おっさんの異世界生活は無理がある。
第95話
「はぁ・・・暇だな。」
俺はベンチに座りながら、絶叫マシンに乗りに行った皆の帰りを待っていた。
まぁさっき並んだばっかりだから、後30分くらいは帰ってこないんだけどさ。
「あーあ、どうしたもんかねぇ。」
俺は独り言をつぶやきながらベンチの背もたれに思いっきりもたれかかって、背後にあるバカでかい洋館風の建物に目を向けた。テーマパークに入って真っ先にお目にかかれるこの建物は、俺達が泊まっているホテルと同じ5階層の建物だと思う。
でもどっからどう見たってこっちの方がデカいんだよなぁ・・・高さも広さもな。
「扉の前にイベント会場入口って立て看板があったから、ここで何かするんだろうけど・・・こんな所で何をするんだ?正直言って、嫌な気配バチバチ感じるんだが。」
・・・こうやって独り言をつぶやくおっさんを、周囲のカップルや家族連れはどう言う目で見ているんだろうか・・・正直、建物から目を離して体勢を戻すのが怖すぎるんだが!でもこうして現実逃避していないと目の前の現実が辛すぎるんだよ!
だってどこを見渡しても同じ様なぼっちおっさんとかいないんだもの!俺の仲間は一体どこに?あぁ、絶叫マシンを乗りに行きましたね!・・・はぁ、ホテルに逃げ帰りたいけどそうしたらあいつら気を使うだろうしなぁ。
かといってお前らだけで楽しんで来いよ!とか言っても絶対にそんなことしない奴らだし・・・本当、仲間ってのは困った物ですね!ははは!
「あの、そちらにいらっしゃるのは九条さん・・・では、ありませんか?」
「・・・え?」
寒さと孤独とほんの少しの絶望を味わって軽く精神崩壊していると、聞き覚えのある可愛くて美しい声が聞こえてきた!バッと勢いよく体勢を戻して声のした方に目を向けると、そこには柔らかく微笑む美しく可愛らしい女性が立っていた!
「フ、フラウさん!」
「あぁ、やっぱり九条さんでしたか。どうもおはようございます。」
フラウさんは挨拶をしながら軽く会釈をしてこっちに歩いて行くると、俺が座っている場所から少し離れた所にゆっくりと腰を下ろした!
「お、おはよう!フラウさんはここで何を?もしかして遊びに来たのか?」
「いえ、私は今日行うイベントの最終打ち合わせをしにきたんです。」
「あっそりゃそうか!イベントがあるから遊んでる時間は無いよな!」
「えぇ、残念な事ですが。所で、九条さんはどうしてお1人でこちらに?他の皆さんはどちらへ行かれたのですか?」
不思議そうにきょとんとしているフラウさんを見て、浮ついた心を少しだけ押さえつける事に成功した俺は目の前の行列を指さした。
「えっと、マホ達はすぐそこの絶叫マシンに乗る為に列に並びに行ったよ。」
「そうなんですね。あれ、でもどうして九条さんはこちらに?もしかして絶叫マシンが苦手なんでしょうか。」
「まぁそれもあるが・・・俺はこれのせいでアトラクションに乗れないんだよ。」
俺は苦笑いを浮かべながら左手に装着されている黒い腕輪をフラウさんに見せた。
・・・って、何の説明も無しに分かる訳ないか。これ当選した人しか持ってないはずだからな。
「あれ、それってもしかしてイベントに参加する人が貰える腕輪ですか?」
「え、フラウさんはこの腕輪の事知ってるのか?」
「はい。昨日責任者の方と打ち合わせさせていただいた時に、少しだけお話しを聞かせて頂きました。確か凄い精密な機械が組み込まれているとか。」
「あぁその通り。だからこれを付けたらアトラクションには乗れないんだと。」
「あぁ、だから九条さんはここで皆さんの帰りを待ってるんですね。」
「そういう事。だからさっきまで暇してたんだけど、フラウさんのおかげで助かったよ。ありがとうな。」
「いえいえ、お役に立てた様なら何よりです。」
・・・あぁ、やっぱりこの笑顔には癒されるなぁ・・・うん、女神ってのは
フラウさんみたいな人の事を言うんだよな!間違いない!そう俺が確信していると、テーマパーク内にゴーンゴーンと鐘の音が鳴り響いた。
「あ、すみません。私はそろそろ失礼させていただきますね。」
フラウさんはベンチに座りながら丁寧にお辞儀をしてくれると、そのままスッと
立ち上がった。
「あぁ、打ち合わせだっけか。悪かったな、話しに付き合って貰ったりして。」
「いえ、私も突然お声がけして申し訳ありませんでした。」
「そんな、退屈してたから凄い助かったよ。ありがとうな。」
「ふふっ、そう言って頂けると嬉しいです。それではまた。」
「あぁ、またな。」
別れを告げた俺に静かにお辞儀をすると、フラウさんは打ち合わせに向かう為に歩き出した・・・のだが、2,3歩進んだところで急に振り返ってこっちを見てきた?
「あの、九条さん。今日の私のイベントは午後5時からテーマパークの奥にある
ステージでやります。よろしかったら皆さんで観に来てくださいね。」
「あぁ、分かった。勿論全員で行かせてもらうよ。」
「ふふっ、ありがとうございます。それではまた後でお会いしましょう。」
フラウさんはそう言って微笑むと、今度こそ振り返らずに打ち合わせに向かった。
さて、帰ってきたらこの情報を皆に伝えないとな・・・でもそうか、フラウさんの
イベントは午後5時からかぁ・・・・短いようで、長いなぁ・・・・
俺はベンチに座りながら、絶叫マシンに乗りに行った皆の帰りを待っていた。
まぁさっき並んだばっかりだから、後30分くらいは帰ってこないんだけどさ。
「あーあ、どうしたもんかねぇ。」
俺は独り言をつぶやきながらベンチの背もたれに思いっきりもたれかかって、背後にあるバカでかい洋館風の建物に目を向けた。テーマパークに入って真っ先にお目にかかれるこの建物は、俺達が泊まっているホテルと同じ5階層の建物だと思う。
でもどっからどう見たってこっちの方がデカいんだよなぁ・・・高さも広さもな。
「扉の前にイベント会場入口って立て看板があったから、ここで何かするんだろうけど・・・こんな所で何をするんだ?正直言って、嫌な気配バチバチ感じるんだが。」
・・・こうやって独り言をつぶやくおっさんを、周囲のカップルや家族連れはどう言う目で見ているんだろうか・・・正直、建物から目を離して体勢を戻すのが怖すぎるんだが!でもこうして現実逃避していないと目の前の現実が辛すぎるんだよ!
だってどこを見渡しても同じ様なぼっちおっさんとかいないんだもの!俺の仲間は一体どこに?あぁ、絶叫マシンを乗りに行きましたね!・・・はぁ、ホテルに逃げ帰りたいけどそうしたらあいつら気を使うだろうしなぁ。
かといってお前らだけで楽しんで来いよ!とか言っても絶対にそんなことしない奴らだし・・・本当、仲間ってのは困った物ですね!ははは!
「あの、そちらにいらっしゃるのは九条さん・・・では、ありませんか?」
「・・・え?」
寒さと孤独とほんの少しの絶望を味わって軽く精神崩壊していると、聞き覚えのある可愛くて美しい声が聞こえてきた!バッと勢いよく体勢を戻して声のした方に目を向けると、そこには柔らかく微笑む美しく可愛らしい女性が立っていた!
「フ、フラウさん!」
「あぁ、やっぱり九条さんでしたか。どうもおはようございます。」
フラウさんは挨拶をしながら軽く会釈をしてこっちに歩いて行くると、俺が座っている場所から少し離れた所にゆっくりと腰を下ろした!
「お、おはよう!フラウさんはここで何を?もしかして遊びに来たのか?」
「いえ、私は今日行うイベントの最終打ち合わせをしにきたんです。」
「あっそりゃそうか!イベントがあるから遊んでる時間は無いよな!」
「えぇ、残念な事ですが。所で、九条さんはどうしてお1人でこちらに?他の皆さんはどちらへ行かれたのですか?」
不思議そうにきょとんとしているフラウさんを見て、浮ついた心を少しだけ押さえつける事に成功した俺は目の前の行列を指さした。
「えっと、マホ達はすぐそこの絶叫マシンに乗る為に列に並びに行ったよ。」
「そうなんですね。あれ、でもどうして九条さんはこちらに?もしかして絶叫マシンが苦手なんでしょうか。」
「まぁそれもあるが・・・俺はこれのせいでアトラクションに乗れないんだよ。」
俺は苦笑いを浮かべながら左手に装着されている黒い腕輪をフラウさんに見せた。
・・・って、何の説明も無しに分かる訳ないか。これ当選した人しか持ってないはずだからな。
「あれ、それってもしかしてイベントに参加する人が貰える腕輪ですか?」
「え、フラウさんはこの腕輪の事知ってるのか?」
「はい。昨日責任者の方と打ち合わせさせていただいた時に、少しだけお話しを聞かせて頂きました。確か凄い精密な機械が組み込まれているとか。」
「あぁその通り。だからこれを付けたらアトラクションには乗れないんだと。」
「あぁ、だから九条さんはここで皆さんの帰りを待ってるんですね。」
「そういう事。だからさっきまで暇してたんだけど、フラウさんのおかげで助かったよ。ありがとうな。」
「いえいえ、お役に立てた様なら何よりです。」
・・・あぁ、やっぱりこの笑顔には癒されるなぁ・・・うん、女神ってのは
フラウさんみたいな人の事を言うんだよな!間違いない!そう俺が確信していると、テーマパーク内にゴーンゴーンと鐘の音が鳴り響いた。
「あ、すみません。私はそろそろ失礼させていただきますね。」
フラウさんはベンチに座りながら丁寧にお辞儀をしてくれると、そのままスッと
立ち上がった。
「あぁ、打ち合わせだっけか。悪かったな、話しに付き合って貰ったりして。」
「いえ、私も突然お声がけして申し訳ありませんでした。」
「そんな、退屈してたから凄い助かったよ。ありがとうな。」
「ふふっ、そう言って頂けると嬉しいです。それではまた。」
「あぁ、またな。」
別れを告げた俺に静かにお辞儀をすると、フラウさんは打ち合わせに向かう為に歩き出した・・・のだが、2,3歩進んだところで急に振り返ってこっちを見てきた?
「あの、九条さん。今日の私のイベントは午後5時からテーマパークの奥にある
ステージでやります。よろしかったら皆さんで観に来てくださいね。」
「あぁ、分かった。勿論全員で行かせてもらうよ。」
「ふふっ、ありがとうございます。それではまた後でお会いしましょう。」
フラウさんはそう言って微笑むと、今度こそ振り返らずに打ち合わせに向かった。
さて、帰ってきたらこの情報を皆に伝えないとな・・・でもそうか、フラウさんの
イベントは午後5時からかぁ・・・・短いようで、長いなぁ・・・・
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