おっさんの異世界生活は無理がある。
第302話
クアウォートの時とは違ってオリジナル感が満載な出店がそれなりに立ち並んでる大通りにやって来た俺達は、あいつ等の姿を探しながら祭りを見て回ろうとして……
「チィッ!どこに目を向けても、初々しいカップルみたいな奴らと女の子に囲まれて取り合われてるハーレム系主人公みたいな奴ばっかりじゃねぇかよ……!」
「はぁ……おじさん、本当にみっともないですから舌打ちをしながらすれ違って行く人達を睨みつけないで下さい。って言うか、人の事をどうこう言えるんですか?」
「あぁ?言えるに決まってんだろうが……クソォ……どいつもこいつもイチャイチャしながら見せつける様に歩きやがってぇ……滅びろ……リア充は滅びろぉ……!」
つーかマジでこの街は美少女とイケメンが多すぎる気がするんですけど?!しかもどいつもこいつも青春の真っただ中みたいなシーンを見せつけてきやがって!少しは暗黒期を過ごして来た可哀そうなおっさんに配慮するという心遣いはないんですか!
「おやおや、九条さんの周りの空気だけ何だか殺伐としてきたね。」
「……九条さんらしい?」
「んー……微妙に否定しきれないのが辛い所ですねぇ……」
「ちくしょうが……俺が若い時には……こんな胸が高鳴る様なイベントは1度も……うぅ……うおっ!?」
溢れんばかりの輝きに満ちている若い奴らを見ながら昔を思い出して絶望しそうになっていたら、いきなり背中にドンっと衝撃が走って誰かが覆いかぶさって来た?!
「えっへへ!こんばんは九条さん!それに皆も!どう、お祭りは楽しんでる?」
「シ、シーナ!?おまっ、どうして俺の背中に?!」
「ん?えーっとそれはねぇ……九条さんの背中がそこにあったから!」
「はぁ!?な、何だその理由?!マ、マホ!頼むからシーナを引き剥がしてくれ!」
「は、はい!シーナさん!早くおじさんから離れて下さい!」
「えぇーでもでも、九条さんもそんなに嫌がっている様には見えないけどなー!」
「ちょっ!首に巻き付けてる腕の力を更に強めるんじゃねぇよ!」
「ねぇねぇ九条さん!私も今日は浴衣を着てみたんだけど、どうかな!似合ってると思う?可愛いと思う?」
「だから人の話を聞けよ!って言うか背中に張り付かれたままでどう感想を伝えれば良いんだよ!?」
「あぁ、そう言えばそうだったね!それじゃあ………えいっ!」
「うひゃおっ!?」
「これならどうかな?私の浴衣姿がよく見えるでしょ!」
「あ…………お、おぅ…………」
「ふふっ、こんな場所で随分と見せつけてくれるじゃないか2人共。」
「いやいや、呑気に感想を言ってる場合じゃないですよロイドさん!このままじゃ、おじさんの精神が持ちませんって!」
く、首に巻き付けた腕を軸にグルっと回って目の前に……ニッコリと微笑んでいる浴衣姿のシーナが………あっ、そうか……俺は今日……死ぬのかもしれないなぁ……
「それでどう?今日の私、可愛いと思わない?」
「オモウ……トテモカワイイ………ニアッテル………」
「わぁい!ありがとうね九条さん!」
「ドウイタシマシテ………」
「あぁ!本当にマズいです!おじさんが死んでしまいます!」
あはは……笑顔で喜んでいるシーナの浴衣が……少しずつはだけて……鎖骨が見え隠れしてい……る…………
「うふふふふふふ…………九条さぁん……これはぁ……どういう事ですかぁ……?」
「ひぃ!?そ、その声は……まさか…………」
地獄の底から響いてくる様な恐ろしい声が聞こえてきたその瞬間、血の気が引いていくのを実感しながら俺はゆっくりと振り返ってみた……するとそこには………
「うふふふ………」
「むぅ……!」
「ふんっ、やはり貴様は悪しき魂を持つ者だった様だな!」
腕を組んだまま頬に手を当てながら目だけが笑っていないイリスと……怒っている様な表情でむくれているエルアと……初めて出会った時みたいな視線をぶつけて来るクリフが居て…………うん、やっぱり今日が俺の命日になるみたいだな!
「あぁ!エルアちゃんにイリスちゃん!久しぶりだね!しばらくぶりだけど、元気にしてた?そっちの男の子は初めましてだよね!私はシーナ・クラート!もしよければ君の名前を教えて貰っても良いかな?」
「う、うむ……わ、我……いや、俺の名前はクリフ・エフィールだ……です。」
「へぇ、クリフ君って言うんだ!これからよろしく!あっ、そう言えば皆はどうしてここに居るの?もしかしてお祭りを見に来たのかな?」
「はい……私達は九条さん達と一緒にお祭りを見て回る約束をしていたんですよ……それよりもシーナさん……どうして九条さんと抱き合っているのか………僕達が納得出来る説明をしてもらっても良いですかぁ………うふふふふふ…………」
「あぁ、それはね!九条さんに私の浴衣姿を見てもらおうといったぁい!!」
ゴツン!っと硬い物がぶつかり合う様な音がすぐ近くから聞こえてきたと思ったらシーナが物凄い勢いで引き剥がされて行った!?何が起きたのか全然分からないまま視線を前に向けてみると、そこにはメチャクチャ怒っている親父さんの姿が!
「こんのバカ野郎!こんな往来の場で何をしてやがるんだ!!」
「うわっ!ちょっともう、耳元で大きな声を出さないでよ!ビックリするじゃんか!それに何をしてるって、私はただ皆とお喋りしてただけだから!!」
「ほほう、九条さんに抱き合ったままお喋りとはなぁ!」
「ち、違いますから!抱き合っていたんじゃなくて抱き着かれてたんですよ!だからそんな人を殺しかねない視線をぶつけて来ないで下さい!」
前門の親方に後門のイリス……おかしい、俺は祭りを楽しみたくてここに来たのにさっきから命の危機しか味わってないんですけどもぉ!?
「……まぁ良い、それよりもシーナ!九条さん達の迷惑にならない内にとっとと退散するぞ!」
「あっ、それもそうだね!それじゃあ皆、またお店に遊びに来てね!ばいばーい!」
「ったく……あぁそうだ、ロイドさんとソフィさんに依頼されていた武器が明日には完成する見込みだから明後日に取りに来てくれ。」
「あぁ、必ず立ち寄らせてもらうよ。」
「……楽しみにしてる。」
「おう、それじゃあな!」
嵐の様にやって来て嵐の様に去って行った父娘の後姿が人込みで見えなくなるまで見送った俺は、ドッと押し寄せてきた疲れを吐き出す様にため息を零すのだった……
「チィッ!どこに目を向けても、初々しいカップルみたいな奴らと女の子に囲まれて取り合われてるハーレム系主人公みたいな奴ばっかりじゃねぇかよ……!」
「はぁ……おじさん、本当にみっともないですから舌打ちをしながらすれ違って行く人達を睨みつけないで下さい。って言うか、人の事をどうこう言えるんですか?」
「あぁ?言えるに決まってんだろうが……クソォ……どいつもこいつもイチャイチャしながら見せつける様に歩きやがってぇ……滅びろ……リア充は滅びろぉ……!」
つーかマジでこの街は美少女とイケメンが多すぎる気がするんですけど?!しかもどいつもこいつも青春の真っただ中みたいなシーンを見せつけてきやがって!少しは暗黒期を過ごして来た可哀そうなおっさんに配慮するという心遣いはないんですか!
「おやおや、九条さんの周りの空気だけ何だか殺伐としてきたね。」
「……九条さんらしい?」
「んー……微妙に否定しきれないのが辛い所ですねぇ……」
「ちくしょうが……俺が若い時には……こんな胸が高鳴る様なイベントは1度も……うぅ……うおっ!?」
溢れんばかりの輝きに満ちている若い奴らを見ながら昔を思い出して絶望しそうになっていたら、いきなり背中にドンっと衝撃が走って誰かが覆いかぶさって来た?!
「えっへへ!こんばんは九条さん!それに皆も!どう、お祭りは楽しんでる?」
「シ、シーナ!?おまっ、どうして俺の背中に?!」
「ん?えーっとそれはねぇ……九条さんの背中がそこにあったから!」
「はぁ!?な、何だその理由?!マ、マホ!頼むからシーナを引き剥がしてくれ!」
「は、はい!シーナさん!早くおじさんから離れて下さい!」
「えぇーでもでも、九条さんもそんなに嫌がっている様には見えないけどなー!」
「ちょっ!首に巻き付けてる腕の力を更に強めるんじゃねぇよ!」
「ねぇねぇ九条さん!私も今日は浴衣を着てみたんだけど、どうかな!似合ってると思う?可愛いと思う?」
「だから人の話を聞けよ!って言うか背中に張り付かれたままでどう感想を伝えれば良いんだよ!?」
「あぁ、そう言えばそうだったね!それじゃあ………えいっ!」
「うひゃおっ!?」
「これならどうかな?私の浴衣姿がよく見えるでしょ!」
「あ…………お、おぅ…………」
「ふふっ、こんな場所で随分と見せつけてくれるじゃないか2人共。」
「いやいや、呑気に感想を言ってる場合じゃないですよロイドさん!このままじゃ、おじさんの精神が持ちませんって!」
く、首に巻き付けた腕を軸にグルっと回って目の前に……ニッコリと微笑んでいる浴衣姿のシーナが………あっ、そうか……俺は今日……死ぬのかもしれないなぁ……
「それでどう?今日の私、可愛いと思わない?」
「オモウ……トテモカワイイ………ニアッテル………」
「わぁい!ありがとうね九条さん!」
「ドウイタシマシテ………」
「あぁ!本当にマズいです!おじさんが死んでしまいます!」
あはは……笑顔で喜んでいるシーナの浴衣が……少しずつはだけて……鎖骨が見え隠れしてい……る…………
「うふふふふふふ…………九条さぁん……これはぁ……どういう事ですかぁ……?」
「ひぃ!?そ、その声は……まさか…………」
地獄の底から響いてくる様な恐ろしい声が聞こえてきたその瞬間、血の気が引いていくのを実感しながら俺はゆっくりと振り返ってみた……するとそこには………
「うふふふ………」
「むぅ……!」
「ふんっ、やはり貴様は悪しき魂を持つ者だった様だな!」
腕を組んだまま頬に手を当てながら目だけが笑っていないイリスと……怒っている様な表情でむくれているエルアと……初めて出会った時みたいな視線をぶつけて来るクリフが居て…………うん、やっぱり今日が俺の命日になるみたいだな!
「あぁ!エルアちゃんにイリスちゃん!久しぶりだね!しばらくぶりだけど、元気にしてた?そっちの男の子は初めましてだよね!私はシーナ・クラート!もしよければ君の名前を教えて貰っても良いかな?」
「う、うむ……わ、我……いや、俺の名前はクリフ・エフィールだ……です。」
「へぇ、クリフ君って言うんだ!これからよろしく!あっ、そう言えば皆はどうしてここに居るの?もしかしてお祭りを見に来たのかな?」
「はい……私達は九条さん達と一緒にお祭りを見て回る約束をしていたんですよ……それよりもシーナさん……どうして九条さんと抱き合っているのか………僕達が納得出来る説明をしてもらっても良いですかぁ………うふふふふふ…………」
「あぁ、それはね!九条さんに私の浴衣姿を見てもらおうといったぁい!!」
ゴツン!っと硬い物がぶつかり合う様な音がすぐ近くから聞こえてきたと思ったらシーナが物凄い勢いで引き剥がされて行った!?何が起きたのか全然分からないまま視線を前に向けてみると、そこにはメチャクチャ怒っている親父さんの姿が!
「こんのバカ野郎!こんな往来の場で何をしてやがるんだ!!」
「うわっ!ちょっともう、耳元で大きな声を出さないでよ!ビックリするじゃんか!それに何をしてるって、私はただ皆とお喋りしてただけだから!!」
「ほほう、九条さんに抱き合ったままお喋りとはなぁ!」
「ち、違いますから!抱き合っていたんじゃなくて抱き着かれてたんですよ!だからそんな人を殺しかねない視線をぶつけて来ないで下さい!」
前門の親方に後門のイリス……おかしい、俺は祭りを楽しみたくてここに来たのにさっきから命の危機しか味わってないんですけどもぉ!?
「……まぁ良い、それよりもシーナ!九条さん達の迷惑にならない内にとっとと退散するぞ!」
「あっ、それもそうだね!それじゃあ皆、またお店に遊びに来てね!ばいばーい!」
「ったく……あぁそうだ、ロイドさんとソフィさんに依頼されていた武器が明日には完成する見込みだから明後日に取りに来てくれ。」
「あぁ、必ず立ち寄らせてもらうよ。」
「……楽しみにしてる。」
「おう、それじゃあな!」
嵐の様にやって来て嵐の様に去って行った父娘の後姿が人込みで見えなくなるまで見送った俺は、ドッと押し寄せてきた疲れを吐き出す様にため息を零すのだった……
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