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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第129話

部屋に足を踏み入れるとすぐにボスとの戦闘が始まる可能性があったので、俺達は開いた扉の前から動かずに部屋全体を見渡してみた。

「・・・部屋の構造は他のボス部屋と同じドーム状だな。」

「あぁ、だがこれまで行ったどのボス部屋よりも広い気がするよ。」

「そ、そうなんですか?」

「うん。間違いないと思う。」

「それにこの部屋、廊下と同じで壁と天井が青白い氷で出来てるな。まぁ、床は何故だか雪が積もってるんだけど・・・」

「それは恐らく、あのシャンデリアが原因なんだと思うよ。」

「・・・シャンデリア?」

ボス部屋の天井に向けられたロイドの指先を追ってみると、そこには氷で造られたシャンデリアが吊るされていた・・・のだが、何故かそこから雪が次々と出現して床に向かって降り注いでいた。そしてそのシャンデリアの真下には・・・・

「宝箱発見?」

「・・・まぁ、そうだろうな。」

降り積もった雪が小さな山となって存在していた。多分だけど、あの雪山にボスのコアとなる宝箱が埋ってるんだろうなぁ・・・しゃあない、覚悟決めて行くか。

「よしっ、それじゃあボス部屋の中に入って行くが・・・準備は大丈夫か?」

「勿論、抜かりはないよ。」

「私も大丈夫。」

「ぼ、僕も問題ありません!」

(私も応援準備完了です!)

「そうか・・・そんじゃあ行くぞ。」

俺達は武器を構えて警戒しつつ揃ってボス部屋の中に足を踏み入れた・・・その次の瞬間、背後の大きな扉がバタンと大きな音を立てて勢いよく閉じてしまった!

「うおっ!び、びっくりしたってえええええ?!」

「と、扉が凍っていきます!」

エルアが凍っていく扉を見ながら叫び声をあげると、今度は雪山の中から凄い勢いで白い宝箱が出現してシャンデリアを突き抜けて天井に向かって行った!?すると、宝箱とシャンデリアを中心に猛吹雪が起こり視界が真っ白になってしまった!

「お、おい!大丈夫か!」

「なんとかね!しかしこれは中々凄い事になりそうだ!」

「え、えっと!これからどうなるんでしょうか!」

「分からねぇけど、とりあえずその場から動くなよ!」

「了解。」

「ソフィ!頼むからもうちょっと声を出してもらえませんかね?!風の音にかき消されてるんですけど!!」

荒れ狂う吹雪の中でしばらくジッとしていると、地面が揺れる衝撃と共にガシャンという音が前方から聞こえてきた。その瞬間、吹雪が収まり視界がハッキリしてきたのだが・・・

「あ、あれが・・・ボス・・・ですか?」

「あぁ、随分と素敵なボスじゃないか。」

「・・・手応えありそう。わくわく。」

「楽しそうにしてる場合かよ・・・」

ソフィの反応に苦笑いを浮かべながら、俺はボスから目が離せずにいた。
だって、まさかこんなボスが出現するとは予想外だったからな・・・・

(ご、ご主人様!あのボス見てください!何だか女性の様な姿をしてますよ!
それにさっきまであったシャンデリアが消えてます!もしかして、ボスのスカートの部分ってさっきのシャンデリアなんでしょうか!?)

(まぁ、十中八九そうだろうな・・・ったく、確かにスカートを希望したけどさぁ!)

俺が望んでたのはこういう事じゃないんだよ!確かにボスの姿形は女性そのものだけど、顔も手も足も体も青白い氷じゃねぇか!そんなボスのスカートの中を覗いた所で嬉しくもなんともないんだよ!

それに手足が鋭い槍みたいになってるから覗いた瞬間あの手足で貫かれるだろ!
それにかなりデカいから覗こうと思えばいつでも・・・って、そもそも覗かねぇわ!

「あ、見てくださいボスの胸の辺り!あそこに宝箱がありますよ!」

盾を構えて防御の姿勢を取っているエルアの言う通り、ボスの胸の中心部分には白い色の綺麗な宝箱が存在していた。

「よしっ、弱点が分かってんならやる事は1つだな。」

「あぁ、ボスの攻撃方法を把握してエルアのサポートに回る・・・だね。」

「エルア、頑張ってボスの動きを見て覚えておいてね。」

「わ、分かりました!皆さん気をつけて下さいね!」

「はいよ・・・そんじゃあ、始めるとするか。」

エルアの心配そうな視線を感じながら、俺達は武器を構えてボスに向かっていく!
その直後、ボスもカツカツと足音を立てて先端部分を地面に突き刺しながらこっちに走ってきやがった!そしてそのままの勢いで前蹴りをする様にして、鋭い足先を俺に突き刺そうとしてきやがった!?

「うわっ!」

俺はその攻撃を頭を捻ってギリギリかわし、雪が積もってる床を転がりながらボスの背後に回り込んだ!何とか体勢を立て直しながらボスに目を向けて見ると、ロイドが下半身、ソフィが上半身に攻撃を仕掛けている姿が目に入ってきた。

(ご主人様見てください!あのボス、お二人の攻撃を全部防いでますよ!?)

(あぁ分かってる!だが手足に若干だが砕けてきてるから、まったく効いてないって訳じゃなさそうだぞ!)

俺はマホに返事をしながら握り拳に魔力を込めると地面に思いきり叩きつけた!
するとボスの足元に魔方陣が展開されたので、戦っていた2人はボスから離れる為に大きく後ろに飛んだ!

その直後に魔方陣の中から氷の槍が出現してボスの体を貫こうとしたのだが、槍はあっさりかわされてボスの足先によって砕かれてしまった!呆気なく壊された事に驚いていると、突然ボスが俺の方を向き両足を床に突き刺してぶっ壊した?

不思議に思いながら周囲を警戒していると、ボスの手足の様な鋭い氷がすぐ真下の地面から突然出現しやがった!?咄嗟とっさに横に飛んでかわす事が出来たが、少しだけ腹の部分の服を破かれたんだけど!腹が冷えたらどうしてくれる!

(だ、大丈夫ですかご主人様!?怪我とかしてませんか?!)

(あぁ、服が破かれたがなんとか無事だよ・・・ロイドとソフィはどうだ?)

(大丈夫、怪我1つ無いよ。)

(私も問題ない。)

(そうか、なら良かったよ。)

2人が無事だという事にホッと胸をなでおろしていると、さっき砕けたボスの足が少しずつ修復している事に気が付いた。

(やっぱ復活するよなぁ・・・どうする、もうちょい砕いとくか?)

(いや、止めて置こう。不用意に近づくとスカートの餌食になる可能性が高い。)

(スカート?・・・あぁ、そう言えば回転してるな。)

(ボスのスカート、鋭い氷のトゲがいっぱいある。)

(は、マジかよ・・・)

(あぁ、そっちからは見えないだろうが小さなトゲがかなりあるよ。恐らく、修復を妨害しようとすると回転が早まりトゲが飛んで来るんじゃないかな。)

(そういう事か・・・分かった。じゃあ今の内に俺達はサポートに回るとするか。)

(そうだね。ボスの実力もある程度は把握できたし、良い頃合いだと思うよ。)

(・・・残念だけど仕方ない。後はエルアに任せる。)

(あぁ、そうしてくれ。)

無数の氷のトゲがあるスカートを回転させながらその場で足を修復しているボスを横目に、俺達はエルアが待ってる場所に集合した。

「み、皆さんお怪我はありませんか!?大丈夫でしたか!?」

「あぁ大丈夫だよ。それよりエルア、ボスの動きを把握できたか?」

「あ、は、はい!少し動きは速かったですが何とか!」

「分かった。そんじゃあ俺達はサポートに回るから、この先は任せたぞ。」

「・・・はい!」

気合の入った返事をしたエルアは盾とショートブレードを持つ手に力を入れると、足先の修復を終えて体勢を立て直したボスに向かって一気に駆け寄っていった!
それと同時にボスも向かって来ると、エルアに向かって足の先端を突き刺そうとしてきた!

「くっ!」

ソフィの風魔法によって移動速度を上げてあるエルアは、盾を使って攻撃を防ぐとボスの体を支えている方の足元に滑り込み思いっきり斬りつけて背後に回り込んだ!斬られたせいで足元が少し砕けたボスは、背後のエルアを蹴り飛ばす様に足を後ろに向けて突き出した!

エルアはボスの攻撃を防ぐ為に瞬時に盾を構えたが軽く吹き飛ばされてしまった。飛ばされた先で思わず片膝をついてしまったエルアにボスが更なる攻撃を仕掛けようとしたが、そこはロイドがサポートに回った!

エルアの攻撃で砕かれかけていた足にロイドは即座に近づいて行くと、渾身の力を込めた突きを放って一気に砕いた!支えを失ってバランスを保てなくなったボスは、体勢を崩すと雪を舞い上げながら倒れていった。

「あ、ありがとうございますロイドさん!」

「気にする事は無いよ。それより急いで止めを刺した方が良い。スカートが回転する前にね。」

「はい!分かりました!」

腕だけとなったボスは逆立ちする様な姿勢になると、エルアに両腕を突き刺そうと必死になっていた。エルアはその攻撃を盾で防ぎながら、もしもの時の為に隙を見つけてはスカートに炎を撃ち込んでトゲを一気に溶かしていった。

そしてスカートのトゲも全て無くなり、本当に攻撃方法が両腕だけとなったボスは最後の抵抗なのか両腕を使って飛び上がるとエルアに向かって落ちていった!
だがエルアはその攻撃を後方に大きく飛ぶことでかわし、手に持った武器を構えて突き刺さったボスの両腕に向かって力強く踏み込んでいった!

「これで・・・終わりだ!」

突き刺さったボスの両腕をエルアが斬って砕いた瞬間、支えを失ったボスは仰向けに倒れこんでいった・・・ふぅ、これで後はエルアが止めを差したら終わりだな。
いやぁ、良かった良かった!俺は特に何かサポートした訳じゃないからちょっとだけ消化不良だけどそれはそれだよな!うん!

「きゃあ!」

「え?!」

特にサポートの役割の無かった事に若干ガッカリしていると、エルアが可愛らしい悲鳴をあげながら上空に向かって吹っ飛ばされていた?!?ってそんな場合か!

(ご主人様急いでください!あのままじゃエルアさん落っこちちゃいますよ!)

(わ、分かってる!)

焦るマホの声を聞いた俺は瞬時に走り出すとエルアの落下場所に向かった!
そして何とか降ってきたエルアを抱きとめようとしたのだがぁ!!

「ぐふぅううう!!!」

「きゃああ!・・・あ、あれ?って九条さん!あぁごめんなさい!」

・・・空から、可愛い女の子が降ってきました・・・甲冑と、重い盾と武器を身につけた・・・女の子が・・・・・・って、危ねぇ!危うく気絶する所だったってか物凄く痛かったぁ・・・!!

「九条さん大丈夫ですか!あの、本当にごめんなさい!」

「あ、あぁ・・・別に何てこたぁねぇよ・・・そ、それより何があった・・・」

「そ、それが、あの!あの!」

「九条さん、まずい事になったよ!」

「ま、まずい事・・・?」

痛む腹や胸をさすりながら起き上がると・・・え、あ、あれ?ボスの姿・・・・・変わってません?何か、氷で出来た翼みたいなのが生えてる様に見えるんですが?

「どうやら第二形態込みのボスだったみたい。」

「・・・は、え?」

突然の事態に思考が混乱していると、ボスが翼を広げて上空に浮きやがった。
その光景に何だか嫌な予感を感じた俺は、魔力を込めながら地面を思いきり殴りつけて氷で出来た壁を作り上げて全員の体をボスから隠した!そのすぐ後、ボスが無数の氷の羽を翼から突き刺してきやがった!

「畜生!こんなの最近体験したばっかりで新鮮味が無いんだよ馬鹿野郎!」

「ふふっ、まさかあんな風になるとは予想していなかったよ。」

「流石、レアダンジョンのボスだね。」

「す、すみません皆さん!僕がしっかり止めを刺せなかったから!ごめんなさい!」

「大丈夫だよエルア、それに後悔は後にしようじゃないか。それより今は、どうしてボスに止めを刺せなかったのか聞かせてくれるかな。何か訳があるんだろう?」

突然起こった事態に取り乱しかけていたエルアだったが、ロイドに肩を掴まれ冷静に諭された事で何とか平静を取り戻す事が出来ていた・・・ロイドさんマジ素敵!

「あの、ボスに止めを刺そうとしたら刃が通らなくて・・・・それでもう一回止めを刺そうとしたら、急にボスの体から吹き飛ばされていて・・・」

「・・・なるほどね。心臓部分である宝箱は特に念入りに頑丈になっている訳か。
そういう事なら適任者に任せるとしようか。」

「九条さん、後はお願い。」

「はいよ・・・ったく、どうしてこんな事になるかねぇ・・・」

「え、え?どういう事ですか?」

「まぁ簡単に説明すると、俺の武器はかなり斬れ味が良いから頑丈なボスの体にもある程度は通用するんじゃねぇかって事だよ。」

「そういう事だ。それじゃあソフィ、私達はまずあの厄介な翼を消すとしようか。」

「了解。一瞬でケリをつける。」

「え?一瞬でって・・・そんなの一体どうやって・・・?」

(いやぁ、ロイドさんとソフィさんの頼もしさは凄いですね!これはご主人様も負けていられませんよ!ファイトです!)

(はいはい・・・さて、そんじゃあ自分の役目をしっかり果たすとするかねぇ。)

そんな事を考えていた直後、ボスが天井を上空を飛びながら俺が作った壁の裏側に回り込んで来た・・・なるほど、しびれを切らしてそっちから来てくれた訳か。
なんとまぁ馬鹿な事を・・・こっちとしては大助かりだけどさ。

「それじゃあソフィ、始めるとしようか。」

「了解。そっちに合わせる。」

「うん、ありがとう。」

「ロイドさんソフィさん!ボスが氷の羽を飛ばそうとしてます!」

俺達に氷の羽を突き刺す為にボスが大きく翼をはためかせた直後、ロイドとソフィが手の平を上空に向けて巨大な炎の球体を出現させた。

「それじゃあ私は左だ。」

「じゃあ右だね。」

2人はその言葉を合図にして炎の球体をボスの翼に向けて撃ち込んだ!ボスは俺達に突き刺そうとした氷の羽を球体に向かわせてたが・・・まぁ、どう考えたってそれで消すのは無理だろうよ。

2人が出現させた炎の球体はボスの翼を両方とも包み込むと、跡形も無く溶かし尽くしていた・・・さて、そんじゃあ次は俺の出番だな。

「それじゃあエルア、ちゃんと止めを刺せよ?」

「え、そんな!一体どうやって!?」

「そんなの、俺達のサポートを受けてに決まってんだろっと!」

俺は紅い刀身のショートブレードを軽く手に持つと、風の魔法をまとわせながらボスの胸部にめがけて思いっきり投げ飛ばした!

「よしっ見事胸に命中!そんで後は・・・」

俺は魔力を込めながら地面をつま先で軽く蹴ると、翼が燃え尽きて落下したボスの手前に高めの足場とそこに続く足場を幾つか作り上げた。

「うん、我ながらいい仕事っぷりだな。それじゃあ後は頼んだぞエルア。」

「え?ど、どういう事ですか?」

「ふふっ、さっきまでと同じだよエルア。」

「そういう事。だから今度こそボスを倒してきて。」

「そ、そんな無理ですよ!だってあの宝箱は固い氷に護られてるんですよ!それに、さっき九条さんがボスに止めを刺したじゃないですか!」

「いやぁ、残念だがそうはなってないんだなぁ・・・ほら。」

俺が目線を向けた先には、胸に武器が刺さったままのボスが地面でぎこちなく動き回りながら体を修復しようとしていた。

「え!ど、どうして・・・!」

「まぁ、簡単に言えば宝箱まで突き刺さらなかったって事だよ。魔法で威力を上げてかなり本気で倒そうとしたんだが、それでも宝箱までは届かなかったんだな。」

「なにを呑気に言ってるんですか!急がないとボスが復活しちゃいますよ!」

「そうだな、だから・・・」

俺はエルアの後ろに回り込むと、軽く背を押してボスの方に一歩歩かせた。
そしてニヤリと笑いながらグッと親指を立てる。

「後は頼んだ!」

「いや、頼んだって言われても・・・・・・」

「なに、深く悩むことは無いさ。グイッと最後の一押しをして貫いてやればいい。」

「いえでも、あんな頑丈な氷を貫く力なんて僕には・・・」

「大丈夫。エルアには九条さんが作った足場と盾があるから。」

「・・・・盾、ですか?」

「うん、それを使えばボスを倒せる。」

「そういう事だ。やり方は・・・分かるよな?」

「・・・・あ、なるほど!そういう事ですね!」

「ふふっ、気づいてくれたようで何よりだよ。」

「頑張ってね、エルア。」

「最後の一撃・・・ビシッと決めてこい!」

「はい!分かりました!それじゃあ皆さん、行ってきます!」

エルアは気合の入った表情を浮かべると、俺が作り上げた足場をどんどん上がっていった。そして最後の一番高い足場に後少しで辿り着くという所で、ボロボロの翼を復活させたボスがエルアの目の前に浮かび上がってきた!・・・だが!

「これで・・・終わりだ!」

ボスはボロボロの翼をはためかせて氷の羽を飛ばそうとしてきたが、エルアの方が一歩早くボスの胸に突き刺さった俺のショートブレードを思いっきり押し込んだ!
・・・次の瞬間、ボスは空中で制止するとガラガラと音を立てて崩れ落ちていった

「・・・・ふぅ。」

エルアは足場の上で大きく息を吐くと、ゆっくりと振り返って俺達に満面の笑みを見せてくれた。その笑みを見た俺達も、似た様な表情を浮かべるのだった。

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