おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第139話

知的イケメンと警備兵に連れられてやって来た街の広場には多人数が乗れる護送車が数台と、それを挟む様にして厳つい感じの馬車が停車してあった……その威圧感に思わず顔が引きつってしまった俺は、前を歩く知的イケメンに声をかけてみた。

「あの……もしかしてあの護送車っぽいのに乗って王都に行くんですか?」

「そうだ、乗り心地はあまり良くないが我慢してほしい。」

それだけ言うと知的イケメンはその馬車の方に静かに向かって行った。慌てて彼の後を追うと、馬車の周囲に待機していた王都の警備兵が知的イケメンに対してビシッと敬礼している姿が目に入って来た。

「お疲れ様です隊長!」

「お疲れ、首尾はどうだ。」

「ハッ!もう少しで黒髪黒目の男達の乗り込みが終わります!」

敬礼しながらそう答えた警備兵の言葉に小さく頷いた知的イケメンは、振り返って眼鏡を中指でクイッと上げながら俺の事を見てきた……うわぁ、マジでこんな事する奴いるんだな……ちょっと得した気分だ。

「それでは持ってきた荷物をあの馬車の荷台の後ろに居る者に預けてきて下さい。
その後、準備が整い次第王都に向かって出発しますので。」

「あ、分かりました。」

知的眼鏡に指示された先頭の馬車に向かう途中で荷台の中をチラッと見てみると、年齢バラバラの黒髪黒目の男達が5、6人座っていた……んだが、どいつもこいつも容姿がメインキャラになれる様な奴らばっかりなんですけど!?

爽やかスポーツ系イケメンに知的眼鏡と同じ様なクール系イケメン!それに大人の渋みを感じさせるダンディなイケメンに女性の相手を得意とする様な雰囲気の色気の溢れるエロティックなイケメン!……え、こんな中にモブキャラである俺が放り込まれるって言うのか?……え、なにその地獄?俺こんな目に遭うほど悪いことした?

「それでは荷物をお預かりします。目印として赤い紐を巻き付けさせて頂きますが、よろしいでしょうか?」

「………はい、分かりました。」

「え、えっと……大丈夫ですか?」

「えぇ……ちょっと色々砕け散っただけですから……へへっ…」

「は、はぁ…?」

この世界のイケメン率の高さによって久々に心をバキバキに折られながら荷物を預けた俺は、ガックリとうなだれながら知的眼鏡の居る馬車の最後尾に戻って行った。

「よしっ、荷物を預け終えたなら私の後に続いて荷台に乗り込んでもらおうか。」

「…うっす。」

はぁー…やだなぁ……多種多様なイケメン達に囲まれて王都まで行くとかどう言う拷問だよ畜生!どうせ囲まれるんだったら美少女と美女に囲まれて……いや、それはそれで俺にとっては地獄だな…まぁ、傍から見た天国なんだろうけどさ。

「って、何を考えてんだ俺は?男しか連行されてねぇってのに……」

「ん、どうかしたのか?」

「あ、いえいえ別に…」

誤魔化す様に手を振りながら知的眼鏡の後に続いて馬車の荷台に乗り込むと、そこにはタイプは違うイケメンがズラッと座っていた……うわぁ、間近で見るとキラキラ具合はマジで半端ないな!?あぁもう帰りたいなぁ……

「それじゃあ空いている所に座ってくれ。まもなく出発するからな。」

知的眼鏡にそう言われて空いている席を探そうとした瞬間、奥の方に座ってたツンツン頭の主人公系男子がこっちに向かって手を振ってきた。

「おじさん、こっちの席が空いてるよ!」

「あ、あぁ…ありがとう……」

ふっ、おじさんか……あれ、おかしいな?天井を見上げてないと、目から水が零れ落ちてきそうだぞ……?イケメン達に囲まれて見知らぬ男の子からおじさと呼ばれた俺は、またもや心を折られそうになりながら空いている席に座り込んだ。

「隊長、出発準備が整ったようです。」

「分かった、それじゃあ合図を出せ。」

「ハッ!」

運転席に座っていた警備兵が知的眼鏡に敬礼をしたすぐ後、周囲から甲高い笛の音の様な音が聞こえてきて馬車はゆっくりと動き出すと街の外に向かって走り始めた。

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