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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第157話

お姫様が課題に取り掛かってから大体2時間弱が経過した頃、俺は必要なくなった本を棚に戻しながら思わずため息を漏らしていた……

「はぁ……意外と疲れるなこの作業……」

分厚く重量のある本を運ぶために何度も行ったり来たりを繰り返していたせいで、肩がだいぶ凝って来たんですけど………マジで人使いが荒いなあのお姫様……正直、さっきした決意を撤回してさぼってしまいたいぐらいなんですけど。

「…まぁ、そんな事が出来たら苦労しないんだけどな。」

もしサボってるのがお姫様に見つかったりしたら……考えるだけでも恐ろしい。
……でも目当ての本を運んですぐに別の本を要求されると、やる気がだいぶ無くなるんだよ……あーあー、早く課題を終わらせてくれねぇかなぁ。

「九条殿、ミアお嬢様が要望している本がありましたよ。」

「あっ、分かりました。すぐに向かいます。」

心の中で呟いていた愚痴を振り払って部屋の奥にある本棚に向かった俺は、セバスさんが持っていた本を受け取って指示された通りのタイトルかどうかを確認した。

「……はい、間違いなくこの本ですね。ありがとうございます。」

「いえいえ、それでは早速ミアお嬢様の元に持って行ってください。」

「分かりまし………うーん……」

「おや、唸り声をあげてどうかなさいましたか?もしかして本が間違っていたでしょうか?」

「あぁいえ、本のタイトルは合ってるんですけど………あの、ちょっと聞きたい事があるんですけど良いですか?」

「はい、私に答えられる事ならば。それで聞きたい事と言うのは?」

「えっとですね、さっきからミアお嬢様の指示に従って本を探しては持って行ってるんですけど………これって本当に必要な本なんですか?」

「…どういう事でしょうか?」

「んーつまりですね。これだけ大量にある本の中身をちゃんと覚えていて、その上でこの本を選んだのかちょっと疑問に思ってしまって……そうじゃなかったら、この本は適当に選ばれたって事になりますから。」

「あぁなるほど、ミアお嬢様が適当に本を選んでいるのではないかと不信感を抱いている訳でございますね。」

「……まぁ、そんな所ですね。」

セバスさんが怒り出すんじゃないかと思って一瞬ためらってから返事をして反応を窺っていたんだが……そんな俺の予想に反してセバスさんは穏やかに微笑んでいた。

「ほっほっほ、確かにその様に思うのも無理はないかもしれませんね。ですがどうぞご安心下さい。ミアお嬢様は本の内容を理解した上で指示を出しています。
そうでなければ、本の名前を間違えず正確に伝える事も難しいと思いませんか。」

「……確かにそうですね。」

「お分かり頂けた様で何よりでございます。」

小さく頭を下げて誇らしげに微笑んでいるセバスさんを見て、俺は改めてお姫様の凄さと言う物を実感していた………まさかここにある本を全て理解してるなんてな。
ったく、どんだけ規格外のスペックの持ち主なんだよ………これで性格が良かったら最高なんだけどな。

「ちょっと、いつまで時間を掛けるつもり?」

「おうわっ!い、いつの間に後ろに?!」

「ついさっきよ。それより探す様に言った本はまだ見つからないの?これ以上時間を掛ける様なら……」

「あ、いや!本ならさっき見つけました!ほらこれ!」

「それじゃあさっさと持ってきなさいよ。アンタに時間を無駄にしてる暇なんて無いんだから。」

「は、はい……」

「ほっほっほ。ミアお嬢様、課題はどの程度終わったのですかな。」

「そうね。ざっと8割ぐらいって所かしら。」

「え、えぇ!?後1時間ぐらい残ってるのに、もうそんなに終わらせたんですか?」

「別にそんな驚く様な事じゃないわ、いつもの事よ。それよりこの後は学園の課題を片付けなきゃいけないんだから、アンタも奉仕活動を全力でこなしなさい。」

「わ、分かった……って、学園の課題?」

「だからそう言ってるでしょ。なによ、もしかして学園の方の課題は自分に関係ないとか考えてるわけ?言っておくけどそんな事はないから。アンタは私に奉仕する立場なんだから、文句言わずに働きなさいよ。」

「お、おぅ……」

まさかお姫様が学園に通っているとは………ハッ!まさかヒイロが主人公としての活躍を見せなかったのは、学園の方にお姫様のフラグを建築した主人公が居るって事なんだろうか?……うん、そうに違いない!くぅ、まさかそんなベタな展開を忘れていたとは一生の不覚だ!何百冊とラノベを読んでいるのに情けない!でも、それならそれで楽しみが増えたから良しとしよう!待っていろよ学園に居る主人公!お姫様がヒロインとして覚醒している姿を絶対に見せてもらうからな!アーハッハッハ!!

「……きもっ」

「ちょ!急にきもいとか言わないで下さい!おっさんの心は簡単に砕ける様になってるんですからね!」

「知らないわよそんなの。アンタがいきなりニヤニヤしながら私を見てきたのが悪いんでしょうが。」

「そ、それは……そうですね……」

「自覚したならさっさと他の本を探して来なさい。何度も言うけど、課題が終わらなかったから奉仕義務の期間を延長するから。」

「は、はい!それじゃあ探してきます!」

「それでは私もご一緒に。」

「セバス・チャンは私と来なさい。この男にはしばらく1人で動いてもらうから。」

「えっ?」

「もしかして私が気づいて無いとでも思った?アンタ、さっきからセバス・チャンが見つけた本を運ぶだけだったでしょ。これから先は自力で見つけなさい。それじゃあ行くわよ、セバス・チャン。」

「かしこまりました。それでは九条殿、頑張ってくださいね。」

「あ、え……」

止める間もなく行ってしまった2人の背中を見送った俺は、数百冊の本に囲まれながらしばし呆然としていた………こ、この中から目当ての本を1人で探すのか?
マジで?…………それはあまりにも無理ゲーすぎじゃないですかぁ!?!?

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