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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第63話

ロイドの実家に行ってから時間は経ち、無事にパーティーの開催日を迎える事が出来た。これも家の周囲と街中の警備を強化してくれたエリオさんのおかげだな。
それに、街に潜伏していたゴロツキも何人か捕まえたとか。ただそいつらからも、商人に繋がる証言や証拠は出なかったらしい。
はぁ・・・色々と解決していない事はあるが、今は目前に迫ったパーティーに集中するとするか。ってか、まだパーティーに着ていく服が届いてないしな。まぁ、急遽作ってもらうことになったから仕上がるのがパーティー当日になったんだとさ。

だから今、俺はリビングで時間を潰しながら服が届くのを待っていた。ただロイドは既に着ていくドレスを用意してあったので、今は自分の家でメイドさんに手伝ってもらいながら着替えている最中だ。

「それにしても、一体どんなドレスが届くんでしょうかね?」

マホがソフィとボードゲームを遊びながら、ソファに座ってラノベを読んでいる俺にそう聞いて来た。

「さぁな、正直想像もつかん。」

だってこの街で一番の貴族様が用意してくれる服だぞ?どんな物になるのか全然分かんないだろ・・・まぁ、結構な値段がするだろうって事だけは分かるけどさ。

「そうですよね・・・私、可愛いドレスが良いです!ソフィさんは、こんなドレスが良いとかってありますか?」

「動きやすければ何でも。」

「・・・何と言うか、ソフィらしい答えだな。」

「そう?」

そんな事を話していると、玄関の扉がノックされる音が聞こえて来た。それと同時に、マホがパッと椅子から立ち上がった。

「あ!私、出てきますね!」

「あぁ俺も行くよ。ソフィは待っててくれ。」

「うん、分かった。」

俺とマホが玄関に行き扉を開けた。するとそこには、笑顔のカームさんが立っていた。

「お久しぶりでございます九条様。それと、初めましてになりますね。」

カームさんは俺の横に立っているマホを見て、ニコリと微笑みかけた。それに返すようにマホも笑顔になり自己紹介をした。

「あ!初めまして!私、おじさんのお家でお世話になっているマホと言います!もしかして、貴方がカームさんですか?」

「はい、その通りです。これからよろしくお願いします、マホ様。」

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

2人はそう言うと、深々とお辞儀をした。そして同時に頭を上げると、俺はカームさんに話しかけた。

「そう言えば、どうしてカームさんが来たんですか?警備とかは・・・」

「あぁ、そちらは問題ございません。護衛部隊は優秀な者ばかりですので、私が少し抜けても大丈夫ですよ。それと私が来た理由ですが、皆様が着る服やドレスを護衛する為に来ました。」

カームさんはそう言うと扉を大きく開けた。すると、通りの方に2台の馬車が止まっていた。そしてその馬車の前には、大きな箱を持ったメイドさんが数人立っていた。

「あちらに皆様の着る服がご用意してあります。つきましては、マホ様とソフィ様はロイド様のお家でお着替えをお願いします。」

「了解。」

「うわっ!・・・いつの間に・・・」

「ついさっき。それにしても久しぶり。」

「はい。お久しぶりでございます、ソフィ様。」

「あれ?ソフィさんとカームさんはお知り合いなんですか?」

「うん。昔に何度か会った。」

「ロイド様が冒険者になる前の事です。その時は、私は護衛としてロイド様のお供をしていましたから。」

「あぁ、その時に会っていたんですか。」

「そうですね。その時は、まさかロイド様とソフィ様が同じギルドに入るとは思ってもみませんでしたが。」

「同じく。」

「ふふーん!これもご主人様が繋いだ縁という事ですね!」

「いや、ただの偶然だろ。そんな事より、早く着替えて来た方が良いんじゃないか?メイドさん達もずっと待ってるの辛いだろうし。」

「あぁ!そう言えばそうでした!それじゃあおじさん、私とソフィさんはロイドさんの家に行って着替えてきます!」

「はいよ。・・・あれ、俺の服は・・・」

「ご心配なく、すぐにお持ちしますので。」

「あ、分かりました。それじゃあ2人共、また後でな。」

「はい!」

「それじゃあ。」

マホとソフィはそう言うと、メイドさんの所へと歩いて行った。それからロイドの家へ向かって行った。

「さてと、俺も着替えるしますか。カームさん、服をお願いできますか?」

「かしこまりました。それでは服をお持ちしますね。」

カームさんはそう言って馬車の方へ行くと、大きな箱を持ったメイドさんと共に戻って来た。

「それでは、こちらが九条様の着る服になります。」

「あ、ありがとうございます・・・あの、そちらの方は?」

「私は九条様が着替え終わった後、髪の毛をセットさせて頂く者です。」

「そ、そうですか・・・」

え、メイドさんってそんな事も出来るの?それともロイドの実家のメイドさんだから出来るの?

「さぁ、それでは早速着替えと参りましょうか。」

「は、はい・・・」

俺はカームさんから箱を受けると自室に戻って行き、2人にはリビングで待機してもらう事にした。いや、流石にこの歳で着替えを手伝ってもらう必要は無いし、ましてや着替えてる所を見られたいという願望も無いからな!

そんな事を考えつつ箱をベッドの上に置いた俺は、ゆっくりと箱を開いた。その中には、高級感が漂う服が圧倒的な存在感を放ちながら入っていた。うわぁ、これを着るのか・・・正直、着るって言うよりも着られるって感じが正しい気がするな。

俺は内心ドキドキしながら服を脱ぎ、シャツやズボンを履いていった。そして最後にネクタイを締めてジャケットを羽織るとお終いなのだが・・・凄すぎるだろこの服。タイトなのに苦しくないし伸縮性もあって動きやすい。俺が元の世界で来ていたスーツとは雲泥の差なんだが・・・こ、これが高級品と言う事か!!
あまりの衝撃に驚いていると、部屋の扉がノックされカームさんが話しかけてきた。

「九条様、お着替えは終わりましたでしょうか?」

「あ、はい。もう終わってます。」

「でしたらリビングの方に来ていただけますか。使用人が髪の毛をセットいたしますので。」

「分かりました。今行きます。」

返事をして部屋から出ると、カームさんが廊下で待っていた。そして俺の事を見ると拍手をしはじめた。

「とても良くお似合いです、九条様。」

「そう・・・ですかねぇ?正直、着せられてる感満載じゃないですか?」

「いえいえ、そんな事はありませんよ。バッチリ着こなせていますよ。さぁ、それでは髪をセットしにまいりましょうか。」

そう言ってカームさんがリビングに入っていったので、俺もその後に続いて行く。中に入ると、メイドさんもカームさんと同じ様に拍手をしながら褒めてくれた。その後、メイドさんに髪をセットされ改めて俺は鏡で自分の事を見てみた。

「こ、これが・・・俺?」

「えぇ、いかがですか?気に入って頂けましたか?」

「え、えぇ・・・そりゃもう!」

俺が覗く鏡の中にはいつもの冴えない俺じゃなく、最高に決まっている俺がいた!す、凄い!髪型1つでこんなにも変わるもんなのか!?流石プロの力やでぇ・・・!俺があまりの激変っぷりに感動していると、カームさんが笑顔で話しかけてきた。

「それでは九条様の準備も整った事ですし、ロイド様のお家へ参りましょうか。」

「わ、分かりました!」

ふ、ふふふ!これはあいつらに会った時が楽しみだぜ!これはきっと、え?九条さんってこんなに素敵な人だったのドキィ!!となるに違いない!そんな期待に胸を膨らませ、俺はカームさん達と共に家を出た。そしてロイドに家に向かう際、カームさんは馬車の中から頑丈そうなケースを取り出した。

「あの、それは?」

「こちらは、九条様のご要望の物になります。」

「・・・あぁ!アレですか!」

「はい。きちんとソフィ様の分もご用意させて頂きました。それでは、改めてまいりましょうか。」

それからロイドの家の前に着いた俺は、玄関をノックした。すると鍵が開き、メイドさんが丁寧にお辞儀をしながら出迎えてくれた。

「お待ちしておりました。皆様もうお着替えは終わりまして、リビングにてお待ちになっております。」

「あ、ありがとうございます・・・」

何だろう、気分的にはメイド喫茶みたいな感じだろうか・・・まぁ、女の子が怖くて一回も行った事無いから知らないけど。そんな事を考えながら俺とカームさんはロイドの家に入り、リビングへと向かって行く。
ふっふっふ!さぁ、俺の格好良さに頬を赤らめて称賛するがいい!・・・とまぁ、この時の俺は物凄い調子に乗っていました。しかし、そんな思いはリビングの扉を開けて3人の姿を見た瞬間に吹き飛んでいた。何故なら・・・

「おや、皆様ドレスがとても良く似合っておいでですね。大変お美しいです。」

「ふふっ、ありがとうカーム。とても嬉しいよ。」

「私もとても嬉しいです!それに、こんな素敵なドレスをありがとうございます!」

「ありがとう。」

・・・今、俺の目の前には絶世の美少女が3人も存在していた。いや、もう本当に綺麗すぎるんだが・・・・はぁっ!・・・・やっべぇ・・・息が止まってた・・・!人間って驚きすぎると息が止まるのね、初めて知ったわ。いや、もう何とって良いのやら・・・あぁ!俺の語彙力では無理なんですけど!っていうか、この空間に居るの無理なんですけど!

「あ!おじさん!どうですか、私のドレス!凄く可愛いと思いませんか?」

そう言ってマホは笑顔で俺の元へ駆け寄ってくると、目の前でくるりと回って見せた。マホのドレスは少し派手目の色をした可愛らしいドレスだったが、髪の色と相まってとても良く似合っていた。俺は心臓をバクバクさせながら、何とかマホに感想を言う。

「あ、あぁ!とても良く似合ってる・・・と、思う・・・」

・・・俺は何とか視線をそらしつつ、平常心を保つことに全力を注ぎながらそう言った。まぁ、平常心を保つことに集中しすぎたせいで最後の方が消え入るようになってしまったが・・・そんな俺の感想を聞いて、マホはドヤ顔で俺の事を見ていた。

「ふふーん!おじさんにしては良く出来ましたって褒めてあげます!でも本当は、カームさんみたいに自然に褒める事が出来れば良いですけどね。」

「いやぁ・・・それは経験の差がありすぎて今の俺には無理ゲーです・・・」

「まぁ、それもそうですね。今後に期待って事にしてあげます!それじゃあ次はロイドさん、どうぞ!」

マホがそう言うと、今度はロイドが俺の前に歩いて来た。その立ち振る舞いの堂々とした事よ・・・ロイドのドレスは上品さが溢れ出していて、正直な所今すぐにでも逃げ出したい衝動に襲われている!

「どうだい、九条さん。このドレスは私に似合っているかい?」

「え、あぁ・・・まぁ・・・」

「ほらおじさん!頑張って!」

うぅ・・・マホに応援されないと感想1つまともに言えないとは・・・情けねぇ・・・だが、ここは男を見せる所だ!

「と、とても似合っていて・・・綺麗・・・です・・・」

「ふふっ、そう言ってもらえて嬉しいよ。九条さんも、良く似合っているよ。髪もビシッと決まっていて素敵だよ。ね?マホ。」

「はい!とても格好いいですよおじさん!」

「あぁ、うん・・・どうも・・・」

・・・あれぇ?おっかしいなぁ・・・こういう時って普通逆じゃね?まぁ、非リアの俺がちょっと格好つけたからって調子に乗ったらダメってですよね・・・

「さぁ、次はソフィの番だよ。」

「うん。」

ロイドがそう言うと、次はソフィが俺の目の前にやって来た。そしてジッと俺の事を見つめてきたので、たまらず顔をそらしてしまった。それと同時に、マホが大きなため息を吐いていた。いや、本当に情けないご主人様ですんません・・・
俺は体のあちこちから汗が出るのを感じながら、頑張ってソフィの事を見てみた。ソフィのドレスはマホやロイドとは違い、清楚な感じで動きやすさを重視したデザインに思えた。どうやら、ソフィの願望通りのドレスと言う訳だな。って、そんな事より今は感想を言わねば・・・!

「あ、えっと・・・まぁ、ソフィに良く似合っているよ・・・」

何とか感想を言うと、ソフィは俺の顔をジッと見た後にフッと笑った。

「ありがとう。九条さんも良く似合ってる。」

ソフィはそう言って離れていった。・・・・つ、疲れたぁ・・・何で俺、感想を言うだけでこんなに疲れてんだ?やっぱりアレか?ぼっちの彼女無しにはこのイベントキツすぎるのか?・・・これなら戦ってる時の方がまだマシだな・・・・
なんて、自分の不甲斐なさに若干テンションが落ちているとカームさんがケースをテーブルの上に置いて俺達を見た。

「それでは、これからパーティー会場の警備情報等をご説明しますのでお集まりください。」

カームさんがそう言うのと同時に、俺達はテーブルの周りに集まった。まだドレス姿の皆に若干ドキドキしちゃいるが、その内慣れるだろう・・・多分。
そんな事を考えていると、カームさんはケースを開き大きな紙を何枚か取り出しテーブルの上に並べて広げた。それは屋敷に関しての見取り図だった。カームさんはその見取り図を見ながら警備についての説明を始めた。

「それでは、まずはお客様の出入りに関しての情報をお話しします。お客様は、必ず街道と屋敷を繋ぐこの一本道から出入りして頂く事になっています。」

カームさんがそう言った場所は、以前に俺達が歩いていたデカい門に続く道の事だった。

「もしもここ以外の場所・・・例えば屋敷の裏や側面から何者かが侵入しようとした場合、設置されている警報装置が鳴り響きます。」

「えっと、警報装置が鳴った後はどうなるのですか?お客さんは皆さん帰るんでしょうか?」

「いえ、一度パーティー会場に避難して頂きます。その後、安全が確認され次第すみやかにご帰宅して頂きます。」

「なるほど・・・」

「それから警備する場所についてですが、基本的にはパーティー会場周辺を集中して警備させて頂きます。」

「そうなのですか・・・それじゃあ屋敷の中や裏の方などの警備は?」

「それらの場所については、警報装置頼りになりますね。そこに人を割り当てるとなると、どうしても少人数でしか警備出来ないんです。そうなったら最悪、人質に取られる可能性もありますからね。それならばパーティー会場周辺に集中して警備を配置し、お客様と我々の身を護る事を第一とした方が良いとの指示です。」

「あぁ。確かに人質をとられると厄介ですからね。」

「うん。特に女の子が人質になったら後の展開は」

「ソフィ、静かに。」

「・・・うん。」

「確実にひどい目にあってしまうでしょうね。」

「カームさん?!」

全く、現実と本の世界を一緒にしないの!なーんて思ってソフィの言動を止めたらカームさんが言うのかよ!?

「あはは、すいません。ですがソフィ様の言う様な事もありえますので、パーティーの最中は屋敷内には人の立ち入りを禁止させて頂いております。」

「まぁ、分かりました。」

俺がそう返事をすると、カームさんは頷き俺達の顔を見渡した。

「それでは、これで警備についての説明は以上になります。何か質問はございますか?」

カームさんの問いかけに、俺達は顔を見合わせた。まぁ特に何も無いみたいだな。そんな俺達を見て、カームさんは見取り図の上にケースを乗せて中身を俺達に見せた。そこには、ゴツイ装備が2組入っていた。

「こちら、九条様からのご要望の物で我々が使用している装備になります。」

そう言ってカームさんは、まず少し短めの黒い棒状の物を取り出した。そしてテーブルから離れるとそれを思いっきり振った。すると、短かった棒がショートブレードほどの長さに変わっていた。

「これが我々が使っている警棒です。頑丈で壊れにくいのが特徴ですね。元に戻す方法は、持ち手の部分に魔力を流して上から押して下さい。それ以外だと元には戻りませんので。」

カームさんは警棒を元の長さに戻すと、俺に渡してきた。とりあえず、一度試してみるか・・・俺はテーブルから離れると思いっきり警棒を振った。するとさっきと同じ様な長さに警棒が伸びた。俺はまず魔力を流さずに、伸びた部分を上から思いっきり押してみた。
どうやらカームさんの説明した通りみたいだな。そう思い今度は持ち手部分に魔力を流しながらもう一度押してみた。すると、いとも簡単に元の長さに戻って行った。そんな事をしていると、カームさんが小さなベルトを俺に渡してきた。

「こちら、警棒を持ち運ぶためのベルトになります。腕でも腰でも足でもどこにでも付けられますから、どうぞお使いください。ソフィ様もどうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

「ありがとう。」

俺はとりあえず腰にベルトを付けて警棒を後ろの方にしまった。まぁ、ここなら目立たないだろう。ソフィはどこにつけるんだ・・?!
疑問に思ってソフィを見ると、ドレスのスカートをはだけさせてふとももにベルトを巻いていた!?驚いて凝視していると、マホが俺の事を見て怒っていた。

「おじさん!見すぎです!」

「あ、あぁ悪い!」

俺は慌てて視線をそらしたが、当の本人は大して気にした素振りは見せていなかった・・・いや、もうちょっと恥ずかしがるとかしてくれないと俺って男なのかな?って思っちゃうから・・・まぁ、いいけどさ・・・
異性として意識されていない事に若干悲しくなったりしていると、カームさんがケースの中から白くて小さな輪っかを取り出した。

「あの、それは?」

「こちらは侵入者を拘束するバンドです。使い方は簡単で、魔力を流しながら引っ張ると、ある程度バンドを広げる事が出来ます。その状態で手首や足首にバンドを通し、魔力を止めると・・・」

カームさんがそう言ってバンドをテーブルの上に置くと、みるみる元の大きさに戻っていった。

「と言う感じで、元の大きさに戻って拘束する事が出来ます。まぁ実際には、きちんと抜け出せないギリギリの所で拘束しますけどね。じゃないと、手首がちぎれてしまいますから。」

カームさんは笑顔で俺の事を見ながらそう言った・・・うわぁ、良い笑顔だけで言ってる事怖っ!・・・・って、あれ。

「あの、魔力を流して大きくなるなら。拘束した奴も魔力を流して拘束を解く事が出来るんじゃ?」

「いえ、その心配はありません。これは一度使ったらもう大きくなりませんし、とても頑丈ですからナイフ等で切る事も出来ません。拘束を解くには専用の道具を使うしかないんです。」

「あぁ、そういう仕様なんですね。って事は、使うんだったらかなり注意しないといけないのか・・・」

「えぇ、実際に自分の指などを間違えて拘束してしまうケースもありますから。扱う時は気をつけて下さいね。」

カームさんは真剣な表情でそう言うと、ケースから幾つか拘束バンドを取り出して俺とソフィに渡した。まぁ、小さい物だし内ポケットにでも入れておくか。ソフィの方は・・・見ないでおこう。またマホに怒られたくないからな。

「さて、それでは最後にこちらを九条様にお渡ししておきます。」

カームさんはケースの中から小型の機械のような物を取り出しテーブルに置いた。これは・・・トランシーバ?!どうなってんだよこの世界・・・剣と魔法の世界かと思ったら、時々機械的な物が出て来るんだよな・・・まぁ、今更驚いてもしょうがないけどさ。ってそれよりもだ。

「あの、どうして俺だけに?ソフィの分は無いんですか?」

俺の質問に、カームさんは苦笑いを浮かべながらこっちを見た。

「あ、はは・・・すいません。ソフィ様の分もご用意しようと思ったのですが、必要な魔石を用意できなかったんです。」

「魔石、ですか?」

「はい。えっと、この魔法通信機器について簡単に説明いたしますね。」

えっと、カームさんの説明を要約すると・・・まず巨大な魔石を用意して、そこに魔力を注いで溜め込んでいく。そしてその魔石を砕いて加工した物を幾つも用意する。それを魔法通信機器の内部に組み込む事で、同じ魔石が組み込まれた機器は通信出来る・・・と言う物らしい。
ただこれには幾つか問題があって、まずそんな巨大な魔石を幾つも用意できない事。それに組み込むにあたってそれなりの大きさが必要で、大量には用意できないらしい。そんで今回用意できたこれは、たまたま残っていた予備の1つらしい。

「それで、1つしか用意できなかったんですね。」

「はい、申し訳ありません。」

「いやいや、急遽用意してもらったこちらが悪いんですから。」

「そう言って頂けると・・・それでは、こちらが魔法通信機器を入れる為のポーチになります。警棒の横にお付けください。」

「分かりました。」

俺はカームさんからポーチを受け取り、魔法通信機器を手に取ると、カームさんに言われた通り警棒の横にセットした。まぁ一応、俺達全員マホから貰ったアクセサリーを身につけてはいるんだが・・・緊急時にこう言う物が無いと、どうやって会話したのか言い訳が出来ないからな・・・さて、一通りの話し合いが終わる頃にはもう暗くなり始めていた。

「さて、それじゃあそろそろパーティーに向かうとしようか。」

そう言ってマホから貰った指輪を見せながら、ロイドが俺達の事を見てきた。俺とソフィも同じ様にアクセサリーを見せながら静かに頷いた。

「では、ロイド様のご実家まで馬車でお送りいたします。」

そう言って、カームさんはリビングから出て行ったので俺達もその後に続いて行く。そして馬車に行くまでの途中、俺はちゃんと会話が出来るか確認するために頭の中で話しかける。

(あー聞こえるか。)

(はい!バッチリ聞こえます!)

(私も問題ないよ。)

(同じく。)

(よし・・・はぁ・・・いよいよ貴族やら偉い人が集まるパーティーに出発かぁ・・・改めて思うけど、確実に場違いだと思うだよなぁ。)

(もう、今更言ってもしょうがないですよ。そこはもう気にせずに、パーティーを楽しみましょうよ!)

(ふぅ、まぁそれもそうだな。とりあえず、出て来る料理がどんな物か気になるんだよな・・・何か気に入った料理があったら言えよ?再現できるかどうかは分からないが、作ってやるから。)

(本当ですか!?えへへーこれは楽しみが増えましたね!)

(うん。私も頑張って食べる。)

(ふむ。だったら料理長に言ってレシピを教えてもらおう。そうすれば、家でも再現できるだろ?)

(お、そんな事出来るのか?)

(あぁ、勿論。)

(よーし。それじゃあ料理をじっくりと楽しませてもらおうか。)

(おー!)

(おー。)

そんな風に頭の中で会話をしながら、俺達は馬車に乗りパーティー会場であるロイドの実家へと向かって行った。その道中、頭の中で会話しすぎて無口になった俺達をカームさんが心配して話しかけて来てくれた・・・本当にすみませんでした!
てか、偉い人が集まるパーティーって襲撃イベントの鉄板だと思うんだけど・・・大丈夫だよね?カームさん達もいるから大丈夫だよね?そんなのアニメやラノベやゲームの中だけだよね?・・・俺は何も起きない事を信じながら、進んで行く馬車の外を眺めていた。

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