話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第126話

ニックさん達が帰ってからしばらくすると、玄関の扉が開く音が聞こえてきた。
そのすぐ後、最初にマホがリビングに顔を出して俺の方に駆け寄って来た。

「おじさんただいまです!エルアさんを無事に連れ戻しましたよ!」

「おぅ、ありがとうな。」

「いえいえ!」

笑顔を浮かべたマホが謙遜する様な仕草をしていると、ロイドとソフィが少しだけうつ向いてしょんぼりしているエルアを連れてリビングに入って来た。

「ただいま九条さん。家の前にサングラス姿の人達が居なくなっていたけど、もしかしてエルアの親御さんはもう帰ってしまったのかな?」

「あぁ、お前らが戻る少し前にな。」

「そうか、それは残念だ。ね、エルア?」

「あ、わた、僕は・・・」

・・・どうやら動揺して口調が女の子に戻りかけてるみたいだな。まぁ感情を爆発させてからそんなに経ってないから、まだ心の整理もついてないか。

「・・・とりあえずエルアが出て行った後にあった事を簡単に説明するから、適当に座ってくれ。」

俺はエルアを落ち着かせる時間を稼ぐ為、ニックさん達と話した事を皆に話す事にした。とはいえそこまで込み入った話をしてた訳じゃないから、エルアを連れ戻そうとした理由と帰り際に頼まれた事を伝えただけなんだがな。

「まさかそんな理由で僕を連れ戻そうとしてたなんて・・・」

「ふふっ、娘を持つ父親と言うのはどこも似た様な感じなんだね。」

「・・・えっ?」

俺の話を聞いて呆れる様な表情をしていたエルアだったが、おかしそうに微笑んだロイドの言葉を聞いてきょとんとしていた。

「ロイドのお父さんもそんな感じだった?」

「あぁ、私が幼い頃なんてちょっとした怪我でも医者だ病院だと大騒ぎしていたよ。近頃は流石にそんな事はしなくなったけどね。」

「へぇー、ロイドのお父さんにそんな一面があったんですね。ちょっと意外です。」

「・・・いや、意外か?てか近頃までそんな様子だったのかよ。」

いや、あの人の溺愛っぷりから考えたら別段不思議じゃねぇのかな?だって、時々恐ろしい気配を感じる事もあるし・・・そう考えたら、ニックさんとエリオさんっていい友達に・・・いや、駄目だな。どうせどっちの娘が一番可愛いかで争うわ。

「じゃあ、どうして僕の父さんはロイドさんのお父さんの様に・・・」

「・・・考えられる理由は幾つかあるが、一番の理由はエルアがご両親に庇護されている子供だからだと思うよ。」

「子供・・・ですか。」

「そうだ。寮に住んでご両親と離れて暮らしているとはいえ、王立学園に通っている学生という時点でまだ子供なんだ。だからこそニックさんは、エルアが心配で心配でしょうがないんじゃないかな。」

「・・・それでも、僕はもっと強くなって母さんを護りたいんです。」

自分が両親に護られている立場だという事を改めて自覚したのか、エルアは静かにそう呟くと両手を強く握ってうつ向いてしまった。

「あの、エルアさん。どうしてそんなにお母さんの事を護りたいって思っているんですか?もしよろしければ、そう思う様になった理由を聞かせてもらえませんか?」

マホはいつの間にか用意していた紅茶の入ったティーカップをエルアの前にそっと置くと、静かにエルアの隣に座った。

「・・・僕が母さんを護ろうと強く思った理由は、数週間前に起こったある事が理由なんです。」

「ある事?一体何があったんですか?」

マホにそう聞かれて顔を上げたエルアの表情はなんというか・・・悔しさ?いや、悲しみ?なんかそういった感情を隠す様な感じだった。それが気にはなったんだが、まずは黙ってエルアの話を聞いてみる事にした。

「実は・・・僕と母さんは父さんに恨みを持つ人達から襲われた事があるんです。」

「え、えぇ?!お、襲われたって・・・!」

「お、おい大丈夫だったのかそれ?」

「はい。僕達を警備をしていた人達がすぐ近くに居ましたから、何とかその場は無事だったんですが・・・」

「・・・ですが?」

「父さんは、僕達が襲われた事を知っているはずだったのに・・・・それから2週間近く家に帰ってきませんでした。」

「そ、そんな、2週間もですか?だって自分のご家族が襲われたって知っているんですよね?なのに・・・」

「なんでも、色々忙しくて帰る事が出来なかったそうです・・・そう言われた時に、僕は思ったんです。この人は僕や母さんが危ない目に遭っても助けに来てくれる事は無いんだなって・・・笑っちゃいますよね。赤の他人の事は一生懸命護る癖に、自分の家族を護る事は出来ないんですから。」

エルアはそう言って自虐的な笑みを浮かべると、強く握っていた拳から力を抜くとそのままうつ向いてしまった。

「・・・エルア、その色々忙しかった理由は聞いたのか?」

「いいえ・・・聞く気もありませんでしたから。」

「そうか・・・」

・・・何で忙しかったかある程度の事は察する事が出来るが、これは俺が伝える事じゃねぇよなぁ・・・はぁ、見事にこじれてんな。てか、俺以外の連中も色々察したみたいだ。それでも何も言わないって事は、俺同様に当事者同士で直接話させる方が良いと思ってんだろ・・・それじゃあ、俺達は俺達の役目をこなすとするか。

「・・・よしっ、大体の事情とエルアが強くなりたい理由は分かった!」

「・・・えっ?」

俺は座っていた椅子から勢いをつけて立ち上がると、困惑の表情のまま顔を上げたエルアの方をガッと掴んでニヤリと笑いかける!

「あ、あの、九条さん?」

「エルア、強くなって母親を護りたいだろ?そんでニックさんに自分はこんなに強くなったんだって胸を張って言いたいんだろ?だったらいつまでもしょぼくれてる暇はないぞ!そうだろお前達!」

俺の様子に色々と感づいてくれた仲間達は、その表情に笑みを浮かべるとこっちに視線を向けて来た。

「あぁ、こんな所で座り込んでいたら何時までも強くなれないね。強くなる為には、武器の扱い方を徹底的に体に叩きこんでレベルを上げないとね。」

「それに魔法の扱いやモンスターについての知識も必要。」

「そうです!そして体力をつける為に食事もしっかり取らないといけませんよ!
腹が減ってはなんとやらですからね!」

グッと片手でガッツポーズを作ったマホが勢いよく立ち上がった瞬間、何処からかぐぅ~と言う音が聞こえてきた。

「・・・あっ、す、すみません・・・」

顔を赤くしてお腹を押さえてたエルアは可愛い!ってそうじゃなくてだな!腹が鳴ったという事は今からやる事が決まったな!

「よしっ、そんじゃあ今日も一緒に昼飯を作るとするかエルア!そんで美味い料理を作れるようになったら母親に食わせてやれ!そして昼飯の後は、訓練をしてクエストに行ってレベル上げた!ほら、いつまでもジッとしていたって何も変わんないぞ!」

ごめんねニックさん!名前を出すとここまでの流れがぶち壊れそうだから省かせてもらったよ!まぁ大丈夫!全部が終わったら必ずエルアが料理を作ってくれるさ!
そう思いながら、俺はエルアから少し距離を取ると目の前に手を差し出した。

エルアは俺の顔と差し出した手を見ると、マホとロイドとソフィの方にゆっくりと目を向けた。そして静かに目を閉じて少しだけうつ向くと、決意に満ちた瞳をして顔を上げた。

「・・・確かに、ここでジッとしていたって何も変わらないですよね。」

そう言って微笑んだエルアは俺の差し出した手を強く握って立ち上がった。
そして自分の持ってきた荷物の中からレシピ本を持ってくると、それを開いて俺に見せてきた。

「それじゃあ、今日はこの料理を作りたいのでよろしくお願いします!」

「おう!そんじゃあ早速取り掛かるとするか!」

「はい!」

「あ、私もお手伝いします!」

「それじゃあその間、私は武器の手入れをするとしようかな。ソフィ、手伝ってくれるかい?」

「勿論。」

・・・こうして気合を入れなおした俺達は、改めてエルアを強くする為に一致団結するのだった。にしても、まさかこんな展開になるとは・・・でもまぁ、とりあえずはエルアの師匠としてやれるだけの事をやるとするか。

「おっさんの異世界生活は無理がある。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く