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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第211話

「それじゃあ九条さん、何でもするって言ったの絶対に忘れないで覚えといてよね!何を頼むか次に会う時までに考えておくからさ!それじゃあばいばーい!」

「あぁ……それじゃあな………」

永遠とも思える様な昼飯が終わり逃げる様に店を出て行った俺は、元気に手を振り遠ざかって行くシーナの姿を見送ってから頭を冷やす為に街中をブラつく事にした。

「はぁ……こんな事になるんだったら家で飯を食っておけば良かったな………」

珍しく私服を着ていたシーナと昼飯を一緒に食えたのは喜ばしい事なんだろうが、それ以上に心労が絶えなさすぎてヤバすぎるんだが……あんだけ距離感が近すぎると勘違いする男とか絶対に現れそうだよな……まぁ俺はそんな事にはならないけどな!

「すみません、好意はありますけどそう言う意味じゃ………とか言われたりしたら、2度と加工屋には足を運べなくなるしな。」

そう自分に言い聞かせながら何処に行こうかしばらく悩んだ結果………俺は昨日も訪れた本屋にまたやって来ていた。

「まぁ、頭を冷やすのと暇を潰すんならここが一番だろ。」

それに俺の記憶に間違いが無ければレシピ本が置いてあった場所の近くに確か……おっ、やっぱり夏に関連する本が色々と特集されてるな。

「えっと【夏に必見、恋人同士で訪れる魅惑のデートスポット特集!】………うん、これは俺には全くと言って良いほど関係ないコーナーだな……」

他にはっと……おっ【冒険者にお勧めする、この夏に稼げるクエスト特集!】か。表紙だけでもチラッと見てみるとするかな。

「……なるほどね、主に討伐クエストと採集クエストに関連する情報が載ってる本が置いてあるのか。」

うーん、特にこれと言って金に困ってるって訳でも無いんだが……とりあえず1冊だけ買ってみるとするか。

「そんでこの横には……【この季節限定、話題のスイーツショップ特集!】ねぇ。」

これも少し気になるな……マホの機嫌を取る時に役に立ちそうだし、俺も甘い物を食う時に参考にしたいしな。

「それじゃあこれも1冊……いや、念の為に2,3冊買っておくか。」

後は……【仲間達と夏を満喫する為のレジャースポット特集!】……これも俺には関係が無い特集だな!だって俺の夏なんて……仲間なんて………!

「ふぅ…………2階に行くか…………」

若い奴らが楽しそうにはしゃいでる表紙を見てそっとため息を零した俺は、急いで2階に上がっていくとズラッと並んだラノベを眺めて心を落ち着けるのだった………

「……さてと、そろそろ帰るか。」

ふっと近くにあった時計を見てみると1時間ぐらいが過ぎていたので、俺は興味を惹かれたラノベ1冊とさっき選んだ雑誌数冊を買って本屋を後にすると家に帰る為に暑い日差しが照らす道を歩き始めた。

それからしばらくして額から流れる汗を拭いながらやっとの思いで家が見える辺りまでやって来る事が出来たんだが……

「あれ、あの馬車ってもしかして………」

首を傾げながらゆっくりと豪勢な見た目をしてる馬車に近づいてくと、その中から今朝早くから買い物に出掛けて行った皆が両手に沢山の荷物を抱えて降りてきた。

「こりゃまた随分とまぁ………」

目の前の光景を見て思わず苦笑いを浮かべていると、俺の声が聞こえたのかマホがハッとしてこっちに視線を向けて……えっ、荷物を地面に置いて怒ってる感じの表情をしながら近寄ってきた?!

「おじさん!どういう事なのかしっかりと説明して下さい!」

「は、えっ!?せ、説明って何の事だよ?ってか、何で怒ってんの?」

「分からないですか!?心当たりは無いんですか?!ついさっきの事ですよ!?」

「さ、さっきって…………まさかっ?!」

「思い出しましたか!そうですよ!おじさんがお店で可愛らしい女の人と痴話喧嘩をしていたって事についてですよ!っていうかどういう事ですか?!恋人が居るなんて私もロイドさんもソフィさんも聞いた覚えが無いんですけど!?」

「ちょ、ちょっと待て落ち着け!それには色々と事情があってだな!」

「ほほーう!それじゃあ聞かせて貰おうじゃないですかその事情ってのを!さぁ!」

「だ、だからその……一緒に店に居たのは加工屋の娘さんなんだよ!」

「はぁ?!シーナさんと付き合ってたんですか?!いつの間に?!」

「だからそうじゃなくて、たまたま会ったんだよ!そんで昼飯を食う事になったってだけの話だ!」

「へぇ!それで痴話喧嘩してパフェを食べさせあったと!ふーん!」

「だからそれにも色々と事情があるんだって!喧嘩したってのは………まぁひとまず置いておいて、パフェに関しては割引が適用されるからやっただけだって!」

「……本当ですか?」

「本当だって!そもそもお前らに内緒にしたまま彼女が作れる器用な男に見えるのかこの俺が?!」

「………………確かにそれもそうですね。」

「だろ?………ん?」

納得のされ方に微妙に引っ掛かりながら何とか落ち着いてくれたマホを見てホッと胸を撫で下ろしていると………

「それじゃあ痴話喧嘩ってどういう事なんですか?ウェイトレスさんの話によると、シーナさん物凄く怒ってたって言ってましたけど。」

「そ、それは………間違いないな………」

「えっ、どうしてそんな事になったんですか?」

「………聞いても怒らない?」

「………私が怒る様な事をしたんですか?」

「………多分。」

「………聞いてから判断しますので、早く教えて下さい。」

「………はい………そのですね………俺、シーナの名前をさ………今日に至るまで、本当に知らなかったという訳でして…………」

「………はい?」

………そっから先は………うん………お世話になってる人の名前はちゃんと知っておきましょうって事をマホに教えて貰いました………

「まったくもう……これからは気を付けて下さいね。」

「分かりました………ってか、お前は知ってたんだな。シーナさんの名前。」

「えぇ、ロイドさんやソフィさんと一緒に何度か足を運んでいますからね。ってか、おじさんが知らなかった事の方が驚きですよ。」

「いやだって……店員さんとお客さんの関係ってそんな感じだと思うんだけど………それに相手は女性だし……名前を聞くのとか……ねぇ?」

「はいはい、これからはヘタレのおじさんに代わって私が聞いてあげますよ。」

「……よろしくお願いします。」

心にグサグサとナイフが突き刺さるのを感じながら頭を下げた俺は、ふぅっと息を吐き出して荷物を持ったマホと一緒に皆が待っているロイドの家に中に向かった。

「……そう言えばさっきから気になってたんだが、何をそんなに買ってきたんだ?」

「あぁ、これの事ですか?えへへ、後でご説明しますね。」

微笑みながら扉を開けてリビングに入ったマホの後に続いて行くと、何故か部屋の中央部分に腰に手を当て仁王立ちしているリリアさんの姿が………

「おーっほっほっほ!お待ちしていましたわ九条様!」

「ふふっ、どうやらマホのお説教は無事に終わったようだね。」

「あぁ、なんとかな……それよりもこの状況は……」

「九条さん、どうして怒られてたの?」

「いや、それは色々とあって……って、それよりも……」

「九条さん、マホさん、冷たいお茶はいかがですか?」

「あ、ありがとうございます!」

「どうも………えっと……それで……」

「もう皆さん!これから重大な発表をするのですからお静かにお願い致します!」

「ふふっ、ごめんごめん。」

「………」

「すみません……それではどうぞ。」

「え、え?」

リビングに入ってすぐの所で立ち尽くしている俺を残してリリアさんの少し後ろの方に並び出した皆を見てメチャクチャ困惑していると………

「九条様!心の準備はよろしいかしら!」

「は、はぁ……よく分からんが……」

「それでは発表を致しますわね!……九条様、来週になったらここに居る皆様とその家族とご一緒にリゾート地に向かい2週間のバカンスを楽しみますわよ!!」

「…………………………はい?」

ビシッと人差し指を向けながら声高らかにそう宣言したリリアさんとその後ろの方でパチパチと拍手をしてる皆を目にした俺は…………何を言われたのか把握出来ず、しばらく思考がフリーズしてしまうのだった…………

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