おっさんの異世界生活は無理がある。
第286話
「こ、腰が……肌が……!」
「はぁ……だから日焼け止めを塗って、こまめに休憩しろって言ったじゃないか。」
「そ、そんな事ではアイツに勝てないと思ったのだ!それなのに……」
「後半、明らかに作業効率が落ちてたからね。」
「ぐっ!こ、こんなはずでは……!」
うわぁ、まるでボスに歯が立たなくて悔しがってる主人公みたいだな……やってたのは思いっきりふざけた勝負だってのに……って、それよりも。
「なぁ、もうそろそろ夕方になるから帰ってくれねぇかな?決着も付いたし、お前もこれで満足したろ?」
「……いや、まだだ!こんな勝負は認められるか!」
「おいおい……まさか文句があるって言うつもりなのか?」
「あ、当たり前だ!あんな……あんなふざけた勝負、納得出来る訳が無いだろ!」
「ちょっとクリフ君、勝負内容を九条さんに任せると言い出したのは君じゃないか。それなに、今更それを反故にするなんて恥ずかしくないのかい。」
「う、うるさい!そもそも勝負と言うのは、武器や魔法を使って戦う事ではないか!それが料理や掃除、挙句の果てに草むしりだと?ふざけるのも大概にしろ!」
あーらら、これは完全にブチ切れてらっしゃるみたいですねぇ……いや、コイツが言ってる事も理解が出来ないって訳でも無いんだが……
「あのなぁ、人間同士が闘技場以外で戦うのは犯罪なんだよ。もしかしてそんな事も知らなかったのか?」
「バ、バカにするな!それぐらい知っている!」
「それだったら、こういう方法でしか決着が付けられないのは分かるだろ。」
まぁ、去年ぐらいにちょっと危険な方法で勝負をした覚えが無いとも言い切れないけども……流石に学生の身であるコイツにそれをやらせるのは酷だからな。
「な、ならば改めて闘技場で勝負を付けようではないか!」
「悪いが断る。」
「な、何故だ!?」
「やりたくもない勝負をする為に闘技場を借りる金を出す気は無い。」
「1時間、利用料としては10万Gぐらい掛かるだろうね。」
「そ、そんなに掛かるのか!?」
「私闘をする為だけに特殊な設備と場所、それと人の手も借りる事になるからね。」
「ぐっ……そ、それならば我が半額を!」
「そうだとしても断る。」
「ど、どうしてだ!?それぐらいの金は持っているだろうが!」
「だから、俺には払う義理がねぇって言ってんだよ。って言うか今日の勝負の結果はもう出たんだから、そろそろ約束通り今後は絡んで来ないと誓って貰おうか。」
「そ、それは……」
「ほら、いい加減に負けた事を認めて宣言してくれ。こっちは晩飯の用意をしたりと色々やらなきゃいけない事があるんだから。」
何時まで経っても言い渋ってる中二病患者に呆れながらそう伝えてみると、握った拳をプルプル震わせ始めながらうつ向いてしまい……いや、これは別に弱い者いじめしてる訳じゃないからね!?
エルアには悲しそうな目で……そしてマホには人でなしを見る目でジッと見られてどう言い訳をしようかと考えていたその時、目の前の中二病が突然バックステップをして俺達から離れて行きやがった?!
「ま、まだだ!俺はまだ負けてない!」
「は、はぁ?!ちょ、いきなり何を言い出してんだよ!?こんだけの証人が居るってのに、そんなふざけた主張が通ると思ってんのか!」
「う、うるさい!我に住む暗黒龍がこの勝負は無効だと叫んでいるのだ!」
「な、なんじゃそりゃ!?」
「今日の所は見逃してやる!しかし、次は必ず貴様の首を貰いエルア達に掛けられた呪いを解いてみせるからな!」
「あっ、おい!………アイツ、逃げやがった!」
「す、すみませんすみません!クリフ君が本当に!」
「いやいや、エルアが謝る事ではないさ。」
「そうですよ!悪いのは我が儘ばっかり言ってるクリフさんとふざけた勝負を仕掛てしまったおじさんです!」
「なっ、わざわざこんな面倒な事に付き合ってやったってのに俺のせいだってか?」
「はい!だって今日やった勝負の内容、絶対真面目に考えてないですよね?」
「そ、そんな訳ないだろ!ちゃんと考えたって!……昨日の夜ぐらいに。」
「ほら!やっぱり適当だったんじゃないですか!」
「しょ、しょうがないだ!まさか本当に来るとは思ってなかったんだしさ!ってか、アイツはこれからどうするつもりなんだ?」
「……また勝負を仕掛けて来ると思う?」
「多分な……けどぶっちゃけ、俺は何を言われても付きあうつもりはないぞ。」
「そ、そうですよね………あの、すみませんが僕も今日は失礼させてもらいますね。クリフ君にこれからどうするつもりなのか聞いてみないといけませんから。」
「あぁ、それと出来れば彼の説得をお願い出来るかな。」
「わ、分かりました。それでは、また。」
エルアは申し訳なさそうな表情を浮かべながら小さくお辞儀をすると、この場から走り去ってしまった………その後姿を見送った後、俺はため息を零しながら首に手を置いて頭を左右に揺らすのだった。
「……おじさん、これからどうなると思います?」
「さぁな……俺がふざけた大人だって事が伝わって、まともに相手をするだけ時間の無駄だと思ってくれりゃ話は早いんだが……」
「彼の思い込みの激しさの観点から考えると、それを理解したとしても勝負を挑んでくる可能性は充分に考えられるね。」
「そうなんだよなぁ……マジでどうしたもんかねぇ………」
当初の作戦通り真面目に勝負する気が無いって事が伝わって、どう決着を付けるか考えている間に夏休みが終わってくれれば万々歳なんだけど……こればっかりはどう転ぶのか分からねぇからな。
「……後はエルアに託すしかない。」
「……今はそれしかねぇか。」
「……はいっ!それじゃあ今日はここまでって事にして、ご主人様はお夕飯を作って下さいね!」
「はっ?なんで俺が……今日の当番はお前だろ?」
「ふっふっふ、さっきご自分で言っていたじゃないですか。もしかして忘れちゃったんですか?」
「い、いや!それはアイツを挑発するのが目的だっただけで!」
「九条さん、今日は肉料理が食べたい気分なんだが。」
「私は甘いものが食べたい。」
「それじゃあご主人様、お願いしますね!」
口々に好き勝手な事を言って家の中に戻って行ったあいつ等を呆然と見つめていた俺は……さっきのアイツと同じ様に膝から地面に崩れ落ちて迂闊な事を言った自分を殴り飛ばしたい衝動にかられながら地面に拳を振り下ろすのだった……!
「はぁ……だから日焼け止めを塗って、こまめに休憩しろって言ったじゃないか。」
「そ、そんな事ではアイツに勝てないと思ったのだ!それなのに……」
「後半、明らかに作業効率が落ちてたからね。」
「ぐっ!こ、こんなはずでは……!」
うわぁ、まるでボスに歯が立たなくて悔しがってる主人公みたいだな……やってたのは思いっきりふざけた勝負だってのに……って、それよりも。
「なぁ、もうそろそろ夕方になるから帰ってくれねぇかな?決着も付いたし、お前もこれで満足したろ?」
「……いや、まだだ!こんな勝負は認められるか!」
「おいおい……まさか文句があるって言うつもりなのか?」
「あ、当たり前だ!あんな……あんなふざけた勝負、納得出来る訳が無いだろ!」
「ちょっとクリフ君、勝負内容を九条さんに任せると言い出したのは君じゃないか。それなに、今更それを反故にするなんて恥ずかしくないのかい。」
「う、うるさい!そもそも勝負と言うのは、武器や魔法を使って戦う事ではないか!それが料理や掃除、挙句の果てに草むしりだと?ふざけるのも大概にしろ!」
あーらら、これは完全にブチ切れてらっしゃるみたいですねぇ……いや、コイツが言ってる事も理解が出来ないって訳でも無いんだが……
「あのなぁ、人間同士が闘技場以外で戦うのは犯罪なんだよ。もしかしてそんな事も知らなかったのか?」
「バ、バカにするな!それぐらい知っている!」
「それだったら、こういう方法でしか決着が付けられないのは分かるだろ。」
まぁ、去年ぐらいにちょっと危険な方法で勝負をした覚えが無いとも言い切れないけども……流石に学生の身であるコイツにそれをやらせるのは酷だからな。
「な、ならば改めて闘技場で勝負を付けようではないか!」
「悪いが断る。」
「な、何故だ!?」
「やりたくもない勝負をする為に闘技場を借りる金を出す気は無い。」
「1時間、利用料としては10万Gぐらい掛かるだろうね。」
「そ、そんなに掛かるのか!?」
「私闘をする為だけに特殊な設備と場所、それと人の手も借りる事になるからね。」
「ぐっ……そ、それならば我が半額を!」
「そうだとしても断る。」
「ど、どうしてだ!?それぐらいの金は持っているだろうが!」
「だから、俺には払う義理がねぇって言ってんだよ。って言うか今日の勝負の結果はもう出たんだから、そろそろ約束通り今後は絡んで来ないと誓って貰おうか。」
「そ、それは……」
「ほら、いい加減に負けた事を認めて宣言してくれ。こっちは晩飯の用意をしたりと色々やらなきゃいけない事があるんだから。」
何時まで経っても言い渋ってる中二病患者に呆れながらそう伝えてみると、握った拳をプルプル震わせ始めながらうつ向いてしまい……いや、これは別に弱い者いじめしてる訳じゃないからね!?
エルアには悲しそうな目で……そしてマホには人でなしを見る目でジッと見られてどう言い訳をしようかと考えていたその時、目の前の中二病が突然バックステップをして俺達から離れて行きやがった?!
「ま、まだだ!俺はまだ負けてない!」
「は、はぁ?!ちょ、いきなり何を言い出してんだよ!?こんだけの証人が居るってのに、そんなふざけた主張が通ると思ってんのか!」
「う、うるさい!我に住む暗黒龍がこの勝負は無効だと叫んでいるのだ!」
「な、なんじゃそりゃ!?」
「今日の所は見逃してやる!しかし、次は必ず貴様の首を貰いエルア達に掛けられた呪いを解いてみせるからな!」
「あっ、おい!………アイツ、逃げやがった!」
「す、すみませんすみません!クリフ君が本当に!」
「いやいや、エルアが謝る事ではないさ。」
「そうですよ!悪いのは我が儘ばっかり言ってるクリフさんとふざけた勝負を仕掛てしまったおじさんです!」
「なっ、わざわざこんな面倒な事に付き合ってやったってのに俺のせいだってか?」
「はい!だって今日やった勝負の内容、絶対真面目に考えてないですよね?」
「そ、そんな訳ないだろ!ちゃんと考えたって!……昨日の夜ぐらいに。」
「ほら!やっぱり適当だったんじゃないですか!」
「しょ、しょうがないだ!まさか本当に来るとは思ってなかったんだしさ!ってか、アイツはこれからどうするつもりなんだ?」
「……また勝負を仕掛けて来ると思う?」
「多分な……けどぶっちゃけ、俺は何を言われても付きあうつもりはないぞ。」
「そ、そうですよね………あの、すみませんが僕も今日は失礼させてもらいますね。クリフ君にこれからどうするつもりなのか聞いてみないといけませんから。」
「あぁ、それと出来れば彼の説得をお願い出来るかな。」
「わ、分かりました。それでは、また。」
エルアは申し訳なさそうな表情を浮かべながら小さくお辞儀をすると、この場から走り去ってしまった………その後姿を見送った後、俺はため息を零しながら首に手を置いて頭を左右に揺らすのだった。
「……おじさん、これからどうなると思います?」
「さぁな……俺がふざけた大人だって事が伝わって、まともに相手をするだけ時間の無駄だと思ってくれりゃ話は早いんだが……」
「彼の思い込みの激しさの観点から考えると、それを理解したとしても勝負を挑んでくる可能性は充分に考えられるね。」
「そうなんだよなぁ……マジでどうしたもんかねぇ………」
当初の作戦通り真面目に勝負する気が無いって事が伝わって、どう決着を付けるか考えている間に夏休みが終わってくれれば万々歳なんだけど……こればっかりはどう転ぶのか分からねぇからな。
「……後はエルアに託すしかない。」
「……今はそれしかねぇか。」
「……はいっ!それじゃあ今日はここまでって事にして、ご主人様はお夕飯を作って下さいね!」
「はっ?なんで俺が……今日の当番はお前だろ?」
「ふっふっふ、さっきご自分で言っていたじゃないですか。もしかして忘れちゃったんですか?」
「い、いや!それはアイツを挑発するのが目的だっただけで!」
「九条さん、今日は肉料理が食べたい気分なんだが。」
「私は甘いものが食べたい。」
「それじゃあご主人様、お願いしますね!」
口々に好き勝手な事を言って家の中に戻って行ったあいつ等を呆然と見つめていた俺は……さっきのアイツと同じ様に膝から地面に崩れ落ちて迂闊な事を言った自分を殴り飛ばしたい衝動にかられながら地面に拳を振り下ろすのだった……!
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