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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第18話

「それではご主人様!早速ですが私の完・全・体をお見せしましょう!」

帰って来て早々にスマホの中から姿を現したマホに満面の笑みを向けられた俺は、斡旋所で貰った肉をポーチの中から取り出してテーブルの上に置くと自分の体の方に静かに目を向けてみた。

「えっと……悪いんだけどさ、お前の完全体を見る前に先に風呂に入っても良いか?体中から酷い臭いがしてかなりその………なっ?」

「あー……そう言えばスマホから出てきた時から泥臭い臭いが………分かりました!そう言う事でしたらお風呂に入ってきてください!」

「おう。そんじゃあ俺は部屋に戻って着替えを用意してくるから、肉を冷蔵庫の中に仕舞っといてくれるか?」

「はい、了解しました!」

ビシッと敬礼をしたマホを見て小さく頷いた俺はすぐさまリビングを後にすると、自室から部屋着を回収して浴室に足を運びシャワーを浴びるのだった。

「くぅー……やっぱり傷に沁みるなぁ…………泣きそう………」

……それにしても、今回はマジでヤバかったな。この世界に来てからなんだかんだやってはきたが、本当に死ぬかもしれないって思ったのは今回が初めてだ。

運が良かったのかステータスが高かったおかげなのかは知らないが、もうちょっと当たり所が悪かったら俺はもうここには……って、今更そんな事でビビる様な神経はもう持ち合わせてねぇっての!

まぁ多少は恐怖心が残ってたりもするが……そう言う感情があるからこそ、二度と同じ目に遭ってたまるかって意識が生まれるからな!

ありがとうよクソボス!お前のおかげでこれからは油断せず真剣に生き抜こうって思えたぜ!今度お前が現れた時は、キッチリカッチリ綺麗な皮を手に入れてやるから覚悟していやがれよ!

「あの、ご主人様!私も完全体をお披露目する前にお風呂に入りたいんで、そろそろ出て来てもらっても良いですか!」

「うおっ!?ちょっ、いきなり声を掛けんなよビックリするだろうが!って言うか、別にお前は汗とか掻いて無いんだから風呂に入る必要は無くねぇか?」

「もう、ご主人様は女心と言う物が分かってませんね!少しでも綺麗な状態で男性の前に立ちたいという想いが理解出来ないんですか?そんなんじゃモテませんよ!」

「う、うっさいわい!つーか早く出て欲しいなら、さっさとリビングに戻ってろよ!そこに居られたら出られねぇだろうが!」

「はーい!あっ、そうだご主人様!もうそろそろ良い時間なので、私が上がるまでに晩御飯のご用意をしておいてくれると嬉しいんですけど!」

「はいはい、肉を焼いて待ってれば良いんだろ!ちゃんとやっといてやるから、早くそこから退いてくれ!」

「分っかりました!それでは、失礼しますね!」

……アイツ、俺の日常生活をサポートしてくれる妖精さんなんだよね?なんて思いながらため息を零して浴室をさっさと出て行った俺は、廊下で待っていたマホと入れ替わる様にしてリビングに向かって行くのだった。

そして言われた通りに晩飯の用意を始めてから十数分後、俺が作り終わった料理を皿に盛り付けて食卓に並べているとマホが小さなハンドタオルでびしょ濡れになった頭を拭きながら戻って来て目を輝かせだした。

「えへへ!ありがとうございますご主人様!とっても良い匂いがしますね!」

「あぁ、斡旋所の人達に感謝だな……っと、それじゃあさっさと晩飯に」

「おーっと!その前に1つ、忘れている事はありませんか?」

「……いや、それよりも今は腹が減りまくっていてですね。」

「いよいよ!私の完全体をお披露目する時がやって来ました!ご主人様、心の準備は大丈夫ですね?お風呂に入って綺麗になった私を、とくとご覧になって下さい!」

「あっ、コイツ人の話を聞いてねぇ!?」

俺が叫び声を上げたその直後、空中に浮かんでいたマホの体から眩いばかりの光が溢れ出してきやがったので俺はたまらず手を顔の前にやって両目をギュッと閉じた!

それから数十秒が経った辺りで光がほんの少しずつ収まって来て完全に消えたので俺はゆっくり手を退けて目を開けると、マホがさっきまで飛んでた方に視線を向けてみたんだが…………………えっ?

「ふふーん!どうですかご主人様!私の完全体となった姿は!あまりの美貌に言葉が出ませんか!そうでしょうそうでしょう!大きくなって成長したマホちゃんを見て、驚きが隠せませんよね!その気持ち、よく分かりますよ!」

「………あぁ………その…………」

「ほらほら、言いたい事があるならば正直に言っても良いですよご主人様!」

「そ、そうか………じゃあ、1つだけ言いたい事があるんだが………」

「はい!何ですか?」

「マホ……お前さ…………………大人になってないじゃん。」

「…………えぇっ?!」

心の底から驚いて見せたマホは大きく口を開けたまま固まってしまって……俺は、気まずさを感じながら思った事を正直にぶちまける事にした。

「その姿で大人ってのは流石に無理があると言うかだな……どう見たって今のお前は14とか……それぐらいの年齢にしか見えない……ってかそれよりも……」

「それよりもってなんですか!私にとってはそんな言葉では片付けられないぐらいの大問題が起きているんですけど!?折角こうして完全体になったと言うのに、コレが大人ではなく少女の姿ってご主人様はそう言いたいんですか?!」

「お、落ち着けって!そして今はそれよりも重大な問題があるだろうが!」

「何ですか!その問題って言うのは!?」

「いや、そんなの見りゃ分かんだろ!お前の恰好についてだよ!」

「……格好?」

眉をひそめながら自分の姿を見たマホはいまいちピンときてない感じで首を傾げているが、どうして理解が出来ねぇんだよコイツは!?

完全体になった影響で羽は無くなったみたいだけど、格好はそのままだろうがっ!つまり俺の目の前には、ピンクのレオタードみたいなのを着た見た目が14,5歳の女の子が居るって事なんだよ!?もう絵面が犯罪的すぎじゃありませんかね?!

「何でお前、その恰好のままなんだよ!他に服とかねぇのか!?」

「いや、ある訳が無いじゃないですか。私がこれ以外の恰好をしている所、見た事はありませんよね?それに、そもそもスマホにそんな機能はありませんからね。」

「た、確かにそうなんだが………お前、今のその恰好をなんとも思わないのか?」

「え?どこかおかしいですか?私としては普通だと思うんですけど。」

「ぐっ……まぁ、妖精であるお前からしたらそうなのかもしれんが……!」

「えへへ、それにしても大人……とは言い切れないのかもしれませんけれど、これでご主人様と一緒に街中を堂々と歩けますね!妖精だった時には出来なかったデートをするって夢がようやく」

「いや、それだけは絶対にダメだ!」

「……………え?」

俺が大声で否定の言葉を発してから数秒後、マホの表情がどんどん泣き出しそうな表情に……ってヤベェ!?完全に言葉が足りてなかった!このままじゃマズイ!!

「ま、待て!落ち着け!今のはデートがダメだとかって話じゃなくて、その恰好じゃ外には連れて行けないって事を言いたかっただけなんだ!」

「うぅ………ぐずっ………ど、どういう事ですか……?」

「そのだな、妖精のお前には自覚が無いのかもしれないが………その恰好をしているお前を連れて外に行ったら、俺は即座に逮捕されるんだ。」

「そ、そんな事は…………」

「いや、あるんだよマホ……そしてそうなったら最後、俺の新居はここから牢屋へと早変わりしてしまうんだ。」

「そ、そんな……それじゃあ……どうすれば良いんですか?私には、大きくなったらご主人様とデートをするって夢があったのに………」

ぐはぁっ!?な、涙目と上目遣いのコンボだと!?しかも見た目的には美少女って言っても過言ではないマホが俺とデートをしたいが為に……!って、今は身悶えてる場合じゃねぇっての!とにかくマホを安心させないと!

「そ、そうだな……問題点はその服ってだけだから、それをどうにかすれば……」

「ぐずっ……そう言えば……完全体に変身した時に新しい機能がアップデートされた様な気が……」

「マ、マジでか!?よしっ、ちょっと調べてみるか!」

目元を拭いながらどうにかこうにか落ち着きを取り戻してきたマホを見ながら胸を撫で下ろした俺は、小さな棚の上に置かれたスマホを手に取るとスリープ機能を解除して画面に目を通してみた。

「えーと……おっ、新しく解禁されたシステムなんて項目あるぞ。もしかしてここに何か情報が載ってるんじゃ………あった、コレだ!ほら、見てみろ!」

「……レベルが10になりましたので、サポート妖精のサイズが変更に……これが、今の私の状態ですね……後は……あっ、妖精の服についてって書いてありますよ!」

「どれどれ……妖精の服を着替えさせる為にはまず……妖精に服を着せ……スマホの中にその服の情報を取り込んで……………どういう事だ?」

「あっ!今、この機能が私の中にインストールされました!どうやら服を着替えて、ソレを自分の服だと認証すれば取り組んだ事になるみたいです!」

「な、なるほど……って機能がインストールされたのが今?どうして今なんだ?」

「……私もさっき知ったんですけれど、私に新しい機能がアップデートされる条件はご主人様がスマホでお知らせを確認する事みたいです。」

「なんじゃそりゃ……まぁ良い、それよりも今は服をどうするか考えねぇとな。」

「………ご主人様……もしご迷惑に感じている様なら………私は元の妖精の大きさに戻りますから………」

悲しさ……寂しさ……そういった感情を隠そうとしながらマホは……俺に向かってニコリと微笑みかけてきた。

うん!それじゃあそうしてくれ!……なんて鬼畜にも劣る発言を俺が出来るとでも思っているのか!?こっちの世界に来てからずっと俺と居てくれたコイツに、そんなゴミクズみたいな台詞を吐ける訳が無いでしょうが!!

「ふっ、そんな心配しなくても大丈夫だっての!よしっ、そうと決まれば明日にでもお前が着る為の服を買いに行くとするか!」

「……えっ?いいんですか!」

「当たり前だろ!金はクエストの報酬で充分だろうし……医者には一週間は大人しくしていろって言われたけど、街で買い物するぐらいなら問題ないだろうからな!」

「ご、ご主人様っ!ありがとうございます!!」

「うっひゃおう!?ま、待ってくれマホ!抱き着くのは勘弁してくれ!それにほら!早くしないと折角の肉が冷めちまうぞ!!」

「あっ、そうでしたね!それじゃあ明日に備えて早く食べちゃいましょう!」

「お、おう………」

バクバクと動きまくる心臓を鎮めながら味が分からなくなった晩飯を食べた俺は、その後も目のやり場に困る格好をしているマホと夜を過ごすのだった。

妖精の姿には戻らないのかと聞いてはみたんだが、これからの生活の事を考えるとこのままの方が暮らしやすいので今後はなるべく大きいまま暮らしていくらしい。

ただ注意点としてバッテリーの消費量が少し多くなってしまったらしく、12時間ぐらいスマホの充電が出来ないと電源が落ちてしまうらしい……妖精の状態だったら3日間は持つらしいので、完全体って燃費が悪すぎじゃありませんかね?

まぁ、スマホはずっと身近に置いてあるから別に良いんだけどさ……とりあえずマホ自身も何時になったら新機能が追加されるのか分からないらしいから、しばらくレベルが上がる度に様子を見るとしますかね。

何て事を考えながら就寝時間を迎えた俺達は、明日に備えてそれぞれの自室に戻り眠りにつくのだった。

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