おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第24話

俺はとりあえず現実を直視しないことにして斡旋所へとやって来た。そして受付に行き、ギルドを結成したいと言う事を伝えた。

「かしこまりました。それではこちらの用紙にご記入をお願いします。」

俺は手渡された用紙を持ち、近くにあったデカいテーブルと椅子がある場所にロイドと向かい合うように座った。

「えっと何々?ギルド名と名前をフルネームで書けばいいのか。ギルド名かぁ・・・どうするかな。」

(ご主人様はネーミングセンス無いですもんね。)

(おや、そうなのかい?)

(えぇ!私の名前を付けるセンスもひどかったですからねぇ・・・・)

何故ロイドがマホと声を出さずに会話出来てるかというと、まぁ俺が貰ったアクセサリーの指輪版を付けているからだ。ここに来るまでにマホがロイドにプレゼントをしていた。おかげで俺とマホとロイドは言葉を発せなくても、ある程度の距離なら頭の中で話せるという事だ。

(まぁそうだな。)

(おや、否定しないんだね。)

(実際名前を考えるのって苦手なんだよ。だから否定はしない。)

俺はとりあえず名前の欄の所に自分の名前を書いてロイドに渡す。あ、この世界の文字は薬のおかげで読めるし書けるようになっている。まぁ俺にとっては日本語にしか見えないんだがな。実際は違う文字だという事を休んでいる間にマホに聞いた。

「ほら、ロイドも名前を書けよ。」

「ん?あぁそうだね。」

そう言えば、ロイドのフルネームって知らなかったな。どんな名前なんだ?
えっと・・・『ロイド・ウィスリム』か、ふーん。ロイドは名前を書き終わると改めて紙を俺に渡してきた。

「なぁ、そう言えば聞きたいことがあるんだが良いか?」

「なんだろうか?私の答えられることなら答えるよ。」

「ロイドって、どれぐらい偉い貴族の娘さんなんだ?」

「あれ?話していなかったっけ。」

「あぁ、それでどうなんだ?」

「うーん・・・何をもって偉いと言うのかは判断出来ないが、この街を取り仕切っていると言えるぐらいの貴族かな。」

「あぁやっぱりな。そんな感じだと思ったわ。」

「ふふっ、あんまり驚きはしなかったね。」

「いやまぁ・・・きょうの出来事の方が驚きが大きすぎてな。それに何となく予想は出来てたからそこまで驚かねぇわ。それよりも名前だよ名前。めんどくせぇ・・・・ギルドリアンとかで良い?」

(いやいやご主人様。流石にそれは・・・・)

(うん、私もちょっとそれは・・・・)

(えぇ?じゃあ他に何かいい名前あるか?)

それから俺達は頭を悩ませることになった。まさかここでつまずくとは思わなかった・・・さてどうしたものか。

「うーん・・・ナインティアとかいいんじゃない?九条さんの九をとってさ。」

「うーん、もうそれでいいか。じゃあナインティアっと。」

(えぇーそんな適当でいいんですか?)

(良いんだよ。名前なんてそれっぽく聞こえれば問題なし。)

「よし!これで提出して・・・ってあれ?他にも決めるとこあった。」

「え?どこだい?」

「ほら、ギルド名の下の所。ギルドリーダーだってさ。」

「そこはもちろん九条さんにお願いしようかな。」

「えぇ?貴族の出身ならロイドがギルドリーダーになってくれても良くないか?」

「私はそれでもいいけど、周りの人達が何て思うかな?」

(うーん、あのおっさんは何で何もしないで若い女の子にギルドリーダーを任せてるんだ?何のために存在しているんだろう・・・でしょうか!)

(なんて具体的な内容だ・・・)

(だが、そう思われる可能性は0じゃないだろ?)

(まぁ・・・確かに俺でもそう思うわな。・・・・はぁー分かった分かりましたよ、俺がリーダーをやればいいんだろ。)

俺はギルドリーダーの場所に自分の名前を書いた。うわぁ嫌だなぁ。リーダーになったからって面倒な事が起きなきゃいいけど・・・・俺は用紙を手に持つとロイドと一緒に受付に行き用紙を渡した。

「・・・はい、用紙に問題はありません。それでは正式な手続きをいたしますのでカードを預からせていただいてもよろしいですか?」

俺とロイドがカードを手渡すと、お姉さんは用紙とカードを持って何やら機械に入力し始めた。しばらくしてお姉さんがカードを持って戻ってきた。

「それでは、正式にナインティアの結成を認めさせていただきますね。カードにギルド名が正しく表示されているかご確認ください。」

俺とロイドがそれぞれのカードを確認すると、カードの上の方に【ナインティア】と表示されていた。

「えぇ、問題なく表示されてますね。」

「それならば問題ありませんね。それにしても驚きですよ、まさかロイドさんがギルドを結成なさるなんて。今まで様々な人がお声をかけていたのに。どういう心境の変化なのですか?」

「まぁ、私の心にビビッときたのかもしれないね。」

「まぁ!それはもしかして運命の相手・・・という感じですか!?」

な、なんだお姉さんのテンションが急に上がったな。まぁそれだけロイドは女性人気が高いって事か。

「ふふっ、想像にお任せするよ。」

なんというか、サラッと漫画みたいなことを言う奴だなロイドって。今更だけどな。

「あ!他にもお渡しする物があったんです。これをお受け取り下さい。」

そう言ってお姉さんは小型のタブレットを渡してきた。うん、何と言うか異世界なのに馴染み深いものが急に出てくると少し驚くな。

「こちらの機械は、街から出されているミッションを確認する為の物です。軽くて頑丈なので持ち運びも便利なんですよ。」

「ミッションてあれですよね。ギルドに定期的に出される報酬がもらえるっていう。」

「はい!特に強制する事もありませんので、お時間がある時にでもミッションの達成をお勧めします!達成していただければ、Gや武器や防具に必要な特別な素材などをお渡しいたしますので。」

「分かりました。」

それから俺達は受付のお姉さんと別れ斡旋所から出た。

「うーんこの後どうするかな。」

「あのご主人様、私この街の観光がしたいんですけど。」

いつの間にかスマホから出てきたマホが、俺の肩に座って提案をしてきた。

「観光?なんでまた。」

「だってだって!私達この街に来てから毎日のようにクエストと寝床と食料品店の往復でこの街の事を詳しく知らないじゃないですか!だから少し探検したいなーって思いまして。」

「へぇー君達はこの街の事にあまり詳しくないんだね。」

「あぁ、まぁな。マホの言う通り特に出歩いたりとかしてないもんな。服屋とかには行ったけど、それだけだもんな。後は生活に必要な店ぐらいしか見て回ってないな。」

「それだったら私がこの街で面白いと思える場所を案内するよ。」

「へぇーそんな場所があんのか。」

「はいはい!私是非とも行きたいです!」

「うん分かった。それじゃあ私の後について来てくれるかい。」

それから俺はロイドに案内され、とある場所へとやって来た。

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