おっさんの異世界生活は無理がある。
第140話
誰一人として喋らない馬車の中でしばらくジッとしていると、俺の隣に座っていたツンツン頭の主人公がスッと手を挙げて知的眼鏡に視線を送った。
「あの、ちょっと良いですかね?」
「おや、どうかしたのか少年?」
足を組んで絵になる感じで読書をしていた知的眼鏡は、主人公に話しかけられるとパタンと本を閉じて中指で眼鏡を押し上げて返事をした……本の挿絵とかで見かける分には何とも思わないが、実際に目の当たりにすると何故だかイラっとするな………やっぱりイケメンなんて滅びればいいのに…!
「ずっと黙ったままって言うのもキツイんで、色々と質問しても良いですか?」
「……なるほど、そういう事ならば分かった。何か聞きたい事があれば答えよう。
ただ全ての質問に答えられる訳じゃないから、そこは理解しておいてくれ。」
「了解です、それじゃあまず隊長さんの名前から聞いても良いですか?」
「そう言えばまだ名乗っていなかったな。私の名前は『オタイン・ルーク』。
王都警備隊の第一部隊を率いる隊長を務めている。君の名前は何て言うんだ?」
「あぁ、俺の名前は『ヒイロ』って言うんだ。よろしくなルークさん。
それじゃあ自己紹介も終わった所で早速質問させてもらうけど、国王陛下とお姫様はどうして黒髪黒目の男達を探し出して会おうとしてるんだ?一体何の目的が?」
うわぁ、この子マジで凄いな…初対面の人との距離の詰め方がメチャクチャ早い。しかも王都の警備兵を率いてる隊長相手に普通にタメ口だし…ってか、どうしてその質問を俺を挟んだ状態でしたんだよ!何だ本能的に色々察したのか流石主人公だね!でもその力は今発揮してほしくなったな大馬鹿野郎が!
「すまない。その容姿の男に聞きたい事があるという事は聞いているんだが、詳しい事は私も聞いていなくてな。」
「そうかなのか……」
っしゃあ!部隊を率いる隊長ですら詳しい事を聞いていないなら事の発端が俺だとバレるなんて事は絶対にないな!……いやちょっと待て、なんでそこで意味あり気に眼鏡をクイッと上げたんだ?なんだろう、凄く嫌な予感がするんだが………
「だがどうしてその容姿の男を探しているのか、それぐらいは説明出来るぞ。」
「え、そうなのか?だったらそれを聞かせてくれよ。」
「分かった、それじゃあ簡単に理由を説明させてもらおうか。」
隊長さんがそう告げた直後、俺はサッとうつ向いて表情を読まれない様にした!
だってこの説明を聞いた後に隊長さんと顔を合わせたら、確実に怪しまれる気がするからな!そんぐらいは読めてんだよ!流れ的にな!
「事の発端は数ヶ月前、王都で行われていたとあるイベントにある。」
「王都で行われてたイベント?……おっさん、何か心当たりとかあるか?」
「…へっ?い、いやぁ俺に特に心当たりはないかなぁ……てか、何で俺に?」
「ん?なんつーか、おっさんなら何となく知ってるかなーと思ったんだけど。」
「そ、そうか‥‥悪いな、期待に応えられなくてさ。」
「いやいや、おっさんが謝る事はねぇよ。そんじゃあ隊長さん、話の続きを頼む。」
「あぁ、そのイベントと言うのは国王陛下達が巨大なステージの上に乗りながら王都を練り歩くという物なんだがな……」
……あ、危ねぇ!!なんであのタイミングで俺にイベントの事を聞いて来たんだよこのヒイロって奴は!?どういう事?直感的にやっぱり俺が今回の事に関わってると分かってるって事か?!なんだやっぱりこいつ主人公かよ!マジで厄介すぎるぞ!
その後、ヒイロに警戒心を抱きながら隊長さんの話に耳を傾けていると話題はどんどん進んでいき黒髪黒目の男が姫様に招かれたという所に差し掛かった!
「へぇ、お姫様に手を差し伸べられてステージ上にねぇ……んで、それから?」
「その男は最初、羞恥心からなのか何なのかは分からないがステージとは反対方向に行こうとしていたのだ。」
「はぁ?折角のチャンスだってのに恥ずかしくて逃げ出そうとしたって事か?随分と勿体ない事をしようとしたんだな。」
「その通りだな。姫様に手を差し伸べられるなど、人生で一度あるかどうかという事なのにな」
いや、俺も勿体ないと思うけど呆れないでくれよ!真相はそうじゃないから!
悲鳴が聞こえたからそっちを優先しようとしただけなんだよ!だって言うのにさ!
「まぁその男は、結局民衆の後押しのおかげでステージに上がったのだがな。」
「なーんだ、単に勇気が出なかっただけのヘタレって事か……情けねぇな。」
「まぁそう言うな、あまりの恥ずかしさに逃げ出す事は誰にでもあるさ。」
「でも、年齢的に見て20代から40代の間なんだろ?…やっぱ情けなくね?」
グサッ!グサッ!っと、俺の心にナイフが刺さり若干涙目になりそうになっている間にも話はどんどんと次の展開に入っていく……!
「ふっ…まぁその議論は置いておくとして、問題はこの後に起こったんだ。」
「問題?一体何が起こったんだ?」
「うむ、実は私もその時に警備を担当していたのだが………」
え、嘘だろ?隊長さんもあの場に居たのか?いや警備隊を率いる隊長だったらあの現場に居るのは当たり前か畜生が!って言うかなんで今日だけで心臓がキリキリする様な自体が連続して起きるんだ!呪われてんのか俺は?!
「男がステージに上がってから十数秒後、驚くべき事態が起きたのだ。」
「……驚くべき事態?何が起きたんだ?」
「あぁ実はな……その男がステージ上から飛び出して、民衆の頭上を越えて行き路地の奥に消えて行ってしまったのだ。」
「は、はぁ?どいう事だよステージを飛び出して民衆の頭上をって……意味が分からねぇんだけど。」
「まぁそう思うのも無理はないだろう、私も同じ様に思ったのだからな。」
隊長さんが静かに目を閉じながらそう告げた瞬間、俺の中で逃げ出したい気持ちが物凄い勢いで高まり始めていた!いやだってこれもう確定しちゃったじゃねぇか!
今回の騒動の原因は俺だって事がさ!いやマジでどうしようこれ!?どこの誰に謝罪すれば許してくれますかね!?
「……あれ、もしかしてそいつの容姿が黒髪黒目だったから俺達は王都に連行されてるって事なのか?」
「そういう事になるな。」
「うわマジかよ…とんだとばっちりだな……おっさんも災難だったな、こんな面倒事に巻き込まれるなんてさ。」
「うん…そうだね……」
「はぁーったく…それにしても、まさかそいつを探す為だけにこんなに沢山の警備兵を使うなんてな。お偉いさんも何を考えているのか分かんないな。」
「だ、だよなぁ!なんでわざわざ逃げ出した男を探す為に警備兵まで使うかね!
まったくもって疑問しかないよなぁ!」
「お、おぅそうだな……隊長さん、そこん所の事情は聞いてないのか?例えば、その逃げ出した男が実は手配されている犯罪者だったーとかさ。」
「いや、後々になってその男の容姿を手配書を見比べてもらったが似ている物は無いと断言していらっしゃった。」
「そっか……じゃあ、なんでその男は逃げ出したんだろうな。おっさんなにか」
「し、知らないなぁ!全然心当たりは無いなぁ!あ、あれじゃないか?お腹が痛くてトイレに急いでたとかそんな理由じゃないか?知らないけどさ!」
「あぁ確かに、そんだけ急いでたって事はトイレかもしれないな。」
「まぁそこら辺の事情は、見つけ出した後にジックリ聞けばいいだろう。」
「それもそうか。まぁ、俺達には関係ない事だけどな!おっさん!」
「お、おう!へへへっ……!」
全身に冷や汗をかきながらヒイロに愛想笑いを返した俺は、隊長さんに気づかれない様に話を合わせ続けるのだった……!まさに地獄です!
「あの、ちょっと良いですかね?」
「おや、どうかしたのか少年?」
足を組んで絵になる感じで読書をしていた知的眼鏡は、主人公に話しかけられるとパタンと本を閉じて中指で眼鏡を押し上げて返事をした……本の挿絵とかで見かける分には何とも思わないが、実際に目の当たりにすると何故だかイラっとするな………やっぱりイケメンなんて滅びればいいのに…!
「ずっと黙ったままって言うのもキツイんで、色々と質問しても良いですか?」
「……なるほど、そういう事ならば分かった。何か聞きたい事があれば答えよう。
ただ全ての質問に答えられる訳じゃないから、そこは理解しておいてくれ。」
「了解です、それじゃあまず隊長さんの名前から聞いても良いですか?」
「そう言えばまだ名乗っていなかったな。私の名前は『オタイン・ルーク』。
王都警備隊の第一部隊を率いる隊長を務めている。君の名前は何て言うんだ?」
「あぁ、俺の名前は『ヒイロ』って言うんだ。よろしくなルークさん。
それじゃあ自己紹介も終わった所で早速質問させてもらうけど、国王陛下とお姫様はどうして黒髪黒目の男達を探し出して会おうとしてるんだ?一体何の目的が?」
うわぁ、この子マジで凄いな…初対面の人との距離の詰め方がメチャクチャ早い。しかも王都の警備兵を率いてる隊長相手に普通にタメ口だし…ってか、どうしてその質問を俺を挟んだ状態でしたんだよ!何だ本能的に色々察したのか流石主人公だね!でもその力は今発揮してほしくなったな大馬鹿野郎が!
「すまない。その容姿の男に聞きたい事があるという事は聞いているんだが、詳しい事は私も聞いていなくてな。」
「そうかなのか……」
っしゃあ!部隊を率いる隊長ですら詳しい事を聞いていないなら事の発端が俺だとバレるなんて事は絶対にないな!……いやちょっと待て、なんでそこで意味あり気に眼鏡をクイッと上げたんだ?なんだろう、凄く嫌な予感がするんだが………
「だがどうしてその容姿の男を探しているのか、それぐらいは説明出来るぞ。」
「え、そうなのか?だったらそれを聞かせてくれよ。」
「分かった、それじゃあ簡単に理由を説明させてもらおうか。」
隊長さんがそう告げた直後、俺はサッとうつ向いて表情を読まれない様にした!
だってこの説明を聞いた後に隊長さんと顔を合わせたら、確実に怪しまれる気がするからな!そんぐらいは読めてんだよ!流れ的にな!
「事の発端は数ヶ月前、王都で行われていたとあるイベントにある。」
「王都で行われてたイベント?……おっさん、何か心当たりとかあるか?」
「…へっ?い、いやぁ俺に特に心当たりはないかなぁ……てか、何で俺に?」
「ん?なんつーか、おっさんなら何となく知ってるかなーと思ったんだけど。」
「そ、そうか‥‥悪いな、期待に応えられなくてさ。」
「いやいや、おっさんが謝る事はねぇよ。そんじゃあ隊長さん、話の続きを頼む。」
「あぁ、そのイベントと言うのは国王陛下達が巨大なステージの上に乗りながら王都を練り歩くという物なんだがな……」
……あ、危ねぇ!!なんであのタイミングで俺にイベントの事を聞いて来たんだよこのヒイロって奴は!?どういう事?直感的にやっぱり俺が今回の事に関わってると分かってるって事か?!なんだやっぱりこいつ主人公かよ!マジで厄介すぎるぞ!
その後、ヒイロに警戒心を抱きながら隊長さんの話に耳を傾けていると話題はどんどん進んでいき黒髪黒目の男が姫様に招かれたという所に差し掛かった!
「へぇ、お姫様に手を差し伸べられてステージ上にねぇ……んで、それから?」
「その男は最初、羞恥心からなのか何なのかは分からないがステージとは反対方向に行こうとしていたのだ。」
「はぁ?折角のチャンスだってのに恥ずかしくて逃げ出そうとしたって事か?随分と勿体ない事をしようとしたんだな。」
「その通りだな。姫様に手を差し伸べられるなど、人生で一度あるかどうかという事なのにな」
いや、俺も勿体ないと思うけど呆れないでくれよ!真相はそうじゃないから!
悲鳴が聞こえたからそっちを優先しようとしただけなんだよ!だって言うのにさ!
「まぁその男は、結局民衆の後押しのおかげでステージに上がったのだがな。」
「なーんだ、単に勇気が出なかっただけのヘタレって事か……情けねぇな。」
「まぁそう言うな、あまりの恥ずかしさに逃げ出す事は誰にでもあるさ。」
「でも、年齢的に見て20代から40代の間なんだろ?…やっぱ情けなくね?」
グサッ!グサッ!っと、俺の心にナイフが刺さり若干涙目になりそうになっている間にも話はどんどんと次の展開に入っていく……!
「ふっ…まぁその議論は置いておくとして、問題はこの後に起こったんだ。」
「問題?一体何が起こったんだ?」
「うむ、実は私もその時に警備を担当していたのだが………」
え、嘘だろ?隊長さんもあの場に居たのか?いや警備隊を率いる隊長だったらあの現場に居るのは当たり前か畜生が!って言うかなんで今日だけで心臓がキリキリする様な自体が連続して起きるんだ!呪われてんのか俺は?!
「男がステージに上がってから十数秒後、驚くべき事態が起きたのだ。」
「……驚くべき事態?何が起きたんだ?」
「あぁ実はな……その男がステージ上から飛び出して、民衆の頭上を越えて行き路地の奥に消えて行ってしまったのだ。」
「は、はぁ?どいう事だよステージを飛び出して民衆の頭上をって……意味が分からねぇんだけど。」
「まぁそう思うのも無理はないだろう、私も同じ様に思ったのだからな。」
隊長さんが静かに目を閉じながらそう告げた瞬間、俺の中で逃げ出したい気持ちが物凄い勢いで高まり始めていた!いやだってこれもう確定しちゃったじゃねぇか!
今回の騒動の原因は俺だって事がさ!いやマジでどうしようこれ!?どこの誰に謝罪すれば許してくれますかね!?
「……あれ、もしかしてそいつの容姿が黒髪黒目だったから俺達は王都に連行されてるって事なのか?」
「そういう事になるな。」
「うわマジかよ…とんだとばっちりだな……おっさんも災難だったな、こんな面倒事に巻き込まれるなんてさ。」
「うん…そうだね……」
「はぁーったく…それにしても、まさかそいつを探す為だけにこんなに沢山の警備兵を使うなんてな。お偉いさんも何を考えているのか分かんないな。」
「だ、だよなぁ!なんでわざわざ逃げ出した男を探す為に警備兵まで使うかね!
まったくもって疑問しかないよなぁ!」
「お、おぅそうだな……隊長さん、そこん所の事情は聞いてないのか?例えば、その逃げ出した男が実は手配されている犯罪者だったーとかさ。」
「いや、後々になってその男の容姿を手配書を見比べてもらったが似ている物は無いと断言していらっしゃった。」
「そっか……じゃあ、なんでその男は逃げ出したんだろうな。おっさんなにか」
「し、知らないなぁ!全然心当たりは無いなぁ!あ、あれじゃないか?お腹が痛くてトイレに急いでたとかそんな理由じゃないか?知らないけどさ!」
「あぁ確かに、そんだけ急いでたって事はトイレかもしれないな。」
「まぁそこら辺の事情は、見つけ出した後にジックリ聞けばいいだろう。」
「それもそうか。まぁ、俺達には関係ない事だけどな!おっさん!」
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