おっさんの異世界生活は無理がある。
第22話
多種多様な女性物の服が置かれた幾つもの店、そしてそれらを見ながら賑わってる女の子のグループやカップル達を目にして反射的に及び腰になっていると、ロイドが店内をグルっと見回してから俺の方に視線を送って来た。
「九条さん、まずは近くの店に入ってマホのサイズに合いそうな服を1着だけ買ってみないかい。そうしないと、どんな服が似合うのかと言う基準が出来ないからね。」
「そ、それもそうだな……」
ロイドの提案をすんなりと受け入れた俺は周囲にあった無難そうな服が並べられた店にロイドと足を踏み入れると、大きくなった時のマホを思い出しながらシンプルな白色とワンピースを購入するのだった。
……それからしばらくして、ロイドに手伝ってもらいながら近場にあったトイレの中で買った服に着替えてきたマホは満面の笑みを浮かべながら俺の前に姿を現した。
「お待たせしましたご主人様!どうですか、似合っていますか!」
「うん?まぁ……アレだ、似合ってるんじゃないか?それにサイズ感の方もバッチリみたいだしな。」
「はい!そうみたいですね!えへへぇ………」
「ふふっ、随分とご機嫌だねマホ。」
「それはそうですよ!だってだって、この格好ならご主人様と一緒に街中を歩いても大丈夫って事なんですから!」
「……マホ、メチャクチャ喜んでくれている所で悪いんだがその姿でご主人様呼びは絶対にしないでくれ。」
「え、えぇ?!いきなりどうしてですかご主人様!?もしかして私の事が嫌いに」
「なったりしてないから安心しろ。そうじゃなくてだな……お前が大声でご主人様と言って俺を呼ぶとだな、それを聞いた人達が訝し気な視線をこっちに送って来ているんだよ……!」
「へっ?…………あー……確かにそうみたいですね…………」
「ふふっ、それならご主人様に変わる別の呼び名を考えないといけないね。例えば、お父さんというのはどうかな。」
「……その呼び方は俺に対する精神ダメージが半端じゃ無いから却下だ。」
「うーん……それじゃあ、お兄ちゃんって言うのはどうですか?」
「ぐ、ぐふぅ!」
「ご主人様!?どうしたんですか!大丈夫ですか?!」
「あ、あぁ……ちょっと色々な感情が一気に溢れ出して来て胸が苦しくなっただけだから心配するな……」
一人っ子だった俺の憧れであるお兄ちゃん呼びをマホにされて心臓が高鳴った俺は左胸を押さえながら深呼吸を繰り返すと、大きく息を吐いて姿勢を正していった。
「ふふっ、その様子だとお兄ちゃん呼びは断念せざるを得ないみたいだね。」
「え、えっと……それじゃあどうしたら………」
「とりあえず、今はおじさんで良い……ってか、そこしか妥協点がないし……」
「わ、分かりました!これから先、外ではおじさんって呼ばせてもらいますね!」
「うん……そうしてくれ………」
改めてそう呼ばれると心にグサグサ来るものがあるんだが……これはもう、諦めて受け入れるしかないだろうなぁ……慣れるまで時間が掛かりそうだぜ。
「さてと、それでは今後の九条さんの呼び方も決まった所で本題に戻るとしようか。マホさん、どんな服を着てみたい等の要望はあるかな?」
「い、一応はあるんですけど……その前に、ちょっと良いでしょうかロイドさん。」
「うん?どうしたんだい?」
「あのですね、私の事はさん付けではなくマホとお呼びください。その、さん付けはあまり慣れませんし距離を感じてしまいますから………」
「おやおや、ふふっ……そんなに嬉しい提案をされてしまっては、断る事は出来ないじゃないか。マホ、これからはそう呼ばせてもらうね。」
「えへへ!はい!それではご主人様、お買い物に行きましょうか!」
「……はいはい、分かりましたよ。」
多少の気恥ずかしさはあったが繋がれたマホの手を振り払う訳にもいかないので、俺はソレだけ言うと平常心を装いながら皆と建物の中を巡る事にするのだった。
ボーイッシュ系、清楚系、ゴスロリ系とマジで色んな服が置かれた店を回りながらマホが気に入った服を何着か買って行ったんだが……この世界、どうしてこんなにも服の種類が多いんだ?しかもマニアックな物からそうじゃない物まで幅広に……
そんなどうでもいい異世界の不思議に触れて首を傾げながら建物の中を数時間近く歩く事になってしまった俺は、病み上がりの体という事で流石に体力の限界を感じてそこらにあったベンチに腰掛けて休憩をさせてもらうのだった……
「えへへ!おじさん、ロイドさん、本当にありがとうございました!こんなに沢山のお洋服を買って貰えて、私とっても嬉しいです!」
「うん、それなら良かったよ。ねっ、九条さん。」
「はぁ………そうだな………プレゼントも、何とか及第点はもらえたし……」
「おめでとうございます!ですが、もっと頑張って下さいね!」
「へーい……了解でーす……」
妖精状態の時にスカートで飛び回られると非常に困るのでボーイッシュ系みたいな服を買ってやったんだが、それがどうにも普通過ぎたらしい……
いやでも、仕方ないとは思いませんか?女の子にお洋服をプレゼントするだなんて俺の人生で一度も無かった経験なのですから!
そんな開き直りにも似た考えをしながら、そろそろ帰ろうかと提案してみたら……ロイドがいきなり立ち上がってこっちを見ながら髪をファサっとして……
「九条さん、折角こうして出会えた可愛い女の子とするお買い物をここで終わらせる訳にはいかないよ。大丈夫、心配する事は無い。マホに似合う服を私が必ず見繕ってみせるからね。」
そう宣言した後のロイドの行動力といったらマジで凄かった……だって最終的には持っている袋の半分以上がロイドにプレゼントされた服なんだもの……流石にマホも悪いと思って止めようとしたのに聞きやしないしで…………
「ロ、ロイド……流石にもう……良いんじゃないのか?」
「ふむ……それもそうだね。そろそろ日も暮れるし今日は解散するとしようか。」
「は、はい!ロイドさん!こんなに沢山のお洋服を頂いて、本当に本当にありがとうございました!絶対、絶対絶対、大事に着させてもらいますね!」
「ふふっ、そうしてくれると嬉しいよ。それでは建物を出るとしようか。」
買い物地獄からようやく解放される事になった俺は病み上がりの体にムチを打ってマホの服が入った大量の袋を抱えて店に後にすると、夕陽が照らす大通りまで戻って来るのだった。
「……ロイド、改めて言わせてもらうが今日は本当に助かった。ありがとうな。」
「いやいや、2人の力になれたのなら何よりだよ……さてと、それではまたね。」
「はい!またお会いしましょうね、ロイドさん!」
「またな……って、そう言えば何か俺に頼み事があるんだったよな?それなら準備が出来たら俺の家に来てくれ。場所は教えておくからさ。」
「了解したよ………へぇ、随分な街外れに住んでいるんだね。」
「色々と相談した結果でな……」
「なるほど。それじゃあ九条さんの体調が万全になった頃にお邪魔させてもらうよ。その時が来たら、私の頼みをしっかりと聞いてくれよ。」
ロイドはそう言って俺達に微笑みかけてくると、そのまま華麗に振り返って颯爽と大通りを歩いて立ち去って行くのだった………はぁ………疲れたぁ………
「それではおじさん、私達も帰りましょうか!」
「そうだな……ところでマホ、妖精の姿には戻らないのか?家までは結構歩くぞ。」
「構いません!今日はご主人様と一緒に歩いて帰りたいので!」
「それはまぁ……物好きな事で……ってか、ご主人様って呼ぶんじゃないっての。」
「あっ、すみませんでした!えへへ!」
照れくさそうに微笑んだマホと目を合わせながら苦笑いを浮かべた俺は、少しだけ心地良い気分になりながら帰路を歩くのだったが……その途中、やっぱり疲れましたとか言ってマホがスマホの中に戻ってしまい……オイ!俺の感動を返しやがれっ!!
「九条さん、まずは近くの店に入ってマホのサイズに合いそうな服を1着だけ買ってみないかい。そうしないと、どんな服が似合うのかと言う基準が出来ないからね。」
「そ、それもそうだな……」
ロイドの提案をすんなりと受け入れた俺は周囲にあった無難そうな服が並べられた店にロイドと足を踏み入れると、大きくなった時のマホを思い出しながらシンプルな白色とワンピースを購入するのだった。
……それからしばらくして、ロイドに手伝ってもらいながら近場にあったトイレの中で買った服に着替えてきたマホは満面の笑みを浮かべながら俺の前に姿を現した。
「お待たせしましたご主人様!どうですか、似合っていますか!」
「うん?まぁ……アレだ、似合ってるんじゃないか?それにサイズ感の方もバッチリみたいだしな。」
「はい!そうみたいですね!えへへぇ………」
「ふふっ、随分とご機嫌だねマホ。」
「それはそうですよ!だってだって、この格好ならご主人様と一緒に街中を歩いても大丈夫って事なんですから!」
「……マホ、メチャクチャ喜んでくれている所で悪いんだがその姿でご主人様呼びは絶対にしないでくれ。」
「え、えぇ?!いきなりどうしてですかご主人様!?もしかして私の事が嫌いに」
「なったりしてないから安心しろ。そうじゃなくてだな……お前が大声でご主人様と言って俺を呼ぶとだな、それを聞いた人達が訝し気な視線をこっちに送って来ているんだよ……!」
「へっ?…………あー……確かにそうみたいですね…………」
「ふふっ、それならご主人様に変わる別の呼び名を考えないといけないね。例えば、お父さんというのはどうかな。」
「……その呼び方は俺に対する精神ダメージが半端じゃ無いから却下だ。」
「うーん……それじゃあ、お兄ちゃんって言うのはどうですか?」
「ぐ、ぐふぅ!」
「ご主人様!?どうしたんですか!大丈夫ですか?!」
「あ、あぁ……ちょっと色々な感情が一気に溢れ出して来て胸が苦しくなっただけだから心配するな……」
一人っ子だった俺の憧れであるお兄ちゃん呼びをマホにされて心臓が高鳴った俺は左胸を押さえながら深呼吸を繰り返すと、大きく息を吐いて姿勢を正していった。
「ふふっ、その様子だとお兄ちゃん呼びは断念せざるを得ないみたいだね。」
「え、えっと……それじゃあどうしたら………」
「とりあえず、今はおじさんで良い……ってか、そこしか妥協点がないし……」
「わ、分かりました!これから先、外ではおじさんって呼ばせてもらいますね!」
「うん……そうしてくれ………」
改めてそう呼ばれると心にグサグサ来るものがあるんだが……これはもう、諦めて受け入れるしかないだろうなぁ……慣れるまで時間が掛かりそうだぜ。
「さてと、それでは今後の九条さんの呼び方も決まった所で本題に戻るとしようか。マホさん、どんな服を着てみたい等の要望はあるかな?」
「い、一応はあるんですけど……その前に、ちょっと良いでしょうかロイドさん。」
「うん?どうしたんだい?」
「あのですね、私の事はさん付けではなくマホとお呼びください。その、さん付けはあまり慣れませんし距離を感じてしまいますから………」
「おやおや、ふふっ……そんなに嬉しい提案をされてしまっては、断る事は出来ないじゃないか。マホ、これからはそう呼ばせてもらうね。」
「えへへ!はい!それではご主人様、お買い物に行きましょうか!」
「……はいはい、分かりましたよ。」
多少の気恥ずかしさはあったが繋がれたマホの手を振り払う訳にもいかないので、俺はソレだけ言うと平常心を装いながら皆と建物の中を巡る事にするのだった。
ボーイッシュ系、清楚系、ゴスロリ系とマジで色んな服が置かれた店を回りながらマホが気に入った服を何着か買って行ったんだが……この世界、どうしてこんなにも服の種類が多いんだ?しかもマニアックな物からそうじゃない物まで幅広に……
そんなどうでもいい異世界の不思議に触れて首を傾げながら建物の中を数時間近く歩く事になってしまった俺は、病み上がりの体という事で流石に体力の限界を感じてそこらにあったベンチに腰掛けて休憩をさせてもらうのだった……
「えへへ!おじさん、ロイドさん、本当にありがとうございました!こんなに沢山のお洋服を買って貰えて、私とっても嬉しいです!」
「うん、それなら良かったよ。ねっ、九条さん。」
「はぁ………そうだな………プレゼントも、何とか及第点はもらえたし……」
「おめでとうございます!ですが、もっと頑張って下さいね!」
「へーい……了解でーす……」
妖精状態の時にスカートで飛び回られると非常に困るのでボーイッシュ系みたいな服を買ってやったんだが、それがどうにも普通過ぎたらしい……
いやでも、仕方ないとは思いませんか?女の子にお洋服をプレゼントするだなんて俺の人生で一度も無かった経験なのですから!
そんな開き直りにも似た考えをしながら、そろそろ帰ろうかと提案してみたら……ロイドがいきなり立ち上がってこっちを見ながら髪をファサっとして……
「九条さん、折角こうして出会えた可愛い女の子とするお買い物をここで終わらせる訳にはいかないよ。大丈夫、心配する事は無い。マホに似合う服を私が必ず見繕ってみせるからね。」
そう宣言した後のロイドの行動力といったらマジで凄かった……だって最終的には持っている袋の半分以上がロイドにプレゼントされた服なんだもの……流石にマホも悪いと思って止めようとしたのに聞きやしないしで…………
「ロ、ロイド……流石にもう……良いんじゃないのか?」
「ふむ……それもそうだね。そろそろ日も暮れるし今日は解散するとしようか。」
「は、はい!ロイドさん!こんなに沢山のお洋服を頂いて、本当に本当にありがとうございました!絶対、絶対絶対、大事に着させてもらいますね!」
「ふふっ、そうしてくれると嬉しいよ。それでは建物を出るとしようか。」
買い物地獄からようやく解放される事になった俺は病み上がりの体にムチを打ってマホの服が入った大量の袋を抱えて店に後にすると、夕陽が照らす大通りまで戻って来るのだった。
「……ロイド、改めて言わせてもらうが今日は本当に助かった。ありがとうな。」
「いやいや、2人の力になれたのなら何よりだよ……さてと、それではまたね。」
「はい!またお会いしましょうね、ロイドさん!」
「またな……って、そう言えば何か俺に頼み事があるんだったよな?それなら準備が出来たら俺の家に来てくれ。場所は教えておくからさ。」
「了解したよ………へぇ、随分な街外れに住んでいるんだね。」
「色々と相談した結果でな……」
「なるほど。それじゃあ九条さんの体調が万全になった頃にお邪魔させてもらうよ。その時が来たら、私の頼みをしっかりと聞いてくれよ。」
ロイドはそう言って俺達に微笑みかけてくると、そのまま華麗に振り返って颯爽と大通りを歩いて立ち去って行くのだった………はぁ………疲れたぁ………
「それではおじさん、私達も帰りましょうか!」
「そうだな……ところでマホ、妖精の姿には戻らないのか?家までは結構歩くぞ。」
「構いません!今日はご主人様と一緒に歩いて帰りたいので!」
「それはまぁ……物好きな事で……ってか、ご主人様って呼ぶんじゃないっての。」
「あっ、すみませんでした!えへへ!」
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