話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第45話

「さてと、そろそろトーナメントにギルド名が表示される頃か。」

「そうだね。ではモニターを見ていようか。」

しばらくモニターを見ていると、開場を知らせる祝砲が鳴り響いた。するとトーナメント表の下にギルド名が表示された。

「えっと、俺達は第2試合か。相手は・・・『ダブルゴッド』?なんじゃそりゃ。」

「どういう意味なんだろうね。神のように強いとかそんな感じかな?」

「さぁな。まぁダブルとか書いてあるし、恐らく二人組なんだろうな。」

「そうかもね。だったら数の上で不利になる事はなさそうだね。」

「ただ、ゴッドの部分が意味わかんねぇな。なんだろ、閃光を放つ魔法でも使うのか?」

「だとしたら、目くらましを多用してくるって事かな。」

「だとしたらかなりマヌケだと思うけどな。ギルド名で使う魔法をバラすとか。」

「まぁここで想像しても確かな事は分からないからね。試合になるまで待機していようか。」

それからしばらく、お茶を飲んだり今晩の献立の事を話したりしながら時間を潰していると、第1試合の所のギルド名が片方消えた。

「お、いつの間にか試合が終わったのか。えっと勝ったのは、『ラブハニー&ラブダーリン』・・・何だろう、凄いムカつくな。」

「おや、どうしたんだい?」

「いや、何かバカップルが熱に浮かれて決めたギルド名っぽくて凄い妬ましい。」

「ふふっ、その感情は是非とも試合にぶつけてもらおうかな。」

ロイドが面白そうに笑った直後、部屋にアナウンスが流れ始めた。

『試合の準備をして、入場門まで向かってください。』

そのアナウンスが流れた直後、俺達は顔を見合わせ武器を持つと入場門へと向かった。

「はぁー・・・緊張するな・・・どれだけの人数が見に来てるんだ?」

「うーん、いつも通りならかなりの人数が見に来ていると思うよ。」

「マジか・・・よしっ!緊張してたらまたマホにビンタされるからな。気合を入れるか。」

「その意気だよ九条さん。さぁ入場門に着いたよ。」

俺達が入場門の前に着くと同時に、実況の声が聞こえ始めた。

『先ほどの試合では、カップルの息の合ったコンビネーションに対戦相手のギルドは敗北してしまいました!次の試合では、一体どんな展開が待っているのでしょうか!』

「はぁ、やっぱりカップルだったか。次の試合ではそいつらが相手か・・・嫌だなぁ。」

「おや、もう次の試合の事を考えるなんて頼もしいね。」

「まぁ、ここで負けるつもりはないからな。」

『さぁ!選手の準備が整ったようです!それでは、選手の入場です!』

実況の声が会場に響き渡るのと同時に、入場門が音を立てて開いた。

「よし、じゃあ行くか。」

「あぁ、気合を入れて行こうか。」

俺達は門を通り、会場へ向かう通路を歩いていく。通路を進んで会場に近づいていくと、大勢の人の歓声が聞こえて来た。そして、実況が選手の紹介をしだした。

『それでは次の試合をする選手をご紹介します!まずは、ギルドナインティア!選手の名はロイド選手と九条選手!ロイド選手はこの街の貴族の一人娘でありながら、ダンジョンのボスを2体も倒すなど噂の絶えない人物です!
それに、女性でありながらも爽やかで同性の人気が物凄い高い選手です!今回はどの様な活躍をして女性人気をかっさらっていくのでしょうか!』

「ふふっ、凄く光栄な紹介だね。」

ロイドは実況の紹介を聞いて、嬉しそうに笑っていた。さて、俺についての紹介はどんな感じになるんだ?

『九条選手についての情報は全くありません!しかし、あのロイド選手と同じギルドであり、しかもギルドリーダーもしているそうです!一体どれほどの実力があるのか楽しみです!』

「うわぁ、俺に関しての情報全く無いな。まぁそう言う風に仕向けたからしょうがないんだけど。」

「大丈夫さ。イベントが終わる頃には嫌でも有名になっているよ。」

「はぁ・・・それはそれで嫌なんだけどな。」

『両名とも今回のイベントが初参加になります!一体どれほどの実力を持っているのか!ナインティアの入場です!』

俺達が会場にはいると同時に、実況の紹介が終わった。てか凄いな、よくもまぁ丁度に紹介が終わるもんだ。なんて感心しながら俺はロイドと会場に出て行った。そこで見た光景の凄い事、見渡す限り人ばかりで本当に圧倒された。

「きゃー!ロイド様が出て来たわよ!」
「ロイド様ー!こっち向いて!」
「頑張ってくださいねー!ロイド様!」

突然、後方から女の子達の黄色い声援が聞こえて来た。何事かと思ってロイドと振り返ると、そこには沢山の女の子が観客席にいた。そしてその一番前の方にリリアさんとマホ、それにライルさんがいた。

「ごしゅ・・・おじさん!気合を入れて頑張ってきてくださいね!」

「ロイド様!応援していますわよ!あ、九条様も足を引っ張らない程度に頑張ってくださいね!」

「お二人共!応援していますよ!」

おぉ、結構近くで見てくれてるんだな。マホはちゃんとおじさん呼びが出来て偉いな!・・・リリアさんはもう少し、俺に優しくても良い気がしないでもないけどな。ライルさんも応援に来てくれてありがたいな。・・・っていうか。

「なぁ、マホたちの後ろにいる女の子達って・・・・」

「あぁ、私のファンの子達だね。これはサービスしておかないとかな。」

そう言うとロイドは、女の子達に向かって手を振り投げキッスまでかましていた!それを受けて、女の子達の黄色い歓声が更に増えた。・・・・マジで凄いなコイツ。大舞台でも変わらずイケメンとは・・・そんな事に感心しながら俺達は会場の中心部にやって来た。

『それでは続いての選手のご紹介です!ギルド、ダブルゴッド!選手名は選手の本業で使っている名前でご紹介させていただきます!選手の名はゴッドストーリーテラー!もう一人はゴッドイラストレーター!』

実況の紹介に俺はどういう事かと思いロイドの方を見る。するとロイドはすぐに俺に説明してくれた。

「選手名は事前に申請すれば変える事が出来るんだよ。本業では本名を隠して仕事をしている人もいるからね。」

「なるほどな。まぁ実況の紹介からして、ペンネームで活動している二人組なんだろうな。」

っていうか、名前が変えられるなら俺も本名隠せばよかったか?・・・いや駄目だな。そもそも俺にはネーミングセンスが無いからロイドやマホに確実に阻止されるな。

『実はダブルゴッドのお二人は、ライトノベル作家が本業なのだそうです!』

「えぇ?!そ、そうなのか!?」

え、え?何て作品?俺の知ってる作品か?!は、はやく教えてくれ!

『そのライトノベルの名は、一途勇者と無口王女の冒険譚ぼうけんたん!』

「な、何だって?!」

ま、まさかあのラノベの作家さんとイラストレーターさんが対戦相手だと言うのか!?俺が驚いていると、ロイドがこちらを見てきた。

「確か、九条さんとマホがはまっている本の事だよね。まさか、その人達が対戦相手だなんてね。」

冷静なロイドとは別に、後方からマホの大声が聞こえて来た。

「お、おじさん!サイン!サイン貰ってください!」

いや、貰えるなら貰いたいけどこれからその人達と試合だから!

『今回、ダブルゴッドのお二人もイベントには初参戦となります!実力はいかほどなのでしょうか!?もしかして、物語の主人公のように格好良く試合に勝利するのでしょうか!?それでは!ダブルゴッドの入場です!』

対戦相手側の入り口から、2つの人影が見えた。あ、あれがダブルゴッド!俺は会場に入ってくる二人を見た・・・のだが、なんというか・・・・

「はぁ、はぁ、ふぃーー疲れたぁ。」

「ふぅ、ふぅ、ここまで歩くのに結構体力つかっちゃったなぁ・・・・」

二人は明らかに運動不足を絵にかいたような体形をしていた。・・・ぶっちゃけ丸々と太った体をしていて、そこに無理やり鎧を着こんでいた。しかもここに来るまでに汗をかいたのか、服の袖で汗をぬぐっている。
・・・えっと本当に戦えるのか?隣を見てみると、ロイドもなんとも言えない表情で二人を見ていた。しかし、そんな俺達を他所に、いきなり二人はポーズを取り出した。

「僕の名前はゴッドストーリーテラー!」

「僕の名前はゴッドイラストレーター!」

「「二人合わせて!ダブルゴッド!」」

二人の大声での自己紹介が終わると同時に、会場から歓声があがった。え?これのどこに歓声を上げる所があったんだ?・・・・お祭りのノリ的な感じか?いや、それよりもだ!俺は二人に駆け寄っていく!

『おっとどういう事だ?!九条選手がダブルゴッドに近づいていく!これは宣戦布告をしに行ったのか?!』

俺が近寄っていくと、ダブルゴッドのお二人は分かりやすく狼狽うろたえ始めた。

「な、なんだろうか!し、試合前に攻撃するのは違反だぞ!」

ゴッドストーリーテラーが声を震わせながら、俺に警告をしてくる。・・・しかし、そんな事は問題ではない!

「あ、あの!お二人のファンです!握手してもらえませんか!!」

俺は腰を直角に折り曲げて、握手をお願いする!だってこんな機会二度とないかもしれないじゃないか!ならば、このチャンスを無駄にしてたまるか!

「はぁ・・・九条さん・・・・」

後ろでロイドのため息が聞こえたが、構うものか!

「ふ、ふふ・・・」

すると、ゴッドストーリーテラーの笑い声が聞こえ始めた。何事かと思い顔を上げると、嬉しそうに笑っている二人がいた。

「しょ、しょうがないなぁ。どんな所でもファンは大事にしないといけないからね。そうだろう?ゴッドイラストレーター。」

「あぁ、勿論だゴッドストーリーテラー!ファンは大事にしないといけないからな!」

な、なんとお二人はこころよく俺と握手をしてくれた!う、生まれてはじめて作家先生とイラストレーター様と握手をしてしまった!ひゃっほぅ!

『なんと!対戦相手にもかかわらず握手を求める九条選手!そしてそれに答えてくれたダブルゴッドのお二人!これはどんな展開になって行くのだろうか!』

あ、そう言えば試合するんだった。・・・でも、どうしてこの二人は試合に参加しているんだ?別に金に困っている風には見えないけど・・・鎧も上等な物を着ているっぽいし。

「ふふっ、どうして僕たちがこのイベントに参加しているのか不思議そうだね。」

「えっ?どうしてわかるんですか?」

「なぁに、僕達は他人の顔色には敏感なんだよ。だから君の考えていることくらいはわかるのさ!」

「さ、流石ダブルゴッドのお二人です!で、ではどうして参加したのか聞いても良いですか?」

俺が質問を投げかけた瞬間、実況の驚き戸惑うような声が聞こえてきた。

『おやおや!どういう事か試合が始まらずに話し合いが始まってしまった!一体どうなっているんだ!?』

実況の声と共に、周囲がざわざわとし始めた。しかしそんな事はお構いなしに、お二人は話し始めた。

「いや、実は最近スランプに陥ってしまってね。今後の展開をどうすればいいのか悩んでいたんだ。」

「そうして悩み続けた結果、無口王女のモデルにした王者に直接会えば、新しい展開が思いつきスランプから抜け出せるかもと思ってね。それで今回のイベントに応募したんだ。」

「そ、そうだったんですか・・・」

って言うか、やっぱりあの本に出て来る王女ってソフィがモデルなのかよ!そんな風に驚いていると、急に二人はがっくりと肩を落としてしまった。

「まぁ応募して参加してみた物の、我々の実力では優勝することなど不可能なのだがね。」

「日頃、屋内で作業しているから運動不足でもあるしな。」

「だから、何か他のアイディアを閃かないかと思い記念に参加してみたのだが・・・・チラッ。」

突然、ゴッドストーリーテラーこちらを見てきた。・・・いや、正確には俺の後ろにいるロイドの方を。

「つ、つかぬ事お尋ねするが・・・もしかして彼は・・・・」

彼が声を震わせながら喋るその姿を見た瞬間、俺の脳内で悪魔がささやいた!

「・・・えぇ、ご想像の通り・・・・ロイドは女性です。」

俺はささやくように二人に答える。その言葉にダブルゴッドの二人の目が大きく開かれた!

「や、やはりそうだったか!」

「し、しかし凄い逸材だな・・・あれほど爽やかで格好いいイケメンでありながら、それでいて女性らしい美しさも見えるなんて・・・!」

ふふふ、興奮してきたな。だが、まだまだ終わりじゃないぞ!

「しかも、今は騎士の恰好をして男性の様に見えますが・・・私服は女性らしいんですよ・・・」

俺の言葉に二人は更に興奮し始めた!よし!この試合貰ったぁ!

「ほ、っほっほぅ!それはそれは!」

「しかも、可愛いものを見ると我を忘れてしまう所もあるんです・・・」

「な、何と!」

「ゴ、ゴッドイラストレーターよ!これは!?」

「あぁ!今僕の脳内には、彼女を次なるヒロインとして登場させる物語が出来上がり始めている!こうしてはいられない!ゴッドイラストレーター!」

「あぁ!ゴッドストーリーテラーよ!」

唐突に、二人は片手を天高くつきあげて大声を出した。

「「我々はこの試合を辞退します!」」

その宣言をした瞬間、会場内から沢山の「えぇー!?」という響き渡った。

『な、何という事でしょうか!?ダブルゴッドが試合を辞退しました!この宣言によりナインティアの不戦勝が決定しました!』

ふっ、どうやら勝利の女神は俺達に微笑んでいるようだなっ!そんな事を考えている俺に、ダブルゴッドのお二人はビシッと敬礼をしてきた。

「ありがとう!君達のおかげで次なる展開が見えてきたよ!」

「いえいえそんな!お役に立てて光栄です!なっロイド!」

「いや、私としてはかなり複雑な思いなのだが・・・」

「じゃあ私達はこれから執筆活動に戻らねばならないから失礼するよ!そうだ!もしよかったらサインをあげようと思うのだがどうだろうか?」

「えぇ?!ほ、本当に良いんですか?!」

「勿論だとも!宛名は九条さんで良いかな。」

「あっ出来ればもう一枚頂けますか?名前はマホって言うんですけど、お二人のファンなんです!」

「あぁ了解だ!それでは、後で受付に渡しておくよ!さらばだ!」

そう言って、二人は巨体を揺らしながら小走りで会場を出て行った。

『まさかまさかの展開で、ナインティアの準決勝進出が決定しました!今だ実力未知数のナインティア!準決勝ではどんな活躍を見せてくれるのでしょうか!そしてロイド選手はどの様なヒロインとして物語に登場するのか!そちらも気になりますね!』

「よし、戦わずして勝てたな!この調子で準決勝も頑張ろうか!」

「ふふふ、そうだね。その前に、私に許可なく私の事をべらべらと喋った事について説教をしないといけないけどね。」

・・・・あっやべ。もしかして、とても怒っていらっしゃる?だって笑顔なのに目が笑ってないんだもの!?

「いや、あの今回の事については体力を温存するための作戦と言うか何と言うか・・・」

「そうかい、作戦の為に私のプライベート好き勝手にお喋りしてしまったわけだ。」

「えっと、それは・・・」

「さぁ、控室に戻ろうか・・・・」

「・・・・はい。」

・・・その後、控室に戻った俺は正座をしながらロイドに説教をされていた。確かにロイドの許可なくプライベートを喋ったのは大変申し訳ない・・・・

「この度は、本当に申し訳ございませんでした・・・・」

「・・・・はぁ、しょうがない。」

ロイドはため息をつき、呆れながらも笑うような感じでこちらに近寄ってきた。

「あれ、もしかして許してくれぐぇっ!」

お、思いっきり頭を拳骨で殴られた・・・・痛い・・・

「これで勘弁してあげるよ。次からはちゃんと相談するように。」

「はい・・・了解です・・・」

それから次の試合が始まるまで、俺は殴られたところを氷の魔法を使って冷やし続けていた。

「おっさんの異世界生活は無理がある。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く