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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第314話

何がどうなっているのかマホに説明を求めようとしたその時に倒したモンスターを放置している事を思い出した俺は、ひとまずその場を後にして馬車の外に出て行くと心を落ち着ける為に納品作業と周囲の安全確認に取り掛かるのだった。

それからしばらくして他のモンスターが現れなかった事にホッと胸を撫で下ろした俺は御者さんにその事を報告すると、荷台に戻りさっきまで座っていた自分の座席に腰を下ろすとフードを取って素顔を晒して気まずそうにしている3人の方を見た。

「あの……こんな質問をするのは非常に失礼だとは思うんですけど……もしかして、皆さんは魔人種の……?」

「はい……私達は魔人種のドラゴン族です……」

「すみません……皆さんにご不快な思いをさせてしまいましたよね……」

「い、いえそんな!それを言うなら、私だっていきなり悲鳴を上げてしまって本当にすみませんでした!」

「そ、そんな!悪いのは素性を隠したまま同乗していた私達の方ですので!」

「そ、それは違いますよ!悪いのは私の方で!」

「これこれ、そこら辺にしておかぬと話が先に進まぬぞ。」

「うん、レミの言う通りだよ。それにこの話は、どちらかが悪役になる必要は無い話なんだからね。」

「そ、そうそう!……とは言っても、ちょっとした疑問が幾つかあるので良かったら答えて頂きたいんですけど……大丈夫ですか?」

「え、えぇ……勿論です。」

謝り合っていた2人の間に割って入ったレミとロイドのおかげで何とか馬車の中が落ち着いた後、俺は父親と思われる男性と目を合わせた。

「それじゃあ最初の質問を……する前に、軽く自己紹介をさせてもらいますね。俺は九条透と言います。そんで隣に座っているのが……」

「マホです。」

「ロイド・ウィスリムです。これからよろしく。」

「レミじゃ!」

「ソフィ・オーリア。」

「あっ、ご挨拶ありがとうございます。私は『ウィル・リザーク』。そして……」

「妻の『キャシー・リザーク』です。そして娘の……」

「『クラリス・リザーク』……です……」

「うむ、よろしくのう!そう言えばお主、さっきわし達が食べているおかしに興味を持っていなかったか?」

「っ!そ、それは……」

「はっはっは!恥ずかしがる事はない!どれ、欲しいと言うなら分けてやるぞ!」

「えっ!い、良いの?」

「勿論じゃとも!ウィルとキャシーと言ったか?クラリスにおかしを分けてやっても大丈夫じゃろうか?」

「は、はい!ですが……本当によろしいんですか?」

「あぁ、王都で大量に買い込んであるからな!幾つはこやつらの知人に手土産として渡すつもりだったらしいが、こんなにあっても仕方がないからのう!」

「……我先にと買いまくってたお前が言うんじゃねぇよ。」

「まぁまぁ、それで……クラリスちゃん……って、呼んでも良いですか?」

「う、うん。」

「それじゃあクラリスちゃん、あっちに置いてある袋の中におかしが入っているので取りに行きましょう!」

「わ、分かった!」

マホとレミに連れられて笑顔を浮かべたクラリス……ちゃん?どう呼んで良いのか分からないがその子が運転席側に歩いて行ったその後、ウィルさんとキャシーさんがこっちを見ながら静かに頭を下げてきた。

「ありがとうございます、娘の為に気を遣って頂いて……」

「いえ、俺は何も……それより、質問をさせてもらっても?」

「はい、何でも仰って下さい。」

「それでは最初の質問なんですけど……ここに来るまでの間、ずっとフードを被ったまんまでしたよね?それはどうして何ですか?」

「……私達がどうしてフードを被っていたのかと言うと、それは娘の為なんです。」

「娘さんの?……そう言えば、彼女はお2人とは違って容姿がドラゴン族そのままという感じがしますが、一体何故?」

「それはその……私達も、普段はクラリスと同じ容姿をしているんです。」

「えっ、そうなんですか?でも、今はその……」

「はい、今は人間の姿をしています。それがどうしてなのかと言うと……」

「ファントリアスに居る、ドクターと言う方のおかげなんです。」

「ドクターって……お医者さんですか?」

「えぇ、詳しくは話せませんがそのドクターが私達に特別な薬を下さったんですよ。それを飲んだおかげで、こうして人間の姿をしていられるんです。」

「へ、へぇ………」

特別な薬ねぇ……何ともきな臭い話だけど、こうして大っぴらに話してくれるって事は違法性がある訳じゃないんだよな……うん、そう信じよう!

「しかし、それならどうしてクラリスさんはドラゴンの姿に?」

「それが薬を飲んだ時に出る副作用を嫌がって、用意された半分の量しか飲まなくて効果が予定よりも早く切れてしまったんです。」

「本当だったら明日の夜に戻るはずだったんですけどね……」

キャシーさんが腕を組み頬杖を突いてため息を零していると、袋の中からおかしを持ってきた3人がこっちに戻って来て自分の席に座り込んだ。

「ったく、どんだけ食うつもりなんだよ……」

「細かい事を気にするでない!それよりもキャシー、話は聞いておったがそれならば効果が切れた時点で残りの半分をクラリスに飲ませれば良かったのではないか?」

「ううん、それはダメなの。薬をまた使う為には、効果が切れてから数日間は猶予を持たないといけないからね。」

「そうしないと体に悪影響がでる……ドクターはそう仰っていました。」

「ふむ、だからお主達はフードを被って素顔を晒さぬ様にしておったのか。」

「えぇ、娘だけに窮屈な思いはさせられませんから……それに……」

「魔人族を目の敵にしている人も、少なからず存在していますから。」

「うへぇ……そんな人達が居たってのは本で知りましたけど、今も居るんですか?」

「はい……ですので、皆さんが心の優しい人達で本当に良かったです。」

「えぇ、これで私も安心して運転を続けられるというものです。」

「うおっ!?きゅ、急に話に入って来られるとビックリするじゃないですか!って、それよりも御者さんは皆さんの事を知ってたんですか?」

「はい、私もこの街道をお客様の乗せて走る様になってから長いですからね。」

「ふふっ、それは何とも心強い限りだ。」

「いえいえ、それよりも馬車を出発させて頂いてもよろしいですか?」

「あっ、はい!すみません、何か気を遣わせてしまって……」

「そんな事はありませんよ……では、行きますよ。」

御者さんがそう言った直後にゆっくりと走り出した馬車に揺られ出した俺は静かにため息を零すと、他にも気になっていた事を幾つか質問してみるのだった。

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