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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第305話

勘違いから始まった騒動が無事に終わったんだと胸を撫で下ろしていたその翌日、ロイドとソフィが依頼してた武器の強化が終わりそうだから取りに来てくれと親方に言われていた俺達は朝早くから加工屋に足を運んでいた。

「あっ、いらっしゃい!ちょっと待っててね、すぐに持って来るから!」

「……アイツ、店に来た要件も聞かずに奥に引っ込んじまったな。」

「ふふっ、それだけ私達に強化した武器を見せるのが楽しみだという事だろうね。」

「なるほど……確かにそういう事なら納得だわ。」

「おっ待たせ―!はい!こっちのケースに入ってるのがロイドさんので、こっちのがソフィさんの武器だよ!」

「うおっ!?も、もう持ってきたのかよ!」

「えへへー!すぐにでも2人に完成した武器を見せたかったからね!ってそれよりも早く取り出して触ってみてよ!本当に凄いんだからさ!」

「うん、それではお言葉に甘えさせてもらうとしようかな。」

「………」

「お、おじさん……何だか横で見ている私達までドキドキしてきましたね……」

「そうだな……変な緊張感があるぜ………」

固唾を飲んでいる俺達と目をキラキラさせているシーナに見守られながら、2人はそれぞれのケースの中から強化された武器を静かに取り出した。

「これが……私達の…………」

「どうかな!これぞ会心の出来って言っても過言じゃない代物だと思うんだけど!」

「…………凄いね。」

「あぁ……預ける前とは別物だな………」

ロイドとソフィが驚きながら見つめている視線の先には、加工の素材として渡したコアクリスタルと同色の刀身が綺麗な輝きを放つそれぞれの武器があった。

「でしょでしょ!いやぁ、私の加工屋としての技術も随分と成長したっ!」

「おい、あんまり調子に乗るんじゃねぇ。それとお客さんの前なんだから少しは声の大きさってものを考えやがれ。」

俺達が2人の武器に見惚れている間にやって来ていた親方に後ろから頭をコツンと小突かれたシーナは、口をとがらせながらバッと振り返った。

「ぶーぶー!今日ぐらいは良いじゃんか!ほら、ロイドさんもソフィさんもとっても満足そうにしてるんだからさ!そうだよね?」

「……確かに、私からは素晴らしいの一言しか浮かび上がっては来ないよ。」

「……右に同じ。」

「ほらほら!とっても喜んでくれてるじゃんか!それもこれも、私の加工屋としての腕が一人前になった証拠だよね!」

「……ついこの間、期日までに終わらないかもしれないと泣きついて来やがったのは何処のどいつだった?」

「ちょ、ちょっと!それは言わないでって約束したじゃん!」

「はっ、コレに懲りたら自分の腕がまだまだ半人前だって自覚しやがれ。」

「ぐっ!い、いつか絶対に見返してやるんだからね!」

「ふんっ、やれるもんならやってみやがれってんだ。」

「……おじさん……微笑ましい光景ですね……」

「あぁ……不思議と心が穏やかになってくるなぁ……」

ほっこりとした気持ちになりながら仲睦まじい親子のやり取りを見つめていると、2人はハッとして俺達に視線を向けてくると恥ずかしそうに咳払いをしだした。

「ご、ごほん!それよりもシーナ!2人に強化した武器に関する事で説明をしなきゃいけない事があるんじゃないのか!」

「あっ!そ、そう言えばまだだったかな!えっと、2人にとっても大事な話があるんだけど少しだけ時間を貰っても大丈夫!?」

「ふふっ、そんなに慌てなくてもきちんと聞いてあげるから大丈夫だよ。」

「べ、別に慌てたりしてないからね!ってそうじゃなくて……実は私達が強化させてもらった2人の武器についてなんだけど、凄い事が出来る様になったんだ!」

「ふむ、それはどんな事なんだい?」

「えっとそれはねぇ……悪いんだけどロイドさん、その武器を借りても良いかな。」

「あぁ、勿論だとも。」

「ありがとう……それじゃあ、よーく見ててね……えいっ!」

「うおっ!?はっ、えぇ?!」

シーナが掛け声と共にロイドの武器を天井の方に向けて掲げた次の瞬間、持ち手の部分から炎が走って剣先まで一気に燃えていっただと!?

「おやおや、刀身がそんな風に燃えるだなんて………これは驚きだね。一体どういう仕組みになっているのか教えてくれるかい。」

「もっちろん!実は強化の素材に使ったコアクリスタルには、魔法を流す事が出来るって特殊な性質があったみたいなんだよね!」

「魔法を……それじゃあつまり、その刀身がいきなり炎でおおわれたのは……」

「うん、私が魔法を使ったから!ただ相性みたいな物があるらしくて、ロイドさんの武器には炎!ソフィさんの武器には雷が良いみたいだね!ソレ以外はあんまりな感じだからお勧めはしないかな!はい、それじゃあお返しするね!」

貸していた武器をシーナから返してもらったロイドは、さっき見せてもらったのと同じ様に刀身に炎をまとわせていた。

「ふふっ、それにしてもこんな素敵な効果が追加されているなんてね。」

「おい、危ないから店の中では止めなさい。ソフィも刀身をバチバチさせない。」

「……九条さん、早くクエストを受けに行こう……!」

「はいはい、分かったからグイグイ迫って来るんじゃないっての!ったく……つーか本当に魔法によって伝わりやすさが違う物なのか?」

「あぁ、少し試してみたが相性の悪い魔法は全体まで伝わらない感じがするね。」

「ふーん……って、いつの間に………」

「まぁまぁ、別に大丈夫だよ!ねっ、親父。」

「おう。それよりも2人に忠告をしておく事があるんだが、刀身に炎や雷をまとわせている間は魔力が垂れ流しの状態になっているから気を付けるんだぞ。」

「了解した。」

「分かった。」

「よしっ、そんじゃあまたのご利用をお待ちしているぜ。」

「えへへ!今度お店に来る時は、武器の使用感とか教えてね!」

「はいよ……さてと、そんじゃあ」

「斡旋所に行こう。」

「……ですよね。」

「ふふっ、私も何だか楽しみになってきたよ。」

「皆さん、張り切って行きましょう!」

……そんなマホの掛け声を聞きながらシーナと親父さんに見送られて店を後にした俺達は、その足で斡旋所に向かって行くのだった。

そして討伐クエストを受けて街の外に出て行った俺は、いつもより好戦的な2人の様子を見守りながらそっとため息を零すのだった。

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