おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第298話

「あっ、そう言えば!今回のボスはクリフさんが止めを刺したってロイドさん達から聞きましたけど、一体どうやって倒したんですか?」

「えっ?!いや、その……ア、アレだ!我の中に眠っていた真なる力が解放されて、我が肉体を依り代としてだな!」

「クリフ君、マホさんに嘘を教えている暇があるなら手を動かしてね。このままじゃ晩御飯の用意が終わらないじゃないか。」

「僕達が毎日の様にお料理の作り方を教えてあげたって言うのに、それを無駄にする様な事をしたらどうなるか………うふふふふ…………」

「ひぅ!?し、質問の途中ですまないが我は料理に集中させてもらう!」

「は、はい……えっと、おじさんの方はどんな感じですかって………おじさん?」

へぇー………なるほどねぇ………ボクっ娘系美少女と小悪魔系男の娘と一緒に毎日イチャコラしながら料理のお勉強ですかぁ………

「はは……はははっ…………ゴミがぁ……くたばりやがれっ………!」

「ちょ、ちょっとおじさん!嫉妬心を剥き出しにして何を言ているんですか!?」

思わず心の底から溢れ出てきた憎しみを小声で吐き出してしまったその時、マホが俺の腕をグッと引っ張って耳元にそうささやき掛けてきた。

「しょうがねぇだろ!エルアとイリスに挟まれて料理を教えて貰ってるハーレム系の主人公みたいなアイツの姿を間近で見せられてるんだからよ……!」

「いやいや、だからって呪いの言葉を呟かないで下さいよ!ほら、おじさんには私が付いていてあげますからさっさと晩御飯を作りますよ!」

「ぐぅ……!」

マホにわき腹を肘で小突かれながら晩飯を手早く作り上げていった俺は、一足先に出来上がった料理を皿に盛り付けるとソレを食卓に並べて椅子に座ると3人の様子をボーっと眺める事にした。

……つーかこうして見てみると、マジでアイツってラノベの主人公みたいな特徴がメチャクチャ盛り沢山な奴だよな。

格好や言動もそうだが、身分が学生でエルアとイリスみたいな可愛い女の子と……いや、それは置いておくとしてもそんな2人と友達で本気を出したらメチャクチャな魔法を撃てたりして………アレ?もしかして本当にそういう事……なのか?

「おじさん、難しい顔をしてどうかしたんですか?」

「…………いや、何でもない。それよりもクリフ、まだ晩飯は出来ないのか?」

「ふんっ!貴様に言われずとも………さぁ、完成したぞ!」

「ふふっ、それでは皆で晩御飯を頂こうとしようじゃないか。」

「うん、おなかすいた。」

「えへへ、クリフさんのお料理の腕がどれだけ上がったのか楽しみですね!」

「僕達が教えた事がきちんと身についているのか……」

「しっかりと確かめさせて貰うからね。」

「あぁ、心して食べるがいい!」

ウチに置いてあった可愛らしいフリフリのエプロンを付けながら偉そうにしているクリフが震える手で皿に盛り付けた料理を運んで来てから数分後、俺達は手を合わせいただきますと言ってから晩飯を食べ始めるのだった。

「……おぉ!この前の料理とは比べ物にならないぐらい美味しいですよ!」

「はっはっは!我の手に掛かればこの程度!」

「……って言うか、前回の料理か最底辺レベルだったから少しでも上達すれば美味く感じるのは当たり前だろ。」

「ふっ、負け惜しみか?それならば貴様の料理を食ってやろうではないか!…………ぐっ!ほ、ほんの少しの差ではあるが……いや、まだ敗北が決まった訳では……」

「……クリフ君、これはどう考えてもかなりの大差があると思うよ。」

「うふふ、九条さんが作ってくれたお料理……本当に美味しいですねぇ………」

「おっ、そりゃどうも……って、何で頬に手を当てて俺を見つめてくるんだ?」

「いえ……ほっぺたが落ちてしまいそうで………ほら、九条さん……触って確かめてくれませんかぁ……?」

「へっ?!あっ、いや!流石に……なっ?食事中だしさ!」

「あぁ……でしたら後で……九条さんのお部屋でじっくりと………」

「そ、そんなのダメだからねイリスさん!」

「そ、そうですよ!何を言ってるんですか!絶対に許しませんからね!」

「あらあら、うふふふ………それは残念ですねぇ………」

思わず背筋がゾクッとする様な妖艶な笑みを浮かべながら視線を送って来たイリスからサッと視線を逸らした俺は、わざと大きな咳払いをすると急いでこのばの空気を変える事にした!

「そ、そういや来週になるんだが、この街で祭りが開催されるのは知ってるか?」

「えぇ、斡旋所に行った時に職員の方からご説明してもらいました。」

「そうか!なら話は早いんだが、来週になったら俺達と祭りを見て回らないか?」

「えっ、良いんですか!」

「おう!多分だけど、そっちもそろそろ夏休みが終わる頃だろ?それだったら最後に思い出作りでもどうかって感じなんだが……どうだ?」

「ふんっ、バカバカしい……俺達が貴様の誘いに乗る訳が」

「はい!それじゃあお願いします!」

「な、何だと?!おい、俺はそんな祭りに興味なんか」

「クリフ君、僕達に貸しがあるのに逆らおうとしている訳じゃあ……ないよね?」

「うっ……お………おぅ………」

「うふふ、それなら良かった……皆さん、来週はよろしくお願いしますね。」

「お、おぅ……」

メチャクチャ分かりやすい上下関係を目の当たりにして顔を引きつらせていると、いきなりロイドが手をパンっと鳴らして皆の注目を集め出した。

「そう言う事なら提案があるんだが、もし良かったら浴衣を着てみないかい?」

「浴衣……ですか?それってどういう……」

「簡単に言ってしまえば、お祭りの時に着ていく正装かな。」

「正装……ですがあの、僕はその浴衣を持っていないんですけど……」

「僕も残念ながら持ってはいませんね。」

「当然ながら我も無いぞ。」

「ふふっ、その点については心配しなくても大丈夫だよ。浴衣はこっちの方で用意をさせて貰うからね。」

「は?用意って……どうするもつもりなんだよ?ちょっと前まで街で売っているのを見かけたりしたけど、もうほとんど売り切れてたろ。まさかクアウォートまで買いに行くとか言うつもりじゃないだろうな?」

「勿論、実は母さんがクアウォートで浴衣を大量に購入していたらしくてね。事情を話せば譲ってくれるだろうから、それを皆には着てもらうのさ。」

「あぁ、なるほどね……」

「そんな訳だから安心してくれ。それと時間的な余裕があるなら、祭りが開催される前日に尋ねて来てくれれば自分の好きな浴衣を選ぶ事が出来るからね。」

「わ、分かりました!」

「うふふ、どんな浴衣があるのか楽しみです。」

「我に似合う物があるかどうか……見極めさせてもらおうではないか!」

「……何で上から目線なんだよ。」

偉そうなクリフに呆れながら来週の予定を話し合って晩飯を食い終わった俺達は、陽が暮れる前に宿に帰って行く3人を玄関で見送るのだった。

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