おっさんの異世界生活は無理がある。
第192話
「…だか…ダメ…す……ば!」
「………ぁ……?」
湿気でジトッとした暗い部屋の中で目を覚ますと、廊下の方からマホの怒った様な声が微かに聞こえてきた。
「ふぁ~……ったく、朝っぱらから元気だねぇ……」
あくびをしながらもそもそとベッドから這い出た俺は、頭を軽く掻きながら部屋を出て行こうとして扉を開けたのだが……何故かイリスの背中に抱き着いているマホの姿が目の前に現れた……
「………お前ら、人の部屋の前で何をやってんだ?」
「あっ、おはようございますおじさん!それが聞いて下さいよ、イリスさんが!」
「うふふ、おはようございます九条さん。もう起きてしまったんですね。」
「そりゃ部屋の前で騒がれたら起きるわ……それよりイリスがどうしたんだマホ?」
「それがですね!イリスさんったら私達の目を盗んでおじさんの部屋に侵入しようとしてたんですよ!」
「……侵入?」
「誤解ですよマホさん。僕は朝食が出来たから九条さんを起こしてあげようと思っただけです。」
「それだったら黙って行かなくても良いじゃないですか!」
「すみません、うっかり伝え忘れてしまったみたいです。」
「むぅー!そんな事ばっかり言って!」
「あー落ち着けってマホ。とりあえずイリスの侵入に関してはお前のおかげで未遂に終わったんだから、今はリビングに行って朝飯にするとしようぜ。」
「ぶぅ……おじさんがそう言うなら良いですけど……でもイリスさん!次はおじさんの部屋に勝手に入ろうとしたらダメですからね!」
「うふふ、分かりました。」
……本当に分かってるのかどうか怪しい感じで微笑むイリスを見ながら扉に鍵でも付けようかしら?……なんて考えながら2人と廊下で別れて洗面所に向かった俺は、顔を洗ったりして寝ぼけた頭をシャキッとさせた後にリビングに向かった。
「おはよう九条さん。」
「おはよう。」
「あぁ、おはようさん。」
ロイドとソフィと挨拶を交わしながらいつもの様にマホの隣に座った俺は、全員の顔を見渡した後に手を合わせて頂きますと告げて朝飯を食べ始めた……そのすぐ後、床が堅い石材で造られてる武器を置く専用の場所に蝶の羽みたいな形をしたデカくて物騒な両刃の斧が立て掛けられているのがいるのが視界に入ってきた。
「なぁ、あれってもしかして………イリスの武器か?」
「はい、そうですよ。」
「……ちょっとサイズ感がおかしくね?」
「うふふ、ロイドさんにも同じ様な事を言われましたね。」
「え、そうなのか?」
「あぁ、イリスの体格とほぼ同等の斧だったからね。そんな物をきちんと扱えるのか一瞬だけ疑問に感じたが、片手で軽々持っていたのを見て大丈夫だと確信したよ。」
「か、片手で軽々だと?………イリス、悪いんだが少し持ってみてもいいか?」
「えぇ、勿論です。」
ニコッと微笑んだイリスに許可を貰った俺は椅子から立ち上がると、置かれていた斧の前に立って軽く深呼吸を繰り返していた。
「おじさん、それかなり重たいですから気をつけて下さいね。」
「私も少しだけ触らせて貰ったが、流石に片手は無理だったよ。」
「同じく。」
「……マホはともかく、そこそこレベルの高い2人でもそんな感じなのかよ。」
こりゃマジで気合を入れないと色々と危ないかもしれないな……よしっ、そんじゃ慎重に持ち上げてみるとしますかねぇ。
「よっこいしょっと………おぉ、確かに結構重いな。」
「うふふ、九条さんは片手でも持ち上げられるんですね。」
「あぁ、でも流石に軽々とはいかないなっと……ふぅ……」
持ち上げた斧を慎重に元の場所に戻した俺は軽く息を吐き出して座っていた椅子に戻ると、こっちを見ているイリスと目を合わせた。
「イリス、マジであの斧を使って戦ってるのか?」
「はい、かなりの重量があるので大抵のモンスターは真っ二つに出来ますよ。」
「そ、そうか……なんとも頼もしい事だな……」
メチャクチャ物騒な事をサラッと言ったイリスに思わず苦笑いを浮かべていると、紅茶の入ったティーカップを口につけたロイドがこっちを見て小さく手を上げた。
「そう言えば九条さん、今日の討伐クエストはどういう物を受ける予定なんだい?」
「昨日と同じの?」
「いや、昨日は結構な数のモンスターを討伐したから同じクエストは張り出されては無いだろ。」
「それじゃあどんなクエストを受けるつもりなんですか?」
「そうだなぁ……出来れば依頼のあったダンジョン付近に関連してる討伐クエストを受けたいんだよ。変な鳴き声ってのがどんなのか気になるしさ。」
「ふむ、それに実際に鳴き声を聞いてみれば何か分かるかもしれないね。」
「わくわく。」
「……ソフィ、言っておくけどダンジョンに挑む訳じゃ無いからな。」
「……………分かった。」
「おい、その妙な間は何なんだ。」
そっぽを向いたソフィに訝し気な視線を送っていると、イリスが口元に手を当ててくすくすと笑い出した。
「うふふ、皆さんと一緒にクエストを受けられるなんて何だか楽しみですね。」
「……イリス、危ないと思ったら絶対に俺達の後ろに隠れろよ。」
「はい、分かりました。」
「よしっ、そうと決まればさっさと食って支度を済ませるか。今日はまだ雨が降ってないみたいだし、天気が変わる前にクエストを終わらせちまおうぜ。」
……それからしばらくして朝食を食べ終わった俺達は、少しだけ休憩を取った後に装備を整えると家を出て曇り空の下を歩きながら斡旋所に向かって行くのだった。
「………ぁ……?」
湿気でジトッとした暗い部屋の中で目を覚ますと、廊下の方からマホの怒った様な声が微かに聞こえてきた。
「ふぁ~……ったく、朝っぱらから元気だねぇ……」
あくびをしながらもそもそとベッドから這い出た俺は、頭を軽く掻きながら部屋を出て行こうとして扉を開けたのだが……何故かイリスの背中に抱き着いているマホの姿が目の前に現れた……
「………お前ら、人の部屋の前で何をやってんだ?」
「あっ、おはようございますおじさん!それが聞いて下さいよ、イリスさんが!」
「うふふ、おはようございます九条さん。もう起きてしまったんですね。」
「そりゃ部屋の前で騒がれたら起きるわ……それよりイリスがどうしたんだマホ?」
「それがですね!イリスさんったら私達の目を盗んでおじさんの部屋に侵入しようとしてたんですよ!」
「……侵入?」
「誤解ですよマホさん。僕は朝食が出来たから九条さんを起こしてあげようと思っただけです。」
「それだったら黙って行かなくても良いじゃないですか!」
「すみません、うっかり伝え忘れてしまったみたいです。」
「むぅー!そんな事ばっかり言って!」
「あー落ち着けってマホ。とりあえずイリスの侵入に関してはお前のおかげで未遂に終わったんだから、今はリビングに行って朝飯にするとしようぜ。」
「ぶぅ……おじさんがそう言うなら良いですけど……でもイリスさん!次はおじさんの部屋に勝手に入ろうとしたらダメですからね!」
「うふふ、分かりました。」
……本当に分かってるのかどうか怪しい感じで微笑むイリスを見ながら扉に鍵でも付けようかしら?……なんて考えながら2人と廊下で別れて洗面所に向かった俺は、顔を洗ったりして寝ぼけた頭をシャキッとさせた後にリビングに向かった。
「おはよう九条さん。」
「おはよう。」
「あぁ、おはようさん。」
ロイドとソフィと挨拶を交わしながらいつもの様にマホの隣に座った俺は、全員の顔を見渡した後に手を合わせて頂きますと告げて朝飯を食べ始めた……そのすぐ後、床が堅い石材で造られてる武器を置く専用の場所に蝶の羽みたいな形をしたデカくて物騒な両刃の斧が立て掛けられているのがいるのが視界に入ってきた。
「なぁ、あれってもしかして………イリスの武器か?」
「はい、そうですよ。」
「……ちょっとサイズ感がおかしくね?」
「うふふ、ロイドさんにも同じ様な事を言われましたね。」
「え、そうなのか?」
「あぁ、イリスの体格とほぼ同等の斧だったからね。そんな物をきちんと扱えるのか一瞬だけ疑問に感じたが、片手で軽々持っていたのを見て大丈夫だと確信したよ。」
「か、片手で軽々だと?………イリス、悪いんだが少し持ってみてもいいか?」
「えぇ、勿論です。」
ニコッと微笑んだイリスに許可を貰った俺は椅子から立ち上がると、置かれていた斧の前に立って軽く深呼吸を繰り返していた。
「おじさん、それかなり重たいですから気をつけて下さいね。」
「私も少しだけ触らせて貰ったが、流石に片手は無理だったよ。」
「同じく。」
「……マホはともかく、そこそこレベルの高い2人でもそんな感じなのかよ。」
こりゃマジで気合を入れないと色々と危ないかもしれないな……よしっ、そんじゃ慎重に持ち上げてみるとしますかねぇ。
「よっこいしょっと………おぉ、確かに結構重いな。」
「うふふ、九条さんは片手でも持ち上げられるんですね。」
「あぁ、でも流石に軽々とはいかないなっと……ふぅ……」
持ち上げた斧を慎重に元の場所に戻した俺は軽く息を吐き出して座っていた椅子に戻ると、こっちを見ているイリスと目を合わせた。
「イリス、マジであの斧を使って戦ってるのか?」
「はい、かなりの重量があるので大抵のモンスターは真っ二つに出来ますよ。」
「そ、そうか……なんとも頼もしい事だな……」
メチャクチャ物騒な事をサラッと言ったイリスに思わず苦笑いを浮かべていると、紅茶の入ったティーカップを口につけたロイドがこっちを見て小さく手を上げた。
「そう言えば九条さん、今日の討伐クエストはどういう物を受ける予定なんだい?」
「昨日と同じの?」
「いや、昨日は結構な数のモンスターを討伐したから同じクエストは張り出されては無いだろ。」
「それじゃあどんなクエストを受けるつもりなんですか?」
「そうだなぁ……出来れば依頼のあったダンジョン付近に関連してる討伐クエストを受けたいんだよ。変な鳴き声ってのがどんなのか気になるしさ。」
「ふむ、それに実際に鳴き声を聞いてみれば何か分かるかもしれないね。」
「わくわく。」
「……ソフィ、言っておくけどダンジョンに挑む訳じゃ無いからな。」
「……………分かった。」
「おい、その妙な間は何なんだ。」
そっぽを向いたソフィに訝し気な視線を送っていると、イリスが口元に手を当ててくすくすと笑い出した。
「うふふ、皆さんと一緒にクエストを受けられるなんて何だか楽しみですね。」
「……イリス、危ないと思ったら絶対に俺達の後ろに隠れろよ。」
「はい、分かりました。」
「よしっ、そうと決まればさっさと食って支度を済ませるか。今日はまだ雨が降ってないみたいだし、天気が変わる前にクエストを終わらせちまおうぜ。」
……それからしばらくして朝食を食べ終わった俺達は、少しだけ休憩を取った後に装備を整えると家を出て曇り空の下を歩きながら斡旋所に向かって行くのだった。
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