おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第149話

太陽が沈み始めた頃にセバスさんが最後に案内してくれた場所は、王城のちょうど真ん中部分にあるとても綺麗な中庭だった。

中央部分にはお馴染みの大きな噴水が設置されていて、少し離れた場所には年季の入った白くて綺麗なテーブルと同じ色の椅子が幾つか置いてあった。
そして丹精込めて手入れがされている幾つかの花壇や生垣、そして年代物だと感じられる一本の大樹……うん、マジで凄すぎて感動してしまうな。

「…さて、この辺りで案内を終えると致しましょうか。九条殿、お疲れ様でした。」

「あっ、お疲れ様でした。それと、今日は案内をありがとうございました。おかげでかなり助かりました。」

「ほっほっほ、お役に立てた様で何よりです。」

俺は髭を撫でて微笑むセバスさんを見ながら、案内してもらった場所を思い出していた……使用人専用の広い食堂とか、警備兵が使う訓練所、そして立ち入る事が禁止となっている宝物庫……うん、城が広すぎて向かう時間と案内を組み合わせたらこの3つしか回れなかったね!……うん、後で手帳にある地図を見て色々確認しとくか。

「…それにしても、やっぱこの中庭って凄いですよね。特にあの大樹の存在が物凄いと言うか、歴史を感じます。」

「えぇ、あの大樹は何百年もの月日を過ごしていますからね。私もここに来るたびに同じ様に感じています。」

「はぁ…何百年も……ご利益がありそうですから、ちょっと触れてみたいですね。」

「どうぞどうぞ。ご遠慮なさらずに触れてみて下さい。」

「えっ、良いんですか?」

「はい。使用人の間では触れると力を分けて貰えると評判なんですよ。例えば怪我の治りが早くなったり、不幸続きだったのが一変して運がよくなったり。」

「そうなんですか…じゃあ、遠慮なく。」

セバスさんの許可をもらった俺は意気揚々と大樹に近寄って行くと、そっと木の幹に触れてみた…………………うん、きっと力を分けて貰えたと思う!全然そんな感じがしなかったけどさ!きっと大丈夫だよな!……うん、大丈夫……な、はず。

「九条殿、そろそろよろしいでしょうか?」

「あ、はい!なんか、とっても力を貰ったって感じです!」

「ほっほっほ、それは良かった。それならば、明日からの奉仕活動も無事にこなす事が出来そうですね。」

「あ、あははは……そうですねぇ……」

「さて、それではそろそろ九条殿が使うお部屋に参りましょうか。」

「い、いよいよですか……あの、一体どんな場所なんですかそこって?」

「それは着いてからのお楽しみと言う事で…では、行きましょうか。」

「は、はい……正直、楽しみにしている心の余裕はあんまないんですけどね…」

セバスさんに聞こえない様に小さな声で呟いた後、俺は階段を上がり何故か3階に上がって来ていた。

「あの、セバスさん。この階って確か……」

「はい、この階は玉座の間の他に重要なお客人様が利用する為のお部屋。
そして私の私室があるだけの階となっております。」

「ですよね……え、まさか…」

「ほっほっほ、そのまさかでございます。九条殿にはそのお客様用のお部屋をご利用して頂きます。」

「え、えぇ?!いやいやだって、俺は別に重要なお客様とかじゃないですけど良いんですか?後で膨大な請求を求められたりとかは……」

「ほっほっほ、その様な事はございません。それにお客様用のお部屋を九条殿に利用する様に言われたのは、他でもない国王陛下自身ですのでご遠慮なさらず。」

「…国王陛下が?」

「はい。奉仕義務を突然課せられた者に対して、なるべく不自由を感じさせない様にせよとのお達しです。」

「……だから、お客様用の部屋を?」

「その通りでございます。部屋の中には風呂もトイレもありますので、他の使用人と不用意に接触して気を使うという事も少ないでしょう。」

…あれ、もしかして奉仕義務って最高の罰なんじゃね?だって王城の客間がタダで使えるんだからさ!これは奉仕義務の期間を延長してもお釣りがくるのでは?!

「ただ1つ注意して頂きたいのですが、居心地が良いからと奉仕義務の期間をわざと延長する様な事が無い様にお願い致します。もしもその様な事が起きた場合、すぐにお部屋を移動してもらいます。」

「……えっと、それはどういったお部屋で?」

「そうですね…訓練所にある鉄の格子で囲われたお部屋でしょうか。」

「な、なるほど分かりました!奉仕義務をきっちり期間内で終わらせて見せます!」

「はい、お願い致しますね。」

…にっこりと微笑んだセバスさんに若干の恐怖心を覚えた俺は、絶対に奉仕義務の期間を延長する事なく無事にやり遂げると心に誓うのだった!!

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