話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第69話

慎重に侵入者を排除しながら進んできた俺達は、廊下の陰に潜みながら玄関ホールの様子をうかがっていた。

「うわぁ・・・多すぎじゃね?」

玄関ホールには3つの光の球体が浮いていて、それに照らされた6人の侵入者が扉の近くでうろついているのが確認できた。ただこっから確認できるだけなので、他にも潜んでいる可能性があるんだけど・・・はぁ、どうすっかな・・・

「全員倒す?」

悩んでいると、後ろにいるソフィが当たり前の様にそう聞いてきた。俺は静かに首を横に振ると、その提案を否定した。

「あの人数だと俺とソフィでも時間がかかるし、戦ってる間に応援を呼ばれる可能性も高い。もしそんな事になったらマホ達が人質になる可能性もある。だからなるべく騒ぎは起こしたくない。」

俺の話を聞いたソフィが静かに頷いた直後、扉の前に数人の侵入者が集まり地面に手をついた。その次の瞬間、地面に魔方陣が出現したと思ったら巨大な柱が出現して扉を塞いでしまった!

「おいおいマジかよ・・・」

あれじゃあ外からも中からも入れねぇじゃねぇか!何してくれてんだあいつら!
そんな事を考えていると、後ろから肩をトントンと叩かれた。振り返ると、シアンが俺を見て静かに話しかけてきた。

「あの、ここにいるのも危険ですし。戻りませんか?」

「・・・そうだな。とりあえず2階の男子トイレ近くまで戻るか。」

シアンの提案を聞いた俺達は、進んで来た通路を戻って階段を上がりトイレの近くまで戻って来た。それから中庭が見える窓の近くまで移動した俺達は、一息つく為に壁にもたれかかったり座ったりしていた。

「はぁ・・・これで玄関から出るのは絶望的だな。ったく、面倒な事してくれたもんだな。」

「そうですね・・・これからどうしましょう?」

窓の外眺めながらそんな事を口に出すと、マホが不安そうな表情でそう聞いて来た。そんなマホを安心させるために、俺は片膝をつきマホに視線を合わせると頭を撫でた。

「とりあえずロイドに連絡してみて、他に脱出できそうな場所が無いか聞いてみるよ。」

「あの・・・1階の窓を割って逃げるのはどうでしょうか?」

シアンがおずおずと手を上げながらそう言ってきたので、俺はマホを撫でるのを止めてシアンに向き合い静かにそれを否定する。

「外にもどれだけいるか分からないから、なるべく静かに行動したいんだ。今はまだバレてないから良いけど、バレた後が予想できないからな。」

俺がそう言うと、シアンはしょんぼりとした顔でうつむくと消えそうな声で謝って来た。

「そ、そうですよね・・・余計な事を言ってすいません・・・」

「あぁいや。シアンの言う事も分かるから、謝らなくても大丈夫だよ。」

なるべく優しく笑うよう心掛けながらそう言うと、俺は使い物にならなくなった通信機を手に持って立ちあがった。

「階段の方を確認しつつロイドに通信してくるから、少し待っててくれ。」

俺はそう言うと、通信機を口元に当てながら階段の方へ向かって行く。こういう細かい事が、言い訳するには大事なんですよ。
通信機も使えないのにどうやって通信していたんですか?いや実は、俺達には特殊なアクセサリーがあってですね・・・とか、そんな事を説明するのも面倒だ・・・・そんな事を考えつつ、俺は脳内でロイドに話しかけた。

(ロイド、そっちは大丈夫か?)

(・・・九条さんか。こっちは招待客の避難誘導も終わって全員会場内に避難させ終えた所だ。そっちは?)

(こっちは問題大ありだよ。実は・・・)

それから俺は屋敷内に侵入者が現れた事。そいつらはロイドを狙っていた連中と同じ様な装備を身につけていた事。玄関から脱出しようとしたら巨大な柱が出現して無理になった事を説明した。

(なるほど。そんな事があったのか。)

(あぁ、そんな訳で他に脱出できそうな場所知らないか?)

(そうだね・・・少し待っていてくれ、カームに聞いてくる。彼なら何か知っているかもしれない。)

(あぁ、分かった。)

それからロイドの連絡が来るまで侵入者が来ないか階段近くで警戒していたが、新しく巡回をしてくるやつはいなかった・・・そんなに侵入者いないのか?いや、そんな事を考えてるとまーた無駄に面倒な事になりそうだから考えるのは止めよう。

(すまない、待たせたね。大丈夫かい?)

(あぁ、特に問題ない。それより分かったのか?)

(勿論。カームに聞いた所によると、1階の食糧倉庫に今は使われていない勝手口があるらしい。そこなら見つからずに脱出できるかもしれない。)

(そうか、場所はマホに確認してみるよ・・・なぁロイド、アリシアさんシアンの事は伝えられたか?)

(あぁ。会場に避難誘導する時に伝えておいたよ。君達と一緒に屋敷に居るってね。)

(そうか・・・どんな様子だった?)

(それが、慌てた様子でシアンさんを迎えに行こうとしていてね。何とか止めたけど、正解だったようだ。)

(あぁ、下手したら捕まっていた可能性があるしな。)

(そうだね・・・さて、私は招待客の安否確認を手伝ってくるよ。父さんと母さんも皆を落ち着ける為に行動しているからね。)

(そうか。じゃあ、また後でな。)

(あぁ、また後で。)

ロイドと話し終えた俺は、警戒をしながらマホ達の所へ戻ると食糧倉庫に今は使われていない勝手口があるという事を説明した。

「なるほど、分かりました。それじゃあちょっと待っててくださいねー・・・」

そう言うとマホは、両手の人差し指でこめかみを押さえながらうんうんと唸り始めた・・・それから少しして、パッと笑顔になると俺達に食糧庫の場所の説明を始めた。

「どうやら食糧庫は、私達が居る場所の反対側の1階にあるみたいです。」

「えぇ?こっから反対側って結構な距離あるぞ・・・この屋敷無駄に広いし・・・」

「そんな事言ってもしょうがないじゃないですか。ね?ソフィさん。」

「うん。バレなければ問題ない。」

「随分と簡単に言ってくれるねぇ・・・まぁ、しゃあない。」

「そ、それじゃあ。」

「あぁ。今までと同じ様に、侵入者を片付けながら食糧庫まで向かうぞ。」

「「おー」」

「お、おー」

マホとソフィが手を挙げて静かに返事をすると、その後にシアンも戸惑いながら手を挙げて2人の真似をした・・・その瞬間、突然腰につけた通信機からノイズ音が聞こえてきた。

「ん?何だ?」

もしかして魔石に魔力が戻ったのか?そう思った俺は通信機を顔の近くに持ってきたが、何にも聞こえてこない・・・もしかしてと思った俺は、侵入者が持っていた通信機を手に持った。間違いなく、そこからノイズ音が出てる!

『こちら第4部隊。屋敷の裏で女を見つけた。』

「・・・女?」

突然、若い男の声でそんな言葉が聞こえてきた・・・どういう事だ、まさか誰か捕まったのか?でも誰が・・・え、まさかそんな訳ないよな・・・!?
俺の頭の中に、ある人物の名前が出てきた。いやそんな!もしあの人だったらフラグの回収が早すぎるだろう!

『分かった。いますぐ俺の元へ連れてこい。』

『了解。すぐに連れて行く。』

しゃがれた男に若い男が返事をした直後、通信機から出ていたノイズ音は消えてしまった。

「だ、誰か捕まっちゃったんでしょうか・・・」

シアンの不安そうな声を聞いた俺は、慌ててロイドに話しかける。

(おいロイド!ちょっと聞きたい事があるんだが、会場にアリシアさんはいるか!)

(おや、いきなりどうしたんだ?)

(早くしてくれ!不味い事が起きた可能性がある!)

(・・・分かった、待っていてくれ。)

突然焦りだした俺を見て、マホとシアンが不安そうな表情を浮かべていた。
頼むぞ・・・・こんなありきたりな展開誰も望んでねぇからな・・・!

(待たせた。)

(どうだ!アリシアさんはいたか!)

(それが、会場内に姿を確認できないんだ。)

(あぁマジかよ畜生!)

(九条さん、一体どうしたと言うんだ?)

(いまさっき、侵入者が持っていた通信機から女が捕まったって聞こえてきた。)

(なに?まさか・・・)

(あぁ、アリシアさんの可能性が高い。悪いがロイドは引き続きアリシアさんを探してくれ。俺はその人を救助してくる。)

(いや待ってくれ!それならここが落ち着いたら護衛部隊を引き連れて皆で)

(悪いが待ってる余裕はない。俺はこの後の展開を嫌って言うほど予想できるからな。)

大人向けPCゲームのおかげでな!あぁ最悪だ!俺はゲームなら楽しめるが現実にそれが起きるってなったら反吐が出そうなくらいムカつくんだよ!それも知っている人がそんな目に遭うのは最も最悪だ!

(そん訳だから俺は行く。ロイドは早急にアリシアさんの安否確認頼むぞ。)

(・・・分かった。全く、九条さんは言い出したら聞かないね。)

(あぁ、良く知ってるだろ?)

(ふっ、じゃあ気を付けてくれよ。こっちも落ち着き次第すぐに向かうから。)

(あぁ、頼んだ。)

ロイドとの会話を終えると、俺は片膝をつき真剣な表情でシアンに向き合う。そして不安な表情浮かべる彼女に、俺は考えていることを全て話す事にした。

「シアン、さっき捕まったのはアリシアさんの可能性がある。」

「・・・え?え?」

俺の言葉に戸惑っているシアンに、俺は更に言葉を続ける。こういう事は半端に隠すと大きな面倒事になる可能性があるから、一気に全部ぶちまけるべきって思うんだ!

「アリシアさんにシアンが屋敷に居る事を伝えてもらったんだ。そうしたら、慌てた様子で屋敷に向かおうとしていたらしい。だから捕まったのはアリシアさんの可能性がある。」

「そ、そんな!?」

シアンは口元を両手で押さえ、顔面を蒼白させて驚いていた・・・そして俺にゆっくり近づいてくると、襟元をギュッと掴んで来た。

「ど、どうしましょう!お姉様が捕まった何てそんな!そんな!」

青い顔で俺の襟元を掴むシアンの手を強く握った俺は、覚悟を決めてシアンの表情を見た。シアンは大きく目を見開きながら俺の事をジッと見ていた。その表情は今にも泣きだしそうに見えた。
マホとソフィは真剣な表情を浮かべながら、黙って俺達の事を見守っていた。

「シアン。俺は今からその捕まった女の人を助けに行ってくる。だからシアンは2人と一緒にすぐに」

脱出してくれ。そう言おうとした瞬間、マホが呆れた表情でバカでかいため息を吐いて俺の事を見てきた。・・・いや、あれは呆れた表情ってか馬鹿にした表情だったね。

「はぁ・・・おじさん。いちいち言うのも馬鹿らしいですが、私達も行きますから。ですよね?ソフィさん。」

「当然。」

「え、いやお前らはシアンの安全の確保を」

「はいはいおじさんに拒否権はありませんから。それにシアンちゃんだって、それを聞いて大人しく脱出するとでも?」

有無を言わさぬ口調でマホがそう言うと、シアンは腕で目をぬぐうと真剣な表情を浮かべて力強く頷いた。そしてソフィも、何も言わずに俺の事をジッと見ていた。
・・・全く、この世界の女の子はどいつもこいつもカッコよすぎじゃね?これじゃあ男の立場が無くなるっての・・・そんな事を考えながら俺は立ちあがって苦笑いを浮かべると3人の事を改めを見渡した。

「・・・まぁ、こうなる事は心のどっかで予想していたよ。」

「なら最初から無駄な事を言わないでくださいよ。時間の無駄ですからね。」

「はいはい、すいませんでしたよ。それじゃあ全員で助けに行くとするかね。」

俺はそう言って女の人が連れて行かれるであろう場所へと向かって行こうとした。すると後ろから、ソフィが不思議そうに話しかけてきた。

「女の人がどこに連れていかれたのか分かるの?」

「いや?だが高確率でここだろうなって場所は予想できる。」

「そ、それってどこなんですか!」

両手をギュッと握ったシアンが真剣な表情でそう聞いて来た。俺は慎重に歩みを進めながら後ろを見てニヤッと笑う。

「簡単な話だ、悪党ってのは偉い人の部屋が大好きなんだよ。」

それから俺達は、屋敷の奥のとある部屋を目指して向かって行く。さぁ、自己満足の人助けを始めようじゃないか。

「おっさんの異世界生活は無理がある。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く