おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第89話

「皆さん、ミューズの街まで後少しになります。降りる準備をお願いしますね。」

雑談をしながら馬車に揺られて数時間経った頃、御者の人にそう言われた俺は昨日と同じ様に荷物を皆に渡していった。その時にふと運転席の間からチラッと外を見てみると、豪勢な飾りつけがされている街の入口と防壁が目に入ってきた。

「うわぁ!あそこがミューズの街なんですね!」

「うおっ、いつの間に隣に来てたんだ?」

「ついさっきです!それよりも見てくださいよおじさん!街の入口もその周りも
とってもキラキラしています!」

「はいはい分かってるよ。それより席に座って大人しく街に着くのを待つぞ。
少しでも体力を温存して遊び倒さないといけないんだから。」

「おっ!おじさんも遊ぶ気満々なんですね!」

「ふっ・・・そりゃそうだろ!こういう所に来るのはマジで十数年ぶりだからな!
徹底的に遊び倒してやる!」

こんな遠くまでやって来て、疲れたからホテルで休んでるとかそんな勿体ない事が出来る訳が無い!それにそんな事をしたら旅行を用意してくれた皆に失礼だからな!

「ふっふーん!それじゃあミューズの街に着いたらまずは案内所でマップを貰って、その後はホテルでチェックインを済ませてすぐに遊びに行きましょう!」

気合の入ったマホと顔を見合わせた俺は、そのまま大きく頷いて席に戻った。
それからしばらくして人々の賑やかな声が近づいて来たと思ったら、馬車は飾り付けされた門の下を通ってミューズの街の中へと入っていった。

そっから先の流れは王都の時と同様で、街の広場に馬車が停められると御者の人
から声を掛けられて俺達は荷物を持って馬車から降りた。その後に運転席の方へ回っていくと、俺達は御者の人に軽く頭を下げて別れの挨拶をする。

「今日までありがとうございました。また機会があったらお願いします。」

「いえいえ、こちらこそありがとうございました。それでは失礼させて頂きます。」

御者の人は軽く微笑みながら会釈をすると、馬車を発進させて街の中へと走り去っていった。それを見送った後、俺達は荷物を持って近くにあった案内所の前まで歩いていく。すると、フラウさんが荷物を持ったまま俺達に微笑みかけてきた。

「すみません。これから明日のイベントに関する打ち合わせがありますので、こちらで失礼させて頂きますね。」

「そっか、じゃあここでお別れだな。フラウさん、今日までありがとうな。
それじゃあまた。」

「またお会いしましょうフラウさん!」

「次に会える機会を楽しみにしているよ。」

「またね。」

「はい、それではまたいつかお会いしましょう。それでは。」

フラウさんは丁寧にお辞儀をすると、そのまま街の中へと歩いて行った。俺達は
しばらくその後ろ姿を見送ると、案内所の中へと入っていった。そっからは職員の
お姉さんと毎度おなじみのやり取りをして、受付でマップを貰った。

ただその際に貰ったマップは2種類あって、1つはミューズの街の詳細が描かれたマップ。そしてもう1つは、テーマパークの事が描かれたマップだった。
俺達はお姉さんに礼を言って外に出ると、少し離れた場所に立ってマップを見ながら話をしていた。

「見てくださいおじさん!このマップによると、テーマパークには沢山の乗り物が
あるみたいですよ!」

「へぇ、どれどれ・・・」

俺はマホが持っているテーマパーク内の事が描かれたマップを横から見てみる。
確かにアトラクションはかなりの数があるみたいだな。こりゃ、待ち時間とかを考えると全部回るのは厳しそうだ。

「ふむ、ここで何に乗るか話すのも悪くないがそろそろホテルに行かないかい?
テーマパークに行くにしても、荷物は置いていったほうが良いと思うけど。」

「これがあると動きにくい。」

「あぁ、そう言われればそうか。じゃあマホ、いつも通り道案内頼んだ。」

「了解です!それじゃあ私の後について来てください!」

マホは元気よく返事をすると、意気揚々と大通りに向かって歩いていった。
その後に続いて俺達も大通りに入っていくと、ずっと先の方に巨大で派手な壁と入場ゲートが見えた。

案内所の人に聞いた所、あの巨大な壁は防音対策の為にあるんだとさ。ただ街を
囲ってる壁と同じにすると、折角の楽しい雰囲気が台無しになるからあんなに派手でカラフルな物になったんだと。それとあのゲートは防犯の為に設置されたんだとか。
あそこで手荷物検査をして、危険物の持ち込みが無いか確認しているらしい。

「うぅー!はやく遊びに行きたいです!」

「それは俺も同じ気持ちだから、さっさとホテルに行ってチェックインしようぜ。」

「ですね!それじゃあちょっと急ぎますよ!」

マホは少しだけ早足になると大通りを真っすぐ進んで行くので、俺達もそれの遅れない様に歩いて行く。そして街の真ん中あたりにやってくると、マホがそこから右の方を指さした。

「アレです!あれが私達が泊まるホテルですよ!さぁ行きましょうか!」

「へぇ、どんな・・・ホテル・・・・・は?」

「ふむ、中々良さそうなホテルだね。」

「早く行こう。」

マホが指を向けた先にあるホテルに歩いて行くと、その後に続いてロイドとソフィもスタスタ歩いて行ってしまった・・・だが俺は、3人が向かっている先を見て少しだけ固まっていた・・・

「あそこに・・・泊まるのか・・・?」

呆然として見つめる先にあるホテルは、こっからでも分かるほど大きくて
きらびびやかな建物だった・・・え、あそこってこの恰好で入れるのかしら?きちんと正装した人しか入れないんじゃないの?・・・そんな不安を抱えながら、
俺は先に行ってしまった3人の後を追うのだった。

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