おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第91話

チンッとベルが鳴る様な音が鳴ってエレベーターが止まると、目の前の扉が静かに開いて荘厳で少し広めの空間と奥に続く長い廊下が目に入ってきた!

「お、おぉ・・・これがVIPルームに続く廊下か・・・」

「な、何だか足を踏み入れるのがためらわれますね・・・」

「あぁ・・・だが、勇気を出して一歩を踏み出すぞ!」

「はい!分かりました!それじゃあせーので行きましょう!」

「「せーの!」」

俺とマホはエレベーターの中から揃って出ると廊下に足を踏み入れた!その瞬間、マホが興奮した様子で俺の顔を見上げてきた!

「お、おじさん!床がふかふかしていますよ!ここって土足でも大丈夫なんでしょうか!?」

「お、落ち着けマホ!大丈夫のはずだ!だってほら靴箱無いし!にしてもすげぇな
このふかふか感・・・たまらん!」

俺とマホは廊下のふかふか感に驚愕しながらその場で何度も足踏みをしていた!
うわぁ、凄い!裸足で踏んでみたいこの靴を履いても分かるふかふかの廊下を!

「ふふっ、お楽しみの所申し訳ないがそろそろ部屋に行かないか?こうしている間にもテーマパークで遊ぶ時間が減ってしまうよ?」

「あっそうでした!えっと私達の部屋は・・・」

「マホ、ここにマップがある。」

「本当ですか!おじさん見てみましょうよ!ってあれ?どうしたんですかおじさん、顔を両手で隠したりなんかして。」

「いや・・・いい歳して何やってんだろうと思って・・・」

「・・・あぁ!はしゃいでたのをロイドさんに見られて恥ずかしがってるんですね!でも気にする必要はありませんよ!ロイドさんは、はしゃいでいるおじさんを見ても微笑ましく思うだけですよ!ね?ロイドさん!」

「あぁ、確かにそうだね。九条さんが楽しそうで良かったと思ったよ。」

「ほら、良かったですね!それじゃあマップを見に行きますよ!」

何が良かったのか全然分からない俺の腕を掴んだマホは、ソフィの方へ駆け寄っていった。そしてカギに付いているストラップと目の前のマップを交互に見ると、廊下の奥の方をビシッと指を向けた。

「どうやら一番奥の左側が私達の泊まるお部屋みたいです!っていうかおじさん見てくださいよ!この階にはお部屋が4つしかありません!」

「・・・は?4つ?」

羞恥心で多少心ここにあらずだった俺は、マホの言葉を聞いて驚きながらマップをもう一度見た。

「うわっ、マジで4つしかねぇじゃん。てかこれ部屋1つ1つがデカすぎじゃね?」

「うーん、流石VIPルームというだけの事はありますね!早くお部屋の中が見てみたいです!」

「だな。それじゃあ行くとするか。」

「はい!」

いつの間にか羞恥心がどっかに消え去った俺は、皆と一緒に廊下の奥へとどんどん進んで2泊3日を過ごす部屋の前にやって来た。

「そ、それじゃあ鍵を開けますね。」

マホは緊張した面持ちで鍵穴に鍵を差し込むと、ゆっくりと回していった。それからガチャっという音がすると、マホは扉の取っ手を掴んで開けていった。

「・・・うわぁ!凄いですよ皆さん!」

マホが歓声を上げて部屋の中に入っていったので、俺達もその後に続いて行った。
・・・ってかマジで凄いなここ!部屋に入ってすぐがリビングっぽいんだが、壁一面がガラス張りなんだけど!外の景色丸見えなんですけど!

「これは・・・マジで凄いな。」

「確かに、なかなかいい景色だ。」

「それにかなり広い。武器を収納する所もあるし。」

ソフィが見つめる部屋の隅には、確かにそれらしい棚が置かれていた。なので俺達はいったん持っていた荷物を床に置くと、装備していた武器を棚の中に収めた。

「・・・さて、それじゃあ早速テーマパークに向かうとするか。」

「そうだね。ほらマホ、外の景色が綺麗で見惚れるのは分かるがそろそろ出掛けようじゃないか。」

「あ、そうですね!早くアトラクションで遊びたいですし!」

マホが満面の笑みで大きく頷いたのを見た後、俺達は必要最低限の物を荷物から取り出して部屋の玄関に向かった。そして出掛けようと扉の前に立った時、目の前に何か書かれている事に気が付いた。

「あ、これ出掛ける際の注意書きだな。」

「そうなんですか?なんて書いてあります?」

「えっと、ホテルからお出掛けになる際は受付にルームキーをお預け下さい。
だってさ、まぁそりゃ当然か。」

「ふむ、じゃあロビーに降りたら受付に行こうか。」

「だな。よし、じゃあみんな外に出てくれ。鍵かけるから。」

それから皆が出たのを見た俺は扉の鍵を閉めると、エレベーターまで戻ってロビーに降りて行った。そして受付まで行くと、出掛ける事を伝えて鍵を預けた。

「はい。確かにお預かりいたしました。それでは皆様、お気をつけてお出掛け下さいませ。お帰りになられましたらお声かけ下さい。鍵をお渡しいたしますので。」

「分かりました。それじゃあ失礼します。」

俺は軽く会釈をして受付から離れると、先にホテルの外に出ていた皆と合流した。

「よし、鍵も無事に預けてきたし行くとするか。」

「了解です!皆さん、テーマパークはこの大通りを真っすぐ行って右に曲がった先ですよ!早く行きましょう!」

マホがうずうずしながらそう言うので、俺は苦笑いを浮かべるとテーマパークに向かう為に歩き始めた。その際に大通りに並ぶ店を見ながら、俺はマホに話しかけた。

「なぁ、ここら辺って土産物屋が多いけどここに住んでいる人はどこで買い物してるんだ?」

「えっと、ちょっと待ってくださいね・・・どうやら大通りの辺りはお土産屋さんが中心となっているようですが、少し離れると普通のお店が結構あるみたいです。」

「ふーん。つまりこう言う目立つ場所は観光客向けって事か。なるほどなるほど。」

「あっ!そう言えばお土産どうしましょうか?今回の旅行を用意してくれた皆さんに買っていかないと!」

「ふむ、確かにそうだね。ここまで世話になったのに何もお土産を買わないなんて
失礼すぎるな。」

「うーん、そう言われればなぁ。」

「先にお土産を買う?」

「ん、それって今日はテーマパークに行くのは止めるって事か?」

「そう。テーマパークは明日の朝から遊びに行く。」

「ソフィさん!それ良いかもしれませんね!」

「私もそれに賛成しようかな。九条さんは?」

「まぁ、皆がそれで良いなら別に良いぞ。」

「なら!これから時間をかけてお土産屋さんを回っていきましょう!」

「そうだね。ふふっ、どんな物を買おうかな。」

「・・・悩む。」

「とりあえず相談しながら見て回るか。そんで気になった物があったらそれぞれ
買って行くって事で。」

「分かりました!」

「そうだね。それでいこうか。」

「了解。」

それから俺達は大通りを行ったり来たりしながら日が暮れるまでお土産屋を見て回るのだった。そして俺の両手が塞がるほどのお土産を買った後、近場で見つけた少しお高めのレストランで晩飯を済ませてそのままホテルに戻っていった。

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