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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第143話

翌朝、集合の1時間ぐらい前に目覚めた俺はだらだらと身支度を整えるとラノベを読みながら適当に時間を潰していた。

「……そろそろ出るか。」

時計を確認して集合の5分前になったのを確認した俺はバッグを担いで部屋の外に出ようとした……その瞬間、部屋の扉がドンドンドンと勢いよく叩かれだした。

「九条のおっさん!そろそろ集合時間になるから一緒に行こうぜ!」

「……ったく、朝から元気すぎだろ。」

ヒイロの声に呆れながら後頭部を掻いた俺は、ため息を吐きながら扉を開けた。
そしたら、俺の視界にイケメンで爽やかな少年が歯を見せながらニカッと微笑む光景が飛び込んできた……はぁ…若いって素敵ねぇ……俺にこんだけの元気はねぇな。

「おっす!どうしたんだ九条のおっさん?ちっとも元気無さそうだけど。」

「……朝から元気なのは若い奴の特権って事だよ。」

「ふーん、よく分かんねぇけど集合場所に急ぐとしようぜ!遅刻なんてしちまったら隊長さんにメチャクチャ怒られそうだからな!」

「はいよ、俺のそれについては同意見だからな。」

軽い足取りで前を歩くヒイロの後に続いて集合場所である受付の前まで向かったんだが、朝からこの景色は胃もたれするな…どこを見渡してもイケメンしかいねぇ……

「って、あれ?」

「ん?どうかしたのか宿屋の外を見ながら首を傾げたりしてさ。」

「いやほら、出入口の所に女の子が突っ立ってるからちょっと気になってな。」

「女の子?……って、あっ!」

俺の言葉を聞いて宿屋の外を見たヒイロは驚きの声を上げて女の子達に走り寄って行った……って、あらら?もしかしてあの子達って……あぁ、やっぱりヒイロの仲間の子達か…もしかして心配してわざわざ追いかけて来たって事か?…愛されるなぁ!なのにその気持ちに気づかないヒイロときたらもう…まぁはたから見てる分には面白いから別に良いんだけどさ!

「皆さんおはようございます。時間通り集合して頂けたようで何よりです。」

ピリッとした声によりこの場に居る全員に緊張感が走った直後、隊長さんがいつもの様に眼鏡を押し上げながら登場して受付の前にやって来た……ヒイロは外で女の子達と外でイチャイチャしてるんだけどね!……羨ましいな畜生が!!

「それではこれより皆さんには、我々と共に王城に向かって頂きます。
先に忠告しておきますが、もし国王陛下達に何かしらの危害を加えようと考えそれを行動に移した場合……命の保証は出来ませんのでそのおつもりで。」

おぉ怖っ!眼鏡の奥の瞳が鋭く冷たくなってるぜ…こりゃマジで殺す気満々だな…
こりゃ、ヒイロが勘違いされてどうのこうのって展開も考えれるぞ…いやぁ、主人公が身近にいると妄想がはかどってしょうがねぇなぁ!何だかワクワクしてきたぜ!

「…忠告を聞き入れて頂けたようで何よりです。それでは王城に向かいますので、我々の指示に従って行動をお願いします。」

隊長さんはそう言うと周囲に居た警備兵に目配せをした。それを見て小さく頷いた警備兵達は大声を出しながら俺達を馬車に誘導し始めた……その時、疲れきった感じのヒイロが人込みをかき分けて戻ってきた。

「はぁーあ…マジで疲れたぁ……」

「…何だか知らんがお疲れさん。さっきの子達はもしかして?」

「あぁ、俺の仲間達だ…なんでも、俺が心配でわざわざ追いかけて来たらしい…」

「へぇー仲間思いの良い子達だな。」

「いやだって、明日には帰れるって言ってあったんだぜ?なのにわざわざ迎えに来るとかさぁ……金の無駄遣いだと思うんだけど、そう言ったら言ったで新しい子がどうのこうのって……まったくもって意味が分からん……」

「ははは……だろうなぁ……」

…なるほどね、ヒイロの仲間達も新しいライバルの登場の戦々恐々としてる訳か。
って事は、大陸中にヒイロに攻略された女の子が沢山居そうだなぁ………チッ!

「そこのお二人!早く移動をお願いします!」

「あっはい!……って、何処に移動すんだ?」

「あぁ、そう言えばヒイロはさっきの説明を聞いてなかったか。これから王城に向かうから、警備兵の指示に従って馬車に乗るんだよ。」

「なるほどそういう事か!じゃあ怒られる前に、とっとと行くとしようぜ!」

「りょーかい。」

俺達は警備兵の指示に従って列の最後尾に並ぶとしばらく待機していた。
少しして列が進んだのでそれに合わせて進んでいると、少し離れた場所からヒイロの仲間達が心配そうにこっちを見つめている事に気が付いた。

「ったくアイツら…時間が掛かるから大通りで買い物でもしてろって言ったのに…」

「そんだけ心配なんだろ……色々となぁ。」

「俺はそんな心配される様な子供じゃねぇっての!」

ムッとした表情でそっぽを向いたヒイロを見ながら、俺はフラグが順調に構築されているのをビシバシと感じつつあった……

いいぞいいぞ…心配する彼女達の事を内心嬉しく感じつつも鬱陶しがりながら王城に向かったヒイロは、お姫様とハチャメチャな再会を果たす訳だ………そして時間が過ぎても帰って来ないヒイロの事を心配した彼女達は、王城に向かいお姫様と修羅場的な展開を迎えるんだな!

あぁ畜生!そんな素敵で楽しい展開を実際に見れないとか悔しくてしょうがねぇ!でもしょうがないよな!だって俺は、主人公と偶然知り合いになったモブのおっさんでしか無いからな!さぁヒイロ、頑張ってこのイベントを乗り越えてお姫様のハートを手に入れてハーレムを築き上げるんだぞ!俺は遠くの影からニヤニヤしながら応援してるぜ!んなっ!

「……はぁ、しょうがない。ちょっとあいつらと話してくるよ。」

「あぁ、いってらっしゃーい。」

ヒイロは呆れた様子で警備兵に事情を説明して彼女達に駆け寄っていったのだが…なにやら女の子達の表情が険しくなった気がするんだが?そんな事を思いながら馬車に乗る様に指示を受けた直後、ヒイロが小走りで戻ってきた。

「悪い、待たせたな。」

「いや、丁度良いタイミングだ。」

「なら良かった、そんじゃあ乗り込もうぜ。」

颯爽と馬車に乗り込んだヒイロの後に続いて乗り込んだ俺の目に入って来たのは、昨日と同じ場所で足を組みながら本を読んでいる隊長さんの姿だった。

「おーい!こっちだ九条のおっさん!」

「あぁ、分かった。」

ヒイロの声に返事をしながら昨日と同じ場所に座り込んだ直後、隊長さんが御者の警備兵に小声で何かの指示を出した。すると、外から笛の音が聞こえてきてゆっくりと馬車が動き出した。

俺はこれからヒイロに起きるであろうラノベ的な展開にワクワクしながら馬車の外を眺めると、大きく息を吐いてニヤリと笑うのだった。

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