おっさんの異世界生活は無理がある。
第77話
買い物を終えてから数日後、いよいよロイドの実家に皆で行く日になった。
俺は着替えを済ませると、洗面所にある鏡で自分の顔をマジマジと見ていた。いや、別にナルシストになったとかではなく・・・・
「・・・よし、頬と腕の傷は完璧に完治したな。それに傷跡も残ってない!」
実は昨日までうっすら傷跡が残っていたのだが、今見たら完璧に消えていた訳だ!いやぁ、マジで傷跡が残んなくて良かったぁ・・・だって俺、体がゴツイ訳じゃないから似合わないし・・・こういうのは加工屋の親父さんとかが似合うんだよなぁ。
「ご主人様!ロイドさんご実家からお迎えの馬車が来ましたよ!」
「あぁ、はいはい!今行くよ!」
玄関の方からマホの大声が聞こえてきたので、俺は身だしなみを整えると急いで洗面所から出て行った。すると、マホが玄関の扉を開けながら呆れた感じで俺の事を見てきた。
「もう、何してたんですか?自分の姿に惚れ惚れしてたんですか?」
「んな訳あるか!傷跡が残ってないか確認してたんだよ。昨日までビミョーに残ってたから気になってな。」
「なるほど、じゃあちょっとしゃがんでください!」
「・・・何で?」
「私が傷跡が残っていないかチェックしてあげますから!ほらほら!」
マホは俺の腕をグイっと引っ張ってその場に強制的にしゃがませようとしてきた!
俺はそれに抵抗すると、腕を掴まれたまま急いで靴を履いて外に向かおうとした。
「いやいいって、さっき自分で確認したから!それよりも馬車来てんだろ?2人も
待ってんだしそろそろ出るぞ!」
マホに腕を掴まれながら外に出ると、既に馬車が停まっていてその前にロイドと
ソフィが待機していた。2人は俺に気づくと小さく手を振って颯爽と馬車に乗り込んでいった。その姿を見て、マホはしぶしぶと言った感じで俺の腕を離した。
「むー・・・あ、じゃあ馬車の中でチェックさせてください!」
マホが私良い事閃いた!的な顔でこっちを見てきたので、俺は肩を落としながら
マホの事を見た。
「えぇ?何でお前そんなに俺の傷跡の確認したいの?そういうのに目覚めちゃったの?」
「いえ!ただ見たいだけです!」
「あぁ、ただの好奇心なのね・・・」
「はい!その通りです!じゃあ早く馬車に乗りましょう!」
マホは小走りで馬車に向かうとそのままの勢いで乗り込んでいった・・・はぁ、人の傷跡に何の好奇心を抱いてんだか・・・そんな好奇心を抱くマホを不思議に思いながら、俺も後に続いて馬車に乗り込んだ。
それから御者の人が俺達が乗り込んだ事を確認すると、扉を閉めて運転席に移動すると馬車をゆっくりと発車させた。
「さぁ!見せてください!」
「はいはい分かったよ。もう好きなだけ見ろよ・・・」
俺の隣に座ったマホが、開口一番そう言ってきたので諦めて顔を傷跡を眺めさせることにした。まぁ、もう残って無いから見ても仕方ないけどさ・・・
「うーん、確かに傷跡は無くなってますねー・・・ほー・・・」
マホは俺の両頬を包む様に持つと、ジロジロと俺の顔を動かしながら眺めていた・・・うん、若干鼓動は激しいがまだ耐えられるな!俺の女の子に対する耐性もかなり上がってきたと言えるだろう!なんて自分の成長っぷりに感動を覚えていると、俺達のやり取りを不思議に思ったのか、ロイドとソフィもジッとこっちを見てきた。
「マホ、何をしているんだい?九条さんの顔に何かついているのか?」
「いえ、傷跡が残ってないか確認しています!」
「なるほど・・・ちょっと失礼。」
「は、ちょ!」
馬車の中で突然立ち上がったロイドは、何を思ったのかマホと同じ様に俺の顔を覗き込んで来た!あ、止めて!心臓が煩い!てか痛い!額から汗が出そう!
おい!2人の美少女が至近距離で俺の顔を見ているんですがこれ何て拷問?!
「ふむ、確かに傷跡は残っていないようだね。」
「そうですね!」
「あ、あの・・・もうかんべ」
「私も見せて。」
・・・何だろうか、ここは天国なのか地獄なのかよく分からなくなってきた。
美少女が揃って俺の目の前に居る、これが恐らく天国。ただ、免疫の無い俺の心臓は破裂寸前。これが恐らく地獄。・・・あぁ、俺は今生きるか死ぬかの瀬戸際と言う事か・・・じゃあ・・・こんな所でぇ・・・・死ねるかぁ!
俺は決死の想いでマホの両手を掴むと、ゆっくりとそれを話して笑いかける。
「どうだ、これで満足できただろ?」
「・・・おじさん、どうかしたんですか?」
「何がだ?」
「いえ、何か笑顔が固まっていますよ?」
「ははは、何を言っているんだマホ。それよりも皆、走行中は席に座って大人しくしていないとダメだぞ。」
「あ、それもそうだですね。」
「ふむ、確かにね。」
「分かった。」
・・・・俺の言葉を聞いて座席に戻った皆は、他愛もない雑談を始めた。
そんな中、俺は窓の外を眺めながら大きく息を吐いて心を落ち着けていた。
おかしいなぁ。結構長い事一緒に住んでいるんだけど、何でこうも慣れないかね。あれかな、美少女過ぎるのがいけないのかな?きっとそうだな。俺ちゃんと成長してるもんな。マホと手を繋いでも平気になってきたもんな。うん。ははは・・・・
自分の将来の女性事情に色々と不安を覚えながらも馬車はどんどん目的地に向かって行き、いよいよロイドの実家の近くである通りに来ていた。すると、突然マホが俺の目の前を通り過ぎて窓に手をついて外を眺め出した。
「あ、おじさん見てください!この通りはもう綺麗になってますよ!」
「・・・あぁ、ここ馬車が爆発した所か。確かに爆発の痕跡が無いな。」
マホと同じ様に窓の外の通りを眺めながら、俺は事件当夜の事を思い出していた。確かにここには爆発した馬車があって、地面には物凄い焦げ跡が残っていたはずだがすっかり無くなっていた。
「まぁ、ここら辺の通りでは常に清掃業者が仕事をしているからね。3,4日も経てば綺麗に掃除されているんだよ。」
「はぁ、すっげ・・・・あれ、って事はロイドの実家の門も?」
「あぁ!そう言えば爆破されてましたね!」
「多分、そっちも問題なく綺麗になっているんじゃないかな?ほら。」
ロイドが馬車の方に視線を向けたので、俺達も一緒になってそっちの方を見た。
すると、確かに門には爆破の痕跡も・・・ってか何の痕跡も残って無かった。
そんな何事も無かったかの様な門を通って敷地内に入った馬車は、中庭を抜けて
屋敷の前で停まった。
「お久しぶりです、皆さま。本日はようこそいらっしゃいました。」
馬車の停車と同時に扉を開けたのは、爽やかに微笑むカームさんだった。俺達は
開かれた馬車から降りるとカームさんの前に立った。
「どうもお久しぶりです。本日はお招き頂きありがとうございます。」
「いえいえ。それではご当主様の居る執務室へご案内させて頂きます。」
カームさんの言葉を聞いて、俺は思いっきりドキッとした!いやだって、執務室と言えばさ・・・・
「あ、あの・・・カームさん、ちょっと良いですか?」
「はい、どうかなさいましたか?」
エリオさんの元へ案内してくれようとしてたカームさんは、立ち止まって振り返ってくれた。
「えっとですね・・・執務室って・・・・」
俺が言い淀んでいると、カームさんは何かに感づいてくれたのか小さく頷いて微笑みかけてくれた。
「ご安心ください、執務室の修復なら既に終わっています。それにご当主様は、
執務室の事は気にしなくて良いと九条様に伝える様にとおっしゃっておりました。」
「そ、そうですか?」
「はい。ただご当主様は、あの状態になるまでどんな戦闘を繰り広げたのか?
それを聞いてみたい様子ではありましたが。」
「あ、あはは・・・まぁ、色々ありまして・・・」
言葉を濁して誤魔化していると、執務室の惨状を知らない3人が俺の事を見てきた。
「ふむ、私もその話には興味があるな。」
「おじさん、一体どんな事をしたんですか?」
「後で聞かせて欲しい。」
「ま、まぁ後でな?とりあえず今は執務室に行こう、な?」
「ははは、それではご案内いたします。」
俺の反応を見て気遣ってくれのか、カームさんは笑顔を浮かべて屋敷の中に入っていった。その後に続いて俺達も屋敷の中に入ったのだが、何故だかマホはため息交じりに周囲をキョロキョロとしていた。
「マホ、どうしたんだ?」
「あぁ、いえ。こうやって改めてみると凄い所なんだなーって思って。ほら、私が初めてここに入った時は色々あってゆっくり見てる暇ありませんでしたから。」
「あーそう言えばな。トイレに向かって全力疾走して、その後は襲撃だもんな。
確かにマホは見る暇なかったか・・・ソフィもマホと同じ様な感じだよな?」
マホとは違って特にキョロキョロした感じは無かったが、そう聞いてみるとソフィは静かに頷いた。
「うん。ロイドの実家すごい。」
「ふふっ、仲間に実家を褒められるって言うのは少しだけ嬉しいね。」
そんな感じで屋敷の中を進んで2階に上がった俺達は、廊下の奥へと進んで行く。そしていよいよ執務室の前へとやって来たと思ったら、突然マホが俺の袖を引っ張ってきた。
「ほら、おじさん!この場所でアリシアさんを助けたんですよね!」
「あぁそうだな、かなりギリギリって感じだったな。あの時はマジ焦ったわ・・・」
「確かに。」
「え、あの時ソフィも焦ってたのか?」
「当然。あの時は必死だった。絶対に助けたかったから。」
「はぁ・・・そうだったのか。」
俺達が当時の事を思い出しながら会話していると、ロイドとカームさんが興味深そうにこっちを見てきた。
「その話、後で詳しく聞きかせてもらいたいな。」
「えぇ、その方がよろしいかと。ご当主様達も・・・お客様方もきっと聞きたいと思いますから。」
カームさんは扉の前に立つと、取っ手を持ってゆっくりと開いていく・・・って
お客様方?その言い方って・・・俺達以外に誰かいるのか?疑問に思いながら開かれた執務室の中を見てみると、以前と同じ様にエリオさんとカレンさんがそこにいた。
ただ1つ、違う点があるとすれば・・・・・
「あ!皆さんお久しぶりです!お元気でしたか!」
「・・・どうも、ご無沙汰しております。」
カレンさんの横に、アリシアさんとシアンが立っている事だ・・・まさかの再会に驚いていると、背後で扉が閉まる音が聞こえた・・・な、何で2人が・・・ここに?
俺は着替えを済ませると、洗面所にある鏡で自分の顔をマジマジと見ていた。いや、別にナルシストになったとかではなく・・・・
「・・・よし、頬と腕の傷は完璧に完治したな。それに傷跡も残ってない!」
実は昨日までうっすら傷跡が残っていたのだが、今見たら完璧に消えていた訳だ!いやぁ、マジで傷跡が残んなくて良かったぁ・・・だって俺、体がゴツイ訳じゃないから似合わないし・・・こういうのは加工屋の親父さんとかが似合うんだよなぁ。
「ご主人様!ロイドさんご実家からお迎えの馬車が来ましたよ!」
「あぁ、はいはい!今行くよ!」
玄関の方からマホの大声が聞こえてきたので、俺は身だしなみを整えると急いで洗面所から出て行った。すると、マホが玄関の扉を開けながら呆れた感じで俺の事を見てきた。
「もう、何してたんですか?自分の姿に惚れ惚れしてたんですか?」
「んな訳あるか!傷跡が残ってないか確認してたんだよ。昨日までビミョーに残ってたから気になってな。」
「なるほど、じゃあちょっとしゃがんでください!」
「・・・何で?」
「私が傷跡が残っていないかチェックしてあげますから!ほらほら!」
マホは俺の腕をグイっと引っ張ってその場に強制的にしゃがませようとしてきた!
俺はそれに抵抗すると、腕を掴まれたまま急いで靴を履いて外に向かおうとした。
「いやいいって、さっき自分で確認したから!それよりも馬車来てんだろ?2人も
待ってんだしそろそろ出るぞ!」
マホに腕を掴まれながら外に出ると、既に馬車が停まっていてその前にロイドと
ソフィが待機していた。2人は俺に気づくと小さく手を振って颯爽と馬車に乗り込んでいった。その姿を見て、マホはしぶしぶと言った感じで俺の腕を離した。
「むー・・・あ、じゃあ馬車の中でチェックさせてください!」
マホが私良い事閃いた!的な顔でこっちを見てきたので、俺は肩を落としながら
マホの事を見た。
「えぇ?何でお前そんなに俺の傷跡の確認したいの?そういうのに目覚めちゃったの?」
「いえ!ただ見たいだけです!」
「あぁ、ただの好奇心なのね・・・」
「はい!その通りです!じゃあ早く馬車に乗りましょう!」
マホは小走りで馬車に向かうとそのままの勢いで乗り込んでいった・・・はぁ、人の傷跡に何の好奇心を抱いてんだか・・・そんな好奇心を抱くマホを不思議に思いながら、俺も後に続いて馬車に乗り込んだ。
それから御者の人が俺達が乗り込んだ事を確認すると、扉を閉めて運転席に移動すると馬車をゆっくりと発車させた。
「さぁ!見せてください!」
「はいはい分かったよ。もう好きなだけ見ろよ・・・」
俺の隣に座ったマホが、開口一番そう言ってきたので諦めて顔を傷跡を眺めさせることにした。まぁ、もう残って無いから見ても仕方ないけどさ・・・
「うーん、確かに傷跡は無くなってますねー・・・ほー・・・」
マホは俺の両頬を包む様に持つと、ジロジロと俺の顔を動かしながら眺めていた・・・うん、若干鼓動は激しいがまだ耐えられるな!俺の女の子に対する耐性もかなり上がってきたと言えるだろう!なんて自分の成長っぷりに感動を覚えていると、俺達のやり取りを不思議に思ったのか、ロイドとソフィもジッとこっちを見てきた。
「マホ、何をしているんだい?九条さんの顔に何かついているのか?」
「いえ、傷跡が残ってないか確認しています!」
「なるほど・・・ちょっと失礼。」
「は、ちょ!」
馬車の中で突然立ち上がったロイドは、何を思ったのかマホと同じ様に俺の顔を覗き込んで来た!あ、止めて!心臓が煩い!てか痛い!額から汗が出そう!
おい!2人の美少女が至近距離で俺の顔を見ているんですがこれ何て拷問?!
「ふむ、確かに傷跡は残っていないようだね。」
「そうですね!」
「あ、あの・・・もうかんべ」
「私も見せて。」
・・・何だろうか、ここは天国なのか地獄なのかよく分からなくなってきた。
美少女が揃って俺の目の前に居る、これが恐らく天国。ただ、免疫の無い俺の心臓は破裂寸前。これが恐らく地獄。・・・あぁ、俺は今生きるか死ぬかの瀬戸際と言う事か・・・じゃあ・・・こんな所でぇ・・・・死ねるかぁ!
俺は決死の想いでマホの両手を掴むと、ゆっくりとそれを話して笑いかける。
「どうだ、これで満足できただろ?」
「・・・おじさん、どうかしたんですか?」
「何がだ?」
「いえ、何か笑顔が固まっていますよ?」
「ははは、何を言っているんだマホ。それよりも皆、走行中は席に座って大人しくしていないとダメだぞ。」
「あ、それもそうだですね。」
「ふむ、確かにね。」
「分かった。」
・・・・俺の言葉を聞いて座席に戻った皆は、他愛もない雑談を始めた。
そんな中、俺は窓の外を眺めながら大きく息を吐いて心を落ち着けていた。
おかしいなぁ。結構長い事一緒に住んでいるんだけど、何でこうも慣れないかね。あれかな、美少女過ぎるのがいけないのかな?きっとそうだな。俺ちゃんと成長してるもんな。マホと手を繋いでも平気になってきたもんな。うん。ははは・・・・
自分の将来の女性事情に色々と不安を覚えながらも馬車はどんどん目的地に向かって行き、いよいよロイドの実家の近くである通りに来ていた。すると、突然マホが俺の目の前を通り過ぎて窓に手をついて外を眺め出した。
「あ、おじさん見てください!この通りはもう綺麗になってますよ!」
「・・・あぁ、ここ馬車が爆発した所か。確かに爆発の痕跡が無いな。」
マホと同じ様に窓の外の通りを眺めながら、俺は事件当夜の事を思い出していた。確かにここには爆発した馬車があって、地面には物凄い焦げ跡が残っていたはずだがすっかり無くなっていた。
「まぁ、ここら辺の通りでは常に清掃業者が仕事をしているからね。3,4日も経てば綺麗に掃除されているんだよ。」
「はぁ、すっげ・・・・あれ、って事はロイドの実家の門も?」
「あぁ!そう言えば爆破されてましたね!」
「多分、そっちも問題なく綺麗になっているんじゃないかな?ほら。」
ロイドが馬車の方に視線を向けたので、俺達も一緒になってそっちの方を見た。
すると、確かに門には爆破の痕跡も・・・ってか何の痕跡も残って無かった。
そんな何事も無かったかの様な門を通って敷地内に入った馬車は、中庭を抜けて
屋敷の前で停まった。
「お久しぶりです、皆さま。本日はようこそいらっしゃいました。」
馬車の停車と同時に扉を開けたのは、爽やかに微笑むカームさんだった。俺達は
開かれた馬車から降りるとカームさんの前に立った。
「どうもお久しぶりです。本日はお招き頂きありがとうございます。」
「いえいえ。それではご当主様の居る執務室へご案内させて頂きます。」
カームさんの言葉を聞いて、俺は思いっきりドキッとした!いやだって、執務室と言えばさ・・・・
「あ、あの・・・カームさん、ちょっと良いですか?」
「はい、どうかなさいましたか?」
エリオさんの元へ案内してくれようとしてたカームさんは、立ち止まって振り返ってくれた。
「えっとですね・・・執務室って・・・・」
俺が言い淀んでいると、カームさんは何かに感づいてくれたのか小さく頷いて微笑みかけてくれた。
「ご安心ください、執務室の修復なら既に終わっています。それにご当主様は、
執務室の事は気にしなくて良いと九条様に伝える様にとおっしゃっておりました。」
「そ、そうですか?」
「はい。ただご当主様は、あの状態になるまでどんな戦闘を繰り広げたのか?
それを聞いてみたい様子ではありましたが。」
「あ、あはは・・・まぁ、色々ありまして・・・」
言葉を濁して誤魔化していると、執務室の惨状を知らない3人が俺の事を見てきた。
「ふむ、私もその話には興味があるな。」
「おじさん、一体どんな事をしたんですか?」
「後で聞かせて欲しい。」
「ま、まぁ後でな?とりあえず今は執務室に行こう、な?」
「ははは、それではご案内いたします。」
俺の反応を見て気遣ってくれのか、カームさんは笑顔を浮かべて屋敷の中に入っていった。その後に続いて俺達も屋敷の中に入ったのだが、何故だかマホはため息交じりに周囲をキョロキョロとしていた。
「マホ、どうしたんだ?」
「あぁ、いえ。こうやって改めてみると凄い所なんだなーって思って。ほら、私が初めてここに入った時は色々あってゆっくり見てる暇ありませんでしたから。」
「あーそう言えばな。トイレに向かって全力疾走して、その後は襲撃だもんな。
確かにマホは見る暇なかったか・・・ソフィもマホと同じ様な感じだよな?」
マホとは違って特にキョロキョロした感じは無かったが、そう聞いてみるとソフィは静かに頷いた。
「うん。ロイドの実家すごい。」
「ふふっ、仲間に実家を褒められるって言うのは少しだけ嬉しいね。」
そんな感じで屋敷の中を進んで2階に上がった俺達は、廊下の奥へと進んで行く。そしていよいよ執務室の前へとやって来たと思ったら、突然マホが俺の袖を引っ張ってきた。
「ほら、おじさん!この場所でアリシアさんを助けたんですよね!」
「あぁそうだな、かなりギリギリって感じだったな。あの時はマジ焦ったわ・・・」
「確かに。」
「え、あの時ソフィも焦ってたのか?」
「当然。あの時は必死だった。絶対に助けたかったから。」
「はぁ・・・そうだったのか。」
俺達が当時の事を思い出しながら会話していると、ロイドとカームさんが興味深そうにこっちを見てきた。
「その話、後で詳しく聞きかせてもらいたいな。」
「えぇ、その方がよろしいかと。ご当主様達も・・・お客様方もきっと聞きたいと思いますから。」
カームさんは扉の前に立つと、取っ手を持ってゆっくりと開いていく・・・って
お客様方?その言い方って・・・俺達以外に誰かいるのか?疑問に思いながら開かれた執務室の中を見てみると、以前と同じ様にエリオさんとカレンさんがそこにいた。
ただ1つ、違う点があるとすれば・・・・・
「あ!皆さんお久しぶりです!お元気でしたか!」
「・・・どうも、ご無沙汰しております。」
カレンさんの横に、アリシアさんとシアンが立っている事だ・・・まさかの再会に驚いていると、背後で扉が閉まる音が聞こえた・・・な、何で2人が・・・ここに?
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