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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第326話

「フラウさん、おはようございます!」

「おはようございます、マホさん。それに皆さんもおはようございます。」

「おはようさん……つーか、やっぱり集合時間になる前に来てたみたいだな。」

「えぇ、私が言い出した事なのに皆さんをお待たせする訳にはいきませんから。」

「ふふっ、、そういう事なら早めに来て正解だったみたいだね。フラウさんを無駄に待たせずに済んだみたいだし。」

「はい、ありがとうございます。」

ニコッと微笑みながらお礼を言ってきたフラウさんに思わずドキッとしていると、マホとレミと手を繋いだままのクリスタが興奮した様子で俺達の間にやって来た。

「ねぇねぇ、フラウおねちゃん!きょうはどこにあそびにいくの?」

「うーん、そうですねぇ……私はあまりファントリアスについて詳しいという訳ではないので、まずは大通りにあるお店を見て回ろうかと思っています。」

「わかった!そういうことならね、わたしがおみせをおしえてあげるよ!」

「あら、良いんですか?」

「うん!おねえちゃんたちやおじちゃんにもおしえてあげるね!そうしてあげなさいってままとぱぱがいってたから!」

「えへへ!クラリスちゃん、ありがとうございます!」

「うむうむ、それでは感謝の気持ちとしてお主には神の祝福を与えてやるかのう!」

「わーい!かみのしゅくふくー!」

「はっはっは……色々言いたい事はあるがクラリスが喜んでいるなら……はぁ……」

「……大丈夫、九条さんはまだ若い。」

「……そりゃどうもありがとうよ。」

クラリスのおっさん呼びに微妙に傷ついているとソフィが背中をぽんぽんと叩いて俺を慰めてくれたんだが……そうやって慰められるのもちょっと辛いんだよなぁ……

そんな事を思いながら元気いっぱいのクラリスの後に続いて大通りの方に向かって行った俺達は、最初に目に付いた店から順に様々な店を巡り歩いていたのだが……

「あの、フラウさん!もしよろしければ、サインを頂けないでしょうか!」
「すみません!握手をお願いしても良いですか!?」
「一度で良いので簡単な魔術を見せてはもらえませんか?!」

ってな感じで種族の差を問わず道行く人達に絡まれる事になってしまい、身動きが取れない状態が10分近く続いていた。

折角の休日だと言うのにその全ての人に笑顔で対応していたフラウさんだったが、流石にこれで時間を潰すのはどうかと思った俺は彼女に断りを入れると集まり出した人達に事情を説明して解散する様にお願いをするのだった。

どこの馬の骨ともしらない奴がしゃしゃり出てくんな!とか言われて怒られるかと思ったが割とすんなり俺の話を聞き入れてくれた街の人達は申し訳なさそうな表情を浮かべてフラウさんに軽く頭を下げると、そそくさと立ち去って行ってくれた……

「ふぅ……良い人達ばっかりで助かったぁ……って言うかフラウさん、勝手な事してすみませんでした。」

「いえいえ、私の事を思ってしてくれた事なんですから謝らないで下さい九条さん。それにこちらこそ、皆さんのお時間を頂いていると言うのにすみませんでした。」

「あぁいや、ファンの人達を大事にしているって証拠なんだから謝らなくても大丈夫だって!なぁ?」

「そうですよ!それよりもほら、早くお店を見て回りましょうよ!クラリスちゃん、何処か案内してみたい所はありますか?」

「うん!あのね、かわいいのがいっぱいあるおみせがあるの!」

「へぇーそれは実に興味深いね。クラリス、それは何処にあるのかな。」

「うーんとね、あっちにあるからつれていってあげるね!」

「これこれ、先走ってはいかんぞクラリス。落ち着いて案内するんじゃ。」

「はーい!」

「はっはっは、クラリスはやはり良い子じゃのう。お主もそうは思わんか?」

「……その意見には同意するが、率先して突っ走ろうとするお前が言うのはちょっと納得がいかないんだが。」

「ん?何を言っておるのかさっぱり分からんのう。」

「わからんのう!」

「……クラリス、レミの口調を真似するのは止めましょうね。」

満面の笑みを浮かべているレミにそう窘めながら額に手をやって首を左右に振っていると、大通りの先の方からローザさん率いる警備隊の方達がどういう訳か物々しい雰囲気を漂わせながらこっちに歩いて来ている姿が視界に入って来た。

それとほぼ同時ぐらいに俺達に気付いたらしいローザさんは一瞬だけ目を見開くとすぐに表情を戻し、振り返って警備隊の方達に何か指示を出すと彼らを残して何故かこっちに向かって来て……皆もそれに気付いたらしく俺と同じ方向に視線を送った。

「あっ、ローザおねえちゃん!おはようございます!」

「あぁ、おはようクラリス。それにお前達もな。」

「ど、どうも……おはようございます……」

「おはよう、ローザさん。まさかこんな朝早くから貴女に会えるとはね。もしかして巡回の途中だったのかな?」

「そうだ……と言いたい所だが、実はそうではない。」

「えっ、違うんですか?それでは一体何を……?」

「……その質問に答える前に、1つお前達に尋ねたい事がある。」

「訪ねたい事……?まぁ、はい……何ですか?」

「お前達が王都からファントリアスに向かう間での道中で、怪しい馬車や人影を見た記憶は無いか。」

「……はい?」

「だから王都からファントリアスに向かう道中で怪しい馬車や人影を見た覚えは無いのかと聞いているんだ。どうなんだ?」

真剣な眼差しで見つめられながらそんな質問をされた俺は、戸惑いながら皆と顔を見合わせると意図は読み取れないが問いかけに答える事にした。

「えっと、それらしい物を見た覚えは……無いよな?」

「うん、私達が乗っていた馬車以外を見た記憶は無いね。」

「ふむ……それは本当に間違い無いんだな。」

「は、はい!でもあの、どうしてそんな質問を?何かあったんですか?」

「いや、まだ何かが起きたという事ではない。ただ…………」

「ローザさん、そこまで言ったのなら最後まで話をするべきじゃないかな。それに、何かあれば私達も手を貸す事が出来るはずだ。」

「私としてはそんな事態は避けたい所だが……確かにここまで話したのなら最後まで言うべきだな。」

「うん、そうした方が良いと思うよ。それで一体何があったんだい?」

「……昨日、街の外でクエストをこなしていた冒険者達から見慣れない派手な馬車がこの街に向かって走っているのを見かけたという報告があったんだ。」

「えっ、どうしてそんな報告を………まさか………」

「……魔人種を敵対視している人達かもしれないから?」

「その通りだ。特に貴族連中はその傾向が強いからな。だから念の為、馬車の所在を探しているんだが……」

「もしかして、見つかっていないのかい?」

「あぁ、朝早くから隊の者達と連携をして街中を探してはいるんだが……それらしい馬車は今だに発見されていない。」

「あの、それならその馬車は途中で引き返したりしたんじゃ……」

「それが報告をくれた冒険者の方達の話によると、クエストを終わらせて街まで戻る途中では見かけなかったと言うんだ。もしも引き返したのならば、その時に見かけるはずだと言うのに。」

「なるほど……えっ、それじゃあ馬車は何処に消えたんだ……?」

「それが分からないから、こうして捜索をしているという事だ。」

「ふむ……もしかしたら、街の外に身を潜めておるのかもしれんな。」

「ほう、幼いのに中々に賢い子じゃないか。」

「はっはっは、そんなに褒めるでない!それよりもどうなんじゃ?街の外には、それらしい馬車はあったのかのう?」

「それはまだ分からない。これから部隊を編成して向かう所だったからな。」

「あぁ、そういう……それじゃあ、何時までも引き留める訳にはいきませんね。」

「すまない、そういう訳だからそろそろ失礼させてもらう。」

「はい。あっ、もしそれらしい馬車を見かけたらお知らせしますね。」

「頼んだ……お前達、本部に戻るぞ!」

「「「「「ハッ!」」」」」

「……そうだ、あまりクラリスを遅くまで連れて歩くんじゃないぞ。」

「わ、分かってますってば!きちんと夕暮れ前には家に帰します!」

「それなら良い。ではまたな。」

ローザさんは俺達に敬礼をしてから警備隊の皆さんの元に戻って行くと、そのまま大通りを歩いて正門の方に向かって行くのだった……

「何と言うか……妙な胸騒ぎがするのは俺だけなのかしら……」

「はっはっは、お主がそんなに気にする必要もなかろう!」

「そうですよ、おじさん!さぁクラリスちゃん、案内の続きをお願いしますね!」

「うん、わかった!それじゃあついてきてね!」

「うふふ、お願いしますね。」

……まぁ、毎度の様に問題が起きるって訳でも無いんだしとりあえず今はこの場を楽しむとしますかね!

そんな風に心に残った引っ掛かりを忘れる事にした俺は、クラリスの案内に従って大通りに並ぶ店を見て回る事にするのだった!

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