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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第220話

楽しみよりも不安だという感情が大きくなるのを感じながらトリアルの南東方面にあるクアウォートを目指して街道を走る馬車にしばらく揺られていると、外の方からカランカランと甲高い鐘の様な音が聞こえてきた。

「皆様、そろそろご昼食の時間となりますので少し先の平原付近で馬車を停車させて頂きます。出発は1時間後になりますので、それまでごゆっくりお過し下さい。」

「うむ、分かった。」

……エリオさんが返事をしてから少ししてゆっくりと速度を落とした馬車が路肩に停まると、御者さんは俺達に向けて軽く頭を下げると運転席から降りて行った。

「さて、それじゃあ私達も外の準備が出来次第お昼にするとしますか。」

「あ、はい……って、外の準備ですか?それってどういう……」

「お、おじさん!窓の外を見て下さい!ほら!」

「ちょ、服を引っ張るなって………うわぁ………すげぇ………」

興奮した様子のマホと一緒に外の景色を見てみると、屈強な男達が前後の馬車から大量の荷物を運び出している姿が視界に入ってきた……

「あの、あれは何を……?」

「昼食を食べる為に、日差しを遮る場所を設営して貰っているんですよ。」

「流石にこの炎天下の中でお昼ご飯を……なんて、ちょっと厳しいですからね。」

「まぁ、そうですよね………」

汗を流し白い歯を輝かせながら満面の笑みを浮かべて何かを設営する男達を見てた俺とマホは、ため息を同時に零すとお互いの顔を見合わせるのだった。

それからしばらくして平原のど真ん中に優雅さが漂う空間が出来上がったのを確認した俺達は、預けてたバッグの中から弁当を取り出してその場所に向かって行った。

「よぉし!それじゃあ全員が集まった事だし、さっそく昼飯を食べるとするか!」

大きな音を立てて手を合わせたディオスさんのいただきますの言葉を合図にして、俺達は昼食を食べ始まった。

「……うん、やっぱりマホの作る料理は美味しいね。」

「最高。」

「えへへ!ありがとうございます!」

「マホちゃん、もし良かったら私も一口頂いても良いかしら?」

「はい!実はこうなるんじゃないかと思っていたので、お弁当のおかずは少し多めに作っておいたんです!ではどうぞ!」

「ありがとう、マホちゃん。あっ、もし良かったらこっちのお料理も食べてみる?」

「え、良いんですか!それじゃあお言葉に甘えさせて貰いますね!……う~ん!このお肉とっても美味しいです!」

「うふふ、どうもありがとう。マホちゃんがくれたお魚もとっても美味しいわ。」

「えへへ!お口に合って良かったです!」

「おっ、そっちは随分と盛り上がってるな!もし良かったら、俺も混ぜてくれよ!」

「ディオス、食事中なんだからもう少し落ち着いたらどうだい。」

「がぁーっはっはっは!美味そうな料理を目の前に落ち着いてたら、俺が食べる前に無くなっちまうじゃねぇか!ってな訳だから九条さん、何でも良いからおかずを1品交換してくれないか!」

「あ、えぇ……別に良いですけど……」

「ありがとうな!こっちのは料理人が前日から仕込んでた物だから期待してくれても良いぞ!ほら、これだ!」

「ど、どうもです。じゃあえっと……こっちはこれで良いですか?」

「おう!……ん、美味いなこの卵焼き!お嬢ちゃん、料理の才能あるな!」

「え、そうですか!」

「あぁ!アムルとは偉い違いぐふぅ!」

「アナタ、何か仰いまして?」

「な、何でもないさ……がっはっは………」

「お母様!お父様!皆さんが見ている前でそういう事は控えて下さい!」

「あら、ごめんなさいリリアさん。つい、いつもの癖で。」

「全くもう………そ、それであの……ロイド様?もしよろしかったら……その……」

「ふふっ、おかずの交換だろう?勿論、喜んでさせてもらうよ。」

「ほ、本当ですか!で、では!」

「あ、あの……私も良いですか?」

「当然、ライルも歓迎するよ。そうだ、ソフィも彼女達と交換するかい?」

「……する。」

「よしっ、それじゃあ決まりだ。じゃあまずは………」

……皆が楽しそうにしている姿をひっそりと弁当を食べ進めながら眺めていると、穏やかな笑みを浮かべていたエリオさんと不意に目が合った。

「随分と賑やかな昼食になったものだね。」

「えぇ、そうですね。」

「…‥ふぅ、どうだい九条さん。私達もおかずの交換をしてみるかい?」

「あはは……是非、お願いします。」

この後ファーレスさんともおかずを交換して各家庭の料理を食べて腹を満たす事になった俺は、出発時間が来るまで心穏やかにのんびりと過ごすのだった………まぁ、撤収作業の様子を見てまた苦笑いが浮かんだりしたけどな。

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