おっさんの異世界生活は無理がある。
第290話
気が乗らないまま家を出て人の気配がなく静かな闘技場まで皆とやって来た俺は、何度目になるか分からないため息を零しながら建物の中に入って行った。
「ふんっ、怖気づいて逃げ出したりしなかったみたいだな!」
「はいはい……そう言うのは良いからさっさと手続きを済ませちまってくれ……」
「うわぁ……おじさん、露骨にやる気が下がってますね……」
「はっはっは!どうやら今回の勝負、戦わずしても結果が見えた様だな!」
意気揚々と高笑いをしながら受付に歩いて行ったアイツは……‥対応をしてくれた相手が可愛らしいお姉さんだったからなのか、分かりやすく狼狽え始めた。
「うふふ、ちょっとクリフ君のお手伝いをしてきますね。」
「あぁ、よろしく頼んだよイリス。」
その後、残念なアイツと変わって手早く手続きを終わらせたイリスは軽い足取りでこっちに戻って来ると俺達の前で立ち止まりニコっと微笑みかけてきた。
「お待たせしました。」
「いや、別にそんな事はねぇけど………俺達はこれからどうすれば良いんだ?」
「闘技場が使用出来る様になるのは11時からなので、それまでは控室で待機をしておいてほしいとの事でした。」
「ふーん……利用する控室はどれでも構わないのか?」
「はい、ご自由にご利用して下さいと仰っていましたよ。」
「なるほどね……それじゃあ会場の出入口に一番近い所を使うとするか。」
以前ここに来た時は廊下の一番奥の控室を案内されて移動が面倒だったからな……今回は楽できる場所で待機させてもらうとしますかねぇ。
「それと今回の試合に関してなんですが、九条さんのレベルは5まで下がりますから注意しておいて下さいね。」
「あぁ、分かったよ。」
最近レベルの確認をしてないからどんだけ下がるのか不明だけど……まぁ、何とか経験値10倍の力を使って勘を取り戻すしかないか。
なんて考えながら腕を組んでいると、何故かニヤリと笑みを浮かべているアイツがコツコツと俺の方に向かって来て………ビシッと立ち止まったと思ったら、大げさなポーズを決めて俺に鋭い……のかどうかも分からない視線を送って来た。
「いよいよ最後の幕が上がる……九条透、覚悟は出来ているのだろうな?」
「……そっちこそ、もうこれが最後だって分かってんだろうな?」
「ふっ、愚問だな……九条透、貴様が掛けた悪しき魔術の数々は必ず我が打ち破ってくれる!その時が訪れるのを待っているがいいわ!はっはっはっは!」
痛々しい格好の中二病患者は悪役みたいな笑い声を上げながら右奥の方に伸びてる通路の奥へと歩いて行ってしまった。
「おやおや、まるで勝利を確信しているかの様だね。」
「そうですね……イリスさん、もしかしてクリフさんって強いんですか?」
「えぇ、剣術と魔術の扱いはトップクラスの成績と言えるかもしれません。ただし、ちょっとした悪い癖があるので模擬戦闘では負けている事が多いんですけどね。」
「へぇ、その悪い癖ってどんなの何ですか?」
「うふふ、それは試合が始まればすぐに分かると思いますよ。」
「はぁ……だったら勿体ぶらずに教えてくれても良い気がするんだが………」
「すみません、クリフ君の相手である九条さんに有利となり得る情報を教える訳にはいきませんので。」
「ふふっ、勝負をするなら公平に……そうでなければ、また納得が出来ないと言われ絡まれてしまうかもしれないよ。」
「はっはっは……それもそうだな……」
負けた時の言い訳が成立しちまう情報は知らない方が得だなこりゃ………ってか、まさかまたここで武器を振るって戦う事になるなんて予想もしてなかったぞ。
「それでは九条さん、僕達は邪魔にならない様に観客席の方に移動しますね。」
「おう、そんじゃあな。」
「おじさん!応援していますから頑張ってくださいね!」
「どんな試合になるのか……楽しみにさせてもらうよ。」
「ワクワクしてきた」
「うふふ、僕はどちらの事も応援させて頂きますね。」
……軽い感じで応援してくれた皆が観客席に向かって行ったのを見送った後、俺は左側に伸びる通路を進んで行くと出入口付近にある待機所に入って武器を眺めながら試合が始まるまで時間を潰すのだった。
「ふんっ、怖気づいて逃げ出したりしなかったみたいだな!」
「はいはい……そう言うのは良いからさっさと手続きを済ませちまってくれ……」
「うわぁ……おじさん、露骨にやる気が下がってますね……」
「はっはっは!どうやら今回の勝負、戦わずしても結果が見えた様だな!」
意気揚々と高笑いをしながら受付に歩いて行ったアイツは……‥対応をしてくれた相手が可愛らしいお姉さんだったからなのか、分かりやすく狼狽え始めた。
「うふふ、ちょっとクリフ君のお手伝いをしてきますね。」
「あぁ、よろしく頼んだよイリス。」
その後、残念なアイツと変わって手早く手続きを終わらせたイリスは軽い足取りでこっちに戻って来ると俺達の前で立ち止まりニコっと微笑みかけてきた。
「お待たせしました。」
「いや、別にそんな事はねぇけど………俺達はこれからどうすれば良いんだ?」
「闘技場が使用出来る様になるのは11時からなので、それまでは控室で待機をしておいてほしいとの事でした。」
「ふーん……利用する控室はどれでも構わないのか?」
「はい、ご自由にご利用して下さいと仰っていましたよ。」
「なるほどね……それじゃあ会場の出入口に一番近い所を使うとするか。」
以前ここに来た時は廊下の一番奥の控室を案内されて移動が面倒だったからな……今回は楽できる場所で待機させてもらうとしますかねぇ。
「それと今回の試合に関してなんですが、九条さんのレベルは5まで下がりますから注意しておいて下さいね。」
「あぁ、分かったよ。」
最近レベルの確認をしてないからどんだけ下がるのか不明だけど……まぁ、何とか経験値10倍の力を使って勘を取り戻すしかないか。
なんて考えながら腕を組んでいると、何故かニヤリと笑みを浮かべているアイツがコツコツと俺の方に向かって来て………ビシッと立ち止まったと思ったら、大げさなポーズを決めて俺に鋭い……のかどうかも分からない視線を送って来た。
「いよいよ最後の幕が上がる……九条透、覚悟は出来ているのだろうな?」
「……そっちこそ、もうこれが最後だって分かってんだろうな?」
「ふっ、愚問だな……九条透、貴様が掛けた悪しき魔術の数々は必ず我が打ち破ってくれる!その時が訪れるのを待っているがいいわ!はっはっはっは!」
痛々しい格好の中二病患者は悪役みたいな笑い声を上げながら右奥の方に伸びてる通路の奥へと歩いて行ってしまった。
「おやおや、まるで勝利を確信しているかの様だね。」
「そうですね……イリスさん、もしかしてクリフさんって強いんですか?」
「えぇ、剣術と魔術の扱いはトップクラスの成績と言えるかもしれません。ただし、ちょっとした悪い癖があるので模擬戦闘では負けている事が多いんですけどね。」
「へぇ、その悪い癖ってどんなの何ですか?」
「うふふ、それは試合が始まればすぐに分かると思いますよ。」
「はぁ……だったら勿体ぶらずに教えてくれても良い気がするんだが………」
「すみません、クリフ君の相手である九条さんに有利となり得る情報を教える訳にはいきませんので。」
「ふふっ、勝負をするなら公平に……そうでなければ、また納得が出来ないと言われ絡まれてしまうかもしれないよ。」
「はっはっは……それもそうだな……」
負けた時の言い訳が成立しちまう情報は知らない方が得だなこりゃ………ってか、まさかまたここで武器を振るって戦う事になるなんて予想もしてなかったぞ。
「それでは九条さん、僕達は邪魔にならない様に観客席の方に移動しますね。」
「おう、そんじゃあな。」
「おじさん!応援していますから頑張ってくださいね!」
「どんな試合になるのか……楽しみにさせてもらうよ。」
「ワクワクしてきた」
「うふふ、僕はどちらの事も応援させて頂きますね。」
……軽い感じで応援してくれた皆が観客席に向かって行ったのを見送った後、俺は左側に伸びる通路を進んで行くと出入口付近にある待機所に入って武器を眺めながら試合が始まるまで時間を潰すのだった。
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