おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第29話

斡旋所に着いた俺達は、掲示板を見ながら森に出現するモンスターの討伐クエストを探していた。

「さて、どれにするかな。なるべくなら遠出はしたくないから日帰りできる感じのクエストが良いんだが。」

「それだったら・・・これなんてどうだろか。」

そう言いながらロイドは掲示板に貼られていた一枚の紙を取った。

「えっと、人面草の討伐?あぁ確か森の中に生息して、迷い込んだ人間を捕食したらその顔が出てくるって言うあれか。」

「ううぇ・・・なんだかとっても怖いモンスターですね。」

「あぁそうだね。でもこいつは動きも遅いしよっぽどの事が無い限り捕食なんてされないよ。だから顔の部分に何もない奴の方が多いんだ。」

「でも顔が出てたら食われてるって事だろ?・・・できれば見たくねぇな。」

「私もです・・・」

「まぁ私もそうだが、そういう被害を減らすためにもこのクエストを受けてみないか?ほら、人面草の体には珍しい素材が含まれていることがあるから報酬も高めだし。」

「よし、じゃあそれにしよう。」

「はやっ!ご主人様決断が速すぎませんか?」

「まぁ報酬が高いのは良い事だろ?じゃあ早速クエストを受けて来るか。」

それから人面草の討伐クエストを受けた俺達は、街を出て森へと向かう事にした。街の外に出た時点でマホにはスマホの中に戻ってもらった。

「いやぁ、それにしても今日はいい天気だな。ほら見ろ、遠くの方では冒険者が元気にクエストをこなしているな!」

「おや?急にどうしたんだい?」

「いや、ちょっと沈黙が怖いと思って無理やり話題を振ってみた次第だ。」

「あはは!それは気を使ってくれてありがとう。でも、今日は本当に良い天気だね。出来る事ならこのままのんびりピクニックでもしたい気分さ。」

「俺もピクニックとかしてみたいが、ここら辺はモンスターが普通に出るから気を抜いてたら殺されるしな。どっかモンスターが出ない平和な場所って近くにないもんかね。」

「そういう場所はあるよ。」

「え?あるのか?」

「あぁ、いつも街の外に出るのは王都に通じる北側の部分なんだ。南側はモンスターが少なくて綺麗な草原や湖があるんだよ。」

「へぇー、じゃあこの道を真っすぐ行くと王都に着くって事か。」

「そう言う事さ、まぁ徒歩だと3日ほどかかるんだけどね。」

「そんなにかかんのか?!それはちょっと面倒だな・・・」

「あぁ、それなら安心して良いよ。街からは定期的に王都への馬車が走っているからね。きちんと護衛も付いているから道中も安全だよ。」

「ふーん。いつかは行ってみたいもんだな。」

(そうですねぇー!一体どんな感じなんでしょうか王都って!)

(私は何度か行ったことがあるが凄い場所だよ。何せ大陸中から人と物が集まるからね。それに王都からは様々な街へ向けての馬車が出ているから、沢山の人が利用しているしね。)

(はぁー・・・すっげ。)

それからロイドの話を聞きつつ、道中モンスターにも襲われつつも無事に森まで辿り着くことが出来た。

「さて、目的のモンスターはどこらへんに生息してるんだっけか。」

「確か森に入ってしばらく道なりに進み、そこから外れて少し行った所が目的の場所だ。」

「よし、じゃあ全員気を付けて行くぞ。」

「了解した。」

それから道なりにしばらく進んだ俺達は、覚悟を決め道から外れ森の中へ入っていった。その最中もスライムみたいなどろどろの半透明の液体に襲われたり。オークの様な豚っぽいモンスターに襲われたりもしたが何とか倒すことが出来た。

「うん、目的のモンスターは中々見つけられないが結構な収穫じゃないか?スライムの体液は美容に良いと言われているからそこそこの値段で売れるし、オークは食べれば美味いし身につけている装備品もそこそこの値段で売れるしね。」

「あぁやっぱりスライムとオークなのか・・・っていうかオーク食うのか!?」

「あぁかなり美味しいよ。」

「この世界って基本的にモンスターは食い物なんだな。」

「まぁモンスターのせいで自然動物なんかは減っちゃったからね。まぁお店で売られているお肉は大体が牛や鳥や豚のお肉だよ。モンスターの肉はしっかりと職人が加工して専門店で売っているんだよ。」

「あぁなるほど。そういえば俺もボスの肉はしっかりと処理されてたっけか。」

(美味しかったですよねぇ~また食べてみたいです!)

(その為にはもう一回ボス戦だけどな。)

そんな事を呑気に話していたら、急にロイドが俺を木の陰に隠れるようにして引っ張った!な、何事だ?!

(しっ、目的の人面草を見つけたよ。ほら、あっちだ。)

ロイドが指さす方を見ると、確かにそれっぽい奴が2,3体ゆらゆらとして立っていた。ふぅー・・・顔には何も出てないから誰も食われてないっぽいな。良かったぁ、そんなの見たら確実に悪夢として見るからな。

(よし、じゃあ速攻片付けるぞ。)

(了解した。)

(お二人共ご武運を!)

俺はまず人面草の下から竜巻を起こし体の自由を奪う。そして次の瞬間、ロイドと共に素早く踏み込んで一気に人面草の胴体部分を斬り付ける!上下に分かれた胴体はその場で崩れ落ち動かなくなった。
もう一体がいつの間にか竜巻から脱出して、両腕をこちらに鞭のように叩きつける。が、正直言って遅いので問題なく倒すことが出来た。
良い子の諸君!相手が触手を使うからってそうそう、女の子の体に巻き付かない事を覚えておきなさい!俺は今日知った。

「ふぅー。じゃあ俺が周囲を警戒しとくからロイドはネットで覆ってくれ。」

「分かった。」

それから周囲を警戒していたが特に問題もなく、倒した人面草が起き上がってロイドに巻き付くこともなくいたって平和に転送が終わった。

「よし、クエストも完了したし帰るか。今から帰れば日が沈む前には帰れるだろ。」

「そうだね、じゃあ行こうか。」

(それじゃあマホ案内よろしく。)

(かしこまりました!)

(おや、マホが案内してれるのかい?)

(はい!私にはこの地域周辺のマップがしっかり入っていますから!)

(それは頼もしいな。それじゃあよろしく頼むよ。)

(任せてください!)

それから俺達はマホの案内の元、特に迷う事もなく森から出てこれた。

「うーーん!今日は結構連戦だったなぁ。どうだロイドレベル上がったか?」

「ちょっと待ってね・・・うん、どうやら1レベル上がったようだね。って事はレベル7か・・・8になるには結構かかるね。」

「まぁのんびりやってけばいいさ。」

「それもそうだね。それにしても九条さんのブレードの切れ味は凄いね。それに見た所傷1つ無いし凄い頑丈なんだね。」

「あぁ、それに軽くて扱いやすいしな。これは後で店に報告しとかないとな。凄い助かってるって。」

「あぁそれがいい。彼女もきっと喜ぶよ。」

それから俺達が街へ辿り着くころには、日が沈み始め空が赤く染まっていた。
俺達はまず斡旋所へとクエスト完了の報告をしに向かった。斡旋所に到着し俺達が中に入ると何故だか受付にいたお姉さんがこちらに駆け寄ってきた。え?何?

「あぁ!やっと戻って来てくれました!皆さんをお待ちしていたんですよ!」

「え?どうしたんですか?」

「実は・・・」

「ロイド様遅かったじゃありませんか!私ずぅっと待っていたんですのよ!」

急に大きな声が聞こえたと思い、その声の方を見ると屈強な男4,5人に囲まれた赤茶色の髪の女の子がこちらの方へとずかずかと歩いてきた。・・・・うわぁ何だろう。物凄い面倒くさそうな予感がする。・・・・・逃げたい。

「おっさんの異世界生活は無理がある。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く