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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第204話

初めにイリスが家で使ってた荷物を宿屋に預けてからエルアと訪れた店に向かった俺達は、久しぶりに再会した店主さんにイリスの事を紹介しつつお土産を買おうかと思っていたのだが………

「すみません、お土産と一緒に九条さんとお揃いで使える様な物が欲しいんですけど何かお勧めはありますか?」

「……は?」

「えぇ、勿論ございますよ。それではどうぞこちらへ。」

「はい、分かりました。」

「え、ちょっ……」

俺達を置き去りにして奥の方に行ってしまった2人の後姿を呆然と眺めていると、少し前に立ってたマホが振り返って肩をすくめながら俺の事を見てきた。

「どうやら、グイグイと攻めて来る感じは変わらないみたいですね。」

「あぁ、昨日の今日で少しは控えめになるかと思っていたんだけど。」

「流石って感じ。」

「あのなぁ……変に感心してないで何とかしてくれよ……」

「うーん、そう言われてもですねぇ………」

マホは商品を手に話し合っているイリスと店主さんをチラッと見ると、首を小さく横に振って小さく息を吐いた。

「あれだけ楽しそうなイリスさんの邪魔をする事なんて出来ませんよ。」

「そ、そりゃそうだけど………」

「まぁ、お揃いの物が欲しいというお願いぐらいは叶えてあげても良いと思うよ。」

「私もそう思う。」

「ったく……随分と簡単に言ってくれるよなぁ……」

ガックシ肩を落として深々とため息を零していると、不思議そうな表情を浮かべたマホが近寄って来て下から俺の顔を見上げて来た。

「あの、もしかしておじさんはイリスさんとお揃いの物を持つのが嫌なんですか?」

「そういう訳でもねぇんだけど……どう反応したら良いのか困るんだよ。」

「ふふっ、それなら………こんなに想ってくれているなんて嬉しいよと言って喜んであげれば良いんじゃないかい?」

「……それがサラッと言える様な神経してたらこんなに苦労しないっての。ってか、そんな事を言ったらいよいよ俺の人生が終わっちまうだろうが。」

モテモテ爽やかイケメンのロイドとは違うんですよ!………なんて事を考えながらこっちはこっちでお土産を選んでいると、ケースの様な物を持ったイリスが店主さんと一緒に戻って来た。

「九条さん、店主さんからこちらの品をお勧めされましたので見て頂けますか?」

「ん、どれどれ………ふーん………」

「あ、私にも見せて下さい!……うわぁ、凄く可愛らしい食器ですね!」

「あぁ、装飾も凝っていて素敵じゃないか。」

「……お洒落。」

「ありがとうございます。そう言って頂けると主人も喜ぶと思います。」

嬉しそうに微笑む店主さんを見た後に改めてイリスが持っているケースの中に目を向けてみると、そこには植物の様な装飾が彫り込まれた食器のセットが入っていた。

「うふふ、どうですか九条さん。」

「いや、どうって言われてもな……ぶっちゃけ言うと、買ってもそんなに使う機会は無いと思うぞ。それでも良いのか?」

「はい、大丈夫です。」

「そうか……ならそれを買うとしますかね。」

「うふふ、ありがとうございます。」

「別に礼を言われる事じゃあ……ってそれよりも、イリスの家族にお土産を買うのが先だろうが。」

「あっ、そう言えばそうでしたね。すっかり忘れていました。」

「おいおい………」

それからジックリ時間を掛けてイリスの家族へのお土産を買った俺達は、店主さんに別れを告げてロイドがお勧めだと言う飯屋に向かうのだった。

……その後も街を散策しながら買い物を続けていると、あっと言う間に陽が暮れてしまったので俺達は買ったお土産を発送する為の手続きを済ませると西日が差し込む大通りにやって来ていた。

「皆さん、今日は長い間お付き合い頂き本当にありがとうございました。」

「いえいえ!私達も楽しかったですから!ね、おじさん。」

「……まぁそうだな、久々に曇り空じゃない空も見れていい気分だしな。」

「ふふっ、確かにそうだね。これだけ眩しい陽射しを見るのは久しぶりだ。」

「……もうそろそろ梅雨明け?」

「いや、もうちょい掛かるだろうな。ほら、あっちの方は曇ってるしな。」

「あーこれは明日からまた雨が降りそうですね……もう、イリスさんが王都に帰る日なんですから空気を読んで欲しいってもんですよ!」

「天気相手に無茶を言うなよ……気持ちは分らんでも無いけどさ。」

「……そう言えばイリス、明日の朝は何時発の馬車に乗るんだい?」

「7時発です。」

「なるほど……それなら6時半頃に門の付近に向かうよ。」

ロイドが当たり前の様にそう言った瞬間、微笑んでいたイリスの表情がゆっくりと伏し目がちになっていき………

「……皆さん、明日の悪天候だと思いますし無理に見送りに来て頂かなくも」

「何を言ってるんですかイリスさん!私達は絶対に見送りに行きます!」

「………え?」

マホの気合の入った声を聞いて驚いた感じの表情を浮かべたイリスを見た俺達は、互いに視線を交わすと微笑みながら声をかけた。

「イリス、昨夜の事を反省している君の気持ちは分かる。だけどそれはもう終わった事なんだよ。」

「で、ですけど……」

「イリスは私達に謝った時、反省してたよね。」

「……はい、勿論です。」

「ならそれで良い。それ以上は必要無い。」

「そうです!って言うか、私達がイリスさんの事を見送りたいだけですから!だから気にする事はありません!ですよね、おじさん。」

「あぁ、これは俺達が勝手にやる事だ。まぁもし迷惑だって言うならそう」

「そ、そんな事はありません!」

「おぉ、イリスの大声とか初めて聞いたな。」

「あっ、す、すみません……つい……」

「別に謝る事じゃねぇよ。それでどうだ、俺達が見送りに行っても良いか?」

イリスは戸惑った様子でしばらく俺達の顔を見回すと……頬に手を当ていつもの様に怪しく微笑み始めた。

「うふふふ……それではお見送りお願いしますね……」

「はい!それじゃあまた明日お会いしましょう!」

「イリス、忘れ物が無い様にしっかりね。」

「またね。」

「そんじゃあな。」

「えぇ、それでは………」

イリスは深々と頭を下げて丁寧なお辞儀をすると、宿泊してる宿屋の方に向かって歩いて行ってしまった……俺達はその姿を見送った後、家路につくのだった。

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