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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第66話

突然の女の子の登場に俺とマホは戸惑っていたが、ロイドやリリアさん、ライルさんは何かを思い出すかのように考え事をしていた。・・・ソフィ?あぁ、いつも通り特にリアクションはない!

「えっと・・・どうかしたの?もしかして、ご家族とはぐれちゃったのかな?」

俺は自分でもぎこちないと思える笑顔を浮かべ、ロイドっぽい優しい口調で女の子にそう話しかけた・・・すると、女の子は俺の顔をパッと見て慌てた様子でキョロキョロと周囲を見た後、そそくさと後ずさっていった・・・・え?何その反応?・・・もしかして、俺の笑顔ってどんなドン引きされるレベルでひどいの?
女の子の反応に若干心が折れかけていると、女の子はドレスのすそをギュッと握り真剣な表情で俺の顔を見た。

「あ、あの!その・・・先ほどは、お姉様達がすみませんでした!」

大きな声でそう言った女の子は、俺に対して深々と頭を下げてきた。・・・うん、今の女の子の発言でおおよそは理解できた・・・でも、出来ればもう少し声を小さくしてほしかったかな・・・だって、周囲の人が俺の事を見てひそひそ話し始めたからね・・・恐らくは、小さい女の子に八つ当たりして謝らせている畜生とでも思われているんだろうなぁ・・・どうして俺はこうタイミングが悪いんだろうねぇ・・・

「・・・ははは・・はは・・・」

「ちょ、おじさん現実逃避してる場合じゃないですよ!正気に戻ってください!」

自然と何だかよく分かんない笑いが漏れ出していると、マホが俺の腕を掴んで必死に揺さぶってきた。そんな俺達を見て、ロイドは顎に手をやって周囲を見渡した。

「ふむ、面倒な事になる前に誤解を解いてくるか。リリアさん、ライルさん、悪いんだが一緒に来て手伝ってくれるかい?」

「えぇ!勿論お供いたしますわ!」

「は、はい!」

その後ロイド達のおかげで何とか誤解が解けたのか、周囲のざわつきが収まっていった・・・まぁ依然としてチラッとは見られてはいるけどな・・・そんな周囲の状況を察したのか、女の子は控えめに小さく頭を下げた。

「あの、すみませんでした・・・私が大きな声を出して謝ったせいで、周囲の人達にあらぬ誤解をさせてしまったみたいで・・・」

「あぁいや、大丈夫だよ。それよりも、どうして俺に謝罪をしてきたんだい?・・・まぁ、さっきのあの2人の発言に関係する事だとは思うけどね。」

俺が苦笑いを浮かべながらそう言うと、女の子はしゅん・・・とした様子で下を向いてしまった。

「はい・・・その通りです・・・私の名前は『シアン・ペティル』と言って、先ほどまでいたアリシア・ペティルの妹になります・・・」

・・・俺は床に膝をつけシアンさんと目線を同じ高さにして、なるべく優しい声を出すように心がけて話しかけた。

「初めまして、シアン・ペティルさん。俺の名前は九条透と言います。・・・その、謝ってもらった所申し訳ないんだけど・・・正直、そんなに気にしてないんだよね。っていうか逆に感心してた所なんだ。」

「・・・え?」

俺の言葉を聞いて、シアンさんは戸惑ったような表情で俺の事を見てきた。

「だってレベルがあのタムって奴よりも低いのは事実だし、俺って別に貴族でも何でもないから、着ている服と中身が釣り合ってないってのも正しい見方が出来てるって事だな。あと冴えないって部分も自覚してるし・・・うん、別にそんな思い詰めて謝られるような事じゃないよ。」

「で、でも!あんな言い方は・・・!」

「まぁまぁ・・・俺自身が気にしてないって言ってるから、もう良いんじゃないか?それでもまだ気になって何かしたいって思うなら・・・そうだな・・・どうしてお姉さんがロイドに突っかかって行くのか。その理由を教えてもらえないかな?」

シアンさんにそう聞くと、ロイドが少し驚いたような表情をして俺を見てきた。

「ん、突然どうしたんだい?」

「いや・・・ロイドのファンってのは沢山見てきたけど、ライバルってのは初めて見たからちょっと興味があってな。どうしてライバル視してるのか聞きたいんだよ。」

俺がそう言うと、ロイドは腕を組みながらシアンさんの事をみつめた。

「ふむ・・・そう言われれば、確かに私も気になるな。いつからか急にライバルと言われるようになったからね。」

「そう言えばそうですわね・・・アリシアさんは王立学園の時、ロイド様に一度も何かで勝った事が無いのにどうしてライバルと言っているのか・・・私も気になりますわ。」

「いや、ちょっとリリアさん?流石にそれをシアンちゃんの前で言うのは・・・」

リリアさんの言葉に、ライルさんは気まずそうな顔でしてシアンさんを見た。ただシアンさんは、そこまで気にした様子では無かった。

「いえ、大丈夫です。お姉様がロイドさんに勝てなかったのは事実ですから・・・・えっと、お姉様がどうしてロイドさんをライバルと思うようになったかですよね? その・・・多分ですが、髪の色が原因なんだと思います。」

「・・・髪の色・・・つまり同じ金髪だった事が原因って事か?」

俺がロイドの髪をチラッと見てそう聞くと、シアンさんは静かに頷いた。

「・・・はい。実は王立学園に通っていた頃、お姉様はロイドさんと同じ髪色だった事で色々な事で比べられていたみたいなんです・・・」

シアンさんがそう言ったのを聞いて、一瞬納得しかけたが別の疑問が湧いてきた。

「・・・え、でもその当時ってロイドやアリシアさん以外にも金髪の人っていなかったのか?」

リリアさんにそう聞くと、彼女はすこし考え込むようにして話し始めた。

「・・・いえ、他にも金髪の方はいらっしゃいましたわ。ただ・・・成績優秀者の中ではお二人しかいなかったはずですわね。」

「・・・成績優秀者?・・・えっと言葉の意味は理解できるが・・・」

「まぁ簡単に言うと、1年間の総合成績が優秀な者10名が成績優秀者と呼ばれているんだ。私やリリアさん、アリシアさんもその中の内に入っていたんだ。」

俺が困惑していると、ロイドがそう説明をしてくれた・・・なるほど、これで比べられてた理由が分かった気がする。

「・・・つまり成績優秀者って言う目立つ所に、目立つ髪色をした2人が居たから、そのせいで何かと比べられてたって事か。」

「はい・・・それでお姉様は、どうせ比べられるならロイドさんに勝ちたい!と考えたらしく、ライバルを名乗って色んな事に打ち込んで何かにつけては勝とうとしているんです。」

俺はアリシアさんがロイドをライバルと呼ぶことになった経緯を聞いて、思わず感心してため息を吐いていた。

「はぁ・・・凄いな、アリシアさんって。」

「・・・え?す、凄いって・・・どういう事ですか?」

思わずこぼれた言葉に、シアンさんが驚きと戸惑いの表情で俺の事を見てきた。

「いやだって、そんな自分より凄い奴と何度も比べられる様な事されたら俺だったら確実に腐る自信あるし。」

「あぁー確かにご主人様は腐りますね。ずぶずぶに。」

「おい。・・・まぁそんな訳で、そんな凄い相手に腐らずライバル宣言して更には勝とうとしてるなんて尊敬するよ。」

「えぇまぁ、その点については認めてあげますが今回は勝負の方向が明後日に向かっていましたね。九条さんをおとしめた所で、別にアリシアさんの勝ちにはならないですのに。」

「そうだね。それに、どうせ勝負するならアリシアさんと直接対決がしたいかな。」

ロイドはそう言うと、シアンさんに近づくとかがんで視線を合わせ優しく微笑んだ。

「シアン、機会があったらアリシアさんにこう伝えてくれるかい。今度は正々堂々と勝負を挑んできてほしい。人をおとしめる様なやり方は、私のライバルとしてふさわしくないだろう?・・・とね。」

そう言って笑ったロイドを見て、シアンさんは真剣な表情でしっかりと頷いた。

「・・・はい。必ず伝えます。」

「うん。よろしく頼むよ。」

そう言って立ち上がったロイドは、周囲を見渡した後に俺達を見た。

「さて、そろそろ挨拶周りに戻らないといけないかな。」

「えぇ、ロイドさんもう行っちゃうんですか?」

「あぁ、すまないねマホ。リリアさんとライルさんはどうするんだい?」

「私はロイド様にご同行させて頂きたいのですが、よろしいですか?」

「あ、私もお願いします!」

「あぁ、勿論大丈夫だよ。さて、じゃあ行ってくるよ。」

「あぁ、行ってら。」

「行ってらっしゃい!」

「行ってらっしゃい。」

そうして、ロイド達は挨拶回りをしに向かった。残された俺達はと言うと・・・

「さて、これからどうするか・・・っていうか、シアンさんはどうしたい?お姉さん達と合流したいなら一緒に行ってあげるけど。」

「あぁいえ・・・今はちょっと顔を合わせずらいので、しばらくご一緒させて頂いても良いですか?」

不安そうな顔をしてそう言うシアンさんを見て、俺は立ちあがって頷いた。

「あぁ、俺はいいぞ。」

「私も大丈夫です!」

「同じく。」

「あ、ありがとうございます!」

そう言ってお辞儀してきたシアンさんは、少しだけ笑顔になっていた。さっきまで、暗い表情ばっかりだったからな・・・

「さて、それじゃあ・・・」

「あ!おじさんに作ってもらいたいお料理を一緒に食べに行きましょう!」

「そうだね。そうしようか。」

どうしようか相談しようとした矢先、マホがそう提案してきた。それに間髪入れず、ソフィもその提案に賛同しやがった・・・

「はぁ・・・分かったよ。それじゃあ小腹も減ったし食べに行くか。シアンさんもそれで良いかい?」

「あ、はい!・・・あの、それと私の事はシアンで大丈夫ですよ?」

「そうか?えっと・・・それじゃあシアン、料理を食べに行くとするか。」

「分かりました!」

元気よく返事をしたシアンと、マホとソフィを一緒に俺達は会場内をウロウロしながら目当ての料理を食べ歩いた。それからしばらくして目当ての料理も食べ終わった俺達は、もう一度同じ場所に戻って来た。途中、挨拶回りをしながらも女の子達に囲まれているロイド達を見た・・・あっちも色々大変そうだな・・・

「あの・・・ちょっと良いですか?」

会場内を見渡しながらそんな事を考えていると、シアンさんがもじもじした様子で声を掛けてきた。

「ん?どうかした?」

「すみませんが・・・あの、お花を摘みに行ってきます。」

「え、お花を・・・?あぁ、なるほど。分かったよ。」

「し、失礼します。」

シアンさんは、少しだけ恥ずかしそうにしてそそくさと立ち去って行った。

「あ、私も一緒に行ってきます。戻って来る時に迷わないように!」

そう言ってマホはシアンさんを追って行った・・・と思ったらすぐに戻って来た?

「あれ、どうしたんだ?」

「それがその・・・物凄い行列で・・・」

「・・・え、そうなのか?」

マホの言葉の意味をすぐに理解した俺は、眉をひそめた。

「はい・・・このままじゃ・・・」

マホはそう言って不安そうな表情でシアンさんを見た。彼女はドレスのスカートをギュッと握って耐えている様子だった。

「・・・ちょっとついて来てくれ。」

俺はそう言うと、3人を引き連れて会場の外へと向かった。そしてそこで警備をしていたカームさんを見つけると駆け寄って行く。

「おや、九条様。どうかなされましたか?」

「あの、すみませんが屋敷の方のお手洗いを使わせてもらっても良いですか?」

俺がそう言った瞬間、カームさんは俺の後ろにいるシアンに視線を向けた。そしてニコっと笑うと俺の事を見た・・・凄い察知能力だな。

「えぇ、勿論構いませんよ。警備をしている者には私から伝えておきます。」

「ありがとうございます。それじゃあ道案内頼めるか、マホ。」

「勿論です!それじゃあはい!」

マホはそう言うと、まるで抱っこをおねだりする子供の様な仕草をし始めた・・・

「え、なに?」

「なにって見ての通りです。私を抱きかかえてください。」

「は、はぁ?!急に何を言い出してんだ!?」

「ここから目的地までかなりの距離があるんです。急いで向かう為には、そっちの方が早いですよ!」

「いや、そうは言うけど・・・じゃあシアンはどうするって・・・」

何とか断ろうと思ってシアンの方を見たら、既にソフィに抱きかかえられた状態だった。

「こっちは問題ない。」

「うぅ・・・恥ずかしいです・・・」

「さぁ、おじさん!お願いします!」

「ぐ、ぐぅううう!」

俺は心臓をバクバクさせながら決意を固め、ゆっくりとマホを抱きかかえた! う、うわぁ・・・良い匂いがするし柔らけぇ・・・って何を考えているんだ俺は?!消え去れ俺の中の煩悩よ!

「さぁ、頭を振っている暇はありませんよおじさん!急いで目的地に向かいましょう!」

それから俺達は、マホに案内されながら屋敷の中を爆走して行った。とりあえず、俺の心臓音がバレる前に目的地に着かなければ!急がなければ、俺はマホの様な少女にドキドキするロリコン野郎と言う不名誉な称号が与えられてしまう!!

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