おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第187話

「ったく、頼りにならない仲間達だなってあぶなっ!?おいっ!何で俺に向けて魔法を撃つんだよ!」

「……悪口を言われたから。」

「悪口って言うか事実だろうが!ってうぉ!?ロイド!お前もしっかりモンスターを狙えっての!」

「すまない、つい手が滑ってしまった。」

「ぐっ!それはあまりにも白々しすぎるだろっと!」

2人に文句を言いながら体が泥で出来ているゴーレムのモンスターが飛ばしてきた土の塊をぬかるんだ地面に転がり込む様に躱した俺は、体勢を立て直すと足に魔力を込めて一気にゴーレムに突っ込んでいくとすれ違い様にその首を跳ね飛ばした!

……そして背後からドシャッと土の崩れる音を聞いた後、俺はため息を零しながら周囲を見渡して他にモンスターがいない事を確認してホッと胸を撫で下ろしていた。

「よしっ、これで討伐クエスト達成だな………はぁ、なんでこんな事してんだか。」

泥だらけになった武器と冒険者用の雨具を眺めて肩を落とした俺は、朝からずっと降っている雨の音を聞きながらこっちに向かって歩いて来た2人に目を向けた。

「九条さん、お疲れ様。」

「……お疲れ。」

「お疲れさん……ってお前ら、さっきわざと俺に魔法を撃ちやがっただろ。」

「おや、わざと撃ったとは心外だね。まぁ九条さんが言うには私達は頼りにならない仲間達らしいから、そこは許して欲しい物だけどね。」

「同じく。」

「あのなぁ……頼りにならないってのはそう言う事じゃねぇよ!」

「おや、それじゃあどういう部分が頼りにならないのか説明してくれるかい?」

「どの部分って、そんなのイリスの事に決まってるだろうが!お前らもマホも2日で篭絡されやがって!流石に頼りにならなさすぎだろ!?」

イリスが恐るべき目的を告げたその次の日、最初は警戒心を抱いてたマホとロイドとソフィは陽が暮れる頃にはすっかり仲良くなってやがった!

「ふふっ、確かにその事については反論出来ないね。」

「うん、でもしょうがない。」

「何がしょうがないんだよ?!俺を護ると決めた時の覚悟は何処に行ったんだ!?」

「九条さん、私達はその決意を忘れた訳では無いよ。でもソフィが仕方が無いと言う気持ちも分かるだろ?イリスは言動こそアレだが、朝昼晩と美味しいご飯を用意してくれて掃除も洗濯も進んでやってくれる。そんな良い子を警戒し続けるというのは、流石に無理があると思わないかい?」

「そ、そりゃ…確かにそうだが……」

確かにロイドの言う通りイリスの作った飯は物凄く美味いし、そのおかげで活力が出てこうしてクエストにも来てる訳だけどさ……あぁもう!これじゃあ俺だけが悪者みたいじゃねぇかよ!

「それならば、もう少しイリスに対して普通に接しても良いんじゃないかい?」

「いつまでも警戒心を露わにしてるとイリスがかわいそう。」

「おい!それじゃあ僕のモノにするって狙われてる俺の立場は?!」

「そこはほら、モテる男の特権と思えば良いんじゃないかな。」

「いや、流石にそれはねぇだろ……」

「ふふっ、まぁそれは冗談としてだ。」

「……冗談なのかよ。」

「私は好意を抱いてくれている相手にそこまで警戒する必要は無いと思うよ。イリスも九条さんに嫌われるのは避けたいだろうからね。」

「うん、私もそう思う。」

……微笑んでるロイドといつもの様に無表情のソフィにジッと見つめられた俺は、バカデカいため息を吐き出し泥の付いた手でかぶってる雨具のフードに手を置いた。

「……分かったよ、今後はもうちょい警戒心を薄めて接してみるわ。」

「あぁ、それが良いと思うよ。」

「……ただ、もし何かあったら絶対に助けてくれよ。」

「勿論、その時は一切の容赦はしないよ。」

「一瞬で終わらせる。」

「……出来れば穏便にな。」

頼りになるのかならないのか分からないロイドとソフィと話していると降っている雨が少しずつ強くなってきたので、俺は手にしていた武器を腰の鞘に仕舞って2人の方に改めて向き直った。

「さてと、そろそろ街に戻るとするか。雨に打たれて体も冷えたからな。」

「うん、早くお風呂に入りたい。」

「そうだね……ってそう言えば九条さん。斡旋所で頼まれた件はどうするんだい?」

「あぁ、アレの事か……うーん、俺はぶっちゃけ引き受けたくはねぇかな。」

……イリスの作ってくれた昼飯を食べて元気になったソフィのリクエストを聞いて久しぶりにクエストを受けに来た俺達は、受付でとある頼まれ事をされていた。

何でも街の東側に広がってる森の奥にある遺跡型ダンジョンの中から奇妙な鳴き声が聞こえてくるから、出来れば俺達に調査をしてきて欲しいそうだ……まぁ強制では無いらしいから別に断っても良いんだが、出来る事なら俺はやりたくない!ただ……

「九条さん、私は引き受けたい。」

「……その理由は?」

「遺跡の奥から響いてくる奇妙な鳴き声はきっとモンスターのだと思う。」

「……だからそいつと戦ってみたいってか?」

「その通り。」

「な、何の迷いも無く断言しやがったな……まぁ分かってたけどさ。」

この戦闘大好きっ子め………目をキラキラさせながら俺を見上て来るんじゃない!うっかり引き受けてみようって言いそうになるだろうが!

「それでどうするんだい九条さん。」

「……少しだけ考える時間をくれ。ダンジョンの外に聞こえてくる鳴き声って事は、どっかのバカがボスを出現させたって可能性があるからな。」

「確かに、その可能性は否めないね。」

「わくわく。」

「おいこら、まだ行くと決めた訳じゃ無いんだからワクワクするんじゃない!ほら、今日はとりあえずもう帰るぞ。」

「ふふっ、了解したよ。」

「……九条さん、なるべく早く決めてね。」

ロイドとソフィと遺跡型のダンジョンがある森を背にして街に向かって行った俺は、体に当たる雨の音を聞きながら色々な事で頭を悩ませる事になるのだった。

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