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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第85話

昼休憩が終わり馬車の列が再出発してから数時間後、風や木々の揺れる音しか聞こえなかった外からガヤガヤとした音が聞こえてきた。何事かと思っていると、マホが進行方向を見ながら興奮した様子でいきなり立ち上がった。

「おじさん見てください!おっきな門ととっても高い壁が見えてきました!」

「お、どれどれ・・・?うわっなんじゃありゃ・・・すっげぇデカいし広い!」

思わずため息が出る程の光景が、俺の目の前には広がっていた!だって門も壁も
俺が住んでいる街の2,3倍のデカさがあるぞ。それに壁は円形状になって広がっているんだろうが、ほぼ横一直線に見えるんだが・・・王都ってどんだけデカいんだ?
想像以上の光景に驚いていると、御者の人が運転しながら声をかけてきた。

「皆さん、そろそろ王都に到着しますから降りる準備をしておいて下さいね。
それと、くれぐれも忘れ物などは無い様にお願いします。」

「はい、分かりました。そんじゃあ一応、荷物を近くに置いとくかな。」

「九条さん、良かったら私達の分の荷物もお願いできるかい?」

「了解。えっとフラウさんの荷物は・・・どうします?」

「あっ、もしよろしければ私のもお願いします。」

「分かりました。そんじゃあ荷物を渡してくぞー。」

それから皆に荷物を渡していったり、馬車の中に忘れ物が無いか確認していると、馬車の列は王都の中に入ってすぐの広場に順番に停車していった。そして俺達が乗っていた馬車も完全に停まると、御者の人が運転席から俺達の事を見てきた。

「それでは皆さん、王都までお疲れ様でした。」

「いえ、こちらこそ。それで明日の集合時間と場所なんですけど、昼過ぎに王都の
東側で良いんですよね?」

「はい、それで問題ありません。」

「分かりました。それじゃあ失礼します。」

「えぇ、失礼いたします。」

俺達は御者の人に礼を言うと荷物を持って馬車を降りた。それからすぐ後、停車してた馬車は1列になって王都の中へと走っていった。それを見送った俺は改めて周囲を見渡していた・・・はぁ、凄い数の人だな。それに凄い活気づいているし・・・
まぁ一番活気づいているのは多分、俺の隣に居るマホだけどな。だって凄い興奮
して目をキラキラさせながら大通りの方を見つめているしな。

「おじさん私こんなに沢山の人を見た事ありません!それに道がとっても広いです!あとあと!通りの奥の方に見えるのはもしかしてお城じゃないですか!うわぁ!
きっとあそこに王様がいるんですよね!私近くで見てみたいです!」

「はいはい分かったよ。でもそれは、宿屋に行って荷物を置いて来てからだ。流石にこの荷物を持ったまま王都を歩きたくはねぇな。」

苦笑いを浮かべて荷物を抱え直していると、マホが落ち着きを取り戻して小さく頷いた。

「あぁ・・・そういえばそうですね。」

「だろ?そんじゃあ宿屋・・・の前に、まずは王都の地図を手に入れないと。」

「ですね!それじゃあまずはあそこの案内所に行きましょうか!」

マホが意気揚々と指を向けた先には『王都リエンダルへようこそ!』というバカ
でかい看板が立っていた・・・俺が初めて見た看板の何倍だ?あんなデカい必要あんのか?そんなくだらない疑問を抱いていると、フラウさんが荷物を持って微笑みながら会釈をしてきた。

「すみません。この後お仕事がありますので、私はここで失礼させて頂きますね。」

「あ、そうなのか?それじゃあ、また明日だな。」

「えぇ、また明日お会いしましょう。」

「はい!それではまた明日です!」

「それではまた。」

「またね。」

俺達がフラウさんに別れを告げると、彼女は一度礼をしてそのまま通りの向こうへと歩いて行った。フラウさんを見送った俺達は、改めて案内所へと入っていった。
・・・うん、案内所は最初に行った所と大きな違いは無いみたいだな。
なんて思っていると、入ってすぐの所に立っていたお姉さんが笑顔で俺達の方へ歩み寄って来た。

「いらっしゃいませ。何かお困りごとでしょうか?」

「あぁいえ、王都のマップが欲しいですけど。ありますか?」

「はい、勿論ございますよ。お持ちしますので、あちらの受付へどうぞ。」

「分かりました。よし、じゃあ行くぞ。」

俺は皆と一緒に案内所の奥にある受付へと向かった。そこでしばらく待っていると、お姉さんがマップと思われる紙を何枚か・・・持ってきた・・・え、何枚か?

「それでは、こちらが王都のマップになります。」

「・・・え、これ4枚ともマップですか?」

「はい。マップはそれぞれ北側、南側、東側、西側となっておりますので、マップを見る時は魔力を流してきちんとご自身の現在位置をご確認してお使いください。」

さらっと色々言われたが、どのマップも見た感じ一番初めに貰ったマップと同じ様な感じなんだけど・・・つまりこれが意味するのは、王都ってのは・・・街4つ分?

「わ、分かりました・・・じゃあマホ、すまんがよろしく・・・」

「了解です!ちょっと数が多いので少しだけ待ってくださいねー!むむむ!」

マホは真剣な表情になると、注意深くマップを見てインストールを始めた・・・
いや、マホ本当にごめん・・・まさかこんな広いとは思ってなかったんだ!お詫びの気持ちとして、後で好きな物なんでも買ってやるからな!だから頑張ってくれ!

マップをインストールするマホを見ながら感謝と申し訳ない気持ちを抱いていると、ふとさきほど疑問に思った事が頭の中に思い浮かんできた・・・とりあえず、
マホは集中している今の内にお姉さんに質問してみるか。

「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど良いですか?」

「はい?なんでしょうか?」

「その、外の大通りとか凄い賑わってますけど王都っていつもこんな感じなんですか?」

「あぁ!その事ですね。いえ、普段はここまで賑わっているという事はありません。実は明日、とある特別なイベントがありましてその影響で賑わっているんです。」

「特別なイベント?」

「はい。明日は年に数回行われている国王陛下と王妃様、そしてお姫様が大きな移動式のステージに乗って王都を練り歩く日なんです。」

「え、そんな事やってるんですか?それってメチャクチャ危険なんじゃ・・・」

普通そんな大っぴらに偉い人が、てか王様がそんな事しようものなら真っ先に命
とか狙われそうな物なのに・・・いや、別に狙うような敵国が無いって事か・

「うーん。どうなんでしょうか?詳しい事は分かりませんので何とも言えませんが、今までも大きな事件が起きた事はありませんからきっと大丈夫だと思いますよ。」

「そうですか・・・まぁ、それだけ平和って事か・・・あ、そうだ。そのイベントは何時ぐらいから始まるんですか?」

「あら、もしかして興味がおありですか?」

「えぇまぁ。見られるんだったら見てみたいかなって、そう思うだろ?」

「確かにね。私も王都には何度か来た事があるけど、残念ながら国王陛下をお目にかけた事は無いからね。」

「私もどんな人か見てみたい。」

「だよな。えっとマホは・・・」

「むむむ・・・あ、私も王様を見たいです!むむむ・・・!」

マホは一瞬だけマップから目を反らして元気よく返事をすると、またマップを真剣な表情で見つめながらインストールを始めた。よし、残っているのは後1枚だな!
頑張ってくれ!マホ!こっちはイベントの情報を集めておくからな!

「えっと、そう言う訳なので教えていただけますか?」

「分かりました。国王陛下達はまず午前10時頃にお城を出発なさいます。
そしてそのまま南側の門の所まで移動すると、そのままぐるっと広場を回ってお城に戻られます。その時間としては、大体2時間ほどですかね。」

「へぇ、結構時間をかけて練り歩くんですね。」

「はい。なので国王陛下達を拝見する機会は十分にあるかと思います。それと、
運が良ければ特別な事が起こるかもしれませんよ。」

お姉さんが満面の笑みを浮かべて俺達の事を見てきたので、俺は皆と顔を見合わせてからお姉さんに目を向けた。

「特別な事?何ですかそれは。」

「それはですね。国王陛下達と少しだけお話しする機会が与えられるんです。」

「え、話しって・・・そんな事が出来るんですか?」

「はい。でも運が良ければですけどね。」

「ふむ、詳しく聞かせてもらっても?」

「勿論です。実は国王陛下達が大通りを進んでいる途中、お姫様が見物人の方に手を差し伸べる事があるんです。すると手を差し伸べられたその人は、国王陛下達が
立っているステージに招待されるんです。」

「・・・はぁ、そんな事が・・・」

「ですから、運が良ければ皆さんもお姫様に手を差し伸べられるかもしれません。」

なるほど、お姫差に手をねぇ・・・選ばれたら名誉な事なんだろうけど、まぁ
そんな運よく選ばれる訳ないっての。なんて思っていたら、マホがマップを勢いよく折りたたんだ。

「・・・よしっ、バッチリ覚えましたよ!」

「おっ、そうか。じゃあそろそろ行くとするか。」

「分かりました。」

マホが立ち上がったのを合図に俺達も立ち上がると、受付に居るお姉さんに小さく頭を下げた。

「じゃあ俺達はこれで失礼します。マップ、ありがとうございました。」

「いえいえ、それではまた何かお困りの事がございましたらお気軽にお尋ねください。」

俺達は対応してくれたお姉さんに別れを告げると案内所の外に出ると、人があまりいない場所に歩いて行った。

「さてと・・・それじゃあマホ、宿屋までの案内よろしくな。」

「はい、ちょっと歩くので気合を入れてついて来てくださいよ。」

「了解・・・あ、何か気になった店があったら教えてくれ。連れてってやるから。」

「えっ良いんですか!」

「あぁ、案内に関してはお前に頼りっぱなしだからな。ロイド達もそれで良いか?」

「当然、拒否する理由が無いからね。あぁでも、私も行ってみたい店があるから案内してもらえるかい?」

「勿論です!私にバッチリ任せてください!」

「ふふっ、ありがとうマホ。」

「いえいえ!あ、ソフィさんはどこか行きたいお店ありますか?」

「・・・武器屋。後、行けたら闘技場。」

「えっと、武器屋は分かりますけど闘技場もですか?」

「うん。ぱぱが居るかもしれないから。」

「ぱぱって・・・あぁ、そう言えばソフィの父親は闘技場の王者なんだっけか。」

「そう。だから会おうかと思って。」

「うーん・・・武器屋は行けますけど、闘技場はちょっと厳しいかもしれません。
王都の西の端の方にありますから、行って帰ってくる頃には真っ暗になっている可能性があります。」

「分かった。なら大丈夫。」

「えっ、そんなあっさりと・・・良いのか?」

「うん。そこまで会いたい訳でもない。」

「・・・その言葉、父親の立場からしたら絶対に聞きたくない言葉だな・・・」

「そう?」

「あぁ・・・まぁ、ソフィが良いならいいけどさ。じゃあとりあず移動するか。
ここも人通り増えてきたし。」

「そうですね。じゃあおじさん、はい。」

「・・・え、なに?」

「いえ、ですから手を繋いでください。はぐれる可能性がありますから。」

「えぇ?・・・はぁ、分かったよ。」

「もう、今更緊張する事も無いと思うんですけどね。」

「うっさい。慣れないんだからしょうがないだろ。それよりも案内頼むぞ。」

「はいはい分かりましたよ。じゃあ皆さん、私達の後について来てくださいね。」

それから俺達はマホに案内されて宿屋へと向かうのだった。その道中、マホが
貰った花を押し花にする為の材料を買いに雑貨屋に寄ったり、ロイドがぬいぐるみが見たいと言ったのでファンシーな店に寄ったり、ソフィのリクエストを聞いて武器屋に寄ったりしていると、宿屋に着く頃には外はもう真っ暗になっていた。

宿屋に入った俺達は、受付に向かうと名前と予約情報の入ったカードを渡した。
すると2部屋分の鍵が渡されたので、俺は1つをマホに手渡した。
まぁ当然の事だが俺は皆とは別の部屋だ。流石に同じ部屋に泊まるなんて事は俺の心臓が持たないので却下させてもらった。ていうか、あいつら俺が男だって忘れて
ないか?それともそう認識されてないのか・・・?どっちにしたって、なぁ?
・・・そっから晩飯食ったり風呂入ったりしたが、特に何も起きなかったので俺は自室のベッドに潜り込むとそのまま明日に備えて眠りにつくのだった。

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