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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第88話

「そう言えばおじさん、どうして遅刻しそうになったんですか?宿を出た時には結構余裕があったと思うんですけど。」

王都を出発してからしばらくして、雑談をしていたマホがふいに俺の方を向いて
そんな事を聞いてきた。

「えっとそれは、さっきも言った通り色々あったと言うか・・・」

「ですから、その色々の中身を知りたいんですけど。言いにくい事なんですか?」

「いや、言いにくいって言うか・・・確実にマホに怒られるだろうなって・・・」

「はい?私に怒られるって・・・一体何をしたんですか。」

「えっと、一応は人助けをしてたんだけど・・・」

「へぇ、宿を出てからそんな事をしていたのかい。でも、それでどうしてマホが怒ることになるんだい?」

「それは何て言うか、人助け前の事に関して怒られるだろうなって・・・」

怒られたくない一心で言葉を濁す俺を、マホは不満げな表情を浮かべて見ていた。
それから急にグッと近づいて来るとジト目で俺の顔をジッと見つめてきた・・・

「おじさん、いい加減教えてくださいよ。私がどうして怒るって言うんですか?」

マホの言葉に合わせる様にして、他の皆も俺の事を黙って見ている・・・つまり、俺にもう逃げ場はないって事なんだよなぁ・・・はぁ、怒られたくないけど言うしかないよなぁ・・・そう考えた俺は、諦めて遅刻しそうになった理由を話す事にした。

「・・・とりあえず最初から説明するな。つってもすぐ終わる話だけどさ。まず宿屋から出た俺は、大通りに向かったんだよ。」

「はい、それは知っています。でも、その後に何があったんですか?」

「えっと、大通り出た俺は王様達を見つけてしばらく見てんだよ。そんで少し時間が経って、そろそろ集合場所に行こうかなって思った時に声が聞こえてな。」

「声、ですか?」

「あぁ、何て言うか嫌がる女の声が聞こえた気がしたんだよ。最初は気のせいと思ってたんだが、また同じような声が聞こえてな。それで周囲を見渡してみたら路地の奥に連れて行かれる女の子を見つけたんだよ。」

「そ、それで!その後はどうなったんですか!」

フラウさんは興奮した様子で両手を握りしめて目を見開いていた・・・そして他の皆も真剣な表情で俺の事を見ていた・・・はぁ、こっから先が問題なんだよなぁ。
あぁもう!覚悟決めるか・・・ふぅ・・・

「連れて行かれる女の子を見つけた俺は、すぐさま路地に向かおうとしたよ。
そうしたら、急に俺の周囲に人が集まってきてな・・・」

「えっ、どうしてそんな事に?」

「・・・実は差し伸べられたんだよ・・・手を・・・」

「手を?・・・ってもしかして!」

「・・・そう、お姫様に手を差し伸べられたんだよ。そんで見物人に押されるようにして、俺はステージに上がってお姫様と対面したんだ・・・」

「す、凄いじゃないですかおじさん!とっても運が良いんですね!それで!握手してお話ししたんですよね!どんな事をお話ししたんですか!」

「ふむ、私も興味があるね。恐らくそれが起きたのは、私達が集合場所に向かった後の事だからね。」

「わ、私にも聞かせてください!」

マホとフラウさんはもう興味が溢れんばかりの表情を浮かべて、ロイドは微笑みながら、そしてソフィはただ黙って俺の事を見ていた・・・はぁ、言いたくねぇ・・・でもこうなったら最後まで話すしかないよなぁ・・・

「えっとそれがその・・・話はしてない・・・んだよね。」

「「「・・・は?」」」

「いや、ステージに上がってお姫様と対面したはしたんだけど、その時の俺は連れ
去られた女の子で頭がいっぱいだった訳でして、そんで握手する為に差し伸べられた手を無視してですね、ステージから飛び降りて路地に向かったという・・・そう言う話です、はい・・・」

最後を早口で全てを説明した俺は、怒られる覚悟を決めてゆっくりと下を向いた。
・・・失礼無い様にって言われてたのに、握手を無視してステージから飛び降りるとか無いわなぁ。あーあーおっこられるぅー・・・

「はぁ、それで私に怒られると思ったわけですか・・・」

「・・・はい。」

隣に座っているマホの呆れる様な気配を感じたと思ったら、マホが立ち上がって俺の顔を覗き込むようにしゃがみ込んで来た。その表情は、思った通り呆れた様な表情だった・・・

「全く、しょうがないおじさんですね。」

「・・・すんません。」

「そう言う事ではなく、これで私に怒られると思ってるのがしょうがないって言ってるんですよ。」

「・・・は?」

驚いて顔を上げると、それに合わせて立ち上がったマホと目が合った。その直後、腰に手を当てて少しだけ怒ったような表情で俺の事を見てきた。

「おじさんは、女の子を助ける為に無我夢中で行動したんですよね?だから握手を
せずにステージから飛び降りたんですよね。」

「ま、まぁ・・・そうかな?」

「なら別に良いですよ。恥ずかしくて逃げ出した!とかなら怒りますけど、人を助ける為に行動したんなら怒る理由はありません!」

マホは笑顔を浮かべてそう言うと、大きく頷いてまた席に戻って行った・・・え、まさか許されたのか?・・・そう思った瞬間、俺の中から緊張とか色んな感情がドッと出てきて俺は大きく息を吐いて後ろにもたれかかった。

「ふぅー・・・あぁ何か疲れが戻って気がする・・・」

「ふふっ、まさかそれで怒られると思っていたとはね。」

「いや、無礼を働いたらって言われてたからな。あぁ怒られなくて良かったぁ。」

「九条さんったら、そんなにマホさんが怖いんですか?」

「いやまぁ、普段はそんな事無いんだが怒るとな。」

「あらあら、うふふ・・・」

フラウさんがおかしそうに笑うと、馬車の中にほんわかとした空気が流れてきた。
そんな空気感のほっと一安心していると、ソフィが俺の顔をジッと見てきた。

「どうしたんだソフィ?何か気になる事でもあるのか?」

「さっき話に出てきた女の子はどうなったの?」

「あぁその子か・・・・まぁ、無事に助け出したよ。」

ソフィの質問に答えながら、俺は助けた子の事を思い出していた。最初はか弱い
女の子だと思っていたのに、まさかあんな子だったとはな・・・マジで女性不振に
なるっての。

「それは良かったです!それで、その子はどんな子だったんですか?」

「いやぁ、何て言うか・・・底が見えない感じの子かな?」

「え、どういう事ですか?」

「さぁな、俺にもうまい事言えないんだよ・・・」

「うーん、そうですか・・・」

正直言って、今あの子の話をするのは俺の精神衛生上まったくもってよろしくない!なので俺は、手を叩いて話しを強制的に終わらせるとフラウさんに話しを振る事にした。

「あ!そう言えばフラウさん、昨日の仕事はどんな感じだったんだ?上手くいったのか?」

「あ、はい。それはもうバッチリといきましたよ!」

「へぇ、どんな感じだったのか教えてくれないか?」

「えぇ勿論良いですよ。昨日はですね・・・・」

それからフラウさんは、昨日の仕事の内容を軽くだが話してくれた。
その話を楽しそうするフラウさんの事を見ながら、俺はとっても癒されていたとさ。

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