おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第53話

魔法で周囲を照らしながら長い帰り道を歩いていると、ロイドの家と自分の家がやっと見えて来た。その瞬間、体の奥から疲れがドッと出て来るような感覚がやってきた。そして、思っていた事がおもわず口から漏れ出してしまった。

「あぁーはやく風呂に入って、疲れを取りたい・・・」

俺がそう言うと、隣を歩いていたロイドが笑いながら俺に話しかけて来た。

「ふふっ、その意見には同意するよ。」

「お二人とも凄く頑張ってましたもんね!特にご主人様は、一番戦ってましたからね!」

「確かに、私はソフィとの試合だけだったからね。だから、今日一番頑張った九条さんには一番風呂を贈呈しようじゃないか。」

「おぉそりゃありがたいな。じゃあ、遠慮なく入らせてもらうかな。」

「じゃあ私は、お風呂上がりのご主人様為に冷たい飲み物を用意しておきますね!」

「冷たい飲み物かぁ・・・じゃあアイスティーをよろしく。」

「はい、わかりました!」

「それじゃあ帰ったら、まずはお風呂を沸かさないとね。・・・あ、だったら今日は私の家のお風呂を使ってみないかい?沸かすのに少し時間はかかるけど、広めのお風呂だからゆったりとしてくつろげると思うよ。」

「良いのか?・・・じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。マホもそういう事で問題ないか?」

「はい!私もロイドさんのお家のお風呂楽しみです!知ってますかご主人様、ロイドさんのお家ってとっても広いんですよ!」

「いや、それは外から見たって分かるだろ。・・・さて、そうと決まったらまずは家に着替えを取りに行かないとな。」

「そうですね、後はお風呂の後のアイスティー用の茶葉も準備もしていかないとですね!」

「あ、それなら私の家のある茶葉を使ってくれて良いよ。」

「それは・・・何というか高級そうな感じだな。」

「ふふっ、それはどうかな?まぁ、飲んでみてのお楽しみって事で。」

そんな事を話しながら、俺達は着替えを取りに家に向かっていた。その途中、チラッとロイドの家の方を見ると玄関の前に人影の様な物を・・・発見した?・・・え?何あれ、てか誰あれ!?・・・まさか・・・幽霊か?!
突然の事に驚き立ち止まると、隣を歩いていたマホとロイドも立ち止まり、不思議そうにこっちを見てきた。俺が顔を引きつらせながら人影を指さすと、2人も玄関の方を見た。

「・・・え?」

マホは小さく驚きの声を上げると、静かに素早く俺の後ろの隠れた。そしてロイドは、顎に手を当て人影をジッと見ていた。

「ふむ、こんな夜更けに客人とは珍しいな。何か届け物かな?」

「いやいや、そもそもこんな時間に配送の仕事なんてやってるのか?」

「いや、基本的に配送は明るい内だけだね。」

「だったら、あれは明らかに届け物じゃないだろ。」

俺は、あまりに冷静なロイドの肩に軽くツッコミを入れた。その時、後ろで俺の服のすそを掴みながらマホが震えた声で話しかけて来た。

「だ、だとしたら誰なんでしょうか・・・も、もしかして幽霊さんですかね?」

「え、まさかそんな・・・ないだろ?ないよな?」

正直、俺はそう言うたぐいの物は苦手なんだよ!心霊特集とかを見るのは平気だけど、実際に心霊スポットとか絶対に行けないからな!

「ふむ・・・おーいそこの人!」

俺とマホが恐怖から動けないでいると、突然ロイドが人影に向かって大声で呼びかけた!?ロイドの声が聞こえたのか、人影はこっちに近づいてきた!

「ちょ、おま!」

「な、何してるんですかロイドさん!」

「ん?気になるなら話しかければ良いだけの話だろう?それが、人でもそうでなくてもね。」

「うわぁ、強心臓。ってそうじゃなくて!」

「こ、こっちに来ますよご主人様!」

マホが俺の服を強く掴みながらそう言うと、人影がもう近くまで来ていた!
えぇい!もしも幽霊だったら最大級の光をぶつけて浄化してやる!出来るか分かんねぇけどさ!そんな覚悟を決めていると、人影が明かりの下に姿を現した!・・・・のだが、あれ?もしかして・・・

「・・・ソフィ?」

「こんばんわ。」

そこには、大きな荷物を背負ったソフィが立っていた。え、何でここに?っていうかその背負ってる物は何なんだ?そんな疑問が頭の中を渦巻く中、ロイドがソフィに冷静に話しかけた。

「やぁ、こんばんわソフィ。さっきぶりだけど一体どうしたんだい?」

「うん。実は、ロイドにお願いがあって来た。」

「・・・お願い?」

ロイドが首をかしげると、ソフィはロイドの顔をジッと見て願い事を言った。

「私を、ロイドの家に泊めて欲しい。」

「・・・は?」

ソフィの突然のお願いに、ロイドはぽかんと口を開けるだけだった。そんな二人を見ながら、俺とマホはどうしたものかと顔を見合わせるのだった。

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