おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第76話

モンスター相手に試し斬りをした俺達は、そのままの勢いであっと言う間にクエストを終わらせると斡旋所に報告に行っていた。そして報酬を受け取ると、俺とソフィは武器ので盛り上がりながら斡旋所を出て行った。

「いやぁ、やっぱりレアな素材で強化した武器は斬れ味が全然違うな!」

「うん、最高だった・・・!」

「だな!それに武器の斬れ味が良かったおかげで、クエストの報酬も追加で貰えたからな!」

俺は手に持った報酬の入った袋をジャラジャラ鳴らしながら笑顔を浮かべていた。
今回やったクエストはモンスターの納品クエストだったのだが、斬った断面が綺麗だったという事で追加報酬を貰う事が出来ました!はぁー斬れ味最高って最高だな!

「あのーおじさん?その報酬を使って皆でちょっとお買い物に行きませんか?」

袋を持ってニヤニヤしていると、俺の前に回り込んで来たマホが手を後ろに組んで上目遣いでそう聞いて来た。

「買い物?一体何を買いに行くんだ?」

「えっと、寒さが厳しくなる前に冬服を買いに行きたいんです!ダメですかね?」

マホが上目遣いでそう聞いて来たが、服にあまり興味が無い俺は行くかどうかを決めかねていた。なのでとりあえず、隣に立っているロイドとソフィに意見を聞いてみる事にした。

「えっと、ロイドとソフィはどうだ?マホはこう言ってるけど、冬服を買いに行ってみるか?」

「あぁ、私は構わないよ。ソフィはどうだい?」

「私も構わない。少しだけ興味あるから。」

俺の質問にロイドは爽やかに微笑みながら即答をしていた。そしてソフィも無表情ながらに普通に頷いていた・・・まぁ、2人が良いなら別に問題ないか。それに、
勢いでクエストを受けて追加報酬まで貰ったから俺の財布も痛まないだろうしな。

「よし、それじゃあ冬服を買いに行くとするか。」

「はい!それじゃあ皆さんついて来てください!」

マホは笑顔を浮かべると、何処かに向かって歩き始めた。気にはなったが、聞くのは目的地に着いてからでいいか・・・何て事を考えていた俺は、前を歩くマホの後をロイドとソフィと共に歩いていく。

それからしばらくして、俺達は店が立ち並んでいる通りへと来ていた。初めて来た場所だったので、俺は思わず周囲を見渡してみた。

「へぇーこんな場所があったのか。」

何か感覚的には商店街とかそんな雰囲気だな。とにかくごちゃっと色んな店がある感じだ。

「おや、九条さんは来た事が無かったのかい?」

「あぁそうだな、ロイドは来た事あるのか?」

「何度かファンの女の子達と一緒に来た事があるよ。ソフィはどうだい?」

「この間、服を買いに来た。」

「え、それってマホとリリアさんと来たって事か?」

「うん。あそこで服を買った。」

ソフィが指を指した方向には、スポーティな感じの服が置いてある店があった。
なるほど、確かにソフィに似合いそうな服が結構置いてあるな。

「さて!それじゃあ服を買う為に色々見て回りましょうか!」

店先を眺めていたら、マホは俺達に前に来て笑顔でそう言ってきた。まぁ、ここに居ても時間の無駄か。

「それもそうだな。とりあえずここら辺をぐるっと見てみるか。」

「はい!」

俺達はとりあえず気になった店に入りつつ、このエリアをグルっと回ってみた。
へぇー結構男向けの店とかもあるのか。それに店の中も結構綺麗だし・・・マホの服を買いに行った所は完壁女性向けだったけど、ここなら俺も買い物できそうだな。

それから1、2時間かけて冬服を買って回った俺達は、服が入った袋を両手に持って帰ろうとしていた・・・うん、袋を持ってるのは俺だけですがね。

「ただ今抽選会を行っておりまーす!興味のある方はいかがですかー!」

「・・・え?抽選?」

その時、俺の耳にとても因縁の深い単語が聞こえてきた・・・思わず立ち止まって周囲を見ていると、マホが不思議そうに俺の事を見てきた。

「あれ、どしましたか?」

「いや、なんか抽選って聞こえて・・・」

「抽選?・・・あ、あそこじゃないですか?ほら。」

マホがそう言って視線を送った先には、数人が列をなして並んでいた。そしてその先には、厚着をした男女が笑顔で立っていた。

「抽選券をお持ちの方はどうぞお並びくださーい!5枚で1回抽選ができまーす!
運が良ければ豪華賞品と交換できますよ!いかがですかー!」

「ご、豪華商品ですか!?お、おじさん抽選券貰いましたよね!出してください!
ほら皆さんも!」

「抽選券?あぁ、買い物した時に貰った奴か。えっと・・・」

俺は袋を地面に置いてポケットの中を探って取り出した。同じ様にロイドとソフィも抽選権を取り出すと、マホに手渡した。

「えっと・・・うん、5枚ありますね!それじゃあはい!」

「・・・え、俺か?」

「そうですよ!おじさん、抽選には縁がありますもんね!」

「おや、そうなのかい?」

「は?いやまぁ・・・あるっちゃあるけど・・・」

まぁ確かに抽選の結果でこの世界に来たけど、それで縁があるって言えるのか?
疑問に思いながら首をかしげていると、ロイドが俺の顔をジッと見て頷いていた。

「ふむ。それなら九条さんに託そうかな。」

「えぇ、マジでか?ソフィは・・・」

「うん。私も異論無い。」

「と言う事で、はい!頑張って来てくださいね!」

なんだか流れで俺に決まってしまったらしい・・・はぁ、正直普通の抽選とか当たった事が無いんだが・・・それを言える雰囲気でもないよなぁ・・・

「・・・分かったよ。外れても文句言うなよ?」

「勿論です!」

「まぁ、勝手に期待はしているがね。」

「九条さん。ふぁいと。」

「・・・はぁ・・・じゃあ行ってくるわ。」

全員に見送られながら、俺は抽選をしてる場所に向かった。そして列に並びながら豪華賞品が何なのか見てみた。

「えっと、全部で3等まであるのか・・・意外と狭い門だな。どれどれ3等が・・・お買い物券1万Gか。そんで2等が、最新式魔道撮影機・・・あぁカメラか。
そんで1等が?ロゼーノ王国の高級宿泊施設2泊3日無料券・・・初めて王国の名前を知ったな・・・こんな所で知るとか、感動も何もねぇな。」

折角異世界の王国の名前を知ったってのに、特に感動も味わえなかった俺は、微妙にがっかりしながら列を進んで行く。そして、いよいよ俺が抽選をする番になった。

「はい!それでは抽選券をお願いします!」

「うす。」

俺が抽選権を手渡すと、お姉さんは1枚ずつ丁寧に数えて行った。そして5枚ある事を確認すると、笑顔でこっちを見てきた。

「はい!確認いたしました!それではこちらの取っ手を持ってゆっくりと回してくださいね!」

「・・・この世界にもガラガラあるのね。」

「はい?」

「あぁいや、何でもないです。」

前の世界でも何度か見た事があるガラガラの取っ手を持つと、俺はゆっくりとそれを回していく・・・そして・・・

「あらー残念外れです!それではポケットティッシュをどうぞ!」

「あぁ、どうも。」

まぁ、そんな都合のいい展開が起こる訳もないよね。俺はお姉さんからティッシュを受け取ると待っていた皆の所へと戻って行った。そしてティッシュを見せながら、肩をすくめて結果を報告した。

「残念ながらって感じだな。」

「ふふっ、今回は縁が無かったようだね。」

「うぅー、もしかしたらおじさんなら!って期待してたんですけど・・・」

「いや無理だって・・・前に言ったろ?ギャンブルに弱いって。」

「あぁーそういえば言ってましたね!すっかり忘れてましたが。」

「まぁ俺もすっかり忘れてたがな。」

「じゃあ、もう帰る?」

「そうだな・・・よしっ!お前らの期待に答えられなかったって事で、今日は晩飯を奢ってやろう!」

置いてあった自分の荷物を持ちあげながらそう言うと、全員がおぉーと言いながら小さく拍手をして来た。

「随分と太っ腹だね。本当に良いのかい?」

「あぁ。ただし、そこまで値段のかからない店でって条件付きだがな。」

「えぇーちょっとお高めのお店でフルコースとかダメなんですかー?」

「いやダメに決まってるでしょ!きちんと俺の財布に優しいお店にしなさい。」

「ぶぅ・・・分かりました!それじゃあ街に向かいながら良さそうなお店を探しましょうよ!」

マホが笑顔でそう提案すると、ロイドもソフィも頷きながらそれに同意していた。

「うん、了解。」

「ふふっ、どんなお店に辿り着けるか楽しみだね。」

「・・・あぁ、そうだな。」

・・・さて、何で俺がこんな事を提案したのか?・・・そんなの決まってるだろ、この取り戻した平和な日々を十分に楽しみたかったからだ。だからちょっとくらいの出費は許容範囲って事だ!・・・まぁ、食事代は少し許容範囲外だった訳だがなぁ!

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