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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第196話

……依頼を受ける事に決めた翌日、朝飯を食べて出掛ける準備を整えた俺は椅子に座って食卓に肘をつきながら窓の外を眺めながら思わずため息を吐き出していた。

「はぁ、どうして今日に限って雨がこんなに降るんだよ………」

「ふふっ、この時期に入って一番の降水量じゃないかい。」

「恐らくな………まぁいいや、それより初めてダンジョンに挑むイリスの為に改めて今日の流れを改めて再確認するとしますかね。」

「うふふ、それじゃあよろしくお願いしますね。」

俺は動きやすさを重視した感じの服を着て微笑んでいるイリスと目を合わせると、姿勢を正してから皆の顔を見回して小さく頷いた。

「まず家を出たらクエスト斡旋所に行って依頼を正式に受ける事を伝えて、その後はダンジョンに入る為の手続きをするからな。」

「えぇ、分かりました。」

「そんでその後は森を抜けてダンジョンに潜って行くんだけど……………」

「あれ、どうしたんですかおじさん。急に静かになっちゃいましたけど。」

「…………あーやっぱり行きたくねぇなぁ!!」

「えぇ?!い、いきなり何を言い出してるんですか!?」

驚くマホの声を聞きながら食卓の上に突っ伏した俺は、そのままの体勢で窓の外をジトッと睨みつけてやった……!

「だって考えてみろよ!こんだけ雨が降ってたら一切舗装されてない森の地面なんてぬかるみ放題だろうが!絶対に靴の中までびしょ濡れになるぞ!しかも泥が付くっておまけ付きでな!」

「そんなの最初から分かり切ってる事じゃないですか!ほら、皆さん準備が出来てるんですから今更になって行かないとか言わないで下さいよ!」

「いや、それは分かってるんだけどさ……この雨だと絶対にダンジョンの中も湿気でヤバい事になってるだろうし……」

「ふふっ、確かにあのダンジョンは降ってくる雨が内部に流れ落ちる様になっていたからね。」

「だろ?だからもうちょっと雨が弱くなるまで待ってたいと言うか………」

「雨が弱くならなかったらもっと酷い事になると思う。」

「うっ……そう言われればそうなんだが………」

「それだったら早く斡旋所に行った方が良いんじゃないですか?早くしないともっともーっと酷い状態になっているダンジョンに入る事になりますよ!」

「まぁ既に最悪の状態になってるとは思うけど………あぁもう分かったからそんなに睨むなよ!グダグダ言ってないでさっさと行けば良いんだろ!」

俺は椅子から渋々立ち上がると腰にぶら下げていたアイテムポーチを手に取ると、中に入っているアイテムを改めて確認した。

………うん、何かあった時の為の傷薬と即効性の解毒薬はしっかりと入ってるな。まぁ解毒薬の方はメチャクチャ苦いらしいから出来れば使いたくないんだけどさ。

「おじさん、忘れ物はありませんか?武器の手入れはしっかりとしてありますか?」

「はいはいどっちも問題ないよ………ったく、お前は俺の母親かよ。」

「そう言うおじさんは手の掛かる子供ですね!皆さん、今回はおじさんが無茶しない様にしっかりと見ていて下さいね!」

「あぁ、分かっているよ。」

「勿論。」

「うふふ、安心して下さい。九条さんには傷1つ付けませんから。」

「……あれ、どうして俺が護られる的な立場に?普通は逆じゃね?」

「いえ、全然逆じゃありませんよ!おじさんは目を離したらすぐに自分の身を犠牲にする悪い癖がありますからね!」

「いやいや、そんな癖は無いっての!なぁ?」

手を振ってマホの言葉を食い気味に否定した俺は椅子に座って俺を見てたロイドとソフィに同意を求めたのだが……

「残念だけど、私にその言葉を肯定する事は出来ないかな。」

「同じく。」

「えぇ………」

肩をすくめながらやれやれといった感じの表情を浮かべるロイドと、いつも通りの無表情のソフィにあっさりと俺の言葉は否定されてしまった。

おかしいな……確かにちょっと無理をした事は何度かあるけど、自分の身を犠牲にしようとかこれまで考えた事は無いんだがな………

「うふふ、大丈夫ですよ九条さん。」

「……イリス?」

「もし九条さんが怪我をする事になってしまったら、僕が付きっきりでずぅっと看病してあげますから。」

「よしっ!今日は安全第一で絶対に怪我をしないで帰って来るぞぉ!」

俺はグッと握り拳を力強く握り締めると大声を出して自分自身に気合を入れた!!だってずぅっとって言ったその瞬間、イリスから何だかヤバい気配を感じたからな!今回はマジで頑張らないと色々と失うモノが多くなりそうだ………!

そんな風に考えながら決意を固めた俺は皆と一緒に家を出ると、滝の様に雨が降る街中を歩いて斡旋所に向かって行くのだった………勿論、イリスに見つからない様にスマホの中に入ったマホも一緒にな。

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