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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第193話

毎日の様に降り続いた雨の影響で成長して凶暴性が増した植物系モンスターの討伐クエストを受けた俺達は、ぬかるんだ道を歩いて東の森にやって来ていたのだが……

「うふふふ、その程度では僕に傷をつける事なんて出来ませんよ。」

「遅い。」

「…………いや、ちょっと強すぎじゃね?」

呆然としながら見つめる先ではニッコリ微笑みながら斧を振り回して樹木みたいなモンスターを粉砕していくイリスと、素早い身のこなしでモンスターを切り裂いてくソフィの姿が視界に入っていた。

「ふふっ、どうやら私達の出番は無さそうだね。」

「……そうだな。」

それからあっと言う間に討伐対象であるモンスターの気配が無くなった森の中で、俺とロイドは戦闘を頑張ってくれた2人を休ませる事にして納品作業を開始した。

「……とりあえず、これでイリスの実力は分かったな。」

「そうだね、あれだけ戦えるならダンジョンに連れて行っても問題ないと思うよ。」

「自分の身は問題無く護れると思う。」

「うふふ、ありがとうございます。」

「……まぁ、礼を言われてもまだ依頼を受けると決めた訳じゃ無いんだけどな。」

「はい、分かっています。」

「それなら良いんだけどさ……よしっ、こっちは納品終わったぞ。そっちは?」

「あぁ、こっちも問題なく終わったよ。」

「そうか、じゃあ変な鳴き声がどんなのか確かめに行くとしますかね。」

そう告げてモンスターと遭遇した場所から更に森の奥に歩いて行くと目的地である遺跡型のダンジョンの前に辿り着いたのは……良いんだけど……これ……マジ?

「おいおい……遺跡型って地下遺跡のダンジョンなのかよ………」

思わず肩を落としてため息を零した俺の目の前にはこけの生えた遺跡っぽい建物と、じめっとした湿気に包まれている地下に伸びる長い階段が見えていた……

「おやおや、これは足を踏み入れるのに勇気が要るダンジョンだね。」

「ったく……こんな所を調査しろとか最悪過ぎるぞ……」

(私だったら絶対に入りたくないですね………)

「……強い相手と戦う為なら仕方ない。」

「いや、流石にそれは無理があるだろ………多分だけど、ずっと降っていた雨が下に流れ込んでるせいで湿気が酷いんだろうな。」

「うふふ、こんな所から聞こえてくる鳴き声ってどんなのなんでしょうか。」

「さぁな……とりあえず聞こえてくるか確認する為に静かにしてみるか。」

俺達は互いに顔を見合わせた後に息を潜めながら階段に近寄って行くと、溢れ返る湿気に耐えながら意識を集中させてみた……………

「……何も聞こえないな。」

「あぁ、物音1つ響いてこないね。」

「もしかしてもう居ない?」

「うふふ、それはどうでしょうね。」

「……仕方ない、ちょっと魔法を撃ち込んで様子を見てみるか。」

皆に階段から離れる様に促した俺は手を前にかざして魔方陣を出現させると、暗い闇の中に光の球を撃ち込んでみた……どうやら階段のすぐ下にモンスターが潜んでるとかって事は無さそうだが。

「うーん、やっぱり鳴き声は聞こえないか……もしかして本当に居ないのか?」

「どうする九条さん、この事を斡旋所に報告するかい?」

「……いや、まだちゃんと確かめた訳じゃ無いからそれは止めておこう。適当な事を報告して誰かが危険な目に遭うのは避けたいからな。」

「それじゃあこの後は?」

「……とりあえず周囲を調べてみよう。もしモンスターがダンジョンの外に出たなら何か痕跡が残ってるかもしれないからな。」

「了解した。」

「任せて。」

「うふふ、頑張ります。」

それからしばらく遺跡の周囲を全員で調べ回ってみたのだが、モンスターの痕跡を見つける事は出来なかった………

「ダメだな、何にもねぇぞ。」

「うむ、だとしたら……」

ロイドが神妙な面持ちで暗くじめっとした階段の下を見つめたその瞬間、俺の顔にぽつりと冷たい物が降ってきた。

「やっべ、雨が降ってきたみたいだな。」

「おや、それじゃあ急いで雨具を着るとしようか。」

「はい、雨で髪が濡れてしまうのは避けたいですから。」

「私も服が濡れるのは嫌。」

俺達がそれぞれ雨具を取り出して羽織った直後、ぽつぽつと降っていた雨は次第に勢いを増してきて本降りになってしまった。

「あーあーまた下に水が流れ込んでいくぞ……」

「この調子だと、ダンジョンの内部は色々と酷そうだね。」

「……ここに入る時は長靴必須。」

「うふふ、確かにそう……って、あら?」

「ん、どうかしたのかイリス?」

「……すみません、階段の下から何か聞こえてきませんか?」

「え?」

イリスの言葉を聞いて互いに顔を見合わせた俺達は黙って階段の下を見つめると、意識を集中させてみた………そうすると、雨の音に混じって甲高い鳴き声の様な物が聞こえてきた?!

「お、おい……これってまさか………」

「あぁ、間違いなくこのダンジョンには何かが潜んでいる様だね。」

「えぇ、それがどういうモノなのかは分かりませんけどね。」

「……わくわくしてきた。」

「いや、今日は行かないからな。」

「……残念。」

「ったく……それにしてもこの鳴き声、どうして急に聞こえてきたんだ?」

「恐らくだけど、この雨の影響だと思うよ。」

「そうですね、私もそう思います。」

「まぁタイミング的にはそうか……よしっ、とりあえず今日は引き上げるとするか。どんな感じの鳴き声なのか確認も出来たしな。」

「あぁ、それじゃあ戻るとしようか。」

(うぅ……この鳴き声、何だか不気味ですね。)

(だな………)

聞こえてきた変な鳴き声が気になりつつもその場を後にした俺達は、斡旋所で討伐クエストと納品分の報酬を受け取ると家に帰って行くのだった。

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