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おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第15話

「ご……じ…!…しゅ……ん…ま!おねが……です…ら……起き……ださい……!」

……この声は………マホ………なのか……?……でも……どうして………あぁ……そうか……………俺は………

「うぅ……ごしゅじんさまぁ………めをさましてくださいよぉ…………」

「……ったく……スマホの外に出るなって言っただろうが………」

「あぁ……ううぅぅぅ………ごしゅじんさまぁぁ………!」

「はいはい……ご主人様ですよっと…………」

全身を襲う激痛に歯を食いしばって耐えながら無理やり体を起こした俺は、朦朧もうろうとする意識を必死に繋ぎ止めながら現状を把握する為に目を開いた。

「くっ!君、大丈夫かい!?」

「は、はい!しかしロイド様が!」

「こっちの事は気にしないで!それよりも私の背後から離れない様にしてくれ!」

「わ、分かりましきゃあ!」

「させるかっ!!」

壁にもたれ掛かった状態で見つめた先では女の子を庇いながらボスの前足から繰り出される攻撃を必死に防いでいるロイドの姿が……!

「マズい……このままだとあいつ等が……!」

「う、動いたらダメですよご主人様!頭から血が出ていますし、それに体もボロボロなんですよ!?」

マホが不安そうな表情を浮かべながら大声でそう教えてくれた次の瞬間、俺が見ていた世界のの左半分が真っ赤に染まり始めた。

……こんな事を考えるのは場違いだって分かっちゃいるんだけど、これって物語の主人公が大怪我をした時みたいでちょっとテンションが上がるね。

「って、それ所じゃねぇか………マホ、悪いがスマホの中に戻ってくれるか。」

「え、え?ど、どうしてですか?!」

「まぁまぁ……今は何も言わずにさ………頼む………」

精一杯の笑顔を見せながら声を振り絞ってそう伝えてみたら………マホはギュッと両手を握り締めながら真剣な眼差しを俺に向けてきた。

「……ご主人様、絶対に死なないで下さいね。」

「あぁ……当然だろ……!」

傷だらけの右腕を無理やり上げて親指をグッと立てながらそう断言すると、マホは小さく頷いてポーチの中にあるスマホの中に戻って行ってくれた。

「さてと……そんじゃあ気合を入れるとしますかねぇ……」

俺は腰にぶら下げてるアイテムポーチに手を突っ込んでメチャクチャ滲みる傷薬を取り出すと、腹部ある巨大な引っ掻き傷にそれを思いっきり塗り込んでいった!!

「いってええええええええ!!!?!?!?!!」

(ちょっ!?何をしてるんですかご主人様?!)

(はっはっは!どうにか意識がハッキリしてきたぞこんちきしょうが!)

(いや、本当に何を考えているんですか!?)

(決まってんだろ!こっから反撃を始めんだよ!)

(はぁ?!満足に動けないのにそんなの出来るはずがありませんよ!お願いですから無茶をするのは止めて下さい!)

「悪いがその忠告は聞けねぇなショットォ!!!」

右腕をグッと伸ばして目の前に魔方陣を出現させた俺は、そこから炎の球を出してロイド達に襲い掛かっていたボスの背後に撃ち込んでやった!

そして避ける事も出来ずにソレを見事に食らったボスは、絶叫にも似た咆哮を上げながら地面をジタバタと転げ回って体についた火を消そうとしていた!

(な、何をしているんですかご主人様!?あんな事をしたらボスが怒って……ほら!血走った目でこっちを睨みつけていますよ!!)

(マホ……絶体絶命の窮地に陥った後に助けに来る主人公は格好良いと思うけどさ、どうせならそうなる前に来て欲しいって俺は思うんだよ……だから今回はあいつ等が傷つく前に何とかしてみようと考えた訳だ!)

(それでご主人様が死んじゃったらどうするんですか!?って、き、来ます!ボスがこっちに向かって来ます!!)

「さぁ……しつけの時間だ!」

ニヤッと笑みを浮かべながら空中に更なる魔方陣を出現させた俺はそこから次々と炎の球を撃ち出していったんだが、ボスはその全てをあっさりとかわして俺に向かって突っ走って来ると大きな口を開いて飛び掛かって来やがった。

「ダメだ!九条さん!」

「よ、避けてええええ!」

(ご主人様ああああ!!!)

マホとロイドと女の子の叫び声を聞きながら伸ばしていた右手をグッと握り締めた俺は、目前まで迫って来ていたボスに向けて中指を立ててやった。

「このバカ犬がっ!」

叫びながら握り拳を思いっきり後ろの壁に叩きつけた直後、頭上から石で出来てる巨大な拳が凄い勢いで出て来てボスの顔面を殴り付けた!

「飛んでたら避けられないだろうが……学習能力が無いのかこのマヌケ。」

部屋の中央ぐらいまで吹き飛ばされて行ったボスを睨みつけながらそう呟いた俺は短く息を吐き出すと………

「よしっ、そんじゃあ最後のダメ押し行ってみようかぁ!」

激痛のせいで変なテンションになってるのを自覚しながら両手で思いっきり地面を叩いた瞬間、低い唸り声を上げているボスの真下から鋭い石の槍が幾つも射出されて体を貫いていった!

そして全身を穴だらけにされて真っ赤に染め上げられたボスは、全身の力が抜けてガクッとなるとそのまま床の上に倒れて行くのだった。

「はぁ……どうにか終わったみたいだな……いてて………」

(だ、大丈夫ですか!?)

(あぁ、心配すんな……落ち着いてきたせいで傷が痛くなってきただけだから……)

マホにそう言いながら近くに転がっていた傷薬を手に取った俺は、血が流れ出てる頭の傷にそれを………歯を食いしばり涙目になりながら塗り込んでいった……!

そうこうしているとカツカツと人の歩く音が聞こえてきて……体を丸めながら顔を上げてみるとロイドが女の子を連れてこっちに向かって来ていた。

「よぉ、ロイド!お互いどうにか無事に生き残ってぇっ!?」

「そんなに傷だらけになっているのに何が無事になんだ!!」

「ロ、ロイド様!お願いですから落ち着いてください!」

え、ちょっ!?どうして俺はブチ切れ状態のロイドに胸倉を掴まれているんだ!?何でなのかマジで意味が分からないんですけど?!

「あの時、私達を逃がせば九条さんが攻撃を受けるのは分かっていたはずだ!それに咄嗟とっさの事で避ける事も難しいのも!それなのにどうしてあんな真似をしたんだ!」

「いやっ、どうしてと言われても……俺が逃げれば標的はお前達になってたろうし、それにロイドは女の子を庇っていたから満足に動けないのは見て分かったから………だからまぁ、反射的にそうしたとしか言い様が………」

「何だって?!」

「あっ、それにさ!俺ってレベルとステータスがお前達より高いだろ?だからこんな初心者ダンジョンに出現するボスの攻撃ぐらい耐えられるって……思った………気がする……かな?」

「…………」

うぅ……年下のイケメン美少女に胸倉を掴まれながら説教されるなんて……なんかメチャクチャ情けないんですけど………

(ご主人様、きちんと反省して下さい。)

(えぇ………かなり頑張ったと思うんですが……)

(そういう問題ではありません!!どれだけレベルとステータスが上がっていても、打ち所が悪ければどうする事も出来ずに死んでしまうんですよ!?それにボスの爪に毒でもあったらどうするつもりだったんですか!)

(そ、それは………)

(お願いですから……私の前から居なくなる様な事はしないで下さい………)

「………悪かったよ。」

マホの悲しそうな声を聞いて胸が締め付けられる思いがした俺は……‥小さな声で呟く様に謝る事しか出来なかった………

「あの、ロイド様!おじ様もこうして謝っていますし、そろそろ手を放してあげてはどうですか?ほら、お怪我もなさっていますから。」

「……分かった、君がそこまで言うなら。」

おぉ……どうやらおじ様って呼び方にランクアップした上に、マホに対する謝罪が口から洩れていたおかげで許されたみたいだな………

「はぁ………そ、それじゃあネットを使ってボスを……いっつ………」

「九条さんはここで安静にしていてくれ。後の事は私達がやるからね。」

「いや、でも……」

「こ、これぐらいはやらせて下さい!私、頑張りますから!」

「……そうか……じゃあ頼んだ………」

「うん、九条さんは傷の手当てをしておいてくれ。後でお説教をする時に気が散ってしますからね。」

「えっ、まだ説教があるのか……?」

「……何か問題でもあるかい?」

「……いえ、何でもありません。」

有無を言わさぬ迫力のある笑みを浮かべたロイドからサッと目を反らした後、俺は全身の傷に薬を塗って悶絶しながら作業をしているロイド達を見守るのだった。

(はぁ……あのボス、どんだけ値下がりするんだろうなぁ……)

(穴だらけで血だらけですからね……報酬としてはかなり減ると思いますよ。)

(だよな……うん、今日のボス戦を教訓として次は綺麗に確実に息の根を止めよう。いちいち大怪我してたら割に合わなすぎるからな。)

(私もご主人様を失うかもしれないなんて思いはもうしたくありませんので、絶対にそうして下さい。)

(……分かったよ。)

ため息交じりに返事をして手当てを続けていると、ネットで覆われたボスが無事に転送されていくのだった。

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