おっさんの異世界生活は無理がある。
第293話
窓から夕陽が差し込む様になってきた時間帯になった頃、俺達は宿に戻るイリスを見送る為に玄関にやって来ていた。
「皆さん、本日は突然だったにも関わらずお招き頂いてありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ遊びに来て下さってありがとうございました!イリスさんと楽しくお喋りが出来て嬉しかったです!」
「うふふ、僕もマホさんと同じ気持ちですよ。それでは、また。」
「あぁ、そんじゃあな。」
「また会える日が来るのを楽しみに待っているよ。」
「……じゃあね。」
ニコッと微笑みながら綺麗な会釈をしたイリスが扉を開けて帰って行った後、俺は鍵を閉めると小さく息を吐き出すのだった。
「……アイツ、やっぱり来なかったな。」
「あぁ、イリスの話だと今日こそは九条さんに勝つと意気込んでいたらしいからね。その目的が果たせなくて、落ち込んでいるみたいだったとは言っていたけど。」
「うーん……クリフさん、大丈夫なんですかね?」
「さぁな……俺としては、厄介事がようやく無くなったって喜ぶだけの話だ。」
「それはそれでどうかとは思うんですけど……ご主人様、本当にこれでクリフさんは諦めたと思いますか?」
小首を傾げてジッと見つめて来たマホにそう尋ねられた俺は、腕を組んで唸り声を上げながら今日までの事を振り返ってみた。
「……俺の願望としてはそうあって欲しいが、あんだけ自分の道を突き進んでる様な奴がこの程度の事で心が折れちまうとは考えられねぇな。」
「ふふっ、クリフ少年の提案した勝負に勝ったのにかい?」
「あぁ、だって俺が斬り倒して決着が付いた訳じゃ無いからなぁ……アイツの事だ、体調が万全では無かったとか言って再戦を挑まれる可能性は充分にありそうだろ?」
「……確かに。」
「へぇー、クリフさんの事をよく理解してるんですね。」
「別に理解したい訳じゃねぇけど、こんだけしつこく絡まれてるとな……」
「ふむ、そうなると次の勝負は1週間後という事になるね。」
「……今度はどんな勝負になるのかな。」
「うーん、闘技場で再試合をするって言うのはクリフさんの金銭面的な所で難しいと思いますし……ご主人様はどんな勝負をすると思いますか?」
「いや、想像も付かねぇし……って言うかお前達、もしかしてこの面倒事を楽しんでたりしないだろうな?」
「いやいや、そんなまさか。」
「そうですよ!ぜーんぜん楽しんでません!」
「次の勝負、戦闘系なら私も混ぜて欲しい。」
「……とりあえず、俺の味方がここには居ないってのはよーく分かったよ。」
笑みを浮かべながら俺の言葉を否定した2名と我が道を行ってる1名を呆れながら見つめていた俺は、この後アイツがどう動くのかと不安に思いながら夜を過ごす事になるのだった。
……しかしその翌日、王都行きの馬車が出発する前に挨拶にやって来たのはイリスだけで中二病が姿を現す事は無かった。
それとなくイリスにどうしたのかと事情を聞いてみると、やはり昨日の勝負の件が尾を引いているらしくてアイツを誘ったが断われてしまい一足先に集合場所に行ってしまったらしい。
……おやおや、これはもしかすると俺にとって良い流れに突入したんじゃねぇか?そうだとするならもうアイツに絡まれる心配は無いって事だろ!ひゃっほう!
なーんて感じで心の中で喜びながら気遣う素振りをみせた俺は、立ち去って行ったイリスの姿が見えなくなった瞬間に小さなガッツポーズを決めるのだった!
「皆さん、本日は突然だったにも関わらずお招き頂いてありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ遊びに来て下さってありがとうございました!イリスさんと楽しくお喋りが出来て嬉しかったです!」
「うふふ、僕もマホさんと同じ気持ちですよ。それでは、また。」
「あぁ、そんじゃあな。」
「また会える日が来るのを楽しみに待っているよ。」
「……じゃあね。」
ニコッと微笑みながら綺麗な会釈をしたイリスが扉を開けて帰って行った後、俺は鍵を閉めると小さく息を吐き出すのだった。
「……アイツ、やっぱり来なかったな。」
「あぁ、イリスの話だと今日こそは九条さんに勝つと意気込んでいたらしいからね。その目的が果たせなくて、落ち込んでいるみたいだったとは言っていたけど。」
「うーん……クリフさん、大丈夫なんですかね?」
「さぁな……俺としては、厄介事がようやく無くなったって喜ぶだけの話だ。」
「それはそれでどうかとは思うんですけど……ご主人様、本当にこれでクリフさんは諦めたと思いますか?」
小首を傾げてジッと見つめて来たマホにそう尋ねられた俺は、腕を組んで唸り声を上げながら今日までの事を振り返ってみた。
「……俺の願望としてはそうあって欲しいが、あんだけ自分の道を突き進んでる様な奴がこの程度の事で心が折れちまうとは考えられねぇな。」
「ふふっ、クリフ少年の提案した勝負に勝ったのにかい?」
「あぁ、だって俺が斬り倒して決着が付いた訳じゃ無いからなぁ……アイツの事だ、体調が万全では無かったとか言って再戦を挑まれる可能性は充分にありそうだろ?」
「……確かに。」
「へぇー、クリフさんの事をよく理解してるんですね。」
「別に理解したい訳じゃねぇけど、こんだけしつこく絡まれてるとな……」
「ふむ、そうなると次の勝負は1週間後という事になるね。」
「……今度はどんな勝負になるのかな。」
「うーん、闘技場で再試合をするって言うのはクリフさんの金銭面的な所で難しいと思いますし……ご主人様はどんな勝負をすると思いますか?」
「いや、想像も付かねぇし……って言うかお前達、もしかしてこの面倒事を楽しんでたりしないだろうな?」
「いやいや、そんなまさか。」
「そうですよ!ぜーんぜん楽しんでません!」
「次の勝負、戦闘系なら私も混ぜて欲しい。」
「……とりあえず、俺の味方がここには居ないってのはよーく分かったよ。」
笑みを浮かべながら俺の言葉を否定した2名と我が道を行ってる1名を呆れながら見つめていた俺は、この後アイツがどう動くのかと不安に思いながら夜を過ごす事になるのだった。
……しかしその翌日、王都行きの馬車が出発する前に挨拶にやって来たのはイリスだけで中二病が姿を現す事は無かった。
それとなくイリスにどうしたのかと事情を聞いてみると、やはり昨日の勝負の件が尾を引いているらしくてアイツを誘ったが断われてしまい一足先に集合場所に行ってしまったらしい。
……おやおや、これはもしかすると俺にとって良い流れに突入したんじゃねぇか?そうだとするならもうアイツに絡まれる心配は無いって事だろ!ひゃっほう!
なーんて感じで心の中で喜びながら気遣う素振りをみせた俺は、立ち去って行ったイリスの姿が見えなくなった瞬間に小さなガッツポーズを決めるのだった!
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