おっさんの異世界生活は無理がある。

祐一

第13話

(いやぁ、こんな事になるんだったらちゃんと武器を買い替えておけば良かったな!)

(ご主人様!後悔してないで今は目の前に居るボスに集中して下さい!)

(はいはい、分かってるって!)

武器屋で買った最安値、最低品質の使い古した武器を握り締めて唸り声を上げてるボスと対峙した俺は姿勢を低くしていつでも動き出せる様に覚悟を決めた。

その次の瞬間、大きな口を開けたボスが物凄い速さで突っ込んで来ているのを見た俺はグッと両足に力を込めると横方向に向かって大きく飛んでその攻撃を転がる様にかわしてやった!

そしてその勢いのままボスに背を向けて走り出した俺は左手を後ろに向けまたまた魔法の光でボスの視界を奪おうとしたんだが、それもあっさり避けられてしまった!

それと同時に体勢を立て直したボスは前足に付いてる巨大な爪で俺を斬り裂こうと飛び掛かって来やがったので、そりゃもう死に物狂いで逃げまくってやった!

ただそれだけだと俺がアイツの胃袋に収まる未来しか存在しないのでボスの勢いを利用して何度か壁に衝突させてやったんだが、完全に無意味だったと言っておこう!

アニメやゲームとかだと多少のダメージは期待できると思ったんだけど、やっぱり現実ってのはそんなに甘くはないんですね!!

さてそれじゃあどうしたもんかと頭をフル回転させつつボスから逃げ回っているといつの間にか俺とボスの立ち位置は最初とは正反対になっていた……その事に思わず笑いそうになりながら、俺はこれまでされた攻撃に関してある疑問を感じていた。

(……アイツの攻撃、さっきからどうにも当たる気がしないんだが。)

(それはきっとご主人様が特典の力を利用して急激に成長しているからですよ!連続して攻撃をかわせるなんて流石ですね!)

(……いや、そうじゃない。恐らくあのボスはわざと攻撃をかわさせているんだ。)

(え、えぇ?!そんな、どうしてそう思うんですか!?)

(アイツは多分、初めて俺がクエストを受けた時に討伐対象になってたモンスターの強化版だ。それならどう行動するのかってパターンも変わらないはず………)

(それってつまり、獲物の体力を奪ってその隙に襲うってアレですか!?)

(そういう事だ……あのボスの元になってるモンスターについては予想出来てたのにマジで迂闊うかつだったな。)

(そ、そんな!?それじゃあご主人様の体力が無くなったら大変じゃないですか!)

(安心しろ、レベルが上昇してステータスが上がってるからその心配はまだ無い……ただ問題として、これまで手加減をしていたボスがそれに気付いて本気の攻撃をしてきたらマジでヤバいだろうな。)

(そ、それじゃあどうするんですか!?もう何度も攻撃をかわしちゃっていますから、バレるのも時間の問題ですよ?!)

(分かってる……だからそろそろアイツは殺す。経験値が溜まったおかげでアイツの攻撃が見える様になってきたし、さっきまでとは違って体も思う通りに動かせる様になってきたからな。)

(本当ですか!?ご主人様を信じても良いんですよね?!)

(あぁ、任せろ!……それにしても、魔法の発動条件に呪文とか面倒な制約が無くて本当に良かったぜ……だって妄想力と魔力さえあれば何でも出来ちまうからなぁ!)

俺はニヤッと笑みを浮かべて左手を強く握り締めると魔法を発動させて全身を荒れ狂う程の強風で覆うと、武器を構えて地面を全力で蹴りボスに突っ込んで行った!

うんうん!やっぱり移動速度を上げるならこの方法が一番だよな!さっきまでとは違って体が羽の様に軽くて最高ですね!なんて思っていたらほぼ同時ぐらいにボスもこっちに向かって走って来やがった!

(な、何を考えているんですかご主人様!?このままじゃ死んじゃいますよ!!)

(まぁまぁ!こういうのは勢いとテンションが大事なんだっての!ビビッて動けなくなる前にとっととアイツをぶっ殺す!)

死の恐怖を気合で噛み殺しながら一足先に部屋の中央までやって来た俺は、大きな口を開けて牙を突き立てようと飛び掛かって来たボスの真下にスライディングをして潜り込んで行った!

その直後に魔力を思いっきり込めた左手で地面を殴って魔方陣を出現させた俺は、そこから巨大な石の拳を出して空中で身動きが取れなかったボスの胴体にアッパーを食らわせてやった!!

ボスは殴られた衝撃で上に向かって飛んで行くと天井に凄まじい勢いでぶつかって瓦礫と共に地面に落下して大量の土埃つちぼこりを舞い上げるのだった!

……それからしばらく息を殺してボスがどう動くのかジッと見ていた俺だったが、数十秒経っても何も起きない事にホッとして自然と地面に座り込んでいた。

「あー…………はぁ………………マジで死ぬかと思ったぁ…………」

「す、凄いですよご主人様!たったお1人でボスを倒してしまうなんて流石です!」

いつの間にかスマホの中から飛び出して来ていたマホは、興奮しながら俺の周りを嬉しそうにグルグルと回りまくっていた……

「ははっ、ありがとうよ………それにしても……あーマジで今回は怖かった!それに本当に死ぬかと思ったんですけど!」

心の奥底に封じ込めていた恐怖心を大声で吐き出しながら膝を抱えて地面をジッと見つめた俺は、怪我もせず無事にボスを倒せた事に安堵のため息を零していた。

「それにしてもご主人様!いきなりボスに向かって走り出すなんて止めて下さいよ!本当に心臓が止まっちゃうかと思ったんですから!!」

「はっはっは、それは悪い事をしたな!だけどまぁ良いじゃないか!ああして綺麗な状態でボスを殺せたから報酬も良い感じになるだろうしさ!本当は石の拳じゃなくて石の槍って考えもあったんだが、やっぱ串刺しにしちまうと報酬がなぁ?」

「なぁ……じゃないですよ!私の心配を返して下さいこのバカ!アホ!マヌケ!」

「おい、頑張ったご主人様にそれは言い過ぎじゃないですかね?!……まぁいいや、とりあえずお前はスマホに戻ってろ。俺はネットを使ってボスを下取り所に納品してくるから。」

「ふーんだ!」

「はぁ……分かったよ、ちゃんと反省するし帰りにケーキを買ってやるからロイドが戻って来る前にスマホに入ってくれ。」

「はい!了解しました!」

「……現金な奴。」

苦笑いを浮かべながらスマホの入ったポーチを見てため息を零した俺は、地面から腰を上げて動かなくなったボスに乗りどうネットを使えば良いのか考えていた。

それからしばらくして息を切らせてやって来たロイドに何があったのか尋ねられたので、俺はゆっくりとこれまでの事を説明するのだった。

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