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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第19話

全身ズタボロにされながらボスを倒したりマホの機能がアップデートされたりしたその翌日、軽い痛みのせいで目覚まし時計のベルが鳴り響くよりも早く意識が戻ってしまった俺は二度寝する気にもなれずダラダラとベッドを抜け出すのだった。

そしていつもの様に浴室に行ってシャワーを浴びて目を覚ました俺は、リビングに足を運んで朝食作りに取り掛かろうと………したんだけども………

「あっ、おはようございますご主人様!お怪我の具合はいかがですか?」

「……それについては大丈夫だが……マホ……どうして俺の服を着てるんだ……?」

リビングのキッチンにはどういう訳かサイズの合ってない服を身にまとったマホが、調理器具を片手に料理をしている姿があった訳でして……

「どうしてって、ご主人様が妖精の時の恰好はダメだって言ったんじゃないですか!それよりもどうです?彼シャツってやつですよ!トキメキまくりじゃないですか?」

「ふっ、彼シャツってのはお姉さんタイプがやるからこそトキメキを感じるんだよ。今のお前は何て言うか、妹がお兄ちゃんの服を着てみましたって風にしか見えん。」

「えぇ!?わ、私のどこが妹なんですか!どう見てもお姉さんじゃないですか!」

「はっはっは!そういう事は鏡で自分の姿を確認してから言いなさい!」

「むぅー!そうやって笑っていられるのも今の内なんですからね!後で私がお姉さんだって部分をたっぷり教え込んであげるんですから!」

「はいはい、楽しみにしてるよ。それより朝飯を作ってるんだろ?何か手伝えそうな事はあるか?」

「あっ、いえ大丈夫です!まだ慣れたとは言えませんけど、ご主人様がお料理をする姿はずっと見てきましたから!」

「そうか……そんじゃあ、座って待たせてもらうな。」

「はい!すぐに出来ますので、ちょっとだけ待っていてくださいね!」

そう言って微笑みかけてきたマホが朝飯作りに戻ってから数分後、目の前にほんの少し形が崩れた料理が皿に盛られた状態で並べられた。

「おぉ、初めて作ったにしては良い感じに出来てるじゃないか。」

「えへへ、ありがとうございます!それじゃあ……」

「「いただきまーす。」」

マホと揃って手を合わせてからようやく慣れてきたナイフとフォークを手に取った俺は、微妙に不安そうな視線を真正面から受けながら料理を口に運んでみた。

「……うん、微妙に焦げた所もあるけど美味いと思うぞ。」

「そ、そうですか!?」

「あぁ、この調子ならすぐに俺よりも料理上手になるだろうな。」

「え、えへへへへ!そんなぁ~褒めてもおかわりぐらいしか出ませんよ!」

メチャクチャ嬉しそうにテーブルをバンバン叩きながら朝飯を食べ始めたマホは、口元をもぐもぐさせながら何度も満足そうに頷いていた。

「……そう言えば、こうして向かい合って飯を食べるのって初めてじゃないか?」

「あ~確かにそうかもしれませんね!昨日まで、私はテーブルの上に座ってお食事を頂いてましたから!」

「そうだよなぁ……マホ、これからはずっとその姿で過ごすのか?」

「いえ、そこは臨機応変に行こうと思ってます!まずは日常生活で着る為のお洋服を買って貰って……ご主人様、朝ごはんを食べ終わったらお店に行くんですよね?」

「一応、そのつもりではあるんだが……その前に寄りたい所があるんだ。」

「えっ、それって何処なんですか?」

「加工屋だよ。昨日のボス戦で使ってる武器が限界を迎えたっぽいから、手に入れた素材を使って新しい武器の作成を依頼しようと思ってな。」

「なるほど、そういう事でしたら分かりました!でも、その後は私のお洋服を買いに行くんですよね!」

「あぁ、その為にも良さそうな店を探してみてくれるか。」

「はーい!了解しました!」

ビシッと敬礼してから両手の人差し指をこめかみに当てて唸り出したマホは、数秒経ってからピコンッという効果音が似合いそうな表情を浮かべてこっちを見てきた。

「ご主人様!色んなお洋服屋さんが入った大きな建物を発見しました!」

「ふーん……それって前の世界で言うデパートとかそういう感じの所か?」

「その通りです!そこなら私に似合う服がきっと……あっ、そうだご主人様!」

「ん、なんだ?」

「お店に行ったら私に似合う服を選んでくださいよ!」

「………は?俺が?」

「はい!ご主人様は人生経験が豊富そうですから、私にピッタリなお洋服を見つけて下さいますよね!」

「あっ、いや……それは……どうかなぁ…………止めといた方が良い気が……」

「えぇー!そんな事を言わずにお願いします!ご主人様が女の子にプレゼントを贈る時みたいな感じで良いですから」

「そ、そう言われても……俺……女の子にプレゼントとかした事ないし………」

「またまたぁ!ご主人様ったらご冗談がお上手なんですから!」

「あ、あの………マジで……無いんですよ………それに彼女だって………」

「…………あっ…………」

「………………」

さっきまで満面の笑みを浮かべてたマホに気まずそうに目を逸らされてしまったんですけど……い、今のサイズ感でそれをやられるとダメージが………デカい………!

「………ご、ご主人様!それなら私で練習をしましょう!」

「………れ、練習?」

「はい!どんなプレゼントを贈ったら女の子に喜ばれるのか、それを知る為の練習をしましょう!」

「いやぁ……それも………そもそもマホを女の子……って言うか異性として見るのはどうかと思うし……何か恥ずかしいし…………」

「もう、何をうだうだ言ってるんですかご主人様!少しでもこうして経験値を稼いでいかないとお嫁さん所か彼女も出来ませんよ!」

「ぐはあっ!」

ヤ、ヤバい……ダメージが……心に受けるダメージが半端じゃ無いんですけど!?やっぱり妖精の姿で言われるより、大きくなった分だけ受ける傷が増えてる気が?!

「ほらほら、しょげてないで朝ごはんを早く食べちゃって下さい!」

「……いや、しょげさせたのお前なんだけどね。」

やっぱりマホは小さい方が良いのかもなぁ……心に受ける傷的な意味で………いやでも、家事とかそこら辺の事を考えると大きい姿で居てくれた方が……とりあえず、しばらくは様子を見るとしますかねぇ。

そんな事を考えながらマホが作ってくれた朝飯を食べ終えた俺は、急いで出掛ける準備を終わらせるとスマホの中に入ったマホと一緒に家を出るのだった。

(それでは行きますよ、ご主人様!まずは加工屋に案内させて頂きますね!)

(あぁ、よろしく頼んだ。)

(はい!それにしても、ボスの素材を使った装備品ってどんな物になるんでしょう?)

(うーん……サイズ感はそこそこだけど質はそんなに良いとは言えないだろうから、それなりに使える武器ぐらいになればって感じだな。)

(そうですか……でも、どうして質があんまりよくないって思うんですか?)

(いやだって、初心者ダンジョンのボスだぞ?そんな奴から上質な素材が採れるって言うんなら、この街は冒険者で溢れ返ってるだろうよ。)

(あっ、確かに……)

(まぁそんな訳だから、あんまり期待せずに行くとしようぜ。)

(了解しました!それではまず、大通りの方に向かって下さい!)

(はいよ。)

それからしばらくマホの案内に従って街中を歩いていると、表の看板にデカデカと加工屋と書かれたそれらしい建物が見えてきた。

すっごく分かりやすーい!なんて思いながら取っ手を握り締めて扉を開いた俺は、少しだけ緊張しながら店の中に入って行くのだった。

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