おっさんの異世界生活は無理がある。
第23話
「ご主人様、おはようございます!すぐに朝食が出来るので、待っていて下さい!」
「あぁ、分かった。そんじゃあ盛り付ける用の皿だけ出しておくな。」
「はい!お願いします!」
ロイドに手伝ってもらって服を買いに行ってから1週間が過ぎて、俺の日常生活はこれまでとは大きく変わってきていた。
今までは掃除や料理なんかは俺がやっていたんだが、大きいサイズになって出来る事が増えたのが嬉しかったのかマホが積極的にそこら辺をやる様になってきていた。
……だからと言って全てを任せっきりにしていたらとんだクズ野郎に成り下がってしまうので、家事は日替わりの当番制にして俺もシッカリやっているけどな!
ただまぁ、こうして普通に過ごせる様になるまでにかなり時間が掛かったなぁ……最初の2,3日は見た目はマジで可愛い女の子が同じ屋根の下に居るのが慣れなくて心臓に悪い瞬間がメチャクチャあったしさ……うんうん、俺もよく頑張ったな!!
それにボスの攻撃のせいで残っていた傷跡もメチャクチャ滲みる回復薬のおかげでようやく綺麗さっぱり消えてくれたしな!いやぁ、マジで良かったね!
「あっ、そう言えばご主人様。あれからちょうど1週間ですけど、ロイドさんとした約束ってどうなったんですかね?」
「ん?あー……あれから何の音沙汰も無いし、もしかして忘れてんじゃねぇのか?」
「うーん、そうなんですかねぇ……って、あれ?」
急に静かになったマホに合わせて黙ってみると、玄関の扉に付いてるドアノッカーという何とも馴染みの無い物が規則正しく鳴らされている音が聞こえてきていて……
「いやいや、まさかそんな……だとしたらタイミングが良すぎじゃねぇか?」
「ご主人様!私、ロイドさんを出迎えに行ってきますね!」
「お、おう……まぁ、ロイドとは限らねぇけどな……」
確信にも似た思いを抱きながらそんな事を言いつつ小走りで玄関に向かって行ったマホの姿を見送ってからしばらくすると……
「おはようございます、ロイドさん!さぁ、どうぞ上がって下さい」
「うん、ありがとうねマホ。」
「あぁうん、やっぱりそうですよねぇ……」
苦笑いを浮かべながら人差し指でこめかみの辺りをボリボリ掻いていると、マホと共にロイドがやって来て俺に向かって爽やかに微笑みかけてきた。
「やぁ、おはよう九条さん。準備が整ったからお願いを叶えて貰いに来たよ。」
「だろうなぁ……まぁ、とりあえず座れよ。」
「ロイドさん、紅茶はお飲みになりますか?」
「うん、頼むよ。」
「分かりました!それでは少々お待ち下さいね!」
ニコっと笑ってキッチンに向かったマホの後姿をボーっと眺めていると、真正面にある椅子にロイドが腰を下ろしてこっちを見てきた。
「ふむ、どうやら朝食の途中にお邪魔してしまったみたいだね。すまない。」
「いや、それは別に気にしなくても良いんだが……」
「ロイドさん、紅茶をどうぞ。」
「あぁ、どうもありがとう……うん、とっても美味しいよ。」
「えへへ、ありがとうございます!ところでロイドさん、ご主人様にどんなお願いを叶えて欲しくてやってきたんですか?早速ですけど聞かせて下さい!」
「……まさかとは思うが、またレベル上げを手伝えって言うんじゃないだろうな?」
「ふふっ、そんなに不安がらなくても良いから安心してくれ。私が九条さんにお願いしたい事はそれじゃないからね。」
「そうか……じゃあ、どんなお願いなんだ?」
「うん、それでは単刀直入に言わせてもらうけど……私とギルドを作って欲しい。」
「………ギルド?それってあの……気の合う仲間と一緒に……みたいなアレか?」
「あぁ、その通りだよ。」
「………いやいや、まさか冗談だろ?俺達って知り合ってまだ数日だぞ?」
「そんな事は関係ないよ。私は貴方とギルドを作りたいと心から思ったんだから。」
「お、おぅ……そう……か………」
あの、恥ずかしいんでそんな真っすぐな瞳で見つめながらそんな事を断言しないでくれませんかね!?色んな意味で耐性が無いからちょっとヤバいんですけど?!
「それでどうだろうか?私のお願い、叶えてもらえるのかな。」
「あー……まぁ、そう言う約束ではあるんだけど……そもそもの話、ギルドっていうのはどんな感じのものなんだ?よく分からないから同意しずらいんだが……この前のパーティーとはまた別の枠組みのって事だよな?」
「うん、そうだね。パーティーはクエストやダンジョンに挑む為の一時的なもので、ギルドはそれを更に強化した組織の様なものだね。」
「ふーん、組織ねぇ……それって組んだら何か得みたいな事があるのか?」
「それがですねご主人様!ギルドを組むと特別なクエストを受けたりイベントに参加したり出来るんですよ!ねっ、ロイドさん!」
「うん、マホの言う通りだよ。だから気の合う仲間を見つけた者達はすぐにギルドを作るんだよ。」
「なるほどねぇ……大体の事は理解した……けど、その上で言わせてもらうけど何で俺となんだ?それならこの間の女の子達とギルドを作れば良いじゃねぇか。」
「……確かに彼女達からもギルドを作らないかと誘われたことはあるし、他の人から誘われた事もある。」
「やっぱりそうなんだろ?だったらどうして……」
「どうしてと聞かれるとそうだね………直感ってやつかな。」
「……直感?」
「あぁ……この間、九条さんとダンジョンに行った時に思ったんだよ。私はこの人ともっと沢山の冒険をしてみたい、もっと一緒に居たいって……そんな事を思ったのは初めてだったから随分と戸惑ったりもしたけれど、この気持ちに嘘は無いんだ。」
「………」
「いきなりこんなお願いをされて困っているのは分かっている……だけど九条さん、どうか真剣に考えてみてはもらえないかな。私とギルドを組むという事を……」
家に来た時とは違って不安そうな表情を浮かべながらジッと俺の事を見つめてきたロイドと目を合わせてから静かに視線を逸らしてマホの方に目線を向けてみると……
(ほら、ご主人様!ロイドさんがこう言ってくれているんですから、そろそろ覚悟を決めたらどうなんですか!!)
(はぁ、お前に言われなくても分かってるよ……それに約束は約束だしな。)
目を閉じて小さなため息を零しながら腹を括った俺はロイドと改めて向かい合うとパチンと音を鳴らしながら両膝の上に勢いよく手を乗せた。
「よしっ!そんじゃあ作るか、ギルド。」
「……えっ?ほ、本当に良いのかい?」
「あぁ、そもそもはこっちがお前のお願いを聞くって所から始まった話だからなぁ。それにそうまで言われたら流石に断れないし、特別なクエストやらイベントで貰えるかもしれない報酬とかも気になるしな。」
「えへへ、ご主人様ったら……」
「……あ、ありがとう九条さん!本当に……本当に嬉しいよ!」
「はいはい、それじゃあさっさとギルドとやらを作りに……って、何処に行くんだ?やっぱり斡旋所か?」
「うん!斡旋所で正式な手続きをすれば私達のギルドを作る事が出来るんだ!さぁ、急いで行こうじゃないか!」
満面の笑みを浮かべながら立ち上がったロイドと思わず一緒になって微笑んでいた俺とマホは、互いに目を見合わせてやれやれといった仕草をするのだった。
「ったく、そう慌てんなっての……ってそう言えばロイド、どうして1週間も準備が必要だったんだ?申請するだけなら1日も掛からないんじゃないのか?」
「あぁいや、確かにそうなんだけど……実は一人暮らしをしようかと思っていてね。その準備のせいでこんなにも時間が掛かってしまったんだよ。」
「へぇ、1人暮らしをするのか……どこら辺に住むんだよ?」
「もしアレでしたら、私達がロイドさんの為に色々と教えてあげますよ!」
「ふふっ、どうもありがとう。それではお隣さんとしてこれからよろしくね。」
「「…………はっ?」」
「いやぁ、本当に大変だったよ。私が住む家を職人達と共に設計して、家具を決めてそれを九条さんの家の隣に数十分で作り上げるのは。」
「え?……え?………な、何を……行って………え?」
「ご、ご主人様!!そ、外です!外に来てください!」
呆然としたまま思考が停止している間に外に飛び出していたマホに呼ばれるがまま家を出てみると……そこには…………!?!?!!!!
「ふふっ、どうだい?2人を驚かせる為に頑張ってみたんだが、どうだったかな。」
満足げな笑みを浮かべるロイドにそう問いかけられても反応が出来ない俺とマホがポカンと口を開けながら見つめてる先には、さっきまで何も無かったはずの空き地に堂々と建っている明らかにカタログ品じゃない豪華な家が存在していて……
俺はロイドが持っている行動力とそれを叶える事が出来る貴族としての力に対してマジで恐怖心を抱くのだった……!!
「あぁ、分かった。そんじゃあ盛り付ける用の皿だけ出しておくな。」
「はい!お願いします!」
ロイドに手伝ってもらって服を買いに行ってから1週間が過ぎて、俺の日常生活はこれまでとは大きく変わってきていた。
今までは掃除や料理なんかは俺がやっていたんだが、大きいサイズになって出来る事が増えたのが嬉しかったのかマホが積極的にそこら辺をやる様になってきていた。
……だからと言って全てを任せっきりにしていたらとんだクズ野郎に成り下がってしまうので、家事は日替わりの当番制にして俺もシッカリやっているけどな!
ただまぁ、こうして普通に過ごせる様になるまでにかなり時間が掛かったなぁ……最初の2,3日は見た目はマジで可愛い女の子が同じ屋根の下に居るのが慣れなくて心臓に悪い瞬間がメチャクチャあったしさ……うんうん、俺もよく頑張ったな!!
それにボスの攻撃のせいで残っていた傷跡もメチャクチャ滲みる回復薬のおかげでようやく綺麗さっぱり消えてくれたしな!いやぁ、マジで良かったね!
「あっ、そう言えばご主人様。あれからちょうど1週間ですけど、ロイドさんとした約束ってどうなったんですかね?」
「ん?あー……あれから何の音沙汰も無いし、もしかして忘れてんじゃねぇのか?」
「うーん、そうなんですかねぇ……って、あれ?」
急に静かになったマホに合わせて黙ってみると、玄関の扉に付いてるドアノッカーという何とも馴染みの無い物が規則正しく鳴らされている音が聞こえてきていて……
「いやいや、まさかそんな……だとしたらタイミングが良すぎじゃねぇか?」
「ご主人様!私、ロイドさんを出迎えに行ってきますね!」
「お、おう……まぁ、ロイドとは限らねぇけどな……」
確信にも似た思いを抱きながらそんな事を言いつつ小走りで玄関に向かって行ったマホの姿を見送ってからしばらくすると……
「おはようございます、ロイドさん!さぁ、どうぞ上がって下さい」
「うん、ありがとうねマホ。」
「あぁうん、やっぱりそうですよねぇ……」
苦笑いを浮かべながら人差し指でこめかみの辺りをボリボリ掻いていると、マホと共にロイドがやって来て俺に向かって爽やかに微笑みかけてきた。
「やぁ、おはよう九条さん。準備が整ったからお願いを叶えて貰いに来たよ。」
「だろうなぁ……まぁ、とりあえず座れよ。」
「ロイドさん、紅茶はお飲みになりますか?」
「うん、頼むよ。」
「分かりました!それでは少々お待ち下さいね!」
ニコっと笑ってキッチンに向かったマホの後姿をボーっと眺めていると、真正面にある椅子にロイドが腰を下ろしてこっちを見てきた。
「ふむ、どうやら朝食の途中にお邪魔してしまったみたいだね。すまない。」
「いや、それは別に気にしなくても良いんだが……」
「ロイドさん、紅茶をどうぞ。」
「あぁ、どうもありがとう……うん、とっても美味しいよ。」
「えへへ、ありがとうございます!ところでロイドさん、ご主人様にどんなお願いを叶えて欲しくてやってきたんですか?早速ですけど聞かせて下さい!」
「……まさかとは思うが、またレベル上げを手伝えって言うんじゃないだろうな?」
「ふふっ、そんなに不安がらなくても良いから安心してくれ。私が九条さんにお願いしたい事はそれじゃないからね。」
「そうか……じゃあ、どんなお願いなんだ?」
「うん、それでは単刀直入に言わせてもらうけど……私とギルドを作って欲しい。」
「………ギルド?それってあの……気の合う仲間と一緒に……みたいなアレか?」
「あぁ、その通りだよ。」
「………いやいや、まさか冗談だろ?俺達って知り合ってまだ数日だぞ?」
「そんな事は関係ないよ。私は貴方とギルドを作りたいと心から思ったんだから。」
「お、おぅ……そう……か………」
あの、恥ずかしいんでそんな真っすぐな瞳で見つめながらそんな事を断言しないでくれませんかね!?色んな意味で耐性が無いからちょっとヤバいんですけど?!
「それでどうだろうか?私のお願い、叶えてもらえるのかな。」
「あー……まぁ、そう言う約束ではあるんだけど……そもそもの話、ギルドっていうのはどんな感じのものなんだ?よく分からないから同意しずらいんだが……この前のパーティーとはまた別の枠組みのって事だよな?」
「うん、そうだね。パーティーはクエストやダンジョンに挑む為の一時的なもので、ギルドはそれを更に強化した組織の様なものだね。」
「ふーん、組織ねぇ……それって組んだら何か得みたいな事があるのか?」
「それがですねご主人様!ギルドを組むと特別なクエストを受けたりイベントに参加したり出来るんですよ!ねっ、ロイドさん!」
「うん、マホの言う通りだよ。だから気の合う仲間を見つけた者達はすぐにギルドを作るんだよ。」
「なるほどねぇ……大体の事は理解した……けど、その上で言わせてもらうけど何で俺となんだ?それならこの間の女の子達とギルドを作れば良いじゃねぇか。」
「……確かに彼女達からもギルドを作らないかと誘われたことはあるし、他の人から誘われた事もある。」
「やっぱりそうなんだろ?だったらどうして……」
「どうしてと聞かれるとそうだね………直感ってやつかな。」
「……直感?」
「あぁ……この間、九条さんとダンジョンに行った時に思ったんだよ。私はこの人ともっと沢山の冒険をしてみたい、もっと一緒に居たいって……そんな事を思ったのは初めてだったから随分と戸惑ったりもしたけれど、この気持ちに嘘は無いんだ。」
「………」
「いきなりこんなお願いをされて困っているのは分かっている……だけど九条さん、どうか真剣に考えてみてはもらえないかな。私とギルドを組むという事を……」
家に来た時とは違って不安そうな表情を浮かべながらジッと俺の事を見つめてきたロイドと目を合わせてから静かに視線を逸らしてマホの方に目線を向けてみると……
(ほら、ご主人様!ロイドさんがこう言ってくれているんですから、そろそろ覚悟を決めたらどうなんですか!!)
(はぁ、お前に言われなくても分かってるよ……それに約束は約束だしな。)
目を閉じて小さなため息を零しながら腹を括った俺はロイドと改めて向かい合うとパチンと音を鳴らしながら両膝の上に勢いよく手を乗せた。
「よしっ!そんじゃあ作るか、ギルド。」
「……えっ?ほ、本当に良いのかい?」
「あぁ、そもそもはこっちがお前のお願いを聞くって所から始まった話だからなぁ。それにそうまで言われたら流石に断れないし、特別なクエストやらイベントで貰えるかもしれない報酬とかも気になるしな。」
「えへへ、ご主人様ったら……」
「……あ、ありがとう九条さん!本当に……本当に嬉しいよ!」
「はいはい、それじゃあさっさとギルドとやらを作りに……って、何処に行くんだ?やっぱり斡旋所か?」
「うん!斡旋所で正式な手続きをすれば私達のギルドを作る事が出来るんだ!さぁ、急いで行こうじゃないか!」
満面の笑みを浮かべながら立ち上がったロイドと思わず一緒になって微笑んでいた俺とマホは、互いに目を見合わせてやれやれといった仕草をするのだった。
「ったく、そう慌てんなっての……ってそう言えばロイド、どうして1週間も準備が必要だったんだ?申請するだけなら1日も掛からないんじゃないのか?」
「あぁいや、確かにそうなんだけど……実は一人暮らしをしようかと思っていてね。その準備のせいでこんなにも時間が掛かってしまったんだよ。」
「へぇ、1人暮らしをするのか……どこら辺に住むんだよ?」
「もしアレでしたら、私達がロイドさんの為に色々と教えてあげますよ!」
「ふふっ、どうもありがとう。それではお隣さんとしてこれからよろしくね。」
「「…………はっ?」」
「いやぁ、本当に大変だったよ。私が住む家を職人達と共に設計して、家具を決めてそれを九条さんの家の隣に数十分で作り上げるのは。」
「え?……え?………な、何を……行って………え?」
「ご、ご主人様!!そ、外です!外に来てください!」
呆然としたまま思考が停止している間に外に飛び出していたマホに呼ばれるがまま家を出てみると……そこには…………!?!?!!!!
「ふふっ、どうだい?2人を驚かせる為に頑張ってみたんだが、どうだったかな。」
満足げな笑みを浮かべるロイドにそう問いかけられても反応が出来ない俺とマホがポカンと口を開けながら見つめてる先には、さっきまで何も無かったはずの空き地に堂々と建っている明らかにカタログ品じゃない豪華な家が存在していて……
俺はロイドが持っている行動力とそれを叶える事が出来る貴族としての力に対してマジで恐怖心を抱くのだった……!!
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