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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第301話

「よしっ、これで大体の準備完了だな。」

さっきロイドの家の使用人の方が届けてくれた浴衣は問題なく着れるみたいだし、後は財布とリビングに置いてあるスマホを持ってくれば良いだけか……

「それにしても、浴衣を着ている自分をこうやってマジマジと見まくっている俺ってもしかしてナルシ……」

いやいや、そうじゃねぇよな!前の世界に居た時は中肉中背で二重あごが見え隠れしているだらしないおっさんだった俺が、こうして浴衣の似合う細マッチョに生まれ変わったのが嬉しいだけだって!だから自分に酔いしれている訳では絶対にないっ!

心の中でそう断言した俺は………最後にもう一度だけ自分の姿を鏡で確認すると、小さく頷いてからリビングに向かって行った。

「あっ、ご主人様!もうお祭りに行く準備は出来ましたか?」

「おう、そっちはもう終わってるのか?」

「はい!ご覧の通り、バッチリですよ!」

俺に向かってニコっと微笑みかけてきたマホは、着ている浴衣を見せつける感じでその場でグルっと回ってみせた。

「へぇー、今回は少し落ち着いた感じの色遣いをした浴衣を選んだんだな。」

「えへへ、そうなんですよ!実は昨日、ロイドさんとソフィさんと相談してお祭りに着ていく浴衣は大人っぽい印象の物を着ていこうって決めたんですよね!」

「あぁ、それでどうだい九条さん。私達の浴衣姿、少しは大人っぽく見えるかい?」

「んー……まぁそうだな……」

マホが着ているのは赤を基調とした綺麗な浴衣なんだけど、本人の見た目のせいもあってか少しだけ幼く見えちまうんだが………シックな色遣いをしている浴衣を着たロイドは恐ろしいレベルの美人になっているし………

「どう?」

「あっ、えっと……その………」

小さく小首を傾げながら視線を送って来たソフィに至っては、淡い水色をメインにした浴衣のせいなのかメチャクチャ儚げな病弱系の美少女に見えるしで……!

つーか戦闘狂としての一面を知っているせいでギャップが凄まじいんですけど!?えっ、ソフィってこんなに可愛らしかったでしたっけ?!

「うんうん、ご主人様が戸惑っているのを見る限り私達はとっても綺麗になっているという事らしいですね!」

「おやおや、そんなに好印象を抱かれているだなんて何だか照れてしまうね。」

「……恥ずかしい?」

「いや、俺に聞かれても知らんがな……って言うかマホ!勝手な事ばっかり言ってんじゃねぇよ!べ、別に綺麗だなんてそんな………ちょっとぐらいしか……」

「はいはい。それじゃあ集合時間にはまだ早いですけど、そろそろお祭りに……ってその前にご主人様、はい!」

「…………えっ、なに?」

「なに?じゃなくて……はい!お祭りで使う為のお小遣いを下さい!」

「…………はい?」

こっちに近寄って来たマホに満面の笑みを浮かべながらそうやって言われた俺は、頭の中に疑問符が大量に浮かんで来て思わずマヌケな返事をしてしまい……へっ?

「九条さん、お小遣いをちょうだい。」

「……いやいや………いやいやいや、ちょっと待ってくれ!?どうして俺がお前達に小遣いをやらないといけないんだよ!?」

「どうしてって、私達が欲しいからに決まってるじゃないですか!」

「えぇ、何だよ理由は……つーかソフィ!お前は自分で稼いでる分があるんだから、俺から小遣いを貰わなくても問題ないだろうが!」

「………ダメ……なの?」

「うっ……ダ、ダメって事は……ないけど………」

ヤ、ヤバい……ソフィが心なしか悲しそうな表情に……!止めてくれ!今のお前は儚げな美少女の見た目をしてるから罪悪感が半端じゃねぇんだよ!

「ほら、ご主人様!折角のお祭りなんですから、ソフィさんにこんな表情をさせたらダメですよ!」

「こ、こんにゃろ……!人の弱点を知り尽くしてるからって偉そうに……!」

「……九条さん……ダメ?」

「う、ががががっ……!あぁもう分かったよ!すぐに用意してやるから、そんな目で俺を見ないでくれ!」

大きな声でそう叫んだ俺はリビングに置いてある横長のタンスからクアウォートで使った布の袋を取りすと、その中に少し多めに小遣いを入れると両手を受け皿の様にしている2人にソレを手渡すのだった……!

「わーい!ありがとうございます、ご主人様!」

「……ありがとう、九条さん。」

「どういたしまして………はぁ……この日の為に下ろしていた金の半分が消えて……ロイド、どうして両手を受け皿にしながらこっちにやって来たんだ?」

「九条さん、マホとソフィにだけお小遣いをあげると言うのは少しだけ不公平だとは思わないかな。」

「……うん、だからさっきソフィにも言ったんだけどね?お小遣いをあげなくても、お前は自分で稼いだ分の金を持っているだろう?」

「ふふっ、それで私に納得しろとでも?」

「ご主人様!ロイドさんだけ仲間外れにするなんてかわいそうですよ!」

「…‥私達は仲間。」

「お、おのれらぁ………!」

……結局、祭りに出掛ける直前になって俺の所持金は4分の1にまで減ってしまうのだった!

ま、まぁ!銀行にはまだまだ金が残ってるから平気だしぃ!それにこんな時の為に部屋に貯金箱とか用意してた訳だしぃ!皆の嬉しそうな顔が見れたんだから、それはそれで良かったしぃ!ま、祭りだって2回目だから悔しくも何とも無いですからっ!

そう自分に言い聞かせながら薄くなってしまった財布をすりすりと撫でた俺は……腹の底からため息を吐き出すと皆と一緒に家を出て行くのだった。

「おぉ、凄いですねおじさん!街から離れているここからでもお祭りで賑わっているのが分かりますよ!」

「……確かにな、随分と盛り上がってるみたいじゃねぇか。」

「ふふっ、そうだね。」

「……皆と合流出来るかな。」

「あー……そういや大通りの真ん中辺りで集まるとしか決めてなかったか。」

「そうでしたね……まぁ、何とかなりますよ!クアウォートよりも人の数は少ないでしょうから!」

「それもそうか……さてと、そんじゃあ行くとしますかね。」

「はーい!」

マホの元気な返事を耳にしてからゆっくりと歩き始めた俺達は、遠くから聞こえてくるガヤガヤとした人の声に向かって行くのだった。

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