顔を赤らめてうつ向いてしまったフラウさんは、手をモジモジさせながらこっちをチラチラと見てきた!?

って言うかマジでヤバい!イベントの為の衣装なのか黒を基調としてシンプルだが美しいドレスを身に纏ったフラウさんがマジで美しすぎるんですけど!?それに香水なのかどうかは知らないがメチャメチャ良い香りが部屋中に漂っていて心臓が……!

「それにしてもフラウさん、本番の直前だと言うのにお邪魔して大丈夫なのかい?」

「は、はい。皆さんが会場に着いたらこちらにお通しして下さいとお願いをしたのは私の方ですから。」

「そうだったんですか?でも、一体どうしてなんです?」

「えっと、少しだけお話が出来たら良いなと思って……ご迷惑でしたか?」

「いやいや、そんな事があるはずないじゃろう。むしろ礼を言いたいぐらいじゃよ。お主の綺麗なドレス姿を拝む事が出来たんじゃからな。そうは思わんか、九条。」

「うぇっ!?あ、まぁ、そうね……うん……はい………」

「おやおや、どうやらお主にはフラウのドレス姿は刺激が強すぎたようじゃな!」

「だ、黙らっしゃい!そうやって余計な事を言うんじゃありません!」

こっちは色々と限界が近いんだからこれ以上は勘弁してくれよ!ぼっちを拗らせたおっさんは好みドンピシャストライクの美しい女性を目の当たりにして死にかけてるヤバい状況なんだからな!?これ以上追い詰められたら本当に死んじまうぞ?!

「フラウさん、もうそろそろ本番になりますので準備をお願いします!」

「あ、はい!分かりました!……すみません、わざわざ来て頂いたのに何にもお構いする事が出来なくて……」

「いえいえ!それよりもフラウさん、頑張って下さいね!楽しみにしてましから!」

「私も客席からしっかりと応援させて貰うよ。だから頑張ってね。」

「がんば。」

「フラウよ、わしが付いておるから安心してやってこい!ほれ、九条も声援せい。」

「お、おう……フラウさん、頑張ってこいよ。」

「……はい!皆さん、ありがとうございます!それじゃあ、行ってきますね!」

フラウさんは満面の笑みを浮かべながら大声でそう言うと、華麗な足取りで部屋を出て行った。

その後に続いて俺達も部屋を後にすると、外で待ってくれていた警備隊の方に案内されてステージ近くの客席に腰を下ろして場内に居る他の人達と本番が始まる瞬間を心待ちにするのだった。

……それからしばらくして、客席側の明かりが少しずつ暗くなり出したと思ったら大音量のブザーが鳴り響いてきて……待ち望んでいたステージの幕が開くのだった!

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