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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第237話

「ん~!アイスティーフロートって初めて飲んでみたけど美味いもんだな!」

いやぁ、バカップルに挟まれるという苦行を超えた先でこんな良い物と巡り合えるとは思いもしなかったぜ!……まぁ、2度とあんな地獄は味わいたくは無いけどな!

「よしっ、それじゃあ喉も潤った事だしさっさと帰るとする………か?」

別荘に帰る為に歩き出そうとした瞬間、何故だか服の裾を引っ張られる様な感覚がして振り返ってみたんだが………

「あれ、誰も居ない?」

「これお主、何処を見ておるんじゃ。こっちじゃこっち。」

「……は?」

すぐ下の方から聞こえてきた声の方に反射的に顔を向けてみると、そこには水色のローブを身に纏いフードで顔を隠している………え、子供?しかもマホより頭1つ分ぐらい身長が低いって事は……12歳ぐらいか?………ってか、マジで誰だこの子?

「お主、占いに興味は無いかい。」

「う、占い?」

「そうじゃ、お主にこれから訪れる未来に関する占いなんじゃが……どうじゃ?」

「え、えっと………お嬢ちゃん………だよね?もしかして迷子なのかな?お父さんとお母さんとはぐれちゃったとか?」

「いやいや、心配せんでも別にワシは迷子などではないぞ。」

「そ、そうなんだ………じゃあもしかして、君はお父さんかお母さんに占いを受けてくれそうな人を探していたとか?」

「そうではない、お主を占うのはこのワシじゃ。」

「へ、へぇ……あのねお嬢ちゃん、どんな遊びなのかは知らないけど知らない大人に声を掛けたりしたら危ないから。こんな事はしちゃダメだぞ。」

「ふぉっふぉっふぉ、これでも人を見る目には自信があるから大丈夫じゃよ。」

「いや、そうは言うけどね………」

「それよりどうなんじゃ、お主の未来をワシに占わせてくれるのかい?」

「それよりって……うーん…………」

どうしよう……観光地で強引な客引きを受けるとかって噂は前の世界で聞いた事はあるけど、まさか俺がその被害に遭うとは予想してなかったぞ!?しかも異世界で、こんな幼女相手に……いや、マジでどうすれば良いんだよ?!

「さぁ、どうじゃ?今なら無料で占ってやるがのぅ。」

「……………仕方ない、ちょっとだけなら付き合ってあげるよ。」

本当はこのまま帰っちまいたいんだが、こんな事はしちゃいけないってしっかりと教えてあげないといけないからな……まぁ、もしかしたら怖いお兄さんに囲まれたりしてお金を巻き上げられる可能性もあるんだが……その時は全力で逃げ出せば何とかなるだろ!うん、きっと大丈夫!……の、はず!

「おぉ、そうかそうか。お主ならばそう言ってくれると思っていたぞ。ならばワシの後について来るのじゃ。」

幼女はクルッと回って俺に背を向けてくるとローブの裾をずるずる引きずりながら大通り沿いを真っすぐ歩き始めた………ってか、今更ながらにこの炎天下の中でその恰好は暑くないのかしら?熱中症とかちょっと心配になっちゃうんですけど。

少しだけそんな心配をしながら幼女を後をしばらく追いかけて………うん、マホにこの光景を見られた間違いなく修羅場突入ですね!ってか、他の人達からも俺の姿はだいぶヤバい人に見えてるんじゃなかろうか?

そんな不安を抱いてビクビクしながら周囲に居る人達に目を向けてみたんだが……あれ、誰とも目が合わない……ってか、誰もこっちを見てない?え、おかしくね?

あんなに目立つ格好をしている子供を気にも留めてないって……もしかして、ああいったファッションがこの街では流行ってるのかしら?……でも同じ様な格好をした子供とかは全然見かけないし……うーん、何が流行しているのか知らない俺にはどう判断すれば良いのかマジで分からんな!

「お主、占い場所はこっちじゃからついて来るのじゃ。」

「あっ、うん………」

裏路地に入ってくのか……こりゃマジで怪しくなってきたぞ……とりあえず逃げる準備だけはしておいた方が良いかもしれないな。

そう考えて視線だけを動かして逃げ出す為のルートを幾つか想定しながらしばらく歩いていると、暗い路地の突き当りに怪しさ満点の水色の小さなテントが見えて……

「……マジかよ。」

心の声を思わず口から漏らしながらテントの中に入った幼女の後に続いて行くと、そこには2つの小さな椅子とテーブル………そして大きな水晶玉が置かれていた。

「さぁ、遠慮せずにそこの椅子に座るが良い。」

「………はいよ。」

周囲を警戒しながら目の前に置かれていた椅子に俺が腰を下ろした直後、目の前に座ってた幼女はおもむろに水晶玉に手をかざし始めた。

「それではこれより、お主の未来を占っていくぞ。」

「未来ねぇ……それって、俺は将来こんな感じになってますよって事なのかい?」

「いや、そこまで遠くの事ではない。もっと近い内に起こるであろう事の話じゃ。」

「近い内?それって占いって言うより、予言の様な気がするんだけど……」

「ふぉっふぉっふぉ、確かにそうかもしれんのう。」

うーん、マジで怪しすぎるぞこの幼女……まさか適当に起こりそうな事を言って、それを人の力で的中させるとかって方法を使う気じゃないだろうな?そんで信用した相手から金を巻き上げる為に高いツボを買わせたりとか……ヤバい、前の世界で高い絵を買わされそうになったトラウマがっ!?

「さて、それでは始めるぞ………はぁ……!」

幼女は何やら気合を入れながら水晶玉に手をかざしだした………うわぁ、これってテレビで見た事あるー!すごーい!こっちの世界でも同じようにやるんだね!

「……それでどうかな、俺の未来に何かみえたのかな。」

「……お主は近い将来、仲間達と共にとある場所を訪れる事じゃろう。」

「へぇ、なるほどねぇ……」

俺に同行者が居るって事は既に知られている訳か……まぁ、カモにする相手の事はちゃんと調べておいた方が占いの結果にも信憑性が出るからな。

「そしてお主達は、その訪れた場所で大いなる相手と対峙する事になるじゃろう。」

「大いなる相手?それはどんな奴なんだ。」

「そこまでは分からぬ……じゃが、お主達はその大いなる相手から試練を与えられる事になるじゃろうな。」

「試練?それはどんな内容なのかな。」

「さてな……ワシに分かるのは、その試練を突破する事が出来ればお主には夢の様な幸運が訪れるであろうという事じゃ。」

「ふーん、じゃあ突破出来なかったらどうなるのかな。」

「……その時は、身を引き裂く程の痛みがお主の心を襲うじゃろうな。」

「……そりゃ……気を付けないといけないな。」

ほんの一瞬、瞬きにも満たないほんの一瞬だけ、幼女から恐ろしい程の圧を感じた様な気がしたが……多分、言い方とかこの場の雰囲気に飲まれただけ……だよな?

手の中のカップに入っていた氷がカランと鳴る音が聞こえたと思ったら、短く息を吐き出した幼女は水晶玉から手をどけて座っている姿勢を正した。

「これで占いはお終いじゃ。」

「……え、もう?」

「うむ、これ以上は残念な事に占えぬ。」

「そ、そうなのか……えっと、じゃあもう帰っても……?」

「かわまぬ……じゃが、占いの内容は心に留めておくのじゃぞ。お主の未来に関わる大事な事じゃからな。」

「あ、あぁ……分かったよ……」

聞き流してしまえば良いと思ったが何故かその言葉に不思議な重みを感じた俺は、妙に落ち着かない心を鎮めようとしながら立ち上がって静かにテントを出て行った。

「…………それではまた会おうぞ、異世界より招かれたる者よ。」

「……えっ?」

頭の中に直接響いてくる様な声が背後から聞こえてきて反射的に振り返って………みた………ら……………

「う、嘘だろ…………?」

激しく動く心臓と全身から流れ出る冷や汗を感じながら愕然と見つめた先には……何も無い路地だけが映し出されていて………そこにあったはずのテントは……跡形も無く消えてしまっていた………

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