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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第54話

それからすぐに落ち着きを取り戻したロイドは、小さく微笑みながらソフィに話しかけた。

「すまないソフィ、突然の事で少し驚いてしまったみたいだ。」

「ごめん、突然こんなお願い。」

「いや、気にしないでくれ。ただ、ソフィが泊まる事はかまわないんだが理由を知りたいんだが。」

ロイドの質問に、ソフィは表情を変えず平然として答えた。

「理由は、住む所が無いから。」

その言葉を聞いて、ロイドは困惑したような表情になった。そしてマホも、どういう事かと気になっている様子だった。なのでとりあえず、俺が聞いてみることにした。

「住む所がないってどういう事だ?」

俺の質問に、ソフィは真っすぐこっちをみて答えてくれた。

「私は王者じゃなくなった。だから家に住む権利が無くなった。」

その言葉を聞いて、俺は物凄い罪悪感に襲われ始めた!え、そんなマジで?それってつまり・・・

「・・・もしかして、俺のせい?」

まさかの事実に驚いていると、ロイドが不思議そうな表情でソフィに尋ねる。

「あれ?でも確か、王者で無くなっても次のイベントが開催されるまでは住めるはずだが。」

「そ、そうなのか?」

「あぁ。だから次のイベントまでに住む場所を探すものなんだが・・・」

「じゃあ、どうして住む所が無いんだ?」

俺とロイドは疑問に思いソフィを見る。ソフィは特に気にする感じも無く普通に答えた。

「豪邸に住む権利はもう手放した。」

「住む所も決まってないのか?どうしてそんな事を?」

「それは・・・」

「くちゅん」

ソフィが事情を話そうとした瞬間、マホが小さくくしゃみをした。それを聞いたロイドはすぐマホの傍へ近寄ると、優しく頭を撫でながらこっちを見た。

「ここではなんだし、そろそろ家に入ろうか。疲れた体に外の寒さは堪えるからね。」

「それもそうだな。それじゃあ、お邪魔させてもらうかな。」

それから俺達は、ロイドに案内され彼女の家の中へと入っていった。全員が家の中へ入るとロイドが扉の鍵を閉めた。次の瞬間、自動的に明かりが点いた。
それにも当然驚いたのだが、それよりも・・・・・

「いやいや、広すぎだろ・・・」

玄関が俺の家の倍ほどの広さがあるんだが!しかも天井からは高そうな照明がぶらさがっているし、これが貴族の娘の家って事か・・・!

「そうかい?でも確かに、九条さんの家の玄関に比べたら少しだけ広いかもしれないね。」

「いやいや、少しだけってレベルじゃないと思うんだが・・・何というか、改めてロイドが貴族の娘だと実感したよ・・・」

「ふふっそうかい?それよりほら、リビングに案内するからついて来てくれ。」

それから俺達はロイドに案内され、リビングへとやって来た。この場所もかなりの広さがあり、置いてある椅子やテーブルも高級感が溢れていて使うのがかなりためらわれるんだが・・・

「それじゃあ、そこの椅子に座っていてくれ。今、飲み物を用意させてもらうからね。」

「あ!ロイドさん、私も手伝います!」

ロイドが飲み物を入れに、部屋から出ていてしまった。それに続きマホも出て行ってしまったので、俺はソフィと2人リビングに残されてしまった。とりあえず、俺はロイドに言われた通りに椅子に座ると向かい側にソフィも座った。そして、沈黙が訪れた。
・・・いや、気まずいんだが!数時間前まで戦っていた相手と何をどう話せって言うんだ!早く、早く戻って来てくれ!そんな事を考えていると、ソフィが話しかけてきた。

「九条さん、少し良い?」

「あ、あぁどうした?」

突然の事に少し驚きながら返事をすると、ソフィは真剣な表情で俺の事を見ていた。

「どうして、あそこまでしたの?」

「・・・あそこまで?」

ソフィの言葉に、俺は何の事かと頭の中を巡らせた。・・・あそこまで?あぁ。

「あそこまでって、もしかして武器を貫通させた時の事か?」

俺の言葉を聞いて、ソフィは静かに頷いた。

「そう。どうしてあんな辛い思いをしてまで私に勝ちたかったの?その後で王者になる訳でもなかったのに。その理由が知りたい。」

「・・・理由ねぇ。」

さて、どう話したものかな・・・俺はテーブルに肘をつき、手に顎を乗せ悩みながらソフィの事を見た。うーん、どうする?何て答えるか・・・しゃあない、かなり恥ずかしいがロイドやマホが聞いてる訳じゃないし本心で話すとするか。

「そうだな・・・ソフィの願いを聞いたからかな。」

「私の・・・願い?」

ぐっ!正直、いい歳してどこの主人公気取りだよ!と思わなくもないが、その事が関係ないとは言えないからな。話し始めちまったし、最後まで言うとするか。

「あぁ、本のように冒険がしてみたいって言ってたろ?」

「・・・それだけの理由で?」

「まぁそうだな。他にも、どうせ戦うのなら絶対に勝ちたい!って理由もあるし、後は・・・まぁ色々だな。」

「・・・そう。」

俺の言葉を聞いて、ソフィは静かになってリビングにある窓の外をみつめていた。それから少しして、ロイドとマホが紅茶を持って部屋の中に入って来た。

「お待たせ。九条さんが後で飲む予定のアイスティーの支度をしていたら時間がかかってしまってね。」

「お待たせしました!ご主人様凄いですよ!ロイドさんの家のキッチンって私達の家の倍くらいありましたよ!」

「へっ、そりゃうちに比べたらほとんどの物が倍だろうよ。というか、以前マホはここに来たことあるだろうが。」

「それはそうですけど、以前来た時はお洋服が沢山ある部屋しか見ていませんもん。」

それからマホは俺の隣に、ロイドはソフィの隣に座り改めてロイドから事情を聞く事になった。

「それじゃあ改めて聞かせてもらうけど、どうして豪邸をすぐに手放したんだい?」

「元々あの家に置いてある荷物は本と着替えくらいしかなかった。それに特に思い入れもなかった。だから、目を覚ましてすぐに家を手放す為の手続きをした。」

「・・・なるほどね、ソフィにとってあの豪邸はただ寝泊まりする場所でしかなかった訳だ。」

「そう。」

うーん、何とも凄いな。豪邸がただの寝泊まりする場所か・・・まぁそう言われれば、そうなんだが・・・そんな事を思っていると、次はマホがソフィに質問をする。

「あの、目を覚ましてすぐ手放す手続きをしたって言っていましたけど、次に生活する場所は決めていなかったんですか?」

マホのもっともな疑問に、ソフィはとても冷静に答えていた。

「最初は宿屋で生活しようと思った。でもお金が無かった。」

「・・・は?金がない?え、でも王者って毎週金を貰えるんだよな?」

「銀行には入っている。でも普段持ち歩いていない。それを忘れていた。」

「え、じゃあ初めて本屋で会った時はどうしてたんだ?あの時ラノベ買ってたよな?」

「あの日使う分だけ銀行から持ってきてた。」

「なるほど・・・だから現在は金がないと・・・銀行から引き出そうにも、この時間だとやってないしな。」

「そう。だから唯一知っているロイドの家に来た・・・迷惑だった?」

「まさか、そんな事は無いさ。勿論歓迎させてもらうよ、好きなだけ過ごしてくれて構わない。ただ・・・」

ロイドが途中で言葉と切ったので、それを不思議に思ったマホがロイドに尋ねる。

「ただ?どうかしたんですかロイドさん?」

「この家、私が1人暮らしする為だけに建てられた家でね。客間が1つも無いんだよ。」

「は?こんな広いのに客間ないのか?1つも?」

「あぁ、1階はこのリビングとキッチン。そして、衣裳部屋と脱衣所とお風呂場とトイレがあるだけだ。」

「え、じゃあ2階は?」

「全部吹き抜けの私室になっているね。」

「マジかよ・・・」

2階まるまる吹き抜けの私室ってどんだけだよ・・・と言うか、それだけ豪勢に作っといて何で俺の家に居るんだ?そんな俺の疑問を他所に、ロイドはソフィに優しく笑いかけた。

「だから、ソフィは私の部屋を好きに使ってくれて構わないよ。」

その言葉を聞いて、ソフィは不思議そうに首を傾げる。

「それじゃあロイドはどこで寝るの?」

「あぁ、言っていなかったね。私は九条さん達と一緒に暮らしているんだよ。」

そう言って、ロイドは俺とマホを見てにこりと笑いかけて来た。全く、ロイドの考えは時々よく分からん。まぁ、気にしたってしょうがないがな。さて、そろそろ話しも一段落って感じだな。

「さて。それじゃあ話もまとまった事だし、そろそろ風呂をお借りしようかな。」

「ふふっ、それじゃあ私はお風呂を沸かしてくるよ。九条さん達は着替えを持ってくると良い。戻って来る頃には沸いている思うよ。」

「分かりました!それじゃあご主人様、さっそく家に帰りましょう!」

「了解、じゃあ行ってくる」

「ちょっと待って。」

全員が席を立ち行動を始めようとした瞬間、突然ソフィが待ったをかけた。何事かと思ってソフィを見ると、彼女は俺の方をジッと見つめていた。何事かと思い、俺はソフィに尋ねてみる。

「どうかしたのか?」

「もう1つ、お願いがある。」

「お願い?」

俺の言葉を聞いて、ソフィは少し下を向いてしまった。それからすぐに顔を上げると、真剣な眼差しで俺の事を見て来た。そして決意を固めたような表情で、俺に願いを言った。

「私を、九条さん達のギルドに入れて欲しい。」

「・・・は?」

突然のソフィの願いを聞き、俺はぽかんとして口を開けていた。って呆けている場合じゃないな。

「えっと、どうしたんだ急に。」

「今日、一緒に過ごして思った。九条さん達と冒険がしたいと。」

「俺達と?」

「そう。・・・お願いします。」

そう言ってソフィは静かに頭を下げた。俺はどうしたものかと考え、マホとロイドを見る。ロイドはとても嬉しそうに笑うと俺の事を見た。

「私は構わないよ。ソフィがいれば楽しそうだし、戦力的にも申し分ないしね。」

「私も!私もソフィさんと仲良しになりたいです!」

マホは元気に声を出しながら俺に近寄ってくると、キラキラした表情で俺の事を見て来た。・・・まぁ2人も賛成しているし、俺も別に反対する理由は無いな。俺は顔を下げているソフィへ近寄り話しかける。

「ソフィ、顔を上げてくれ。」

俺の言葉を聞いて、ソフィはゆっくりと顔を上げこっちを見る。その表情は真剣だが、瞳はとても不安そうに見えた。そんなソフィに、俺は笑いかけながら片手を差し出す。

「歓迎するよ、ようこそナインティアへ。」

俺がそう言うと、ソフィは笑顔になり俺の手を取り握手をした。こうして、ナインティアに新たなメンバーは入る事になった。

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